224 / 657
外伝 〈一人旅〉
エルフ王国の危機
しおりを挟む
「リディア!!生きてる!?」
「あ、あんた!?は、早く助けて!!」
『ギルルルッ!!』
『シャアアッ……!!』
蟷螂が振り下ろした鎌をガーゴイルが受け止めるが、石像の両腕すらも耐え切れず、掌を貫通する。その様子を確認したルノは掌を構えて魔法を放とうとするが、背後から新たな鳴き声を耳にした。
『ギルゥッ!!』
「うわっ!?」
ルノの背後から新たな巨大蟷螂が出現し、彼に向けて鎌を振り下ろす。咄嗟に回避する事に成功したが、ローブの背中部分に大きな切り傷が生まれてしまい、怒りを抱いたルノは蟷螂を殴りつける。
「よくもやったな!!」
『グギィッ!?』
「ええっ!?」
魔術師にも関わらずに素手で巨大蟷螂を殴り飛ばしたルノにリディアは驚愕するが、殴りつけられた蟷螂は頭部が粉砕し、地面に倒れこむ。それでも怒りが収まらないルノは倒れた蟷螂の両腕の鎌を引き千切り、ガーゴイルを押し倒していた蟷螂に向けて投げつけた。
「このっ!!」
『ギガァッ!?』
「嘘っ!?」
ブーメランの要領で蟷螂の首に鎌が横切り、頭部と胴体が両断された蟷螂は力なく倒れこむ。その光景にリディアは呆然とするが、ルノは彼女の元に訪れて大きなけがはない事を確認する。
「大丈夫?」
「え、ええっ……ありがとう、ございます……」
「なんで敬語?」
助けたにも関わらずに怯えた表情を浮かべるリディアにルノは不思議がりながらも彼女に何が起きたのかを尋ねる。
「こいつらは何?どうして襲われてたの?」
「それは……きゅ、急に襲い掛かってきたのよ。あんたが戻ってくる前に準備しようとしてたら、こいつらがいきなり現れて……」
「準備?」
「……この島を抜け出す準備よ」
リディアの言葉にルノは訝し気な表情を浮かべ、どうしてリディアが島を脱出する準備を行っていたのか疑問を抱く。
「なんでそんな準備なんかしてたの?まさか、俺がリディアを外へ連れて行くと思うの?」
「ええ、そうよ!!でも、ただで連れて行って貰うつもりはないわよ!!こいつらの正体を思い出したのよ!!」
「正体?」
リディアは地面に横たわっている蟷螂を指さし、最初にルノが尋ねた時は彼女は昆虫種の生態しか説明しなかったが、絶滅したはずの昆虫種が現れた原因に気付いたという。
「こいつらはエルフ王国に封印されていた卵よ!!大昔、森人族は昆虫種を操作して新しい軍事力を手に入れようとした事があるのよ!!」
「エルフ王国?」
ここでエルフ王国の名前が出てきたことにルノは驚き、リディアによるとエルフ王国はかつて昆虫種を捕獲し、自分達に従う昆虫の軍隊を作り出そうとしたらしい。
「エルフ王国が生まれたばかりの頃、他国からの侵略に備えて当時の国王は昆虫種を捕獲して飼いならそうとした事があるの!!結局、その企みは失敗に終わったけど捕獲した昆虫の卵は封印を施されて今でも保存されていると聞いた事があるの!!きっとこいつらはエルフ王国から連れ出されたのよ!!」
「何百年も前の卵を保存って……そんな事が出来るの?」
「エルフ王国には「守人家」という過去に召喚された勇者の血筋の森人族が居るのよ!!こいつらは封印魔法という特別な魔法が扱えるの!!だからきっと、この昆虫種達は封印が解かれた魔物よ!!」
「そんな……」
リディアは元々はエルフ王国に所属しており、彼女の言葉は信憑性が高い。しかし、それならばどうして獣人族の移送船にエルフ王国に封印されているはずの卵が運び込まれていたのかが気にかかり、エルフ王国にて何かが起きた可能性がある。
「私も今まで忘れてたけど、この情報を教えてくれたのはクズノよ!!もしかしたらあいつ、エルフ王国から卵を盗み出して何かに利用しているのかも……」
