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外伝 〈一人旅〉
囚人の結束
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――リディアを抱え、ルノは囚人達と別れた農場に向かう。しかし、到着して早々に農場の異変に気付いてしまう。普段は日夜関係なく囚人が交代制で働いているはずだが、農場には人の姿は見えなかった。
「これは……」
「ちょっと、どうなってるのよ?ここにあいつらがいるんじゃないの?」
『シャアッ……』
農場には人間の姿は見えず、既に全員が街に戻ったのかと考えたが、違和感を抱いたルノは地面に着地する。その際、妙に地面が荒れている事に気付く。
「何だ?地面が……柔らかい?」
「ちょ、ちょっと……あれ!!」
リディアがルノの肩を掴み、ある方向を指差す。ルノは顔を向けると、そこには複数の蟷螂の死体が並んでいた。
「こいつら……まさかここにも!?」
「でも、もう死んでるわよ。こんな狂暴な奴等をよくもまあ……」
「あ、兄貴!!そこにいるのは兄貴ですか!?」
「ニオ?」
街に居た時は自分の傍にずっと控えていたニオが街の城門から響き渡り、振り返ると門の上に鍋の頭を被ったニオの姿が存在した。彼が無事だった事に喜ぶ一方、何が起きているのかを問い質す。
「ニオ!!ここで何が起きた?」
「そ、その前に入って下さい!!あいつらが入ってくる前に!!」
「あいつら……」
ルノは死体となった蟷螂を振り返り、すぐにニオの言葉に従って街の中に入り込む。城門を潜り抜けるとそこには大勢の囚人が存在し、ルノの姿を見て歓喜の声を上げる。
「あ、兄貴だ!!」
「ルノさん!!ルノさんが戻ってきたぞ!!」
「やっぱりな!!俺は信じていたぜ!!」
「落ち着いてよ皆……何が起きたの?」
群がる囚人を落ち着かせ、ルノは彼等から話を伺おうとした時、何人かが重傷を負っている事に気付く。その中にはロナクの姿も存在し、彼は胸元を切り裂かれていた。傍には傷だらけのキジンの姿も存在し、必死に彼に声を掛けていた。
「ロナク!!おい、しっかりしやがれ!!この程度の傷で死ぬなっ!!」
「ううっ……すいません、親分……」
「畜生……!!」
「ロナク!!」
ロナクが倒れている事に気付いたルノは彼の元に駆け寄り、傷の具合を確認する。キジンはルノが戻ってきたことに驚くが、すぐに彼に縋り付く。
「お、おい!!こいつを何とか出来ないのか!?弱いくせに無茶しやがって……」
「くそっ……回復薬は?」
「そんなもん、ここにはねえよ!!まだあんたが言っていた砂浜にある飛行船の荷物も回収してないんだ!!」
「なら、俺が……!!」
ルノは即座にステータス画面を開き、SPを消費して職業を変更させる。職業を治癒魔導士に変更したルノは掌を構え、回復魔法を施す。
「動かないで……すぐに治療するから」
「うっ……!?」
「この光は……あんた、回復魔法も使えたの?」
「静かに!!」
回復魔法に集中し、強化スキルの「浄化」を発動させて回復魔法の効果を高める。その結果、ニオの傷口は塞ぐ事に成功したが、彼の顔色は悪いままだった。
「おい、ロナク!!起きろ!!」
「無理よ。この人、もう致死量の血液を流しているわ。幾ら傷口を塞いだって……」
「そんな……何とか出来ないの?」
「……医療設備が整っていないこの島では助けられないわ」
リディアの言葉にルノとキジンはロナクに視線を向け、彼は虚ろな瞳を二人に向け、手を伸ばす。
「兄貴……親分……」
「ああ、俺はここにいるぞ!!」
「ロナク……」
「すいません……でした」
二人が手を取るとロナクは最後に笑顔を浮かべ、そのまま動かなくなる。その様子を看取った囚人達は悲し気な表情を浮かべ、キジンはゆっくりと彼の身体を横たわらせる。
「畜生……どうしてこんな事に!!何なんだあのでかい虫は!!」
「ロナクは……昆虫種に襲われたの?」
「昆虫種?奴らの事か?ああ、そうだよ!!お前がいなくなった後に急に現れやがって……何が起きてるんだ!!」
キジンが八つ当たりのようにルノの身体を掴み、持ち上げようとするがびくともせず、キジンは驚いた表情を浮かべる。何時の間にかルノは地面に拳を減り込ませており、今まで見た事がない表情を浮かべていた。
「もういい……もう十分だろ」
「る、ルノ……さん?」
「リディア」
「はい!?」
名前を呼ばれたリディアは即座に反応すると、ルノは起き上がり、他の囚人にも声を掛ける。
「皆も聞いて欲しい……この島の何処かに敵がいる。相手は女だけど、獣人族の兵士の格好をしているはず。そいつを見つけ欲しい」
「兵士?女?」
「ど、どう言う事ですか?」
「理由を説明している暇はない……見つけ出したらすぐに捕まえて俺のところへ連れてきて欲しい」
