最弱職の初級魔術師 初級魔法を極めたらいつの間にか「千の魔術師」と呼ばれていました。

カタナヅキ

文字の大きさ
上 下
197 / 657
外伝 〈一人旅〉

海獄島

しおりを挟む
「ふうっ……危なかった。あれが海竜なのか……確かに蛇竜よりも厄介だったかも」


どうにか海竜の撃退に成功したルノは額の汗を拭い、もしも氷竜を作り出す判断をしていなかったら海竜に飲み込まれて死亡していた可能性が高い。だが、海中に存在する氷竜を打ち倒す事は出来ず、これからは用心して進まなければならない。


「早くこんな場所から離れよう。でも、何処へ向かえばいいのか」


あてもなく彷徨い続けても体力を魔力を消耗するだけなのは分かっているが、現状では移動し続ける事しか出来ず、ルノは溜息を吐きながら周囲の光景を見渡す。すると、何時の間にか白霧が消えている事に気付き、彼の視界に島を発見する。


「あれは……島なのか?」


直径が10キロ程度の大きな島を発見し、ルノは氷竜を解除して飛翔術で島に向かう。海竜が生息する海域に存在する島なので人間が住んでいるのか不安を抱くが、島に近づくと人工物らしき物を発見した。


「やった!!誰か住んでいるんだ!!」


島には村らしき建物が存在する事に気付き、ルノは歓喜の声を上げる。しかし、ある程度接近したところで違和感を抱き、どういう事なのか島の周囲は崖で覆われている事に気付く。


「何だこの島……どうやって出入りしているんだ?」


島の周囲を観察した結果、どこにも外部と出入りが出来そうな場所は見当たらず、船で近づいたとしても乗り込む事も難しい。


「あ!!あそこだけ砂浜がある!!良かった……」


だが、島の北部(ルノ自身は方向は分からないが)に一か所だけ砂浜が存在し、この場所からならば外の出入りが出来る。安心してルノは砂浜に移動すると、島内に入り込む。


「変わった島だな……船が来ても海竜に襲われないのかな?」


海竜が生息している海域に存在する島にルノは疑問を抱き、仮に船が訪れても海竜に襲われるのではないかと不思議に思うが、人間が住んでいる事は確かなので彼等に事情を問い質す事にした。


「もしかしたらこの島の人達は自給自足で生活しているかもしれいないし、そう考えたら別に外から船が来れなくてもおかしくはないのかな……ん?」


砂浜を歩いている途中、ルノは砂の中から何かが飛び出している事に気付き、疑問を抱いて近づくとそれは人間の「腕」だと気付く。


「うわっ!?な、何で!?」


腕は既に腐っており、誰かが砂浜に死体を埋めたとしか考えられず、ルノは恐る恐る近付いて様子を伺う。


「あれ?この死体、指輪を付けてる……?」


何故か死体には金色に光り輝く指輪が取り付けられており、不思議に思ったルノは指輪を確認するために手を伸ばそうとした瞬間、視界に何かが近づいている事に気付く。


「うわっ!?」
「ちっ!!避けたか……」


咄嗟に上半身を反らして頭を下げると、先程までルノの頭部が存在した場所に短剣が通過し、砂浜に突き刺さる。何事かとルノは身体を起き上げると、何処に隠れていたのか砂浜に一人のやせ細った男性が立っていた。


「勘のいい奴め、だが、見られた以上は楽には死なせんぞ」
「……誰ですか貴方は?」
「はっ!!呑気な奴だな!!その身なり、どうやら新人らしいがこの島に送り込まれる前に説明を受けなかったのか!?」
「えっ……?」


新人という言葉にルノは疑問を抱き、男性が何を言っているのかは理解できないが、彼がルノの命を狙った事だけは確かな事実だった。それでも色々と聞かなければならない事がるため、ルノは溜息を吐きながら掌を構える。


「ん?何の真似だ?まさか魔法でも使うつもりか?いいぞ、やってみろ!!やれるもんならな!!」
「……?」


ルノが掌を構えた所を見て彼が魔術師だと気づいた男性は笑い声をあげ、堂々と両手を広げる。その姿にルノは疑問を抱き、男性はルノが魔法を使えるはずがないと思い込んでいる様子だった。