「ちょっと待ってよ。じゃあ、昆虫種がこの島に送り込まれた理由って……」
「きっと、私を始末するつもりね……この島の住民ごと」
「そんなっ!!」
仮にリディアの予測が正しかった場合、クズノという男はリディア一人を殺すために海獄島の住民ごと皆殺しするために危険な生物を送り付けた事になる。しかも島の囚人達だけではなく、飛行船に乗船していた獣人族の兵士達も巻き込んだ事になり、ルノは激しい怒りを抱く。
「どうして無関係の人間まで……!!」
「……分かっているでしょう?そういう理屈は魔王軍には通じない……目的のためなら他人がどうなろうと関係ないのよ」
「くそっ!!」
ルノは怒りを抑えきれずに傍に存在する壁に拳を叩きつけ、煉瓦製の壁を貫通する。その光景にリディアは冷や汗を流しながらも、彼女は必死にルノの身体にしがみついて命乞いを行う。
「お、お願い!!ここに残ったら私は殺されるわ!!もう悪い事はしないから……奴隷になってもいい!!だから、助けて……」
「…………」
惨めにかつては戦った相手に命乞いを行うリディアに対し、ルノは頭を抑えて自分がこれからどのように行動するのかを考える。。
「あ、あんた!?は、早く助けて!!」
『ギルルルッ!!』
『シャアアッ……!!』
蟷螂が振り下ろした鎌をガーゴイルが受け止めるが、石像の両腕すらも耐え切れず、掌を貫通する。その様子を確認したルノは掌を構えて魔法を放とうとするが、背後から新たな鳴き声を耳にした。
『ギルゥッ!!』
「うわっ!?」
ルノの背後から新たな巨大蟷螂が出現し、彼に向けて鎌を振り下ろす。咄嗟に回避する事に成功したが、ローブの背中部分に大きな切り傷が生まれてしまい、怒りを抱いたルノは蟷螂を殴りつける。
「よくもやったな!!」
『グギィッ!?』
「ええっ!?」
魔術師にも関わらずに素手で巨大蟷螂を殴り飛ばしたルノにリディアは驚愕するが、殴りつけられた蟷螂は頭部が粉砕し、地面に倒れこむ。それでも怒りが収まらないルノは倒れた蟷螂の両腕の鎌を引き千切り、ガーゴイルを押し倒していた蟷螂に向けて投げつけた。
「このっ!!」
『ギガァッ!?』
「嘘っ!?」
ブーメランの要領で蟷螂の首に鎌が横切り、頭部と胴体が両断された蟷螂は力なく倒れこむ。その光景にリディアは呆然とするが、ルノは彼女の元に訪れて大きなけがはない事を確認する。
「大丈夫?」
「え、ええっ……ありがとう、ございます……」
「なんで敬語?」
助けたにも関わらずに怯えた表情を浮かべるリディアにルノは不思議がりながらも彼女に何が起きたのかを尋ねる。
「こいつらは何?どうして襲われてたの?」
「それは……きゅ、急に襲い掛かってきたのよ。あんたが戻ってくる前に準備しようとしてたら、こいつらがいきなり現れて……」
「準備?」
「……この島を抜け出す準備よ」
リディアの言葉にルノは訝し気な表情を浮かべ、どうしてリディアが島を脱出する準備を行っていたのか疑問を抱く。
「なんでそんな準備なんかしてたの?まさか、俺がリディアを外へ連れて行くと思うの?」
「ええ、そうよ!!でも、ただで連れて行って貰うつもりはないわよ!!こいつらの正体を思い出したのよ!!」
「正体?」
リディアは地面に横たわっている蟷螂を指さし、最初にルノが尋ねた時は彼女は昆虫種の生態しか説明しなかったが、絶滅したはずの昆虫種が現れた原因に気付いたという。
「こいつらはエルフ王国に封印されていた卵よ!!大昔、森人族は昆虫種を操作して新しい軍事力を手に入れようとした事があるのよ!!」
「エルフ王国?」
ここでエルフ王国の名前が出てきたことにルノは驚き、リディアによるとエルフ王国はかつて昆虫種を捕獲し、自分達に従う昆虫の軍隊を作り出そうとしたらしい。
