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外伝 〈一人旅〉
死霊使いの居場所
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「粗方片付いたかな……」
街の周囲に押し寄せてきたアンデッド達は光球から放たれる浄化の光を浴びて身体が朽ち果て、二度と動かぬ死体へと戻る。何体かは完全に消滅せずに済んだがそれも時間の問題であり、光を浴びた時点で聖属性の魔力が体内に侵入して徐々に肉体が崩れ去る。
「あ、兄貴が戻ってきた!!」
「一体どうなってるんですか!?」
「それより、死霊使いは見つかった?」
街を一周して戻ってきたルノの前に囚人が集まるが、説明する暇もなくルノは死霊使いらしき人間を見つけたのか問いただす。しかし、アンデッドが現れた事で混乱していたのか指示を受けた囚人達は捜索を忘れていた。
「す、すいません!!まだ見つけていません……」
「手掛かりが兵士の格好をしている女だけじゃな……他に何か手掛かりになりそう情報はないのか?」
「……リディアは何か知らない?他にイレアの情報を知らない?」
「だから言ってるでしょ。イレアの事は何も知らないの、あの女はクズノ以上に秘密主義だからね……あ、でも」
「何か思いだした?」
「いや、イレアの事じゃないんだけど……死霊使いは確か夜の間が最も大きな力を発揮するけど、明るい間は力が大きく衰えるそうよ。だから今の時間帯は一番不味いわね」
死霊使いは闇属性を得意とする魔術師であり、闇属性の魔法が真価を発揮するのは夜間である。理由として闇属性の魔法は「強い光」を苦手とするため、明るい場所では闇属性の魔法は本来の効果は発揮できない。
「イレアの奴がこれだけのアンデッドを生み出せるのはきっと夜だからよ。もしかしたら日が昇ればあいつの力も衰えるかもしれないわ」
「だから昼の間は襲ってこなかったのか……」
「だけどよ、太陽が昇るまでどれくらいの時間があると思ってんだ?最低でもあと5、6時間はかかるぞ!!」
時刻は深夜を間もなく迎えようとしており、太陽が出現するまで耐えきれるとは限らない。幾らルノが存在するとはいえ、この海獄島にはこれまでに死亡した人間の死体は大量に地中に埋められており、ルノが倒したアンデッドも海獄島全体に存在する死体の一部でしかない。それに昆虫種がまだ残っている可能性もあり、決して油断出来ない状況である。
「イレアの居場所さえ分かればどうにか出来るのに……!!」
「もしかしたら囚人の中に既に紛れ込んでいるかもしれないわよ」
「こ、怖いこと言うなよ!!それにどうしてお前がここに居るんだ!!普段は倉庫に隠れているくせに!!」
「私だって好きで出てきたわけじゃないわよ!!」
「黙って!!」
口論を始めようとしたリディアと囚人達に対してルノは苛立ちを隠さずに怒鳴りつけ、そろそろルノも我慢の限界を迎えようとしていた。姿を見せずに隠れて行動し、昆虫種やアンデッドを利用して自分達を弄ぶように攻撃してくるイレアに対し、ルノは今までに無い程の怒りを抱いていた。
(許さない……絶対に見つけてやる)
何の罪もない兵士を巻き込み、死刑囚とはいえ、何の関係もない囚人達に危害を加えたイレアにルノは怒りを抑えきれず、捜索方法を探す。こんな時にリーリスのような知恵者やヒカゲのような情報収集能力に長けた忍者がいれば心強いが、今は他人に甘えられない。
(魔王軍最高幹部、死霊使い、昆虫種……何か手掛かりはないか?)
これまでに集まった情報を頼りにルノはイレアの居場所を特定する方法を探し出し、自分と接触していた若い兵士の姿を思い出す。少年兵だと思い込んでいたが、状況的に考えても彼が男装したイレアとしか思えず、ルノは記憶を掘り起こして兵士の顔を思い出す。
(顔は分かっている。問題は何処に隠れているのか……)
既に囚人達の中にイレアが紛れ込んでいる可能性も高く、あるいは人に見つからない場所に隠れている可能性も否定は出来ない。囚人達の力を借りてイレアを捜索させたとしても見つかるかも分からない。しかし、行動に移らなければ何も始まらなかった。
(SPを消費して新しい職業やスキルを習得する?コトネやヒカゲさんのように暗殺者や忍者の職業を覚えれば……いや、レベルを上げないと真面にスキルも扱えない)
索敵や潜入に優れた職業を習得してイレアの居場所を探し出す方法も考えたが、レベルが1のままでは碌な能力も扱えない。今からレベル上げを行う暇もなく、そもそもこの島には魔物は存在しない。
(どうする……考えている間にも街の反対側でアンデッドが押し寄せているかもしれない。まずは皆を避難させるか……避難?)
