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帝都防衛編
魔王の能力
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「……螺旋氷弾」
『またそれか。それは見飽きたぞ』
「うるさい」
ルノは氷塊の魔法を発動させ、氷塊の砲弾を生み出す。それを見た魔王は落胆したような声を上げるが、ルノはある事を試すため、空中に滞空させた螺旋氷弾を放つ。
「喰らえっ!!」
『くだらん』
魔王は撃ち込まれた氷塊に対して片腕を突き出し、正面から受け止める。高速回転する物体を受け止める握力と膂力は凄まじいが、他の魔法と違い、吸収する様子は見えない。それを確認したルノは魔王の能力の秘密を見抜く。
(まさか……物体は取り込めないのか?)
白雷、黒炎槍、風圧の魔法はどれもが実体を持たない攻撃魔法であり、魔王の肉体に触れた瞬間に吸収された。しかし、氷の塊を生み出して物理攻撃を行う氷塊の魔法だけは魔法を吸収する様子は見られず、ルノは戦法を変えて接近する。
「氷鎧!!」
『……なんのつもりだ?』
鬼武者を模倣して作り出した氷の鎧を身に付け、ルノは魔王に接近する。この状態ならば攻撃も防御も同時に行え、魔王が魔法を出したとしても直撃は避けられる。仮に黒炎を出して来たら強化スキルを発動させて氷鎧を強化させる準備を整え、ルノは魔王に殴りつけた。
『どりゃっ!!』
『ちっ』
迫りくる拳に対して魔王は鬱陶しそうに両腕を交差して防ぐが、それを確認したルノは魔王が魔法を吸収出来ないと確信し、全身の力を込めて殴りつける。
『ぶっ飛べ!!』
『ぬうっ!?』
魔王の肩に拳が衝突し、水晶のような肉体に亀裂が走る。予想よりも頑丈ではあるが、レベル99を超えたルノの身体能力ならば損傷を与えられるようだった。
『おらぁっ!!』
『むうっ……』
今度は両手で魔王の首筋に手刀を叩きつけると、魔王も煩わしそうに氷鎧を両手で押しのける。単純な膂力は魔王もルノに引けは取らず、巨体であるために動作が鈍い氷鎧の弱点を突いて攻撃を仕掛ける。
『いい加減に出てこい』
『うわっ!?』
関節技も心得ているのか魔王はルノの右腕を掴み、そのまま「脇固め」のように抑えつける。しかし、咄嗟にルノは氷鎧を浮上させ、魔王の肉体ごと空中に移動して体勢を反転させ、逆に地面に叩きつけた。
『このっ!!』
『うおっ!?』
ルノの氷鎧の下敷きになる形で魔王の肉体が地面に衝突し、地面に埋もれる。それを確認したルノは無我夢中に殴りつけて水晶の肉体の破壊を試みる。
『うおおおおおっ!!』
『ぐうっ……!?』
子供の喧嘩のように馬乗りになった氷鎧が何度も拳を叩きつけ、魔王は両腕を交差して防ぐが、徐々に全身に罅割れが生じ始める。しかし、殴る途中でルノは違和感を抱き、何故か魔王が魔法を使用しない事に疑問を抱く。
『離れろっ!!』
『うわっ!?』
振り下ろされた右腕を掴み、腕を掴んだ状態から回転して魔王はルノを横転させると、今度は反対に自分が馬乗りになって手刀を繰り出す。
『今度はこちらの番だ』
『うわっ!?』
氷鎧の頭部の部分に魔王の手刀が衝突し、氷塊に亀裂が走る。慌ててルノは氷鎧を浮上させ、自分に乗り込んでいた魔王の両足を掴み、再び地面に叩きつけた。
『このっ!!』
『ちぃっ!!』
しかし、流石に学習したのか魔王は地面に叩きつけられる前に両腕を頭部の後ろに回し、最低限の受身を行う。だが、それを確認したルノは魔王の肉体を掴んだまま振り回す。
