217 / 657
外伝 〈一人旅〉
海竜VS氷蛇
しおりを挟む
「結局こうなるのか……しょうがないな!!」
『オアアアアッ!!』
飛翔術を利用して海面から抜け出したルノは上空へ移動し、海竜の頭部へと移動する。海中では厄介な敵だが、海上では逃走範囲も広く、海竜の攻撃手段も限られているので冷静にルノは海竜の動作を確認しながら魔法を放つ。
「白雷!!」
『オアアッ!?』
ルノの掌から白色の電撃が放たれ、一瞬だけだが海竜は怯む。しかし、巨体である事と海である事が災いし、送り込んだ電撃は拡散してしまう。効果はあるが倒しきる事は出来ず、ルノは別の方法を試す事にした。
「光球!!」
『オオオオオッ!?』
通常以上に魔力を注ぎ込んだ光球を生み出し、閃光のように弾けさせる。その結果、海竜の視界は光に飲み込まれ、海中に肉体が沈む。目眩しには成功したが、海中に逃げられてはルノとしても攻撃手段が限られ、海底に逃げられたら海上から攻撃する事は出来ない。
「潜水艦でも作って後を追うか?いや、ここはあの魔法を試すか」
氷塊の魔法で何らかの乗物を作り出して追跡する必要があり、ルノは両手を重ね合わせて意識を集中させる。海竜の巨体に匹敵する巨大な氷塊を上空に生み出し、更に氷の塊を別の生物の形状へと変化させた。
「これでいいかな……名付けて〈氷蛇〉だ!!」
――十数秒後、空の上に全長が300メートルを超える巨大な「蛇竜」が姿を現し、ルノは氷鎧を纏った状態で頭部にしがみつく。ちょうど鱗の部分を改造して足を固定させ、蛇竜の氷像を海面に向けて移動させる。
『着水!!』
氷蛇に乗り込んだルノは海中に潜り込み、海竜の姿を探す。未だに完全に視界が戻っていないのか、瞼を閉じた状態で海底に向けて移動する海竜を発見し、ルノは氷蛇の口を開かせて蛇竜の首に噛みつかせた。
『喰らえっ!!』
『ッ――!?』
声にならない悲鳴が海中に浸透し、蛇竜の氷像に噛みつかれた海竜は苦悶の表情を浮かべて暴れまわる。しかし、ルノは氷蛇を蛇竜の肉体に絡みつかせ、動けないように固定させる。質量に関してはどちらも同等かあるいは氷蛇を上回り、海竜が逃げられないように固定しながらルノは氷蛇を浮上させた。
『オオオオッ……!?』
海上に出現した瞬間、海竜の悲鳴が海獄島に響き渡り、必死に氷蛇の拘束から逃れようとする。だが、氷像はいくら力を込めようと振り払う事は出来ず、それどころか首筋に噛みつく力が増し、海竜は「海水の吐息」も吐き出せない。
『おい、暴れるな。本当に死んじゃうぞ?』
『アガァッ……!?』
氷蛇から離れたルノは氷鎧を解除して海竜の瞳に近づき、瞼の部分にしがみついて大きな瞳を覗き込む。言葉が通じるとは思えないが、それでもルノは海竜に語り掛ける。
「お前が餌だと思っている人間の中にはお前よりも強い奴が居るんだ。もしもまた別の人間を食べようとしたら……今度は殺すぞ」
『ッ……!!』
「睨んだ所で怖くなんかない。お前は海から離れると何も出来ない生物だ」
これまでの戦闘でルノは海竜の戦闘能力を冷静に分析し、本当に伝説に語り継がれる程の存在なのか疑問を抱く。確かに海竜の力は脅威的ではあるが、それでも他の竜種を圧倒的に上回る存在なのか疑問を抱き、今回の戦闘で遂にルノは海竜の正体を見抜く。
「お前は海から出ると何もできないんだろ?水がないと吐息も出せないし、今だって碌に抵抗もできない」
海竜が無敵を誇れるのは海中に生息する生物という点が大きく、海中ならば陸上生物は海竜には敵わないだろう。しかし、逆に言えば海竜がその力を発揮できるのは海中だけであり、陸上に移動すれば蛇竜どころか他の竜種にも劣ってしまう。
