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外伝 〈一人旅〉
絶滅種
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「それにしてもこんなに大きい昆虫がいるなんて……これも魔物なのかな?」
「分からない……こんな魔物を見たのは初めてだ」
「昆虫型の魔物など見た事も聞いた事もない」
全員が海に浮かんだ巨大蟷螂に視線を向け、外見は完全に蟷螂であり、魔物だとは思われるが正体が掴めない。だが、ここで調べる暇はなく、ルノは兵士達を安全な場所へ移動させるために氷船を操作する。
「とりあえず、島に上陸しますよ」
「ま、待ってくれ!!あの島は囚人が支配しているんだろう!?兵士の俺達が向かえばとんでもない事に……!!」
「だからといってここに残ってもしょうがないでしょ」
「……分かった。だが、その前にあんたの正体を教えてくれ。一体何者なのだ?こんな魔法、見た事も聞いた事もないぞ」
隊長の言葉に他の人間も頷き、彼等はルノの正体を尋ねる。仕方なく、ルノは彼等に改めて自己紹介を行う。
「俺の名前はルノ、帝国に召喚された異世界人です」
「ルノ?それってもしかして……」
「あの帝国の英雄か!?幾度も竜種を単独で討伐を果たしたという……!!」
「驚いたな……しかし、噂通りに奇怪な魔法を使う」
ルノの言葉に全員が納得したように自分達が乗り込んでいる氷の船に視線を向け、外国でもルノの武勇伝が伝わっているらしく、誰も見た事がない魔法を扱うという噂が広がっていた。
「じゃあ、島に移動するけど俺から離れないで下さい。囚人の人達に見つからない場所まで移動しますから」
「移動?どうやって……うおおっ!?」
「こうやって」
兵士達が乗り込んでいた氷船が変形し、船から飛行機へと変形させる。ルノは飛翔術を利用して先導し、複数の氷飛行機を引き連れて彼は囚人も滅多に訪れない島の山岳地帯へ向けて移動を開始した――
――数分後、ルノは兵士達を安全ァ場所へ降ろすと今度は彼等の食料を確保するために街へ引き返し、ついでにリディアの元へ訪れて彼女に飛行船から現れた魔物の正体を問う。魔物使いの彼女ならば魔物に関する知識が豊富であると判断し、食料と引き換えに情報を聞き出す。
「巨大な蟷螂みたいな魔物……?変な事を聞くのね」
「何か知らない?」
「知ってるわよ。多分、そいつは昆虫種ね」
『シャアッ?』
ルノから受け取った果物を齧りながらリディアは説明を行う。彼女によると昆虫種とは既に何百年も前に絶滅した魔物らしく、その強さは並の魔物の比ではなく、一時期は竜種に迫るほどの危険種として恐れられていたらしい。
「昆虫種の起源は色々な説があるけど、一番有力だと信じられてるのは過去に召喚された異世界人が人工的に生み出したと言われているわ。理由は聞かないでよ、私も知らないんだから」
「え?じゃあ、あんな化物を異世界人が作り出したの!?」
「まあ、あくまでも一説に過ぎないけどね。もしかしたら突然変異で生まれたかもしれないし、あるいは歴代の魔王軍が作り出した種かもしれない。でも、昆虫種は生態系を狂わせる程に危険な魔物だと言われているわ。実際に幾つかの国が昆虫種に滅ぼされる寸前だったらしいわ」
リディアによると昆虫種は非常に危険で厄介な魔物らしく、過去に幾つかの国家が昆虫種によって甚大な被害を受けたという。しかし、それほど強大な力を持つ昆虫種が絶滅した理由は未だに解明されていないという。
「でも、それほど脅威的な力を持っていた昆虫種が絶滅した理由も誰も分からないのが一番の謎ね。ある時期を境に昆虫種が活発的に動かなくなり、大量の死骸が発見されたみたいだけど、どうして急に昆虫種が絶滅したのか誰も理由が分からないのよ。だけど、一番信憑性が高い説として冬を迎えた事で昆虫種が生きにくい環境に変化したからと言われているわ」
「え?それだけで絶滅したの?」
「他に理由が考えられないのよ。昆虫種が活発的に行動していた時期は短いし、基幹的には半年程度しか存在しなかったらしいわ」
リディアの説明にルノは考え込み、彼女の話が事実ならば数百年前に既に絶滅していた魔物がルノ達を襲い掛かった事になる。しかも移送船に運ばれていた荷物のなかに昆虫種が入っていたと思われる卵が入っていた事も気にかかり、何者かが作為的に飛行船を襲撃させたとしか考えられない。
「それでなんで急に昆虫種の事なんて聞いてきたのよ?何か問題でも起きたの?」
「えっと……実は――」
ルノは隠さずに飛行船が墜落した事、巨大蟷螂が現れた事をリディアに話す。他の囚人に兵士達の存在が知られると不味いので彼等を匿った事は話さなかったが、全てを聞き出したリディアは表情を暗くさせる。
「まさか……!?」
「リディア?」
「な、何でもないわ……でも、後でまたうちに寄ってくれる?頼みたいことがあるから……」
「頼みたい事って……あ、ちょっと!?」
『シャアッ?』