『行くぞぉおおおっ!!』
『おおおっ……!?』
プロレス技の「ジャイアントスイング」のように魔王の肉体を振り回し、十分に加速した時点でルノは魔王を投擲する。狙いは砦の周囲に取り囲んでいる防壁であり、魔王の肉体が衝突した瞬間に激しい振動と土煙が発生する。
『ぐうっ……この程度の攻撃など……』
『いや、これで終わりだ』
『なんだと?』
壁に身体が減り込んだ魔王は即座に抜け出そうとしたが、ルノは氷鎧を解除して飛翔術を利用し、防壁に両手を触れる。この砦の防壁は元々は硬い岩石をルノが土塊の魔法を利用して作り出した物であり、土塊の魔法を発動させてルノは防壁の形状を変化させた。
「固まれ!!」
『これは……!?』
壁が粘土のように変形して魔王の身体を内部へと取り込み、魔王の肉体を壁の中へ移動させる。遂には魔王の肉体は完全に閉じ込める事に成功した。
「……さあ、どう動く?」
壁から十分な距離に離れたルノは魔王の様子を伺い、壁に閉じ込めた程度で倒せる相手ではない事は理解している。しかし、重要なのはどうやって魔王が抜け出すかであり、ルノは両手を構える。
『……くだらんっ!!』
防壁に亀裂が発生し、魔王の右腕が出現する。内側から力尽くで壁を破壊して外へ脱出し、流石に苛立ちを隠せずに魔王はルノに怒鳴りつけた。
『いい加減にしろ!!真面に戦えないのか!!』
「……頭上に注意した方が良いよ」
『何だと?』
「落石注意!!」
壁から抜け出してきた魔王に対し、ルノは右手を構えると螺旋氷弾を打ち込む。接近してきた氷塊の砲弾に対して魔王は咄嗟に両手を構えるが、ルノの狙いは魔王ではなく、彼の背後に存在する防壁に向けて撃ち込み、砲弾で壁の一部を破壊して瓦礫を魔王の頭上に衝突させた。
『またそれか。それは見飽きたぞ』
「うるさい」
ルノは氷塊の魔法を発動させ、氷塊の砲弾を生み出す。それを見た魔王は落胆したような声を上げるが、ルノはある事を試すため、空中に滞空させた螺旋氷弾を放つ。
「喰らえっ!!」
『くだらん』
魔王は撃ち込まれた氷塊に対して片腕を突き出し、正面から受け止める。高速回転する物体を受け止める握力と膂力は凄まじいが、他の魔法と違い、吸収する様子は見えない。それを確認したルノは魔王の能力の秘密を見抜く。
(まさか……物体は取り込めないのか?)
白雷、黒炎槍、風圧の魔法はどれもが実体を持たない攻撃魔法であり、魔王の肉体に触れた瞬間に吸収された。しかし、氷の塊を生み出して物理攻撃を行う氷塊の魔法だけは魔法を吸収する様子は見られず、ルノは戦法を変えて接近する。
「氷鎧!!」
『……なんのつもりだ?』
鬼武者を模倣して作り出した氷の鎧を身に付け、ルノは魔王に接近する。この状態ならば攻撃も防御も同時に行え、魔王が魔法を出したとしても直撃は避けられる。仮に黒炎を出して来たら強化スキルを発動させて氷鎧を強化させる準備を整え、ルノは魔王に殴りつけた。
『どりゃっ!!』
『ちっ』
迫りくる拳に対して魔王は鬱陶しそうに両腕を交差して防ぐが、それを確認したルノは魔王が魔法を吸収出来ないと確信し、全身の力を込めて殴りつける。
『ぶっ飛べ!!』
『ぬうっ!?』
魔王の肩に拳が衝突し、水晶のような肉体に亀裂が走る。予想よりも頑丈ではあるが、レベル99を超えたルノの身体能力ならば損傷を与えられるようだった。
『おらぁっ!!』
『むうっ……』
