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外伝 〈一人旅〉
リディアの忠告
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「……だいたいの事は話したわよ。それで、どうして急に魔物使いの職業なんて調べてるのよ?」
「ちょっと色々とね……契約紋の刻み方とかはどうやるの?」
「簡単な事よ。必要な分だけの血液を利用して紋様を書き込めばいいだけ」
「それだけ?」
「それだけ、それと契約紋の形状は個人差があるから同じ契約紋は存在しないわ」
リディアの言葉にルノは魔物使いの職業の事を把握し、彼女に礼を告げて立ち去る事にした。
「色々を分かったよ。ありがとう……聞きたいことがあったらまたくるから」
「ちょっと待ちなさいよ……あんた、本当に魔王軍を壊滅させたの?」
立ち去ろうとしたルノに対し、リディアが慌てて引き留める。自分が捕まっている間に他の幹部も魔王も倒されたという事が未だに信じられないらしく、ルノは仕方なく説明する。
「あんたと一緒に居たガイア、ラティという名前の森人族の女の子、後は忍者みたいな恰好をしたカイと、エルミナとアリシアという双子の女の子、この中で捕まっているのはラティだけだよ」
「他の奴等は?」
「……死んだ。その内のガイアだけは俺が殺した」
「そう……いや待って、あんたが倒した幹部はそれだけなの?」
「それだけって……他に幹部がいるの?」
「最高幹部のクズノと……イレアとは会ってないの?」
クズノという言葉にルノは魔王と戦った場所でカイが口走った名前を思い出す。戦闘の最中に白霧がルノ達の周囲を覆いこみ、白霧に飲み込まれたアリシアとエルミナが殺されたことを思い出す。
「そういえば……カイもその名前を口にしていた。確か、霧を操る魔法を使えるとか」
「そうよ。あの男とは会わなかったの?」
「直接会ってはいないけど……双子はその男に殺されたと思う」
「なんですって……あの野郎、また仲間を殺しやがって!!」
『シャアッ!?』
ルノの言葉にリディアは苛立った様子で建物の扉を蹴りつけ、そんな彼女の態度にガーゴイルは動揺する。どうやらアリシアとエルミナ以外にもクズノに殺された存在もいるらしく、ルノはリディアに尋ねる。
「また殺したって……どういう事?」
「……クズノは魔王軍の最高幹部だけど、実際の所はあいつ一人の命令で私達は動いていたのよ。もう一人の最高幹部がいるという話は聞いていたけど、私は顔を合わせた事もないわ」
「クズノはどんな奴なの?」
「そうね……隠してもしょうがないし、教えてあげるわ。外見の特徴は20代前半ぐらいの男よ。細目が特徴的で顔立ちは悪くはないんだけど、性格は最低な男よ……身長はやたらと高くてあんたの頭一つ分、だいたい180センチぐらいかしら?外見は異常なまでにやせ細っているわ」
「他に目立つ特徴は?」
「そうね……手品師、というのを知っているかしら?あいつはその手品師が頭に被るような大きなシルクハットをいつも身に付けて居たわ」
「シルクハット?」
「前にどうしてそんな物を着ているのか聞いてみたら「ファッションですよ。お馬鹿さん」と言いやがったのよ!!世間話もまともに出来ないくそ野郎よ!!」
リディアはクズノの事を心底嫌っているらしく、鋼鉄製の扉を何度も蹴りつける。その様子を見て嘘を吐いているとは思えず、ルノは一刻も早く帝国に戻って情報を伝える必要があった。
「そのクズノは何処にいるのか分からないの?そもそも魔王軍の本拠地とかは?」
「無駄よ。教えてもいいけど、私が捕まった時点で私の知っている魔王軍が利用していたアジトは全部処理されているはずよ。前にも仲間の一人が獣人国の軍隊に捕まった時、その時点で利用していたアジトは放棄されたわ」
「用心深いな……」
「クズノは性格は最悪だけど、あいつの作戦は悔しいけど失敗した事はないの。だから皆は渋々とあいつの言う事は従っていたわ……でも、きっとあいつは焦っているはずよ。肝心の魔王軍の主力は全部あんたに潰されちゃったからね。その点はいい気味だわ」
「本当に嫌いなんだね。元上司なのに……」
「当り前よ!!あいつがどうやって私を魔王軍に引き寄せたと思っているの!?冒険者として気ままに過ごしていた私をギルドマスターの殺人の冤罪を被せたのよ!!しかも用意周到に私の契約していた魔獣が殺したように見せかけてね!!お陰で皆からは疑われるわ、ギルドマスターの妻と子供から殺されそうになるわ、散々だったわよ!!」
魔王軍に入る前のリディアにも一時期はまっとうに生活していた時期もあり、冒険者として暮らしていた事もあるという。しかし、クズノは彼女の能力を見込んでリディアが所属していたギルドマスターを殺害し、彼女の殺人の容疑者に仕立て上げ、結局は冒険者ギルドを追われたリディアは魔王軍に入るしかなかったらしい。
