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外伝 〈一人旅〉
新たな島の主
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――数十分後、気絶したキジンを放置してルノは光球の魔法の応用で様々な果樹を作り出し、農作業を行っていた囚人達に食料の配給を行う。街の中に存在した囚人達も呼び寄せ、ルノは全員に食事を与える。
「皆落ち着いてちゃんと並んで下さい!!ちゃんと全員分の食糧はありますから!!」
「ほ、本当に食べていいのか……?」
「半日ぶりの飯だ……」
「腹いっぱい食えるなんて何年ぶりだ……?」
数百人の囚人が列を為してルノと向かい合い、他の囚人に用意させた木箱に積み込まれた果実を渡す。食料の配給を行う間にもニオとロナクを筆頭に大勢の囚人達が果樹園と化した畑から木の実を回収していた。
「おい、そこ摘まみ食いしてんじゃねえよ!!ちゃんと運び込め!!」
「兄貴!!新しいのを置いておきます!!」
「ありがとう。じゃあ、渡すのを手伝ってくれる?」
「へい!!」
囚人達はルノの言う事をよく聞き、彼の指示に従って大量の果物を箱詰めして運び込む。彼等の親分であるキジンを打ち倒したことでルノはこの島の新しい主として認識されたらしく、囚人達は誰一人として逆らわない。
「た、頼む!!動けない奴がいるんだ!!もっと食料を分けてくれ!!」
「落ち着いて下さい。いくらでもありますから好きなだけ持って行ってください」
「すまねえ……」
大量の食料を求める人間には木箱ごと渡すと、今まで生気を失っていた囚人達も活気立ち、ルノに感謝の言葉を告げながら立ち去る。
「兄貴!!もう木の実がありませんよ!!」
「分かった。すぐに新しいのを用意するから」
全ての樹木から木の実を回収した兵士達の言葉にルノは掌を構え、光球の魔法を発動させる。木の実を摘み取られた植物達に銀色の光が降り注いだ瞬間、再び新たな木の実が枝から誕生した。
「よし、これでいいかな。あ、そこの人は悪いんだけどもう少し木箱を用意してくれる?」
「は、はい!!」
「雑炊も出来ました!!」
「分かった。じゃあ、器も用意しておいて」
果物の他にも料理が得意な囚人に雑炊を用意させ、順調に配給を行う。どれほど食べようと怒られる事もなく腹が満たされるまで食べてもよい事から囚人達は感激し、ルノを崇める。
「ありがとうございます……これで明日も生き延びられる」
「そんなかしこまらないでも……」
「美味い……こんな食事、初めてだ」
雑炊や果物を味わいながら囚人達は涙を流し、数年ぶりのまともな食事に涙を流す。その様子を確認しながらルノは周囲の囚人に視線を向け、彼等の中に重症人がいればアイテムボックスのスキルを発動させて回復薬も分け与えた。
「良かったらこれをどうぞ」
「い、いいのか?」
「あんまり使わないので……」
「すまない……」
過酷な労働によって耐え切れずに身体を壊してしまった老人にルノは回復薬を与えると、彼は涙を浮かべながらルノの両手を握りしめる。しかし、囚人の中には荒々しく食事を奪い取ろうとする人間も少なからず存在した。
「退け!!俺を誰だと思ってやがる!!とっとと食料を寄越せ!!」
「おい、お前割り込むなよ!?」
「うるせえ!!とっとと飯を寄越せ……ぎゃあっ!?」
「マナーがなってない人間に与える食料はありません」
列を無視して食料を奪い取ろうとした獣人族の男性に対してルノは掌底を食らわせ、数メートル先まで吹き飛ばす。急所を突かれた大男は地面を転がりまわりながら悶絶するが、ルノは冷たく言い放つ。
「ご飯が欲しいなら大人しく並んでください……もう一度暴れれば今度は地面に沈めますよ」
「こ、このガキ……うわぁっ!?」
片腕のみでルノは大男を持ち上げ、最後尾まで運び出す。その光景に他の囚人達は冷や汗を流し、それ以降は列を無視して食料を受け取ろうとする人間は居なかった――
――数時間後、やっと全員分の食糧の配給を終えるとルノはやっと自分の食事を行う。彼の周囲にはキジンに従っていた囚人の姿もあり、食料の配給を手伝っていたので彼等もやっと食べ物を口に出来た。
「美味い!!やっぱり雑炊は最高だな!!」
「でも、偶には肉が食いたいよな……」
「無茶を言うんじゃねえよ。この島に獣なんていないんだよ」
「俺は魚が喰いてえな……小魚じゃなくて、でかい魚をよ」
「そっちの方が無理だろ。海竜から逃れてこの島に辿り着く魚なんていねえよ」
雑談を行いながら囚人達は食事を楽しみ、ルノは彼等の話を聞きながらこの島の成り立ちを教わる。
「じゃあ、この海域には元々は海竜は住み着いていなかったの?」