「さあ、どうした!?避けないから使ってみろ!!使えるもんならな」
「分かりました。風圧」
「はぐぅっ!?」


男性の言葉に従い、ルノは魔法を発動させた瞬間、男性の肉体は吹き飛ぶ。威力は調整したがレベル99にもなると力加減も難しく、男性は砂浜を幾度か横転した後に倒れこむ。


「ぐふぅっ……な、何で……?」
「いや、こっちの方こそ聞きたいんですけど……どうして俺が魔法を使えないと思い込んでいたんですか?」
「ひいいっ!?」


呆然とした表情を浮かべる男性にルノは頬を掻きながら尋ねると、相手は恐怖の表情を浮かべながら後ずさる。先ほどまでの態度と一変し、男性はその場で跪いて謝罪する。


「す、すいません!!許して下さい!!殺さないで下さい!!」
「別に殺しませんけど……ちょっと聞きたいことがあるんですけど」
「はい!?」


ルノは男性にこの島の事を尋ねるため、まずは自分を襲ってきた理由から問い質す。
しおりを挟む
感想 1,841

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

側妃契約は満了しました。

夢草 蝶
恋愛
 婚約者である王太子から、別の女性を正妃にするから、側妃となって自分達の仕事をしろ。  そのような申し出を受け入れてから、五年の時が経ちました。

夫の色のドレスを着るのをやめた結果、夫が我慢をやめてしまいました

氷雨そら
恋愛
夫の色のドレスは私には似合わない。 ある夜会、夫と一緒にいたのは夫の愛人だという噂が流れている令嬢だった。彼女は夫の瞳の色のドレスを私とは違い完璧に着こなしていた。噂が事実なのだと確信した私は、もう夫の色のドレスは着ないことに決めた。 小説家になろう様にも掲載中です

【完結】『飯炊き女』と呼ばれている騎士団の寮母ですが、実は最高位の聖女です

葉桜鹿乃
恋愛
ルーシーが『飯炊き女』と、呼ばれてそろそろ3年が経とうとしている。 王宮内に兵舎がある王立騎士団【鷹の爪】の寮母を担っているルーシー。 孤児院の出で、働き口を探してここに配置された事になっているが、実はこの国の最も高貴な存在とされる『金剛の聖女』である。 王宮という国で一番安全な場所で、更には周囲に常に複数人の騎士が控えている場所に、本人と王族、宰相が話し合って所属することになったものの、存在を秘する為に扱いは『飯炊き女』である。 働くのは苦では無いし、顔を隠すための不細工な丸眼鏡にソバカスと眉を太くする化粧、粗末な服。これを襲いに来るような輩は男所帯の騎士団にも居ないし、聖女の力で存在感を常に薄めるようにしている。 何故このような擬態をしているかというと、隣国から聖女を狙って何者かが間者として侵入していると言われているためだ。 隣国は既に瘴気で汚れた土地が多くなり、作物もまともに育たないと聞いて、ルーシーはしばらく隣国に行ってもいいと思っているのだが、長く冷戦状態にある隣国に行かせるのは命が危ないのでは、と躊躇いを見せる国王たちをルーシーは説得する教養もなく……。 そんな折、ある日の月夜に、明日の雨を予見して変装をせずに水汲みをしている時に「見つけた」と言われて振り向いたそこにいたのは、騎士団の中でもルーシーに優しい一人の騎士だった。 ※感想の取り扱いは近況ボードを参照してください。 ※小説家になろう様でも掲載予定です。

断腸の思いで王家に差し出した孫娘が婚約破棄されて帰ってきた

兎屋亀吉
恋愛
ある日王家主催のパーティに行くといって出かけた孫娘のエリカが泣きながら帰ってきた。買ったばかりのドレスは真っ赤なワインで汚され、左頬は腫れていた。話を聞くと王子に婚約を破棄され、取り巻きたちに酷いことをされたという。許せん。戦じゃ。この命燃え尽きようとも、必ずや王家を滅ぼしてみせようぞ。

【完結】兄の事を皆が期待していたので僕は離れます

まりぃべる
ファンタジー
一つ年上の兄は、国の為にと言われて意気揚々と村を離れた。お伽話にある、奇跡の聖人だと幼き頃より誰からも言われていた為、それは必然だと。 貧しい村で育った弟は、小さな頃より家の事を兄の分までせねばならず、兄は素晴らしい人物で対して自分は凡人であると思い込まされ、自分は必要ないのだからと弟は村を離れる事にした。 そんな弟が、自分を必要としてくれる人に会い、幸せを掴むお話。 ☆まりぃべるの世界観です。緩い設定で、現実世界とは違う部分も多々ありますがそこをあえて楽しんでいただけると幸いです。 ☆現実世界にも同じような名前、地名、言葉などがありますが、関係ありません。

元おっさんの俺、公爵家嫡男に転生~普通にしてるだけなのに、次々と問題が降りかかってくる~

おとら@ 書籍発売中
ファンタジー
アルカディア王国の公爵家嫡男であるアレク(十六歳)はある日突然、前触れもなく前世の記憶を蘇らせる。 どうやら、それまでの自分はグータラ生活を送っていて、ろくでもない評判のようだ。 そんな中、アラフォー社畜だった前世の記憶が蘇り混乱しつつも、今の生活に慣れようとするが……。 その行動は以前とは違く見え、色々と勘違いをされる羽目に。 その結果、様々な女性に迫られることになる。 元婚約者にしてツンデレ王女、専属メイドのお調子者エルフ、決闘を仕掛けてくるクーデレ竜人姫、世話をすることなったドジっ子犬耳娘など……。 「ハーレムは嫌だァァァァ! どうしてこうなった!?」 今日も、そんな彼の悲鳴が響き渡る。

処理中です...
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。

このユーザをミュートしますか?

※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。