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外伝 〈一人旅〉
囚人の正体
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「エルフ王国で何かあったのかな……?」
「そこまでは分からないわよ。だけど、昆虫種の卵は王国が厳重に保管しているはずよ。それが表に出たという事は……」
「……急いで戻ろないと!!」
エルフ王国はバルトロス帝国とは同盟関係にあり、同時に隣国でもある。ルノとしてはエルフ王国の関係者に親しい人間は居ないが、彼の従弟でエルフ王国に召喚されたはずの「霧崎直央」は別であり、王国に何か事件が起きたとしたら直央も巻き込まれている可能性が高い。
「ま、待ってよ!!私も連れて行って!!何でも話すから……」
「しょうがないな……また悪さしようとしたら今度は海竜に食べさせるからね!!」
「わ、分かったわよ……」
ルノの言葉に怯えたようにリディアは頷き、ここに残ったとしてもクズノが仕掛けた昆虫種に襲われる可能性が高く、負傷したガーゴイルでは最早彼女は守り切れない。
「あ、でも島を出たら他の囚人が昆虫種に殺されるかもしれない……どうしよう」
「え、別にいいじゃないの?あいつら死刑囚でしょ?」
「……その理屈だと俺もリディアを見捨てても問題ないよね」
「じょ、冗談よ……」
リディアの言う通り、確かにこの島に送り込まれた人間は全員が死刑囚だが、住んでいる人間全員が死刑囚ではない。中には島に送り込まれた者同士で子供を作り、育てている者も居る。生まれてきた子供に罪はなく、そもそも少しの間とはいえ、住む場所を提供してくれた囚人達に恩がある事は事実であり、ルノは島を立ち去る前に飛行船に連れ込まれた昆虫種を始末する事を決めた。
「リディアが狙いならここに昆虫種が集まったりしないかな?」
「ちょっと!!私を囮に使う気!?」
「嫌なら置いていくけど……」
「分かったわよ!!な、なら絶対に私を守りなさいよ!?」
『シャアッ……』
主人の情けない姿にガーゴイルが呆れてしまうが、ルノは両腕が破損しているガーゴイルを不憫に思い、リディアに尋ねる。
「ねえ、この子を治す方法ないの?魔物に回復魔法とか効くのかな?」
「普通の生物なら回復魔法も効くわよ。でも、ガーゴイルや岩人形の場合は自動で再生するから心配ないわよ。魔石と土砂でも与えれば勝手に再生するわ」
「へえ……」
生身の生物ではないガーゴイルや岩人形は大量の魔力を得る事で肉体を再生可能であり、リディアによると一晩程度放置していれば元に戻るという。
「でも、どうしてリディアの居場所がばれたんだろう?何か心当たりはないの?」
「そうね……多分、こいつらは誰かの命令を受けて動いているのよ。つまり、私と同じ魔物使いに操られていたのね」
冷静になったリディアは倒れている巨大蟷螂の元に近寄り、鎌の部分に刻まれている紋様をルノに見せつける。それを確認したルノは何者かが昆虫種を操作してリディアを襲わせたことに気付き、不意に飛行船から救出した人間達を思い出す。
「そういえば……飛行船に乗っていた人たちの中に一人だけ生き残った囚人が居たけど、まさかあの人が?」
「囚人?どういう意味よ?」
「実は……」
ルノはリディアにこれまでの出来事を説明すると、彼女は途中で姿を消したという囚人が犯人であると確信した。
「きっとその男よ!!そいつが昆虫種を操作して私を殺そうとしているのよ!!」
「でも、その人は山岳地帯に送り込んだんだよ?街に移動してリディアの居場所を他の囚人から聞き出したとしても、街に向かう移動手段がないと……」
「何言ってるの!!昆虫種の中には空を飛べる奴も居るのよ!!きっとそれに乗ってここまで来たのよ!!」
リディアの言葉は一理あり、巨大な昆虫ならば人間一人を乗せて移動する事も可能かもしれず、ルノは自分が救い出した囚人が魔王軍の刺客であった事に動揺を隠せない。しかし、リディアの推測がもしも事実ならば急いで囚人を探し出す必要があり、街の囚人からリディアの情報を聞き出したとすれば既に街中に潜伏している可能性が高い。
「分かった。なら、まずは囚人から見つけよう。その人を捕まえれば昆虫種の暴走は抑えられる?」
「そうね、仮に相手が魔物使いならどうにでも出来るはずよ。でも、この島の住民全員に聞き込みをする時間なんてあるの?」
「そこが問題なんだよな……どうしよう」
『シャアッ!!』
二人の会話に唐突にガーゴイルが割り込み、何事かと視線を向けると、ガーゴイルは自分の顔をルノに突き出す。その行為の意図が分からずにルノはリディアに視線を向けると、彼女はガーゴイルの伝えたいことを代弁する。
「……自分の鼻で探せると言っているわ」
「鼻?臭いで囚人の居場所を探すという事?」