返事も聞かずにリディアは家の中に入り込み、扉を閉める。そんな彼女の態度に疑問を抱きながらもルノは兵士達に食料を渡すため、山岳地帯へと引き返した――
「分からない……こんな魔物を見たのは初めてだ」
「昆虫型の魔物など見た事も聞いた事もない」
全員が海に浮かんだ巨大蟷螂に視線を向け、外見は完全に蟷螂であり、魔物だとは思われるが正体が掴めない。だが、ここで調べる暇はなく、ルノは兵士達を安全な場所へ移動させるために氷船を操作する。
「とりあえず、島に上陸しますよ」
「ま、待ってくれ!!あの島は囚人が支配しているんだろう!?兵士の俺達が向かえばとんでもない事に……!!」
「だからといってここに残ってもしょうがないでしょ」
「……分かった。だが、その前にあんたの正体を教えてくれ。一体何者なのだ?こんな魔法、見た事も聞いた事もないぞ」
隊長の言葉に他の人間も頷き、彼等はルノの正体を尋ねる。仕方なく、ルノは彼等に改めて自己紹介を行う。
「俺の名前はルノ、帝国に召喚された異世界人です」
「ルノ?それってもしかして……」
「あの帝国の英雄か!?幾度も竜種を単独で討伐を果たしたという……!!」
「驚いたな……しかし、噂通りに奇怪な魔法を使う」
ルノの言葉に全員が納得したように自分達が乗り込んでいる氷の船に視線を向け、外国でもルノの武勇伝が伝わっているらしく、誰も見た事がない魔法を扱うという噂が広がっていた。
「じゃあ、島に移動するけど俺から離れないで下さい。囚人の人達に見つからない場所まで移動しますから」
「移動?どうやって……うおおっ!?」
「こうやって」
兵士達が乗り込んでいた氷船が変形し、船から飛行機へと変形させる。ルノは飛翔術を利用して先導し、複数の氷飛行機を引き連れて彼は囚人も滅多に訪れない島の山岳地帯へ向けて移動を開始した――
――数分後、ルノは兵士達を安全ァ場所へ降ろすと今度は彼等の食料を確保するために街へ引き返し、ついでにリディアの元へ訪れて彼女に飛行船から現れた魔物の正体を問う。魔物使いの彼女ならば魔物に関する知識が豊富であると判断し、食料と引き換えに情報を聞き出す。
「巨大な蟷螂みたいな魔物……?変な事を聞くのね」
「何か知らない?」
「知ってるわよ。多分、そいつは昆虫種ね」
『シャアッ?』
ルノから受け取った果物を齧りながらリディアは説明を行う。彼女によると昆虫種とは既に何百年も前に絶滅した魔物らしく、その強さは並の魔物の比ではなく、一時期は竜種に迫るほどの危険種として恐れられていたらしい。
「昆虫種の起源は色々な説があるけど、一番有力だと信じられてるのは過去に召喚された異世界人が人工的に生み出したと言われているわ。理由は聞かないでよ、私も知らないんだから」
「え?じゃあ、あんな化物を異世界人が作り出したの!?」
「まあ、あくまでも一説に過ぎないけどね。もしかしたら突然変異で生まれたかもしれないし、あるいは歴代の魔王軍が作り出した種かもしれない。でも、昆虫種は生態系を狂わせる程に危険な魔物だと言われているわ。実際に幾つかの国が昆虫種に滅ぼされる寸前だったらしいわ」
リディアによると昆虫種は非常に危険で厄介な魔物らしく、過去に幾つかの国家が昆虫種によって甚大な被害を受けたという。しかし、それほど強大な力を持つ昆虫種が絶滅した理由は未だに解明されていないという。
「でも、それほど脅威的な力を持っていた昆虫種が絶滅した理由も誰も分からないのが一番の謎ね。ある時期を境に昆虫種が活発的に動かなくなり、大量の死骸が発見されたみたいだけど、どうして急に昆虫種が絶滅したのか誰も理由が分からないのよ。だけど、一番信憑性が高い説として冬を迎えた事で昆虫種が生きにくい環境に変化したからと言われているわ」
「え?それだけで絶滅したの?」
「他に理由が考えられないのよ。昆虫種が活発的に行動していた時期は短いし、基幹的には半年程度しか存在しなかったらしいわ」
リディアの説明にルノは考え込み、彼女の話が事実ならば数百年前に既に絶滅していた魔物がルノ達を襲い掛かった事になる。しかも移送船に運ばれていた荷物のなかに昆虫種が入っていたと思われる卵が入っていた事も気にかかり、何者かが作為的に飛行船を襲撃させたとしか考えられない。
「それでなんで急に昆虫種の事なんて聞いてきたのよ?何か問題でも起きたの?」
「えっと……実は――」
ルノは隠さずに飛行船が墜落した事、巨大蟷螂が現れた事をリディアに話す。他の囚人に兵士達の存在が知られると不味いので彼等を匿った事は話さなかったが、全てを聞き出したリディアは表情を暗くさせる。
「まさか……!?」
「リディア?」
「な、何でもないわ……でも、後でまたうちに寄ってくれる?頼みたいことがあるから……」
「頼みたい事って……あ、ちょっと!?」
『シャアッ?』
返事も聞かずにリディアは家の中に入り込み、扉を閉める。そんな彼女の態度に疑問を抱きながらもルノは兵士達に食料を渡すため、山岳地帯へと引き返した――
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