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外伝 〈一人旅〉
兵士の元へ
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「でも、どうして蟷螂が棺桶なんて……ちょっと待って、この人は獣人国とか捕まったと言ってたよね」
「え、そうよ?それがどうかしたの?」
「……じゃあ、この人も海獄島に送り込まれていたの?」
「まさか!!こいつは確かに処刑されたと聞いてたわよ」
リディアによるとケンゴロウが送り込まれたという話は一切聞いておらず、獣人国で処刑されたと聞いている。それならば死体は獣人国で葬り去れられた可能性が高く、魔王軍か獣人族の領土に送り込んだとしか考えられない。しかも例の蟷螂が運んでいた時点でルノは嫌な予感に襲われる。
「もしかして……今日、この島に飛行船が墜落した。獣人族の……その時に蟷螂の卵も運び込まれていたはず」
「え?じゃあ、こいつもその時にこいつも一緒に運び込まれていたのね」
「だけど、その時にさっき倒した囚人以外に兵士を何人か助けた。他に生き残りは見つからなかったけど……」
「はあっ!?じゃ、じゃあ……その兵士達は何処にいるのよ?」
「温泉が湧いて出てる山に置いてきた。でも、もしかしたら……」
ルノは自分を救い出した兵士を思い出し、一番怪しかった魔物使いの囚人は既に死亡している。仮に飛行船の生き残りの中にリディアが話した死霊使いが含まれていた場合、怪しいのは兵士達である。
(でも、あの人達は全員男だったはず。リディアの話が本当なら相手は女のはずだけど……待てよ、そういえば一人だけ服を脱いでいなかった人がいたような……)
記憶を掘り起こし、ルノは温泉に浸かっていた兵士達の中で一人だけ服を着たまま待機していた人物を思い出す。それは兵士の中で最も若く、蟷螂が最初に現れた時にルノにしがみついた兵士であり、声音や口調から男性だと思い込んでいたが確認したわけではない。
「急いで山に向かう!!リディアはどうする!?」
「わ、私も行くわよ……こんな場所に一人で残されても困るわよ!!」
『シャアッ……』
ガーゴイルを抱き上げてリディアは付いていく事を告げると、ルノは仕方なく二人の身体を掴み、飛翔術を発動させた。
「マッハで行くよ!!しっかり掴まってて!!」
「ちょ、待っ……いやああああっ!?」
『シャアアッ!?』
音速を超えた速度でルノは二人を抱えて山岳地帯に向かう――
――兵士達を降ろした温泉が存在する場所に到着して早々、ルノは異変を感じ取る。理由は温泉に居たはずの兵士達の姿が見えず、代わりに激しい死臭が漂ってきた。
「ちょっ……何よこの臭い!?硫黄!?」
「違う……くそっ!!」
地上に着陸するとルノは温泉の色が最初に訪れた時と変化している事に気付き、若干赤色に染まっている事に気付く。湯気を振り払うとそこには温泉の中に浮かぶ複数の死体が存在し、ルノは拳を地面に叩きつける。
「遅かった」
「これ……さっき言っていた兵士?」
『シャアアッ!!』
既に兵士達は斬殺されており、蟷螂に殺されたのか全身が切り刻まれていた。その光景を確認したルノは自分の迂闊さを呪い、どうしてもっと早く魔王軍の存在に気付かなかったのかと怒りを抱く。
(反省は後だ。敵は何処だ?)
だが、今は後悔する暇も遅く、ルノは例の若い兵士の姿を探す。死体の数を考えても1人分足らない事からやはりルノの予測通りに例の兵士が死霊使いである可能性が高く、まるで彼の予測を肯定するように温泉に浮かんでいた死体が痙攣した。
『ウウッ……アアアッ……!!』
『ガアアッ……!!』
「ひっ!?こ、こいつらまだ動けるの!?」
惨殺された兵士の死体が動き出し、ルノ達の生気を感じ取ったように温泉から這い上がる。その光景にリディアは悲鳴を上げるが、ルノは冷静に掌を構えて彼等の死体を焼却するために火球の魔法を発動させた。
「……すいません」
『ウガアアアアッ……!?』
這い上がってきた死体に対して無数の火球が降り注ぎ、身体を焼き尽くす。死体が灰となるまで焼き尽くされると、ルノは両手を合わせる。
「ね、ねえ……これからどうする気よ?もうここには多分、イレアはいないわよ?とっくに逃げ出してるはずよ」
「探し出す」
「どうやって?こんな場所であんた一人で探し出せるの?もうここにいない可能性の方が高いのよ!!」
リディアの冷静な分析にルノは歯を食いしばり、確かに自分が敵の立場だったらわざわざこんな場所に残る必要はない。探せば手掛かりは見つかるかもしれないが、その間にこの島の住民が狙われる可能性が高い。
「ねえ、一度街に戻りましょうよ。他の奴等に危険を知らせなくてもいいの?」
「分かったよ……急いで戻ろう」
「そうしましょう。早く安全な所へ逃げましょうよ」