ルノはある考えを思いつき、イレアを見つけ出す方法が頭に浮かぶ。かなり運の要素を必要とするが、迷っている暇はないのでルノは囚人達に指示を与えた。
「この街の囚人全員を呼び出して!!今すぐ!!」
「ぜ、全員ですか?」
「そう!!一人残らずここに連れてきて!!早く!!」
「は、はい!!」
これまでにない気迫を放つルノの言葉に囚人達は慌てて動き出し、街中に存在する全ての囚人を城門まで集結させるために誘導を行う――
街の周囲に押し寄せてきたアンデッド達は光球から放たれる浄化の光を浴びて身体が朽ち果て、二度と動かぬ死体へと戻る。何体かは完全に消滅せずに済んだがそれも時間の問題であり、光を浴びた時点で聖属性の魔力が体内に侵入して徐々に肉体が崩れ去る。
「あ、兄貴が戻ってきた!!」
「一体どうなってるんですか!?」
「それより、死霊使いは見つかった?」
街を一周して戻ってきたルノの前に囚人が集まるが、説明する暇もなくルノは死霊使いらしき人間を見つけたのか問いただす。しかし、アンデッドが現れた事で混乱していたのか指示を受けた囚人達は捜索を忘れていた。
「す、すいません!!まだ見つけていません……」
「手掛かりが兵士の格好をしている女だけじゃな……他に何か手掛かりになりそう情報はないのか?」
「……リディアは何か知らない?他にイレアの情報を知らない?」
「だから言ってるでしょ。イレアの事は何も知らないの、あの女はクズノ以上に秘密主義だからね……あ、でも」
「何か思いだした?」
「いや、イレアの事じゃないんだけど……死霊使いは確か夜の間が最も大きな力を発揮するけど、明るい間は力が大きく衰えるそうよ。だから今の時間帯は一番不味いわね」
死霊使いは闇属性を得意とする魔術師であり、闇属性の魔法が真価を発揮するのは夜間である。理由として闇属性の魔法は「強い光」を苦手とするため、明るい場所では闇属性の魔法は本来の効果は発揮できない。
「イレアの奴がこれだけのアンデッドを生み出せるのはきっと夜だからよ。もしかしたら日が昇ればあいつの力も衰えるかもしれないわ」
「だから昼の間は襲ってこなかったのか……」
「だけどよ、太陽が昇るまでどれくらいの時間があると思ってんだ?最低でもあと5、6時間はかかるぞ!!」
時刻は深夜を間もなく迎えようとしており、太陽が出現するまで耐えきれるとは限らない。幾らルノが存在するとはいえ、この海獄島にはこれまでに死亡した人間の死体は大量に地中に埋められており、ルノが倒したアンデッドも海獄島全体に存在する死体の一部でしかない。それに昆虫種がまだ残っている可能性もあり、決して油断出来ない状況である。
「イレアの居場所さえ分かればどうにか出来るのに……!!」
「もしかしたら囚人の中に既に紛れ込んでいるかもしれないわよ」
「こ、怖いこと言うなよ!!それにどうしてお前がここに居るんだ!!普段は倉庫に隠れているくせに!!」
「私だって好きで出てきたわけじゃないわよ!!」
「黙って!!」
口論を始めようとしたリディアと囚人達に対してルノは苛立ちを隠さずに怒鳴りつけ、そろそろルノも我慢の限界を迎えようとしていた。姿を見せずに隠れて行動し、昆虫種やアンデッドを利用して自分達を弄ぶように攻撃してくるイレアに対し、ルノは今までに無い程の怒りを抱いていた。
(許さない……絶対に見つけてやる)
何の罪もない兵士を巻き込み、死刑囚とはいえ、何の関係もない囚人達に危害を加えたイレアにルノは怒りを抑えきれず、捜索方法を探す。こんな時にリーリスのような知恵者やヒカゲのような情報収集能力に長けた忍者がいれば心強いが、今は他人に甘えられない。
(魔王軍最高幹部、死霊使い、昆虫種……何か手掛かりはないか?)
これまでに集まった情報を頼りにルノはイレアの居場所を特定する方法を探し出し、自分と接触していた若い兵士の姿を思い出す。少年兵だと思い込んでいたが、状況的に考えても彼が男装したイレアとしか思えず、ルノは記憶を掘り起こして兵士の顔を思い出す。
(顔は分かっている。問題は何処に隠れているのか……)
既に囚人達の中にイレアが紛れ込んでいる可能性も高く、あるいは人に見つからない場所に隠れている可能性も否定は出来ない。囚人達の力を借りてイレアを捜索させたとしても見つかるかも分からない。しかし、行動に移らなければ何も始まらなかった。
(SPを消費して新しい職業やスキルを習得する?コトネやヒカゲさんのように暗殺者や忍者の職業を覚えれば……いや、レベルを上げないと真面にスキルも扱えない)
索敵や潜入に優れた職業を習得してイレアの居場所を探し出す方法も考えたが、レベルが1のままでは碌な能力も扱えない。今からレベル上げを行う暇もなく、そもそもこの島には魔物は存在しない。
(どうする……考えている間にも街の反対側でアンデッドが押し寄せているかもしれない。まずは皆を避難させるか……避難?)
ルノはある考えを思いつき、イレアを見つけ出す方法が頭に浮かぶ。かなり運の要素を必要とするが、迷っている暇はないのでルノは囚人達に指示を与えた。
「この街の囚人全員を呼び出して!!今すぐ!!」
「ぜ、全員ですか?」
「そう!!一人残らずここに連れてきて!!早く!!」
「は、はい!!」
これまでにない気迫を放つルノの言葉に囚人達は慌てて動き出し、街中に存在する全ての囚人を城門まで集結させるために誘導を行う――
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