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外伝 〈一人旅〉
島の現状
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「ニオとロナクはどういう関係?」
「俺達はこの島を支配しているキジンという人の派閥に所属してます。それでこの人は俺より先にキジンさんに仕えていたので俺の兄貴分です」
「お、おい!!ペラペラと喋っていいのかよ?キジンさんに知られたら殺されるぞ!!」
「大丈夫だよ兄貴。ここに滅多に来ないし、それにこの人と一緒の方が安全じゃないか?」
年齢的には親子ほど離れており、中年男性のロナクがまだ10代後半のニオに敬語を使う光景にルノは違和感を拭えない。しかし、現在この島を支配している囚人の名前を知る事が出来たが、問題なのはこれからどのように行動するかである。
「この島は何処に存在するのかは分からないんですか?」
「すいません、俺達も飛行船に連れていかれて運び込まれただけなので……但し、大陸からは相当に遠いと思いますよ。だって飛行船で移動するだけでも一週間はかかる距離でしたから」
「ちなみに俺達は帝国から送り込まれました……あの、これだけ話したんですから命だけは助けて貰えませんかね?」
「別に殺すつもりはないけど……」
二人の話から察するに海獄島は大陸から相当に離れており、戻るにしても大陸が存在する方向を把握しないと時間が掛かる。飛翔術や氷自動車で移動するにしても魔力を相当に消費する事は間違いなく、最悪の場合は危険を犯して再び宇宙空間に進出し、今度は着地点を間違わないようにしなければならない。
「その飛行船はいつ来るの?事情を話して一緒に乗せて貰いたいんだけど……」
「無理ですよ。飛行船はこの島には降りませんし、第一に定期的に訪れているわけでもないですから」
「まあ、だいたい1週間に1度は訪れますかね……といっても訪れる飛行船が帝国の物とは限りませんけど」
「あ、そっか。いろんな国から囚人が送り込まれるんだっけ」
海獄島に向かう飛行船は各国の移送船である以上、必ずしも訪れる船が帝国製とは限らない。しかし、この島に残った所でどうしようも出来ず、ルノは空腹を覚える。よくよく考えれば昨日の朝から何も食べていないことを思い出す。
「ちょっとお腹空いたな……この島に食べ物とかは残ってるの?」
「あるにはありますけど……それほど余裕はありませんよ」
「もうすぐ冬が訪れるから俺達も食べるのを我慢してるんですよ。冬の間は農作物は作れないから今の内に長期保存が可能な食材を地下倉庫に移してるんです」
「この間も食糧庫から盗み食いした奴を見せしめに殺されたんですよ……芋を一つ喰っただけなのに」
ルノの言葉に二人は深いため息を吐き出し、よくよく観察するとどちらも碌な食事が取れていないのか痩せていた。この様子では島に乗り込んで食料を分けてくれるように頼むのも難しく、そもそも囚人しか存在しないこの島に一般人のルノが訪れる事自体が危険すぎる。
「でも何か食べないと力が出ないな……しょうがない、魚でも釣るか」
「それも難しいですよ。この島には魚はいないし、海で釣ろうにも海竜のせいで魚なんて殆どいません。せいぜい腹の足しにもならない小魚ぐらいしかいませんよ」
「なるほど」
囚人達を送り込む海獄島の環境は人間が住むには厳しく、特に食料に関しては畑で農作物を作る以外に入手できる方法はないという。島には食料となる魔物は生息しておらず、魚を釣ろうにも海竜の支配領域という事が問題で大きな魚は寄り付かない。だからこそ島の囚人はこれ以上に食糧問題を圧迫する新しい囚人を受け入れる事を拒み、島の出入口に見張りを立てて島まで泳ぎ着いた人間達を殺しているという。
「俺達もここ最近は真面な食事なんて全然してねえな……昨日は何くったっけ?」
「井戸の水だけだよ。あんまり飲み過ぎると腹を壊しちまうけど、何か腹に詰めないと動けないしな……」
「井戸はあるの?」
「あ、はい。それと定期的にこの島は雨も降るんで水に関する問題は特にありません」
「そっか……水はあるのか」
二人が死刑囚であり、これまでに何人もの人間を殺してきたのは事実である。しかし、彼等も生きるために必死に行動していたのも事実らしく、この島の人間達には外部から人間を受け入れる余裕はない。だが、ルノとしても食糧と住むところを確保しなければならず、飛行船が訪れるまでこの島に滞在するしかない。
「ねえ、二人の親分に会わせてよ。ちょっと話がしたい」
「えっ!?そ、それは不味いですよ……」
「見張り役を失敗したのがばれたら俺達が殺されちまう!!」
「大丈夫だよ。何があっても俺が守るから」
ルノの言葉に二人は激しく動揺するが、ルノが二人の安全を約束すると、お互いの顔を見つめる。
「……わ、分かりました。どうせ俺達が止めても島に入るんでしょう?」
「まあ、そうなるけど」
「それならどっちみち、俺達が見張りを失敗したのがバレちまう……分かりました。キジンの親分の所まで案内します」