ルノの言葉にリディアは安堵するが、自分で言っておきながらこの島に安全な場所があるのか疑問を抱く。
「え、そうよ?それがどうかしたの?」
「……じゃあ、この人も海獄島に送り込まれていたの?」
「まさか!!こいつは確かに処刑されたと聞いてたわよ」
リディアによるとケンゴロウが送り込まれたという話は一切聞いておらず、獣人国で処刑されたと聞いている。それならば死体は獣人国で葬り去れられた可能性が高く、魔王軍か獣人族の領土に送り込んだとしか考えられない。しかも例の蟷螂が運んでいた時点でルノは嫌な予感に襲われる。
「もしかして……今日、この島に飛行船が墜落した。獣人族の……その時に蟷螂の卵も運び込まれていたはず」
「え?じゃあ、こいつもその時にこいつも一緒に運び込まれていたのね」
「だけど、その時にさっき倒した囚人以外に兵士を何人か助けた。他に生き残りは見つからなかったけど……」
「はあっ!?じゃ、じゃあ……その兵士達は何処にいるのよ?」
「温泉が湧いて出てる山に置いてきた。でも、もしかしたら……」
ルノは自分を救い出した兵士を思い出し、一番怪しかった魔物使いの囚人は既に死亡している。仮に飛行船の生き残りの中にリディアが話した死霊使いが含まれていた場合、怪しいのは兵士達である。
(でも、あの人達は全員男だったはず。リディアの話が本当なら相手は女のはずだけど……待てよ、そういえば一人だけ服を脱いでいなかった人がいたような……)
記憶を掘り起こし、ルノは温泉に浸かっていた兵士達の中で一人だけ服を着たまま待機していた人物を思い出す。それは兵士の中で最も若く、蟷螂が最初に現れた時にルノにしがみついた兵士であり、声音や口調から男性だと思い込んでいたが確認したわけではない。
「急いで山に向かう!!リディアはどうする!?」
「わ、私も行くわよ……こんな場所に一人で残されても困るわよ!!」
『シャアッ……』
ガーゴイルを抱き上げてリディアは付いていく事を告げると、ルノは仕方なく二人の身体を掴み、飛翔術を発動させた。
「マッハで行くよ!!しっかり掴まってて!!」
「ちょ、待っ……いやああああっ!?」
『シャアアッ!?』
音速を超えた速度でルノは二人を抱えて山岳地帯に向かう――
――兵士達を降ろした温泉が存在する場所に到着して早々、ルノは異変を感じ取る。理由は温泉に居たはずの兵士達の姿が見えず、代わりに激しい死臭が漂ってきた。
「ちょっ……何よこの臭い!?硫黄!?」
「違う……くそっ!!」
地上に着陸するとルノは温泉の色が最初に訪れた時と変化している事に気付き、若干赤色に染まっている事に気付く。湯気を振り払うとそこには温泉の中に浮かぶ複数の死体が存在し、ルノは拳を地面に叩きつける。
「遅かった」
「これ……さっき言っていた兵士?」
『シャアアッ!!』
既に兵士達は斬殺されており、蟷螂に殺されたのか全身が切り刻まれていた。その光景を確認したルノは自分の迂闊さを呪い、どうしてもっと早く魔王軍の存在に気付かなかったのかと怒りを抱く。
(反省は後だ。敵は何処だ?)
だが、今は後悔する暇も遅く、ルノは例の若い兵士の姿を探す。死体の数を考えても1人分足らない事からやはりルノの予測通りに例の兵士が死霊使いである可能性が高く、まるで彼の予測を肯定するように温泉に浮かんでいた死体が痙攣した。
『ウウッ……アアアッ……!!』
『ガアアッ……!!』
「ひっ!?こ、こいつらまだ動けるの!?」
惨殺された兵士の死体が動き出し、ルノ達の生気を感じ取ったように温泉から這い上がる。その光景にリディアは悲鳴を上げるが、ルノは冷静に掌を構えて彼等の死体を焼却するために火球の魔法を発動させた。
「……すいません」
『ウガアアアアッ……!?』
這い上がってきた死体に対して無数の火球が降り注ぎ、身体を焼き尽くす。死体が灰となるまで焼き尽くされると、ルノは両手を合わせる。
「ね、ねえ……これからどうする気よ?もうここには多分、イレアはいないわよ?とっくに逃げ出してるはずよ」
「探し出す」
「どうやって?こんな場所であんた一人で探し出せるの?もうここにいない可能性の方が高いのよ!!」
リディアの冷静な分析にルノは歯を食いしばり、確かに自分が敵の立場だったらわざわざこんな場所に残る必要はない。探せば手掛かりは見つかるかもしれないが、その間にこの島の住民が狙われる可能性が高い。
「ねえ、一度街に戻りましょうよ。他の奴等に危険を知らせなくてもいいの?」
「分かったよ……急いで戻ろう」
「そうしましょう。早く安全な所へ逃げましょうよ」
ルノの言葉にリディアは安堵するが、自分で言っておきながらこの島に安全な場所があるのか疑問を抱く。
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