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外伝 〈一人旅〉
海竜
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「うわっ!?」
船の真下から強い衝撃が走り、ルノは体勢を崩してしまう。船底に何かが衝突したらしく、船全体に亀裂が走る。何が起きているのかは不明だが、十分に魔力は回復した事を確かめてルノは飛翔術を発動させようとした。
「一体何が……何だっ!?」
中央から真っ二つに割れようとしている大船の側面に水飛沫が発生し、巨大な生物の下顎が上顎が出現した。それを確認したルノは危険を感じ取り、飛ぶのは間に合わないと判断して「氷塊」の魔法を発動させる。
オォオオオオオオッ――!!
謎の唸り声が海上に響き渡り、ガリオン船が巨大生物の口内に閉じ込められる。姿を現したのは昨日にルノが遭遇した「巨大鯨」とは異なり、全体が青色の鱗に覆われた巨大な「ウミヘビ」だった。体長は蛇竜にも匹敵し、巨大な口で船を丸のみして鋭利な牙で船を噛み砕く。
『ッ……!?』
だが、咀嚼中に巨大生物は目を見開き、口内から青色の光が発生する。そして内側からこじ開けるように口が徐々に開かれ、上下の牙を両手と両足で押し返して「氷竜」が出現した。
『このっ……死ぬかと思っただろ!!』
『アアアッ……!?』
唐突に口内に現れた氷の竜に巨大生物は戸惑い、一方でルノは氷竜を操作して外部へと移動する。無事に口内から脱出した氷竜はそのまま上空へと移動すると、巨大生物の様子を伺う。
(何なんだこいつは?この姿、何処となく蛇竜と似ているような……あっ!!)
以前にルノはリーリスと二人で旅をしている時、この世界に実在すると伝説の生き物の事を教わっている。リーリスの話によると海に生息する竜種が存在し、名前は「海竜」と呼ばれている生物を思い出した。
『海竜というのは海にしか生息しない竜種です。体長は100メートルを超え、鋭利な牙に頑丈な鱗で覆われた厄介な相手です。外見はウミヘビに近いらしいですけどね』
『海竜?強いの?』
『そりゃ強いですよ。単純な力は火竜や土竜も上回るでしょうね。しかも厄介な事に海竜は海に生息しているので真面に戦えるのは人魚族ぐらいですよ』
『どうやって倒すの?』
『海竜は歴史上で一度も討伐が果たされていません。だから歴史評論家の話では最も強い竜種は海竜と答える人間も少なくはありません』
『へえ……』
リーリスとの会話を思い返し、ルノは竜種の頂点に立つかもしれない存在と向き合う。しかし、海竜は自分の口内から誕生した氷竜に警戒したように視線を向け、やがてゆっくりと身体を沈ませる。
『あれ?逃げた……違う!?』
『オオオオッ……!!』
海竜が海中に沈んだ瞬間、唐突に海面が揺れ動き、津波溶かして氷竜が滞空している位置にまで押し寄せる。慌ててルノは逃げようとしたが、氷竜の肉体は海水に飲み込まれてしまう。
(不味い!!)
咄嗟にルノは氷竜の口を閉じさせて体内に海水が入り込まないように気を付けるが、強い衝撃が氷竜を襲い、海底に向けて移動する。ルノは氷竜を上昇させようとしたが、その前に海竜の巨大な口が氷竜に迫る。
『――――!!』
海中にも関わらずに海竜の鳴き声が響き渡り、咄嗟に氷竜は牙を両腕で掴むが、そのまま海底へ向けて沈められてしまう。深度が深くなるごとに水圧が増加し、氷竜の肉体が軋み始める。
『舐めるな!!』
『ッ……!?』
ルノは強化スキルの「絶対零度」を発動させ、氷竜の全身から冷気を噴き出す。慌てて海竜は自分の口内が凍結する前に氷竜の肉体を離すと、今度は尾を振り翳して氷竜の肉体を叩きつけた。
『うわっ!?』
予想外の攻撃にルノは悲鳴を上げたが、結果的に下から弾かれた形になった氷竜は海上へ向けて吹き飛ばされ、無事に海中から抜け出す。
『あ、危なかった……逃げよう!!』
流石に海中に存在する敵を倒すのは難しく、ルノは氷竜を操作して逃走しようとした瞬間、海竜の顔面が海上に出現し、口元から青色の光線を放つ。
『ブフゥウウウウッ!!』
「何だっ!?」
海竜が吐き出した光線に氷竜の背中の翼が貫通し、そのまま片翼が剥がれ落ちてしまう。予想外の攻撃にルノは戸惑うが、すぐに彼は光線の正体が海水である事に気付き、ウォーターガンのように海竜は体内に取り込んだ海水を吐き出して攻撃した事に気付く。言わば「海水の吐息」であり、真面に受ければ頑丈な氷竜の肉体さえも貫通する程の威力だった。
「くそっ……大人しくしてろ!!」
『オオオッ……!?』
だが、ルノもいい加減に我慢の限界が訪れ、氷竜の口内に移動すると両手を構えて蛇竜戦で身に付けた「冷気の竜巻」を放つ。水属性の魔力と風圧を利用した攻撃法であり、傍目から見たら氷竜が「冷気の吐息」を放っているようにしか見えないだろう。
意外にも効果的だったのか、海竜は冷気の吐息を浴びた瞬間に悲鳴を上げて海中に逃走する。海面が凍り付き、一瞬にして巨大な氷塊が誕生する。
船の真下から強い衝撃が走り、ルノは体勢を崩してしまう。船底に何かが衝突したらしく、船全体に亀裂が走る。何が起きているのかは不明だが、十分に魔力は回復した事を確かめてルノは飛翔術を発動させようとした。
「一体何が……何だっ!?」
中央から真っ二つに割れようとしている大船の側面に水飛沫が発生し、巨大な生物の下顎が上顎が出現した。それを確認したルノは危険を感じ取り、飛ぶのは間に合わないと判断して「氷塊」の魔法を発動させる。
オォオオオオオオッ――!!
