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外伝 〈一人旅〉
森
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――砂浜を抜け出し、ようやく島の中に入り込んだルノはニオとロナクの案内の元で森の中を移動していた。二人が住んでいる集落は森を抜けた先にある草原に存在するらしく、木々の間を潜り抜けながら森の中を進む。
「ふうっ……大分歩いたけど、まだ着かないの?」
「も、もうちょっとですね」
「すいませんがもう少し我慢してください……あと少しで抜けられますから」
けもの道を進みながらルノは二人の後に続き、魔法を使えば楽に移動できるのだが、完全に二人を信用出来ないルノは無暗に魔法を彼等に見せないように心掛ける。氷塊の魔法で氷自動車等の乗物を作り出せばすぐに森を抜け出せるだろうが、ニオとロナクは死刑囚で実際に殺人を犯している「悪人」である事に変わりはなく、今は従順に従っていても隙を見せれば襲い掛かる可能性は否定出来ない。
(この二人には用心しないと……それよりも本当に動物がいないな)
森の中に入ってからそれなりの時間は経過しているが、動物や魔物の姿は一切見えず、小鳥すらも見かけない。耳を澄ませても動物の鳴き声は聞こえず、ルノは二人に尋ねる。
「この森ってこんなに静かなの?全然生き物の姿が見えないんだけど……」
「こんなもんですよ。食べられる動物は片っ端から喰っちまいましたからね」
「家畜を育てようにもそいつらに与える餌も惜しい状況ですから」
「それは酷いな……」
島の中に動物が見かけないのは送り込まれた囚人達が乱獲した事が原因だと発覚する。予想以上に島の食糧問題が深刻化している事にルノは不安を抱き、この調子では食料を分けてもらうのは難しいだろう。
「ねえ、この島に食べられる果実が実る木はないの?」
「あるにはありますが、今は収穫の時期じゃないですよ」
「収穫した分も既に冬に備えて食糧庫で保管されてますから。ああ、こういう時に収納石やアイテムボックスのスキル持ちがいればな……くそ、また腐りかけた食材で冬を乗り越えなくちゃいけないのか!!」
「文句言うなよ。毎年の事だろうが……」
この島には魔道具の類は存在せず、収納石やアイテムボックスのスキルなどで「異空間」に食料を保管する事は出来ない。異空間に送り込まれた物体は時間の概念を受けないので何年、何十年、何百年経過しようが食料が腐る心配はない。しかし、この島には収納石もアイテムボックス等のスキルを扱える人間は折らず、食料に関しても自力で長期保存しなければならない。
今のところは地下に作り出した倉庫に食料を保管しているが、それでも空腹に耐えきれずに食料を盗む人間は後を絶たず、もしも食料を盗んだ事がばれたら殺されてしまう。実際に最近では芋を一つだけ盗んだ事で殺された人間もいるため、このまま集落に乗り込んでルノが食料を分けるように願っても素直に渡してくれる可能性は限りなく低い。
「あのさ、果物の種とかはどうしてる?出来ればそれだけくれれば他の食糧はいらないけど」
「はあ?種……ですか?」
「そんな物をどうする気ですか?」
ルノの言葉にニオとロナクは驚き、種だけ渡したところで何の意味があるのか彼等には理解できない。しかし、ルノの場合は食用の果実の種さえ存在すれば食料問題は解決出来る方法がある。
「種さえくれれば問題ないよ。あと、水と出来れば毛布とかも分けてくれると嬉しいんだけど……」
「別にそれぐらいなら用意できますけど……本当にいいんですか?」
「問題ない。でも、まずはこの島の親分さんに話を通さないとね」
「い、いざという時は頼みますよ。約束は守ってくださいね!!」
ルノの言葉にロナクが怯えた表情を浮かべ、ニオも表面上は冷静に振舞うが足元が震えており、余程この島を支配している「キジン」という男を恐れているようだった。ルノは二人の言葉に頷き、約束を果たしてくれるのならばルノも彼等を見捨てるつもりはない。
――数分後、無事に森を抜け出したルノ達は草原を移動する。集落は森から1キロほど離れた場所に存在し、やがて木造製の建物が並び立つ村に辿り着いた。
「ほら、あそこが俺達が住んでいる場所です」
「あそこか……それであの人達は?」
「ああ、あいつらは若くて元気が有り余っている新参者ですよ」
「……随分とやせ細っている人もいるけど?」
ルノの視界には村の周囲で畑を耕す大勢の人間達の姿が映し出され、中には巨人族や獣人族も混じっていた。全員がやせ細っており、中には何らかの病を患っているのか顔色が悪い人間も存在した。彼等は無言で地面を耕し、感情の無い人形のように黙々と作業を行う。
「あの人達も島に辿り着いた囚人?」
「そういう事です。比較的に身体に大きな怪我がなくて体力がありそうな奴を選別して働かせているそうです」
「……とてもそうは見えないけど」
「まあ、働かせすぎて痩せた奴もいますけどね。それでもこいつらは恵まれている方ですよ。働いた分だけちゃんと食料も支給されますから」
