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外伝 〈一人旅〉
帰還方法
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――ルノは食料を詰めた袋を掲げて飛翔術を利用し、兵士達を降ろした山岳地帯に戻る。兵士の多くは疲れ果てているのか山岳地帯に存在する温泉に浸かり、ルノが現れると慌てて湯船から姿を現す。
「お、おい!!戻ってきたぞ!!早く服を着ろっ!!」
「あ、いいですよ。食料を持って来たんで食べて下さい」
「すまない……」
兵士達にルノは果物が入った袋を差し出し、彼等は無我夢中に貪り喰らう。その様子を確認しながらルノは兵士達の姿を確認し、一人だけ存在した囚人が居ない事に気付く。
「あれ?あの男の人は?」
「ああ、奴か?ここに訪れてから実は誰も姿を見ていないんだ。逃げ出したのかもしれない」
「逃げ出したって……探さなくていいんですか?」
「元々奴は囚人だ。だからこの島に送り込んだ時点で解放するつもりだった。まあ、馬鹿な奴だとは思うがな……こんな山奥で一人で逃げ出して助かると思っているのかどうか……」
囚人が逃げ出しても誰一人として捜索する気力もなく、全員が疲れ切っていた。飛行船で移送するだけの任務だったにも関わらず、兵士である自分達が囚人が管理する島に降り立つ事など予想していなかったのだろう。
「あ、そういえばこんなのが落ちてましたよ」
「これは?」
「分かりません。多分、あいつが持っていた物だと思うんですけど……」
若い兵士が逃げ出した囚人が所持していたと思われる水晶玉を差し出す。ルノは水晶玉を見て最近何処かで見た事があるような気がして一応は受け取り、兵士達が今後どのように行動するのかを尋ねる。
「これからどうするんですか?」
「どうもこうもない……飛行船を失った我等に国へ戻る手段はない。このまま囚人達に見つからないように暮らすか、あるいは奴等に嬲り殺しされるかだろう」
「そんな!!」
「どうしようもないのだ!!迎えに来てもらうにも飛行船がこの島に近づく事はない!!船を造ったとしても海竜の餌として飲み込まれる!!この島から抜け出す方法はない!!」
隊長の言葉に他の兵士達は絶望の表情を浮かべるが、そんな彼等にルノはある提案を行う。
「それなら俺が貴方達の国へ送り返しましょうか?さっきのように魔法で送り返す事が出来ると思いますけど」
「ほ、本当か!?そんな事が出来るのか!?」
「ええ、まあ……大陸の位置と方向さえ分かればどうにか出来ると思います」
大人数を運び出す場合は飛翔術を利用できないが、それでも氷塊の魔法で乗物を作り出せば他の人間も載せて移動する事は可能であり、後は大陸の正確な位置と方向さえ分かれば帰還も不可能ではない。
「地図と方位磁石はありますか?」
「それなら飛行船の中にあると思うが……」
「あ、それなら俺が持ってます!!脱出するとき、偶然見つけましたから!!」
若い兵士が自分の着替えの中から地図と方位磁石を取り出し、ルノに手渡す。それを確認したルノは地図の位置を確認し、海獄島の大陸の位置を把握する。
「……うん、これがあればどうにか戻れると思います。それなら今夜出発しましょうか」
「今夜!?そんなに早く移動できるのか?」
「戻るだけなら今すぐ戻れますけど、どれくらい掛かるか分からないので食料や水も用意しないといけないので……じゃあ、準備してきますから皆さんはここで待っていてください」
「あ、ああっ……何か何まですまない」
「ありがとうございます!!」
ルノの言葉に全員が戸惑う中、船で命を救われた兵士だけは心底感激したように涙を流しながら頭を下げる。照れ臭そうにルノは笑顔を浮かべ、まずは全員分の食糧を確保するために街に戻ることにした。
「じゃあ、夜までに戻ってくるので用意しておいてください」
「分かった……すまない」
兵士達が全員頭を下げると、ルノは飛翔術を利用して街へ向かう――
――出発前の準備を整えると、ルノは囚人達に別れの挨拶を告げるために全員を呼び寄せて今夜島を発つ事を話す。当然だが彼が居なくなれば今後は満足な食料は確保できないと知った囚人達は反発する。
「……という訳で、俺はもう戻らないといけない」
「ちょっと待ってくれよ!!あんたがいなくなったら俺達はどうなるんだ!!」
「そうよ!!やっと人並みの生活が戻ってきたのに!!」
「無責任すぎるぞ!!」
「うるせえ!!ごちゃごちゃ騒ぐな!!兄貴のお陰で今年の冬は無事に乗り越えるんだろうが!!」
「そうだぞ!!前の生活に戻るだけだ!!がたがた騒ぐなっ!!」
騒ぎ出しだ囚人達をニオとロナクが怒鳴りつけ、少数ではあるがルノの行動を庇う囚人も存在した。しかし、それでも不満を抱く者は多く、ルノに向けて石を投げつけようとする人間も居た。
「ふんっ!!この偽善者が……ぎゃあっ!?」
「止めろ馬鹿共が!!」
「き、キジンの親分!?」
囚人達を掻き分けて姿を現したのは巨人族のキジンであり、彼が登場した瞬間に騒いでいた囚人達も黙り込み、恐怖の表情を浮かべる。そんな彼等に対してキジンは溜息を吐き出し、ルノを指さす。
「言っておくがこんな奴が居なくても俺達は今まで生き延びてきたんだろうが!!てめえら、贅沢な生活に慣れすぎて甘えた事を抜かすな!!」
「で、ですが親分……」
