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外伝 〈一人旅〉
魔獣契約
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「魔物使いがどうやって魔物と契約しているのか……まずは基本的な知識を教えてあげるわ」
「お願いします先生」
「せ、先生……中々悪くない響きね。それなら契約魔法から説明しましょうか」
『シャアッ』
ガーゴイルと並んで座ったルノに対し、リディアは正面に立って説明を行う。魔物使いの職業は文字通りに魔物を従えて戦う事が出来る。魔物使いの人間は「契約魔法」と呼ばれる特別な魔法が扱え、この魔法を魔獣に施す事で魔物を従えさせる事が出来るという。
「魔物使いの扱う契約魔法とは魔獣に自分の血液を利用して「契約紋」と呼ばれる紋様を刻むの。契約魔法が成功すれば紋様を刻まれた魔獣は「契約獣」となり、自由に操れる事は出来るわ」
「あれ?じゃあ、ミノ君もリディアの契約獣なの?」
ルノは自分が使役しているミノタウロスの事を思い出し、彼は元々はリディアが従えていた魔獣の一体だが、最終的には彼女を裏切ってルノの元に居ついている。しかし、もしもリディアの話通りならばミノは彼女から逆らえないはずである。
「ミノ、というのはあのミノタウロスの事ね?あの子は私が無理やりに従えさせていただけよ。契約魔法は施していないわ」
「何で?契約紋を刻まないと完全に従える事は出来ないんでしょ?」
「それはそうだけど、一度に契約できる魔獣は限りがあるの。私の場合は既に限界だったのよ」
リディアによると魔物使いが契約できる魔獣の数は限られており、彼女の場合はミノを従えさせる事は出来なかったという。だからこそ力尽くでミノを拘束し、無理やりに従えさせていたらしい。
「さっき成功すれば魔物を従えさせられるとかいってたけど、失敗する場合もあるの?」
「使用者の力量に見合わない魔物は従えさせる事は出来ないわ。力が強い魔物ほど操りにくいし、従えさせる事も難しい。逆にゴブリンのような力の弱い魔物なら大量に操る事も出来るけどね」
「レベルを上げれば契約出来る魔獣の数が増えるの?」
「そういう事ね。それと複雑な命令も与えられるようになるし、意思疎通も出来る。熟練の魔物使いなら魔物と感覚を共有化する事も出来るわ」
「共有化?」
「例えば私の場合は意識を集中させればその子の視界の光景を見る事が出来るわ」
ガーゴイルを指さしながらリディアは両目を閉じると、彼女の位置からでは確認できない景色の様子を口にする。
「……貴方の背中が見えるわ。ここに来る途中に随分と汗を掻いたようね。背中が透けて見えるわよ」
「えっ!?本当に!?」
「試しにガーゴイルに向けて指を立てなさい。私に見えないように気を付けてね」
リディアの言葉にルノはガーゴイルだけに見えるように手を伸ばし、人差し指と中指を立てる。位置的には見えないはずのリディアは正確に立てた指の本数を口にした。
「二本ね。人差し指と中指を立てているでしょう?」
「おお、本当に見えるのか……でも、さっきからガーゴイルが黙っているけど大丈夫?」
「感覚を共有化している間は魔物は動けないのよ。私の意識を流し込んでいる間もガーゴイルの意識はあるけど、自由に身体を操作する事は出来ないわ」
魔物使いは契約獣と感覚を共有化させる事で魔物の視界の光景を確認したり、あるいは魔物の肉体を操作する事が出来るという。リディア並の腕前だと同時に複数の魔物を操作する事が出来るらしく、知能が低い魔物でも問題なく操作できる。
「この能力を使えば非常に便利よ。小型の魔物を契約獣にして人間が忍びこめない場所に侵入させたり、空を飛べる魔獣なら上空の景色を観察する事も出来るわ」
「すごい能力だな……」
「だけど、契約獣と距離が遠すぎると感覚の共有化は難しくなるわ。私の場合なら100キロ圏内なら契約獣の視界の景色までは把握できるけど、それ以上に距離が遠いと契約獣を呼び寄せる事も出来なくなるの」
「なるほど」
あまりに契約獣と離れすぎると魔物使いでも契約獣は操作出来ず、それどころか呼び寄せる事も出来なくなる。だからこそ大抵の魔物使いは契約獣を自分の傍に置いており、無暗に離れさせないように気を付けている。
「契約魔法を解除する方法はあるの?」
「刻まれた契約紋を消し去れば契約獣は解放されるわ。でも、契約紋を打ち消す事が出来るのは魔物使いだけよ。契約紋が刻まれた箇所を無理やり剥ぎ取ったとしても意味はないわ。その場合は必ず身体の何処かに新しい契約紋が誕生するの」
「でも、魔物使いは魔術師なんでしょ?地味にレベルを上げるのは大変じゃないの?」
「契約獣に魔物を殺させれば契約を交わしている人間にも経験値が入るの。魔物は魔物を殺しても経験値は手に入らないから強くなる事はないけどね」
「へえ……勉強になるな」
予想よりも魔物使いの能力が特殊である事を知り、ルノは早速本題に入る。