普段から水中の生活に慣れ過ぎているからこそ海竜は陸上に上がる事はなく、そもそも陸に移動する必要もない。しかし、水中で暮らしていた影響なのか海竜は体内に大量の水分を補給した状態でなければ他の竜種のように「吐息」は放つ事は出来ない。竜種の中で最も厄介なのは「吐息」であり、火竜と蛇竜の場合は炎、牙竜と土竜の場合は音(咆哮)の吐息を自力で吐き出す事が出来る。
しかし、海竜の場合は事前に体内に必要分の水分を補給しておかなければ吐息は吐き出せない。この点に関しては他の竜種の方が優れており、だからこそルノは海竜を海上へと移動させて拘束した。
「いいか、もう二度と人間を狙うな……もしもまた襲おうとしたら、今度は本気で噛み潰すぞ!!」
『オァッ……!?』
尋常ではない威圧感を放ちながらルノは海竜に言い聞かせると、意思は伝わったのか海竜は怯えたように目元を震わせ、やがて抵抗するように震わせていた肉体から力が抜ける。それを確認したルノは氷蛇を海面に向けて接近させ、海竜の肉体を海の中へ移動させる。
「もう人前に現れるなよ」
『オォオオオオオッ……!!』
一目散に海中に逃げ込もうとする海竜にルノは一言だけ告げると、海獄島に向けて帰還した――
『オアアアアッ!!』
飛翔術を利用して海面から抜け出したルノは上空へ移動し、海竜の頭部へと移動する。海中では厄介な敵だが、海上では逃走範囲も広く、海竜の攻撃手段も限られているので冷静にルノは海竜の動作を確認しながら魔法を放つ。
「白雷!!」
『オアアッ!?』
ルノの掌から白色の電撃が放たれ、一瞬だけだが海竜は怯む。しかし、巨体である事と海である事が災いし、送り込んだ電撃は拡散してしまう。効果はあるが倒しきる事は出来ず、ルノは別の方法を試す事にした。
「光球!!」
『オオオオオッ!?』
通常以上に魔力を注ぎ込んだ光球を生み出し、閃光のように弾けさせる。その結果、海竜の視界は光に飲み込まれ、海中に肉体が沈む。目眩しには成功したが、海中に逃げられてはルノとしても攻撃手段が限られ、海底に逃げられたら海上から攻撃する事は出来ない。
「潜水艦でも作って後を追うか?いや、ここはあの魔法を試すか」
氷塊の魔法で何らかの乗物を作り出して追跡する必要があり、ルノは両手を重ね合わせて意識を集中させる。海竜の巨体に匹敵する巨大な氷塊を上空に生み出し、更に氷の塊を別の生物の形状へと変化させた。
「これでいいかな……名付けて〈氷蛇〉だ!!」
――十数秒後、空の上に全長が300メートルを超える巨大な「蛇竜」が姿を現し、ルノは氷鎧を纏った状態で頭部にしがみつく。ちょうど鱗の部分を改造して足を固定させ、蛇竜の氷像を海面に向けて移動させる。
『着水!!』
氷蛇に乗り込んだルノは海中に潜り込み、海竜の姿を探す。未だに完全に視界が戻っていないのか、瞼を閉じた状態で海底に向けて移動する海竜を発見し、ルノは氷蛇の口を開かせて蛇竜の首に噛みつかせた。
『喰らえっ!!』
『ッ――!?』
声にならない悲鳴が海中に浸透し、蛇竜の氷像に噛みつかれた海竜は苦悶の表情を浮かべて暴れまわる。しかし、ルノは氷蛇を蛇竜の肉体に絡みつかせ、動けないように固定させる。質量に関してはどちらも同等かあるいは氷蛇を上回り、海竜が逃げられないように固定しながらルノは氷蛇を浮上させた。
『オオオオッ……!?』
海上に出現した瞬間、海竜の悲鳴が海獄島に響き渡り、必死に氷蛇の拘束から逃れようとする。だが、氷像はいくら力を込めようと振り払う事は出来ず、それどころか首筋に噛みつく力が増し、海竜は「海水の吐息」も吐き出せない。
『おい、暴れるな。本当に死んじゃうぞ?』
『アガァッ……!?』
氷蛇から離れたルノは氷鎧を解除して海竜の瞳に近づき、瞼の部分にしがみついて大きな瞳を覗き込む。言葉が通じるとは思えないが、それでもルノは海竜に語り掛ける。