「ああっ!?俺に文句でもあるのか?」
「ひいっ!?」
口を挟もうとした囚人にキジンが睨みつけると、相手は怯えた表情を浮かべて後退り、その情けない態度にキジンは鼻で笑う。
「お、おい!!戻ってきたぞ!!早く服を着ろっ!!」
「あ、いいですよ。食料を持って来たんで食べて下さい」
「すまない……」
兵士達にルノは果物が入った袋を差し出し、彼等は無我夢中に貪り喰らう。その様子を確認しながらルノは兵士達の姿を確認し、一人だけ存在した囚人が居ない事に気付く。
「あれ?あの男の人は?」
「ああ、奴か?ここに訪れてから実は誰も姿を見ていないんだ。逃げ出したのかもしれない」
「逃げ出したって……探さなくていいんですか?」
「元々奴は囚人だ。だからこの島に送り込んだ時点で解放するつもりだった。まあ、馬鹿な奴だとは思うがな……こんな山奥で一人で逃げ出して助かると思っているのかどうか……」
囚人が逃げ出しても誰一人として捜索する気力もなく、全員が疲れ切っていた。飛行船で移送するだけの任務だったにも関わらず、兵士である自分達が囚人が管理する島に降り立つ事など予想していなかったのだろう。
「あ、そういえばこんなのが落ちてましたよ」
「これは?」
「分かりません。多分、あいつが持っていた物だと思うんですけど……」
若い兵士が逃げ出した囚人が所持していたと思われる水晶玉を差し出す。ルノは水晶玉を見て最近何処かで見た事があるような気がして一応は受け取り、兵士達が今後どのように行動するのかを尋ねる。
「これからどうするんですか?」
「どうもこうもない……飛行船を失った我等に国へ戻る手段はない。このまま囚人達に見つからないように暮らすか、あるいは奴等に嬲り殺しされるかだろう」
「そんな!!」
「どうしようもないのだ!!迎えに来てもらうにも飛行船がこの島に近づく事はない!!船を造ったとしても海竜の餌として飲み込まれる!!この島から抜け出す方法はない!!」
隊長の言葉に他の兵士達は絶望の表情を浮かべるが、そんな彼等にルノはある提案を行う。
「それなら俺が貴方達の国へ送り返しましょうか?さっきのように魔法で送り返す事が出来ると思いますけど」
「ほ、本当か!?そんな事が出来るのか!?」
「ええ、まあ……大陸の位置と方向さえ分かればどうにか出来ると思います」
大人数を運び出す場合は飛翔術を利用できないが、それでも氷塊の魔法で乗物を作り出せば他の人間も載せて移動する事は可能であり、後は大陸の正確な位置と方向さえ分かれば帰還も不可能ではない。
「地図と方位磁石はありますか?」
「それなら飛行船の中にあると思うが……」
「あ、それなら俺が持ってます!!脱出するとき、偶然見つけましたから!!」
若い兵士が自分の着替えの中から地図と方位磁石を取り出し、ルノに手渡す。それを確認したルノは地図の位置を確認し、海獄島の大陸の位置を把握する。
「……うん、これがあればどうにか戻れると思います。それなら今夜出発しましょうか」
「今夜!?そんなに早く移動できるのか?」
「戻るだけなら今すぐ戻れますけど、どれくらい掛かるか分からないので食料や水も用意しないといけないので……じゃあ、準備してきますから皆さんはここで待っていてください」
「あ、ああっ……何か何まですまない」
「ありがとうございます!!」
ルノの言葉に全員が戸惑う中、船で命を救われた兵士だけは心底感激したように涙を流しながら頭を下げる。照れ臭そうにルノは笑顔を浮かべ、まずは全員分の食糧を確保するために街に戻ることにした。
「じゃあ、夜までに戻ってくるので用意しておいてください」
「分かった……すまない」
兵士達が全員頭を下げると、ルノは飛翔術を利用して街へ向かう――
――出発前の準備を整えると、ルノは囚人達に別れの挨拶を告げるために全員を呼び寄せて今夜島を発つ事を話す。当然だが彼が居なくなれば今後は満足な食料は確保できないと知った囚人達は反発する。
「……という訳で、俺はもう戻らないといけない」
「ちょっと待ってくれよ!!あんたがいなくなったら俺達はどうなるんだ!!」
「そうよ!!やっと人並みの生活が戻ってきたのに!!」
「無責任すぎるぞ!!」
「うるせえ!!ごちゃごちゃ騒ぐな!!兄貴のお陰で今年の冬は無事に乗り越えるんだろうが!!」
「そうだぞ!!前の生活に戻るだけだ!!がたがた騒ぐなっ!!」
騒ぎ出しだ囚人達をニオとロナクが怒鳴りつけ、少数ではあるがルノの行動を庇う囚人も存在した。しかし、それでも不満を抱く者は多く、ルノに向けて石を投げつけようとする人間も居た。
「ふんっ!!この偽善者が……ぎゃあっ!?」
「止めろ馬鹿共が!!」
「き、キジンの親分!?」
囚人達を掻き分けて姿を現したのは巨人族のキジンであり、彼が登場した瞬間に騒いでいた囚人達も黙り込み、恐怖の表情を浮かべる。そんな彼等に対してキジンは溜息を吐き出し、ルノを指さす。
「言っておくがこんな奴が居なくても俺達は今まで生き延びてきたんだろうが!!てめえら、贅沢な生活に慣れすぎて甘えた事を抜かすな!!」
「で、ですが親分……」
「ああっ!?俺に文句でもあるのか?」
「ひいっ!?」
口を挟もうとした囚人にキジンが睨みつけると、相手は怯えた表情を浮かべて後退り、その情けない態度にキジンは鼻で笑う。
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