「ええ、数百年ぐらい前はこの島はもっと大きくて活気のある島国だったみたいですよ。だけど、ある時に隕石がここに落ちてから何もかも変わっちまったみだいで……今では囚人を隔離するだけの監獄になっちまいましたがね」
この島に古くから住んでいる「森人族」の男性の話によると、海獄島の興味深い歴史が語られた。
「皆落ち着いてちゃんと並んで下さい!!ちゃんと全員分の食糧はありますから!!」
「ほ、本当に食べていいのか……?」
「半日ぶりの飯だ……」
「腹いっぱい食えるなんて何年ぶりだ……?」
数百人の囚人が列を為してルノと向かい合い、他の囚人に用意させた木箱に積み込まれた果実を渡す。食料の配給を行う間にもニオとロナクを筆頭に大勢の囚人達が果樹園と化した畑から木の実を回収していた。
「おい、そこ摘まみ食いしてんじゃねえよ!!ちゃんと運び込め!!」
「兄貴!!新しいのを置いておきます!!」
「ありがとう。じゃあ、渡すのを手伝ってくれる?」
「へい!!」
囚人達はルノの言う事をよく聞き、彼の指示に従って大量の果物を箱詰めして運び込む。彼等の親分であるキジンを打ち倒したことでルノはこの島の新しい主として認識されたらしく、囚人達は誰一人として逆らわない。
「た、頼む!!動けない奴がいるんだ!!もっと食料を分けてくれ!!」
「落ち着いて下さい。いくらでもありますから好きなだけ持って行ってください」
「すまねえ……」
大量の食料を求める人間には木箱ごと渡すと、今まで生気を失っていた囚人達も活気立ち、ルノに感謝の言葉を告げながら立ち去る。
「兄貴!!もう木の実がありませんよ!!」
「分かった。すぐに新しいのを用意するから」
全ての樹木から木の実を回収した兵士達の言葉にルノは掌を構え、光球の魔法を発動させる。木の実を摘み取られた植物達に銀色の光が降り注いだ瞬間、再び新たな木の実が枝から誕生した。
「よし、これでいいかな。あ、そこの人は悪いんだけどもう少し木箱を用意してくれる?」
「は、はい!!」
「雑炊も出来ました!!」
「分かった。じゃあ、器も用意しておいて」
果物の他にも料理が得意な囚人に雑炊を用意させ、順調に配給を行う。どれほど食べようと怒られる事もなく腹が満たされるまで食べてもよい事から囚人達は感激し、ルノを崇める。
「ありがとうございます……これで明日も生き延びられる」
「そんなかしこまらないでも……」
「美味い……こんな食事、初めてだ」
雑炊や果物を味わいながら囚人達は涙を流し、数年ぶりのまともな食事に涙を流す。その様子を確認しながらルノは周囲の囚人に視線を向け、彼等の中に重症人がいればアイテムボックスのスキルを発動させて回復薬も分け与えた。
「良かったらこれをどうぞ」
「い、いいのか?」
「あんまり使わないので……」
「すまない……」
過酷な労働によって耐え切れずに身体を壊してしまった老人にルノは回復薬を与えると、彼は涙を浮かべながらルノの両手を握りしめる。しかし、囚人の中には荒々しく食事を奪い取ろうとする人間も少なからず存在した。
「退け!!俺を誰だと思ってやがる!!とっとと食料を寄越せ!!」
「おい、お前割り込むなよ!?」
「うるせえ!!とっとと飯を寄越せ……ぎゃあっ!?」
「マナーがなってない人間に与える食料はありません」
列を無視して食料を奪い取ろうとした獣人族の男性に対してルノは掌底を食らわせ、数メートル先まで吹き飛ばす。急所を突かれた大男は地面を転がりまわりながら悶絶するが、ルノは冷たく言い放つ。
「ご飯が欲しいなら大人しく並んでください……もう一度暴れれば今度は地面に沈めますよ」
「こ、このガキ……うわぁっ!?」
片腕のみでルノは大男を持ち上げ、最後尾まで運び出す。その光景に他の囚人達は冷や汗を流し、それ以降は列を無視して食料を受け取ろうとする人間は居なかった――
――数時間後、やっと全員分の食糧の配給を終えるとルノはやっと自分の食事を行う。彼の周囲にはキジンに従っていた囚人の姿もあり、食料の配給を手伝っていたので彼等もやっと食べ物を口に出来た。
「美味い!!やっぱり雑炊は最高だな!!」
「でも、偶には肉が食いたいよな……」
「無茶を言うんじゃねえよ。この島に獣なんていないんだよ」
「俺は魚が喰いてえな……小魚じゃなくて、でかい魚をよ」
「そっちの方が無理だろ。海竜から逃れてこの島に辿り着く魚なんていねえよ」
雑談を行いながら囚人達は食事を楽しみ、ルノは彼等の話を聞きながらこの島の成り立ちを教わる。
「じゃあ、この海域には元々は海竜は住み着いていなかったの?」
「ええ、数百年ぐらい前はこの島はもっと大きくて活気のある島国だったみたいですよ。だけど、ある時に隕石がここに落ちてから何もかも変わっちまったみだいで……今では囚人を隔離するだけの監獄になっちまいましたがね」
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