「お前が餌だと思っている人間の中にはお前よりも強い奴が居るんだ。もしもまた別の人間を食べようとしたら……今度は殺すぞ」
『ッ……!!』
「睨んだ所で怖くなんかない。お前は海から離れると何も出来ない生物だ」
これまでの戦闘でルノは海竜の戦闘能力を冷静に分析し、本当に伝説に語り継がれる程の存在なのか疑問を抱く。確かに海竜の力は脅威的ではあるが、それでも他の竜種を圧倒的に上回る存在なのか疑問を抱き、今回の戦闘で遂にルノは海竜の正体を見抜く。
「お前は海から出ると何もできないんだろ?水がないと吐息も出せないし、今だって碌に抵抗もできない」
海竜が無敵を誇れるのは海中に生息する生物という点が大きく、海中ならば陸上生物は海竜には敵わないだろう。しかし、逆に言えば海竜がその力を発揮できるのは海中だけであり、陸上に移動すれば蛇竜どころか他の竜種にも劣ってしまう。
普段から水中の生活に慣れ過ぎているからこそ海竜は陸上に上がる事はなく、そもそも陸に移動する必要もない。しかし、水中で暮らしていた影響なのか海竜は体内に大量の水分を補給した状態でなければ他の竜種のように「吐息」は放つ事は出来ない。竜種の中で最も厄介なのは「吐息」であり、火竜と蛇竜の場合は炎、牙竜と土竜の場合は音(咆哮)の吐息を自力で吐き出す事が出来る。
しかし、海竜の場合は事前に体内に必要分の水分を補給しておかなければ吐息は吐き出せない。この点に関しては他の竜種の方が優れており、だからこそルノは海竜を海上へと移動させて拘束した。
「いいか、もう二度と人間を狙うな……もしもまた襲おうとしたら、今度は本気で噛み潰すぞ!!」
『オァッ……!?』
尋常ではない威圧感を放ちながらルノは海竜に言い聞かせると、意思は伝わったのか海竜は怯えたように目元を震わせ、やがて抵抗するように震わせていた肉体から力が抜ける。それを確認したルノは氷蛇を海面に向けて接近させ、海竜の肉体を海の中へ移動させる。
「もう人前に現れるなよ」
『オォオオオオオッ……!!』
一目散に海中に逃げ込もうとする海竜にルノは一言だけ告げると、海獄島に向けて帰還した――
0
お気に入りに追加
11,307
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。


【完結】『飯炊き女』と呼ばれている騎士団の寮母ですが、実は最高位の聖女です
葉桜鹿乃
恋愛
ルーシーが『飯炊き女』と、呼ばれてそろそろ3年が経とうとしている。
王宮内に兵舎がある王立騎士団【鷹の爪】の寮母を担っているルーシー。
孤児院の出で、働き口を探してここに配置された事になっているが、実はこの国の最も高貴な存在とされる『金剛の聖女』である。
王宮という国で一番安全な場所で、更には周囲に常に複数人の騎士が控えている場所に、本人と王族、宰相が話し合って所属することになったものの、存在を秘する為に扱いは『飯炊き女』である。
働くのは苦では無いし、顔を隠すための不細工な丸眼鏡にソバカスと眉を太くする化粧、粗末な服。これを襲いに来るような輩は男所帯の騎士団にも居ないし、聖女の力で存在感を常に薄めるようにしている。
何故このような擬態をしているかというと、隣国から聖女を狙って何者かが間者として侵入していると言われているためだ。
隣国は既に瘴気で汚れた土地が多くなり、作物もまともに育たないと聞いて、ルーシーはしばらく隣国に行ってもいいと思っているのだが、長く冷戦状態にある隣国に行かせるのは命が危ないのでは、と躊躇いを見せる国王たちをルーシーは説得する教養もなく……。
そんな折、ある日の月夜に、明日の雨を予見して変装をせずに水汲みをしている時に「見つけた」と言われて振り向いたそこにいたのは、騎士団の中でもルーシーに優しい一人の騎士だった。