二人は溜息を吐いてルノの言葉に従い、島の案内を行う――
「俺達はこの島を支配しているキジンという人の派閥に所属してます。それでこの人は俺より先にキジンさんに仕えていたので俺の兄貴分です」
「お、おい!!ペラペラと喋っていいのかよ?キジンさんに知られたら殺されるぞ!!」
「大丈夫だよ兄貴。ここに滅多に来ないし、それにこの人と一緒の方が安全じゃないか?」
年齢的には親子ほど離れており、中年男性のロナクがまだ10代後半のニオに敬語を使う光景にルノは違和感を拭えない。しかし、現在この島を支配している囚人の名前を知る事が出来たが、問題なのはこれからどのように行動するかである。
「この島は何処に存在するのかは分からないんですか?」
「すいません、俺達も飛行船に連れていかれて運び込まれただけなので……但し、大陸からは相当に遠いと思いますよ。だって飛行船で移動するだけでも一週間はかかる距離でしたから」
「ちなみに俺達は帝国から送り込まれました……あの、これだけ話したんですから命だけは助けて貰えませんかね?」
「別に殺すつもりはないけど……」
二人の話から察するに海獄島は大陸から相当に離れており、戻るにしても大陸が存在する方向を把握しないと時間が掛かる。飛翔術や氷自動車で移動するにしても魔力を相当に消費する事は間違いなく、最悪の場合は危険を犯して再び宇宙空間に進出し、今度は着地点を間違わないようにしなければならない。
「その飛行船はいつ来るの?事情を話して一緒に乗せて貰いたいんだけど……」
「無理ですよ。飛行船はこの島には降りませんし、第一に定期的に訪れているわけでもないですから」
「まあ、だいたい1週間に1度は訪れますかね……といっても訪れる飛行船が帝国の物とは限りませんけど」
「あ、そっか。いろんな国から囚人が送り込まれるんだっけ」
海獄島に向かう飛行船は各国の移送船である以上、必ずしも訪れる船が帝国製とは限らない。しかし、この島に残った所でどうしようも出来ず、ルノは空腹を覚える。よくよく考えれば昨日の朝から何も食べていないことを思い出す。
「ちょっとお腹空いたな……この島に食べ物とかは残ってるの?」
「あるにはありますけど……それほど余裕はありませんよ」
「もうすぐ冬が訪れるから俺達も食べるのを我慢してるんですよ。冬の間は農作物は作れないから今の内に長期保存が可能な食材を地下倉庫に移してるんです」
「この間も食糧庫から盗み食いした奴を見せしめに殺されたんですよ……芋を一つ喰っただけなのに」
ルノの言葉に二人は深いため息を吐き出し、よくよく観察するとどちらも碌な食事が取れていないのか痩せていた。この様子では島に乗り込んで食料を分けてくれるように頼むのも難しく、そもそも囚人しか存在しないこの島に一般人のルノが訪れる事自体が危険すぎる。
「でも何か食べないと力が出ないな……しょうがない、魚でも釣るか」
「それも難しいですよ。この島には魚はいないし、海で釣ろうにも海竜のせいで魚なんて殆どいません。せいぜい腹の足しにもならない小魚ぐらいしかいませんよ」
「なるほど」
囚人達を送り込む海獄島の環境は人間が住むには厳しく、特に食料に関しては畑で農作物を作る以外に入手できる方法はないという。島には食料となる魔物は生息しておらず、魚を釣ろうにも海竜の支配領域という事が問題で大きな魚は寄り付かない。だからこそ島の囚人はこれ以上に食糧問題を圧迫する新しい囚人を受け入れる事を拒み、島の出入口に見張りを立てて島まで泳ぎ着いた人間達を殺しているという。
「俺達もここ最近は真面な食事なんて全然してねえな……昨日は何くったっけ?」
「井戸の水だけだよ。あんまり飲み過ぎると腹を壊しちまうけど、何か腹に詰めないと動けないしな……」
「井戸はあるの?」
「あ、はい。それと定期的にこの島は雨も降るんで水に関する問題は特にありません」
「そっか……水はあるのか」
二人が死刑囚であり、これまでに何人もの人間を殺してきたのは事実である。しかし、彼等も生きるために必死に行動していたのも事実らしく、この島の人間達には外部から人間を受け入れる余裕はない。だが、ルノとしても食糧と住むところを確保しなければならず、飛行船が訪れるまでこの島に滞在するしかない。
「ねえ、二人の親分に会わせてよ。ちょっと話がしたい」
「えっ!?そ、それは不味いですよ……」
「見張り役を失敗したのがばれたら俺達が殺されちまう!!」
「大丈夫だよ。何があっても俺が守るから」
ルノの言葉に二人は激しく動揺するが、ルノが二人の安全を約束すると、お互いの顔を見つめる。
「……わ、分かりました。どうせ俺達が止めても島に入るんでしょう?」
「まあ、そうなるけど」
「それならどっちみち、俺達が見張りを失敗したのがバレちまう……分かりました。キジンの親分の所まで案内します」
二人は溜息を吐いてルノの言葉に従い、島の案内を行う――
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