「ちょっと色々とね……契約紋の刻み方とかはどうやるの?」
「簡単な事よ。必要な分だけの血液を利用して紋様を書き込めばいいだけ」
「それだけ?」
「それだけ、それと契約紋の形状は個人差があるから同じ契約紋は存在しないわ」
リディアの言葉にルノは魔物使いの職業の事を把握し、彼女に礼を告げて立ち去る事にした。
「色々を分かったよ。ありがとう……聞きたいことがあったらまたくるから」
「ちょっと待ちなさいよ……あんた、本当に魔王軍を壊滅させたの?」
立ち去ろうとしたルノに対し、リディアが慌てて引き留める。自分が捕まっている間に他の幹部も魔王も倒されたという事が未だに信じられないらしく、ルノは仕方なく説明する。
「あんたと一緒に居たガイア、ラティという名前の森人族の女の子、後は忍者みたいな恰好をしたカイと、エルミナとアリシアという双子の女の子、この中で捕まっているのはラティだけだよ」
「他の奴等は?」
「……死んだ。その内のガイアだけは俺が殺した」
「そう……いや待って、あんたが倒した幹部はそれだけなの?」
「それだけって……他に幹部がいるの?」
「最高幹部のクズノと……イレアとは会ってないの?」
クズノという言葉にルノは魔王と戦った場所でカイが口走った名前を思い出す。戦闘の最中に白霧がルノ達の周囲を覆いこみ、白霧に飲み込まれたアリシアとエルミナが殺されたことを思い出す。
「そういえば……カイもその名前を口にしていた。確か、霧を操る魔法を使えるとか」
「そうよ。あの男とは会わなかったの?」
「直接会ってはいないけど……双子はその男に殺されたと思う」
「なんですって……あの野郎、また仲間を殺しやがって!!」
『シャアッ!?』
ルノの言葉にリディアは苛立った様子で建物の扉を蹴りつけ、そんな彼女の態度にガーゴイルは動揺する。どうやらアリシアとエルミナ以外にもクズノに殺された存在もいるらしく、ルノはリディアに尋ねる。
「また殺したって……どういう事?」
「……クズノは魔王軍の最高幹部だけど、実際の所はあいつ一人の命令で私達は動いていたのよ。もう一人の最高幹部がいるという話は聞いていたけど、私は顔を合わせた事もないわ」
「クズノはどんな奴なの?」
「そうね……隠してもしょうがないし、教えてあげるわ。外見の特徴は20代前半ぐらいの男よ。細目が特徴的で顔立ちは悪くはないんだけど、性格は最低な男よ……身長はやたらと高くてあんたの頭一つ分、だいたい180センチぐらいかしら?外見は異常なまでにやせ細っているわ」
「他に目立つ特徴は?」
「そうね……手品師、というのを知っているかしら?あいつはその手品師が頭に被るような大きなシルクハットをいつも身に付けて居たわ」
「シルクハット?」
「前にどうしてそんな物を着ているのか聞いてみたら「ファッションですよ。お馬鹿さん」と言いやがったのよ!!世間話もまともに出来ないくそ野郎よ!!」
リディアはクズノの事を心底嫌っているらしく、鋼鉄製の扉を何度も蹴りつける。その様子を見て嘘を吐いているとは思えず、ルノは一刻も早く帝国に戻って情報を伝える必要があった。
「そのクズノは何処にいるのか分からないの?そもそも魔王軍の本拠地とかは?」
「無駄よ。教えてもいいけど、私が捕まった時点で私の知っている魔王軍が利用していたアジトは全部処理されているはずよ。前にも仲間の一人が獣人国の軍隊に捕まった時、その時点で利用していたアジトは放棄されたわ」
「用心深いな……」
「クズノは性格は最悪だけど、あいつの作戦は悔しいけど失敗した事はないの。だから皆は渋々とあいつの言う事は従っていたわ……でも、きっとあいつは焦っているはずよ。肝心の魔王軍の主力は全部あんたに潰されちゃったからね。その点はいい気味だわ」
「本当に嫌いなんだね。元上司なのに……」
「当り前よ!!あいつがどうやって私を魔王軍に引き寄せたと思っているの!?冒険者として気ままに過ごしていた私をギルドマスターの殺人の冤罪を被せたのよ!!しかも用意周到に私の契約していた魔獣が殺したように見せかけてね!!お陰で皆からは疑われるわ、ギルドマスターの妻と子供から殺されそうになるわ、散々だったわよ!!」
魔王軍に入る前のリディアにも一時期はまっとうに生活していた時期もあり、冒険者として暮らしていた事もあるという。しかし、クズノは彼女の能力を見込んでリディアが所属していたギルドマスターを殺害し、彼女の殺人の容疑者に仕立て上げ、結局は冒険者ギルドを追われたリディアは魔王軍に入るしかなかったらしい。
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