二人によると農作業を行っている囚人達は重労働を課せられる代わりに毎日食料を支給されるらしく、決して与えらえる食料の量が多いわけではないが、それでも確実に働いた分だけ食料は渡されるらしい。
「ふうっ……大分歩いたけど、まだ着かないの?」
「も、もうちょっとですね」
「すいませんがもう少し我慢してください……あと少しで抜けられますから」
けもの道を進みながらルノは二人の後に続き、魔法を使えば楽に移動できるのだが、完全に二人を信用出来ないルノは無暗に魔法を彼等に見せないように心掛ける。氷塊の魔法で氷自動車等の乗物を作り出せばすぐに森を抜け出せるだろうが、ニオとロナクは死刑囚で実際に殺人を犯している「悪人」である事に変わりはなく、今は従順に従っていても隙を見せれば襲い掛かる可能性は否定出来ない。
(この二人には用心しないと……それよりも本当に動物がいないな)
森の中に入ってからそれなりの時間は経過しているが、動物や魔物の姿は一切見えず、小鳥すらも見かけない。耳を澄ませても動物の鳴き声は聞こえず、ルノは二人に尋ねる。
「この森ってこんなに静かなの?全然生き物の姿が見えないんだけど……」
「こんなもんですよ。食べられる動物は片っ端から喰っちまいましたからね」
「家畜を育てようにもそいつらに与える餌も惜しい状況ですから」
「それは酷いな……」
島の中に動物が見かけないのは送り込まれた囚人達が乱獲した事が原因だと発覚する。予想以上に島の食糧問題が深刻化している事にルノは不安を抱き、この調子では食料を分けてもらうのは難しいだろう。
「ねえ、この島に食べられる果実が実る木はないの?」
「あるにはありますが、今は収穫の時期じゃないですよ」
「収穫した分も既に冬に備えて食糧庫で保管されてますから。ああ、こういう時に収納石やアイテムボックスのスキル持ちがいればな……くそ、また腐りかけた食材で冬を乗り越えなくちゃいけないのか!!」
「文句言うなよ。毎年の事だろうが……」
この島には魔道具の類は存在せず、収納石やアイテムボックスのスキルなどで「異空間」に食料を保管する事は出来ない。異空間に送り込まれた物体は時間の概念を受けないので何年、何十年、何百年経過しようが食料が腐る心配はない。しかし、この島には収納石もアイテムボックス等のスキルを扱える人間は折らず、食料に関しても自力で長期保存しなければならない。
今のところは地下に作り出した倉庫に食料を保管しているが、それでも空腹に耐えきれずに食料を盗む人間は後を絶たず、もしも食料を盗んだ事がばれたら殺されてしまう。実際に最近では芋を一つだけ盗んだ事で殺された人間もいるため、このまま集落に乗り込んでルノが食料を分けるように願っても素直に渡してくれる可能性は限りなく低い。
「あのさ、果物の種とかはどうしてる?出来ればそれだけくれれば他の食糧はいらないけど」
「はあ?種……ですか?」
「そんな物をどうする気ですか?」
ルノの言葉にニオとロナクは驚き、種だけ渡したところで何の意味があるのか彼等には理解できない。しかし、ルノの場合は食用の果実の種さえ存在すれば食料問題は解決出来る方法がある。
「種さえくれれば問題ないよ。あと、水と出来れば毛布とかも分けてくれると嬉しいんだけど……」
「別にそれぐらいなら用意できますけど……本当にいいんですか?」
「問題ない。でも、まずはこの島の親分さんに話を通さないとね」
「い、いざという時は頼みますよ。約束は守ってくださいね!!」
ルノの言葉にロナクが怯えた表情を浮かべ、ニオも表面上は冷静に振舞うが足元が震えており、余程この島を支配している「キジン」という男を恐れているようだった。ルノは二人の言葉に頷き、約束を果たしてくれるのならばルノも彼等を見捨てるつもりはない。
――数分後、無事に森を抜け出したルノ達は草原を移動する。集落は森から1キロほど離れた場所に存在し、やがて木造製の建物が並び立つ村に辿り着いた。
「ほら、あそこが俺達が住んでいる場所です」
「あそこか……それであの人達は?」
「ああ、あいつらは若くて元気が有り余っている新参者ですよ」
「……随分とやせ細っている人もいるけど?」
ルノの視界には村の周囲で畑を耕す大勢の人間達の姿が映し出され、中には巨人族や獣人族も混じっていた。全員がやせ細っており、中には何らかの病を患っているのか顔色が悪い人間も存在した。彼等は無言で地面を耕し、感情の無い人形のように黙々と作業を行う。
「あの人達も島に辿り着いた囚人?」
「そういう事です。比較的に身体に大きな怪我がなくて体力がありそうな奴を選別して働かせているそうです」
「……とてもそうは見えないけど」
「まあ、働かせすぎて痩せた奴もいますけどね。それでもこいつらは恵まれている方ですよ。働いた分だけちゃんと食料も支給されますから」
二人によると農作業を行っている囚人達は重労働を課せられる代わりに毎日食料を支給されるらしく、決して与えらえる食料の量が多いわけではないが、それでも確実に働いた分だけ食料は渡されるらしい。
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