『は、はい!!』
ルノの言葉に囚人達は従い、急いで街中の探索を開始しようとした時、城門で見張りを行っていたニオが大声を上げた。
「これは……」
「ちょっと、どうなってるのよ?ここにあいつらがいるんじゃないの?」
『シャアッ……』
農場には人間の姿は見えず、既に全員が街に戻ったのかと考えたが、違和感を抱いたルノは地面に着地する。その際、妙に地面が荒れている事に気付く。
「何だ?地面が……柔らかい?」
「ちょ、ちょっと……あれ!!」
リディアがルノの肩を掴み、ある方向を指差す。ルノは顔を向けると、そこには複数の蟷螂の死体が並んでいた。
「こいつら……まさかここにも!?」
「でも、もう死んでるわよ。こんな狂暴な奴等をよくもまあ……」
「あ、兄貴!!そこにいるのは兄貴ですか!?」
「ニオ?」
街に居た時は自分の傍にずっと控えていたニオが街の城門から響き渡り、振り返ると門の上に鍋の頭を被ったニオの姿が存在した。彼が無事だった事に喜ぶ一方、何が起きているのかを問い質す。
「ニオ!!ここで何が起きた?」
「そ、その前に入って下さい!!あいつらが入ってくる前に!!」
「あいつら……」
ルノは死体となった蟷螂を振り返り、すぐにニオの言葉に従って街の中に入り込む。城門を潜り抜けるとそこには大勢の囚人が存在し、ルノの姿を見て歓喜の声を上げる。
「あ、兄貴だ!!」
「ルノさん!!ルノさんが戻ってきたぞ!!」
「やっぱりな!!俺は信じていたぜ!!」
「落ち着いてよ皆……何が起きたの?」
群がる囚人を落ち着かせ、ルノは彼等から話を伺おうとした時、何人かが重傷を負っている事に気付く。その中にはロナクの姿も存在し、彼は胸元を切り裂かれていた。傍には傷だらけのキジンの姿も存在し、必死に彼に声を掛けていた。
「ロナク!!おい、しっかりしやがれ!!この程度の傷で死ぬなっ!!」
「ううっ……すいません、親分……」
「畜生……!!」
「ロナク!!」
ロナクが倒れている事に気付いたルノは彼の元に駆け寄り、傷の具合を確認する。キジンはルノが戻ってきたことに驚くが、すぐに彼に縋り付く。
「お、おい!!こいつを何とか出来ないのか!?弱いくせに無茶しやがって……」
「くそっ……回復薬は?」
「そんなもん、ここにはねえよ!!まだあんたが言っていた砂浜にある飛行船の荷物も回収してないんだ!!」
「なら、俺が……!!」
ルノは即座にステータス画面を開き、SPを消費して職業を変更させる。職業を治癒魔導士に変更したルノは掌を構え、回復魔法を施す。
「動かないで……すぐに治療するから」
「うっ……!?」
「この光は……あんた、回復魔法も使えたの?」
「静かに!!」
回復魔法に集中し、強化スキルの「浄化」を発動させて回復魔法の効果を高める。その結果、ニオの傷口は塞ぐ事に成功したが、彼の顔色は悪いままだった。
「おい、ロナク!!起きろ!!」
「無理よ。この人、もう致死量の血液を流しているわ。幾ら傷口を塞いだって……」
「そんな……何とか出来ないの?」
「……医療設備が整っていないこの島では助けられないわ」
リディアの言葉にルノとキジンはロナクに視線を向け、彼は虚ろな瞳を二人に向け、手を伸ばす。
「兄貴……親分……」
「ああ、俺はここにいるぞ!!」
「ロナク……」
「すいません……でした」
二人が手を取るとロナクは最後に笑顔を浮かべ、そのまま動かなくなる。その様子を看取った囚人達は悲し気な表情を浮かべ、キジンはゆっくりと彼の身体を横たわらせる。
「畜生……どうしてこんな事に!!何なんだあのでかい虫は!!」
「ロナクは……昆虫種に襲われたの?」
「昆虫種?奴らの事か?ああ、そうだよ!!お前がいなくなった後に急に現れやがって……何が起きてるんだ!!」
キジンが八つ当たりのようにルノの身体を掴み、持ち上げようとするがびくともせず、キジンは驚いた表情を浮かべる。何時の間にかルノは地面に拳を減り込ませており、今まで見た事がない表情を浮かべていた。
「もういい……もう十分だろ」
「る、ルノ……さん?」
「リディア」
「はい!?」
名前を呼ばれたリディアは即座に反応すると、ルノは起き上がり、他の囚人にも声を掛ける。
「皆も聞いて欲しい……この島の何処かに敵がいる。相手は女だけど、獣人族の兵士の格好をしているはず。そいつを見つけ欲しい」
「兵士?女?」
「ど、どう言う事ですか?」
「理由を説明している暇はない……見つけ出したらすぐに捕まえて俺のところへ連れてきて欲しい」
『は、はい!!』
ルノの言葉に囚人達は従い、急いで街中の探索を開始しようとした時、城門で見張りを行っていたニオが大声を上げた。
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