※ある計画のため、今後はこちらの作品は10時投稿だけになります。落ち着いたら2話投稿に戻るかもしれません。
「お願いします先生」
「せ、先生……中々悪くない響きね。それなら契約魔法から説明しましょうか」
『シャアッ』
ガーゴイルと並んで座ったルノに対し、リディアは正面に立って説明を行う。魔物使いの職業は文字通りに魔物を従えて戦う事が出来る。魔物使いの人間は「契約魔法」と呼ばれる特別な魔法が扱え、この魔法を魔獣に施す事で魔物を従えさせる事が出来るという。
「魔物使いの扱う契約魔法とは魔獣に自分の血液を利用して「契約紋」と呼ばれる紋様を刻むの。契約魔法が成功すれば紋様を刻まれた魔獣は「契約獣」となり、自由に操れる事は出来るわ」
「あれ?じゃあ、ミノ君もリディアの契約獣なの?」
ルノは自分が使役しているミノタウロスの事を思い出し、彼は元々はリディアが従えていた魔獣の一体だが、最終的には彼女を裏切ってルノの元に居ついている。しかし、もしもリディアの話通りならばミノは彼女から逆らえないはずである。
「ミノ、というのはあのミノタウロスの事ね?あの子は私が無理やりに従えさせていただけよ。契約魔法は施していないわ」
「何で?契約紋を刻まないと完全に従える事は出来ないんでしょ?」
「それはそうだけど、一度に契約できる魔獣は限りがあるの。私の場合は既に限界だったのよ」
リディアによると魔物使いが契約できる魔獣の数は限られており、彼女の場合はミノを従えさせる事は出来なかったという。だからこそ力尽くでミノを拘束し、無理やりに従えさせていたらしい。
「さっき成功すれば魔物を従えさせられるとかいってたけど、失敗する場合もあるの?」
「使用者の力量に見合わない魔物は従えさせる事は出来ないわ。力が強い魔物ほど操りにくいし、従えさせる事も難しい。逆にゴブリンのような力の弱い魔物なら大量に操る事も出来るけどね」
「レベルを上げれば契約出来る魔獣の数が増えるの?」
「そういう事ね。それと複雑な命令も与えられるようになるし、意思疎通も出来る。熟練の魔物使いなら魔物と感覚を共有化する事も出来るわ」
「共有化?」
「例えば私の場合は意識を集中させればその子の視界の光景を見る事が出来るわ」
ガーゴイルを指さしながらリディアは両目を閉じると、彼女の位置からでは確認できない景色の様子を口にする。
「……貴方の背中が見えるわ。ここに来る途中に随分と汗を掻いたようね。背中が透けて見えるわよ」
「えっ!?本当に!?」
「試しにガーゴイルに向けて指を立てなさい。私に見えないように気を付けてね」
リディアの言葉にルノはガーゴイルだけに見えるように手を伸ばし、人差し指と中指を立てる。位置的には見えないはずのリディアは正確に立てた指の本数を口にした。
「二本ね。人差し指と中指を立てているでしょう?」
「おお、本当に見えるのか……でも、さっきからガーゴイルが黙っているけど大丈夫?」
「感覚を共有化している間は魔物は動けないのよ。私の意識を流し込んでいる間もガーゴイルの意識はあるけど、自由に身体を操作する事は出来ないわ」
魔物使いは契約獣と感覚を共有化させる事で魔物の視界の光景を確認したり、あるいは魔物の肉体を操作する事が出来るという。リディア並の腕前だと同時に複数の魔物を操作する事が出来るらしく、知能が低い魔物でも問題なく操作できる。
「この能力を使えば非常に便利よ。小型の魔物を契約獣にして人間が忍びこめない場所に侵入させたり、空を飛べる魔獣なら上空の景色を観察する事も出来るわ」
「すごい能力だな……」
「だけど、契約獣と距離が遠すぎると感覚の共有化は難しくなるわ。私の場合なら100キロ圏内なら契約獣の視界の景色までは把握できるけど、それ以上に距離が遠いと契約獣を呼び寄せる事も出来なくなるの」
「なるほど」
あまりに契約獣と離れすぎると魔物使いでも契約獣は操作出来ず、それどころか呼び寄せる事も出来なくなる。だからこそ大抵の魔物使いは契約獣を自分の傍に置いており、無暗に離れさせないように気を付けている。
「契約魔法を解除する方法はあるの?」
「刻まれた契約紋を消し去れば契約獣は解放されるわ。でも、契約紋を打ち消す事が出来るのは魔物使いだけよ。契約紋が刻まれた箇所を無理やり剥ぎ取ったとしても意味はないわ。その場合は必ず身体の何処かに新しい契約紋が誕生するの」
「でも、魔物使いは魔術師なんでしょ?地味にレベルを上げるのは大変じゃないの?」
「契約獣に魔物を殺させれば契約を交わしている人間にも経験値が入るの。魔物は魔物を殺しても経験値は手に入らないから強くなる事はないけどね」
「へえ……勉強になるな」
予想よりも魔物使いの能力が特殊である事を知り、ルノは早速本題に入る。
※ある計画のため、今後はこちらの作品は10時投稿だけになります。落ち着いたら2話投稿に戻るかもしれません。
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