「そういう事ね。その男の臭いが付いていそうな代物はないの?」
「臭いと言われても……あっ」
ルノはガーゴイルの言葉に若い兵士から手渡された水晶玉の事を思い出す。
「そこまでは分からないわよ。だけど、昆虫種の卵は王国が厳重に保管しているはずよ。それが表に出たという事は……」
「……急いで戻ろないと!!」
エルフ王国はバルトロス帝国とは同盟関係にあり、同時に隣国でもある。ルノとしてはエルフ王国の関係者に親しい人間は居ないが、彼の従弟でエルフ王国に召喚されたはずの「霧崎直央」は別であり、王国に何か事件が起きたとしたら直央も巻き込まれている可能性が高い。
「ま、待ってよ!!私も連れて行って!!何でも話すから……」
「しょうがないな……また悪さしようとしたら今度は海竜に食べさせるからね!!」
「わ、分かったわよ……」
ルノの言葉に怯えたようにリディアは頷き、ここに残ったとしてもクズノが仕掛けた昆虫種に襲われる可能性が高く、負傷したガーゴイルでは最早彼女は守り切れない。
「あ、でも島を出たら他の囚人が昆虫種に殺されるかもしれない……どうしよう」
「え、別にいいじゃないの?あいつら死刑囚でしょ?」
「……その理屈だと俺もリディアを見捨てても問題ないよね」
「じょ、冗談よ……」
リディアの言う通り、確かにこの島に送り込まれた人間は全員が死刑囚だが、住んでいる人間全員が死刑囚ではない。中には島に送り込まれた者同士で子供を作り、育てている者も居る。生まれてきた子供に罪はなく、そもそも少しの間とはいえ、住む場所を提供してくれた囚人達に恩がある事は事実であり、ルノは島を立ち去る前に飛行船に連れ込まれた昆虫種を始末する事を決めた。
「リディアが狙いならここに昆虫種が集まったりしないかな?」
「ちょっと!!私を囮に使う気!?」
「嫌なら置いていくけど……」
「分かったわよ!!な、なら絶対に私を守りなさいよ!?」
『シャアッ……』
主人の情けない姿にガーゴイルが呆れてしまうが、ルノは両腕が破損しているガーゴイルを不憫に思い、リディアに尋ねる。
「ねえ、この子を治す方法ないの?魔物に回復魔法とか効くのかな?」
「普通の生物なら回復魔法も効くわよ。でも、ガーゴイルや岩人形の場合は自動で再生するから心配ないわよ。魔石と土砂でも与えれば勝手に再生するわ」
「へえ……」
生身の生物ではないガーゴイルや岩人形は大量の魔力を得る事で肉体を再生可能であり、リディアによると一晩程度放置していれば元に戻るという。
「でも、どうしてリディアの居場所がばれたんだろう?何か心当たりはないの?」
「そうね……多分、こいつらは誰かの命令を受けて動いているのよ。つまり、私と同じ魔物使いに操られていたのね」
冷静になったリディアは倒れている巨大蟷螂の元に近寄り、鎌の部分に刻まれている紋様をルノに見せつける。それを確認したルノは何者かが昆虫種を操作してリディアを襲わせたことに気付き、不意に飛行船から救出した人間達を思い出す。
「そういえば……飛行船に乗っていた人たちの中に一人だけ生き残った囚人が居たけど、まさかあの人が?」
「囚人?どういう意味よ?」
「実は……」
ルノはリディアにこれまでの出来事を説明すると、彼女は途中で姿を消したという囚人が犯人であると確信した。
「きっとその男よ!!そいつが昆虫種を操作して私を殺そうとしているのよ!!」
「でも、その人は山岳地帯に送り込んだんだよ?街に移動してリディアの居場所を他の囚人から聞き出したとしても、街に向かう移動手段がないと……」
「何言ってるの!!昆虫種の中には空を飛べる奴も居るのよ!!きっとそれに乗ってここまで来たのよ!!」
リディアの言葉は一理あり、巨大な昆虫ならば人間一人を乗せて移動する事も可能かもしれず、ルノは自分が救い出した囚人が魔王軍の刺客であった事に動揺を隠せない。しかし、リディアの推測がもしも事実ならば急いで囚人を探し出す必要があり、街の囚人からリディアの情報を聞き出したとすれば既に街中に潜伏している可能性が高い。
「分かった。なら、まずは囚人から見つけよう。その人を捕まえれば昆虫種の暴走は抑えられる?」
「そうね、仮に相手が魔物使いならどうにでも出来るはずよ。でも、この島の住民全員に聞き込みをする時間なんてあるの?」
「そこが問題なんだよな……どうしよう」
『シャアッ!!』
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「……自分の鼻で探せると言っているわ」
「鼻?臭いで囚人の居場所を探すという事?」
「そういう事ね。その男の臭いが付いていそうな代物はないの?」
「臭いと言われても……あっ」
ルノはガーゴイルの言葉に若い兵士から手渡された水晶玉の事を思い出す。
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