今度は両手で魔王の首筋に手刀を叩きつけると、魔王も煩わしそうに氷鎧を両手で押しのける。単純な膂力は魔王もルノに引けは取らず、巨体であるために動作が鈍い氷鎧の弱点を突いて攻撃を仕掛ける。
『いい加減に出てこい』
『うわっ!?』
関節技も心得ているのか魔王はルノの右腕を掴み、そのまま「脇固め」のように抑えつける。しかし、咄嗟にルノは氷鎧を浮上させ、魔王の肉体ごと空中に移動して体勢を反転させ、逆に地面に叩きつけた。
『このっ!!』
『うおっ!?』
ルノの氷鎧の下敷きになる形で魔王の肉体が地面に衝突し、地面に埋もれる。それを確認したルノは無我夢中に殴りつけて水晶の肉体の破壊を試みる。
『うおおおおおっ!!』
『ぐうっ……!?』
子供の喧嘩のように馬乗りになった氷鎧が何度も拳を叩きつけ、魔王は両腕を交差して防ぐが、徐々に全身に罅割れが生じ始める。しかし、殴る途中でルノは違和感を抱き、何故か魔王が魔法を使用しない事に疑問を抱く。
『離れろっ!!』
『うわっ!?』
振り下ろされた右腕を掴み、腕を掴んだ状態から回転して魔王はルノを横転させると、今度は反対に自分が馬乗りになって手刀を繰り出す。
『今度はこちらの番だ』
『うわっ!?』
氷鎧の頭部の部分に魔王の手刀が衝突し、氷塊に亀裂が走る。慌ててルノは氷鎧を浮上させ、自分に乗り込んでいた魔王の両足を掴み、再び地面に叩きつけた。
『このっ!!』
『ちぃっ!!』
しかし、流石に学習したのか魔王は地面に叩きつけられる前に両腕を頭部の後ろに回し、最低限の受身を行う。だが、それを確認したルノは魔王の肉体を掴んだまま振り回す。
『行くぞぉおおおっ!!』
『おおおっ……!?』
プロレス技の「ジャイアントスイング」のように魔王の肉体を振り回し、十分に加速した時点でルノは魔王を投擲する。狙いは砦の周囲に取り囲んでいる防壁であり、魔王の肉体が衝突した瞬間に激しい振動と土煙が発生する。
『ぐうっ……この程度の攻撃など……』
『いや、これで終わりだ』
『なんだと?』
壁に身体が減り込んだ魔王は即座に抜け出そうとしたが、ルノは氷鎧を解除して飛翔術を利用し、防壁に両手を触れる。この砦の防壁は元々は硬い岩石をルノが土塊の魔法を利用して作り出した物であり、土塊の魔法を発動させてルノは防壁の形状を変化させた。
「固まれ!!」
『これは……!?』
壁が粘土のように変形して魔王の身体を内部へと取り込み、魔王の肉体を壁の中へ移動させる。遂には魔王の肉体は完全に閉じ込める事に成功した。
「……さあ、どう動く?」
壁から十分な距離に離れたルノは魔王の様子を伺い、壁に閉じ込めた程度で倒せる相手ではない事は理解している。しかし、重要なのはどうやって魔王が抜け出すかであり、ルノは両手を構える。
『……くだらんっ!!』
防壁に亀裂が発生し、魔王の右腕が出現する。内側から力尽くで壁を破壊して外へ脱出し、流石に苛立ちを隠せずに魔王はルノに怒鳴りつけた。
『いい加減にしろ!!真面に戦えないのか!!』
「……頭上に注意した方が良いよ」
『何だと?』
「落石注意!!」
壁から抜け出してきた魔王に対し、ルノは右手を構えると螺旋氷弾を打ち込む。接近してきた氷塊の砲弾に対して魔王は咄嗟に両手を構えるが、ルノの狙いは魔王ではなく、彼の背後に存在する防壁に向けて撃ち込み、砲弾で壁の一部を破壊して瓦礫を魔王の頭上に衝突させた。
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