※感想の取り扱いは近況ボードを参照してください。
※小説家になろう様でも掲載予定です。

【完結】兄の事を皆が期待していたので僕は離れます
まりぃべる
ファンタジー
一つ年上の兄は、国の為にと言われて意気揚々と村を離れた。お伽話にある、奇跡の聖人だと幼き頃より誰からも言われていた為、それは必然だと。
貧しい村で育った弟は、小さな頃より家の事を兄の分までせねばならず、兄は素晴らしい人物で対して自分は凡人であると思い込まされ、自分は必要ないのだからと弟は村を離れる事にした。
そんな弟が、自分を必要としてくれる人に会い、幸せを掴むお話。
☆まりぃべるの世界観です。緩い設定で、現実世界とは違う部分も多々ありますがそこをあえて楽しんでいただけると幸いです。
☆現実世界にも同じような名前、地名、言葉などがありますが、関係ありません。

冤罪をかけられた上に婚約破棄されたので、こんな国出て行ってやります
真理亜
恋愛
「そうですか。では出て行きます」
婚約者である王太子のイーサンから謝罪を要求され、従わないなら国外追放だと脅された公爵令嬢のアイリスは、平然とこう言い放った。
そもそもが冤罪を着せられた上、婚約破棄までされた相手に敬意を表す必要など無いし、そんな王太子が治める国に未練などなかったからだ。
脅しが空振りに終わったイーサンは狼狽えるが、最早後の祭りだった。なんと娘可愛さに公爵自身もまた爵位を返上して国を出ると言い出したのだ。
王国のTOPに位置する公爵家が無くなるなどあってはならないことだ。イーサンは慌てて引き止めるがもう遅かった。

【一話完結】断罪が予定されている卒業パーティーに欠席したら、みんな死んでしまいました
ツカノ
ファンタジー
とある国の王太子が、卒業パーティーの日に最愛のスワロー・アーチェリー男爵令嬢を虐げた婚約者のロビン・クック公爵令嬢を断罪し婚約破棄をしようとしたが、何故か公爵令嬢は現れない。これでは断罪どころか婚約破棄ができないと王太子が焦り始めた時、招かれざる客が現れる。そして、招かれざる客の登場により、彼らの運命は転がる石のように急転直下し、恐怖が始まったのだった。さて彼らの運命は、如何。

「魔道具の燃料でしかない」と言われた聖女が追い出されたので、結界は消えます
七辻ゆゆ
ファンタジー
聖女ミュゼの仕事は魔道具に力を注ぐだけだ。そうして国を覆う大結界が発動している。
「ルーチェは魔道具に力を注げる上、癒やしの力まで持っている、まさに聖女だ。燃料でしかない平民のおまえとは比べようもない」
そう言われて、ミュゼは城を追い出された。
しかし城から出たことのなかったミュゼが外の世界に恐怖した結果、自力で結界を張れるようになっていた。
そしてミュゼが力を注がなくなった大結界は力を失い……

友人(勇者)に恋人も幼馴染も取られたけど悔しくない。 だって俺は転生者だから。
石のやっさん
ファンタジー
パーティでお荷物扱いされていた魔法戦士のセレスは、とうとう勇者でありパーティーリーダーのリヒトにクビを宣告されてしまう。幼馴染も恋人も全部リヒトの物で、居場所がどこにもない状態だった。
だが、此の状態は彼にとっては『本当の幸せ』を掴む事に必要だった
何故なら、彼は『転生者』だから…
今度は違う切り口からのアプローチ。
追放の話しの一話は、前作とかなり似ていますが2話からは、かなり変わります。
こうご期待。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。
このユーザをミュートしますか?
※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。