「エルフ王国が生まれたばかりの頃、他国からの侵略に備えて当時の国王は昆虫種を捕獲して飼いならそうとした事があるの!!結局、その企みは失敗に終わったけど捕獲した昆虫の卵は封印を施されて今でも保存されていると聞いた事があるの!!きっとこいつらはエルフ王国から連れ出されたのよ!!」
「何百年も前の卵を保存って……そんな事が出来るの?」
「エルフ王国には「守人家」という過去に召喚された勇者の血筋の森人族が居るのよ!!こいつらは封印魔法という特別な魔法が扱えるの!!だからきっと、この昆虫種達は封印が解かれた魔物よ!!」
「そんな……」
リディアは元々はエルフ王国に所属しており、彼女の言葉は信憑性が高い。しかし、それならばどうして獣人族の移送船にエルフ王国に封印されているはずの卵が運び込まれていたのかが気にかかり、エルフ王国にて何かが起きた可能性がある。
「私も今まで忘れてたけど、この情報を教えてくれたのはクズノよ!!もしかしたらあいつ、エルフ王国から卵を盗み出して何かに利用しているのかも……」
「ちょっと待ってよ。じゃあ、昆虫種がこの島に送り込まれた理由って……」
「きっと、私を始末するつもりね……この島の住民ごと」
「そんなっ!!」
仮にリディアの予測が正しかった場合、クズノという男はリディア一人を殺すために海獄島の住民ごと皆殺しするために危険な生物を送り付けた事になる。しかも島の囚人達だけではなく、飛行船に乗船していた獣人族の兵士達も巻き込んだ事になり、ルノは激しい怒りを抱く。
「どうして無関係の人間まで……!!」
「……分かっているでしょう?そういう理屈は魔王軍には通じない……目的のためなら他人がどうなろうと関係ないのよ」
「くそっ!!」
ルノは怒りを抑えきれずに傍に存在する壁に拳を叩きつけ、煉瓦製の壁を貫通する。その光景にリディアは冷や汗を流しながらも、彼女は必死にルノの身体にしがみついて命乞いを行う。
「お、お願い!!ここに残ったら私は殺されるわ!!もう悪い事はしないから……奴隷になってもいい!!だから、助けて……」
「…………」
惨めにかつては戦った相手に命乞いを行うリディアに対し、ルノは頭を抑えて自分がこれからどのように行動するのかを考える。。
0
お気に入りに追加
11,323
あなたにおすすめの小説
僕の家族は母様と母様の子供の弟妹達と使い魔達だけだよ?
闇夜の現し人(ヤミヨノウツシビト)
ファンタジー
ー 母さんは、「絶世の美女」と呼ばれるほど美しく、国の中で最も権力の強い貴族と呼ばれる公爵様の寵姫だった。
しかし、それをよく思わない正妻やその親戚たちに毒を盛られてしまった。
幸い発熱だけですんだがお腹に子が出来てしまった以上ここにいては危険だと判断し、仲の良かった侍女数名に「ここを離れる」と言い残し公爵家を後にした。
お母さん大好きっ子な主人公は、毒を盛られるという失態をおかした父親や毒を盛った親戚たちを嫌悪するがお母さんが日々、「家族で暮らしたい」と話していたため、ある出来事をきっかけに一緒に暮らし始めた。
しかし、自分が家族だと認めた者がいれば初めて見た者は跪くと言われる程の華の顔(カンバセ)を綻ばせ笑うが、家族がいなければ心底どうでもいいというような表情をしていて、人形の方がまだ表情があると言われていた。
『無能で無価値の稚拙な愚父共が僕の家族を名乗る資格なんて無いんだよ?』
さぁ、ここに超絶チートを持つ自分が認めた家族以外の生き物全てを嫌う主人公の物語が始まる。
〈念の為〉
稚拙→ちせつ
愚父→ぐふ
⚠︎注意⚠︎
不定期更新です。作者の妄想をつぎ込んだ作品です。
校長室のソファの染みを知っていますか?
フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。
しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。
座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る
無能なので辞めさせていただきます!
サカキ カリイ
ファンタジー
ブラック商業ギルドにて、休みなく働き詰めだった自分。
マウントとる新人が入って来て、馬鹿にされだした。
えっ上司まで新人に同調してこちらに辞めろだって?
残業は無能の証拠、職務に時間が長くかかる分、
無駄に残業代払わせてるからお前を辞めさせたいって?
はいはいわかりました。
辞めますよ。
退職後、困ったんですかね?さあ、知りませんねえ。
自分無能なんで、なんにもわかりませんから。
カクヨム、なろうにも同内容のものを時差投稿しております。
冤罪をかけられ、彼女まで寝取られた俺。潔白が証明され、皆は後悔しても戻れない事を知ったらしい
一本橋
恋愛
痴漢という犯罪者のレッテルを張られた鈴木正俊は、周りの信用を失った。
しかし、その実態は私人逮捕による冤罪だった。
家族をはじめ、友人やクラスメイトまでもが見限り、ひとり孤独へとなってしまう。
そんな正俊を慰めようと現れた彼女だったが、そこへ私人逮捕の首謀者である“山本”の姿が。
そこで、唯一の頼みだった彼女にさえも裏切られていたことを知ることになる。
……絶望し、身を投げようとする正俊だったが、そこに学校一の美少女と呼ばれている幼馴染みが現れて──
【完結】6歳の王子は無自覚に兄を断罪する
土広真丘
ファンタジー
ノーザッツ王国の末の王子アーサーにはある悩みがあった。
異母兄のゴードン王子が婚約者にひどい対応をしているのだ。
その婚約者は、アーサーにも優しいマリーお姉様だった。
心を痛めながら、アーサーは「作文」を書く。
※全2話。R15は念のため。ふんわりした世界観です。
前半はひらがなばかりで、読みにくいかもしれません。
主人公の年齢的に恋愛ではないかなと思ってファンタジーにしました。
小説家になろうに投稿したものを加筆修正しました。
断腸の思いで王家に差し出した孫娘が婚約破棄されて帰ってきた
兎屋亀吉
恋愛
ある日王家主催のパーティに行くといって出かけた孫娘のエリカが泣きながら帰ってきた。買ったばかりのドレスは真っ赤なワインで汚され、左頬は腫れていた。話を聞くと王子に婚約を破棄され、取り巻きたちに酷いことをされたという。許せん。戦じゃ。この命燃え尽きようとも、必ずや王家を滅ぼしてみせようぞ。
「お姉様の赤ちゃん、私にちょうだい?」
サイコちゃん
恋愛
実家に妊娠を知らせた途端、妹からお腹の子をくれと言われた。姉であるイヴェットは自分の持ち物や恋人をいつも妹に奪われてきた。しかし赤ん坊をくれというのはあまりに酷過ぎる。そのことを夫に相談すると、彼は「良かったね! 家族ぐるみで育ててもらえるんだね!」と言い放った。妹と両親が異常であることを伝えても、夫は理解を示してくれない。やがて夫婦は離婚してイヴェットはひとり苦境へ立ち向かうことになったが、“医術と魔術の天才”である治療人アランが彼女に味方して――
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。
このユーザをミュートしますか?
※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。