謎の唸り声が海上に響き渡り、ガリオン船が巨大生物の口内に閉じ込められる。姿を現したのは昨日にルノが遭遇した「巨大鯨」とは異なり、全体が青色の鱗に覆われた巨大な「ウミヘビ」だった。体長は蛇竜にも匹敵し、巨大な口で船を丸のみして鋭利な牙で船を噛み砕く。
『ッ……!?』
だが、咀嚼中に巨大生物は目を見開き、口内から青色の光が発生する。そして内側からこじ開けるように口が徐々に開かれ、上下の牙を両手と両足で押し返して「氷竜」が出現した。
『このっ……死ぬかと思っただろ!!』
『アアアッ……!?』
唐突に口内に現れた氷の竜に巨大生物は戸惑い、一方でルノは氷竜を操作して外部へと移動する。無事に口内から脱出した氷竜はそのまま上空へと移動すると、巨大生物の様子を伺う。
(何なんだこいつは?この姿、何処となく蛇竜と似ているような……あっ!!)
以前にルノはリーリスと二人で旅をしている時、この世界に実在すると伝説の生き物の事を教わっている。リーリスの話によると海に生息する竜種が存在し、名前は「海竜」と呼ばれている生物を思い出した。
『海竜というのは海にしか生息しない竜種です。体長は100メートルを超え、鋭利な牙に頑丈な鱗で覆われた厄介な相手です。外見はウミヘビに近いらしいですけどね』
『海竜?強いの?』
『そりゃ強いですよ。単純な力は火竜や土竜も上回るでしょうね。しかも厄介な事に海竜は海に生息しているので真面に戦えるのは人魚族ぐらいですよ』
『どうやって倒すの?』
『海竜は歴史上で一度も討伐が果たされていません。だから歴史評論家の話では最も強い竜種は海竜と答える人間も少なくはありません』
『へえ……』
リーリスとの会話を思い返し、ルノは竜種の頂点に立つかもしれない存在と向き合う。しかし、海竜は自分の口内から誕生した氷竜に警戒したように視線を向け、やがてゆっくりと身体を沈ませる。
『あれ?逃げた……違う!?』
『オオオオッ……!!』
海竜が海中に沈んだ瞬間、唐突に海面が揺れ動き、津波溶かして氷竜が滞空している位置にまで押し寄せる。慌ててルノは逃げようとしたが、氷竜の肉体は海水に飲み込まれてしまう。
(不味い!!)
咄嗟にルノは氷竜の口を閉じさせて体内に海水が入り込まないように気を付けるが、強い衝撃が氷竜を襲い、海底に向けて移動する。ルノは氷竜を上昇させようとしたが、その前に海竜の巨大な口が氷竜に迫る。
『――――!!』
海中にも関わらずに海竜の鳴き声が響き渡り、咄嗟に氷竜は牙を両腕で掴むが、そのまま海底へ向けて沈められてしまう。深度が深くなるごとに水圧が増加し、氷竜の肉体が軋み始める。
『舐めるな!!』
『ッ……!?』
ルノは強化スキルの「絶対零度」を発動させ、氷竜の全身から冷気を噴き出す。慌てて海竜は自分の口内が凍結する前に氷竜の肉体を離すと、今度は尾を振り翳して氷竜の肉体を叩きつけた。
『うわっ!?』
予想外の攻撃にルノは悲鳴を上げたが、結果的に下から弾かれた形になった氷竜は海上へ向けて吹き飛ばされ、無事に海中から抜け出す。
『あ、危なかった……逃げよう!!』
流石に海中に存在する敵を倒すのは難しく、ルノは氷竜を操作して逃走しようとした瞬間、海竜の顔面が海上に出現し、口元から青色の光線を放つ。
『ブフゥウウウウッ!!』
「何だっ!?」
海竜が吐き出した光線に氷竜の背中の翼が貫通し、そのまま片翼が剥がれ落ちてしまう。予想外の攻撃にルノは戸惑うが、すぐに彼は光線の正体が海水である事に気付き、ウォーターガンのように海竜は体内に取り込んだ海水を吐き出して攻撃した事に気付く。言わば「海水の吐息」であり、真面に受ければ頑丈な氷竜の肉体さえも貫通する程の威力だった。
「くそっ……大人しくしてろ!!」
『オオオッ……!?』
だが、ルノもいい加減に我慢の限界が訪れ、氷竜の口内に移動すると両手を構えて蛇竜戦で身に付けた「冷気の竜巻」を放つ。水属性の魔力と風圧を利用した攻撃法であり、傍目から見たら氷竜が「冷気の吐息」を放っているようにしか見えないだろう。
意外にも効果的だったのか、海竜は冷気の吐息を浴びた瞬間に悲鳴を上げて海中に逃走する。海面が凍り付き、一瞬にして巨大な氷塊が誕生する。
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