最弱職の初級魔術師 初級魔法を極めたらいつの間にか「千の魔術師」と呼ばれていました。

カタナヅキ

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帝都防衛編

魔王降臨

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「何だ……?」
「しまっ……魔王様!?」
「ウォオオオオンッ!!」
「キュロロロロロッ!!」
「ブモォオオオオッ!!」


ルノが手にしている水晶玉が唐突に蠢き、まるでスライムのように形状を変化させる。その様子を見た魔獣達は鳴き声を上げ、鎖で拘束されているにも関わらずに興奮したように立ち上がる。ルノは何が起きているのか理解できないが、水晶玉を地面に手放す。


「駄目です魔王様!!この男は……」
『モウイイ、オマエタチデハアイテニナラン』
「まさか……!?」


水晶玉は徐々に人間の形状へと変化を果たし、やがて現れたのは女性のシルエットを模した水晶の像だった。それを目撃したルノは自分が手にしていた水晶玉の正体を見抜く。


「スライムだったのか!!」
『そうだ……我こそが今世の魔王だ』


先程まで片言だったにも関わらず、人間の姿へと変化を果たすと流暢に喋れるようになり、魔王を自称するスライムはルノと向き合う。まさか自分が手にしていた水晶玉の正体が魔王だとは気づかず、ルノは咄嗟に身構えた。


「お前が魔王軍を操っている黒幕か!!」
『いや……それはどうかな』
「え?」
『だが、そんな事はどうでもいい。勇者よ……我に力を見せよ!!』


魔王が一括した瞬間、衝撃波のような威圧が周囲に拡散し、魔獣達が怯えたように身体を伏せる。その様子を見たルノは魔王の危険性を察知し、相手の正体を確かめる暇もなく咄嗟に右手を突き出して魔法を放つ。


「螺旋氷弾!!」
『むっ!!』


ルノが繰り出した氷塊の砲弾に対し、魔王は片手を構え、受け止める。高速回転する螺旋状の砲弾に対し、魔王は正面から抑えつける。


『ほうっ……凄まじい力だ』
「まさか……!?」
「ま、魔王様!!」


片腕のみで螺旋氷弾の回転を抑えて止めた魔王に対し、ルノは動揺した表情を浮かべ、カイは歓喜の声を上げる。しかし、即座にルノはステータス画面を開き、強化スキルを発動させた。


「それならこれでどうだ!!」
『ぬうっ……!?』


受け止められた螺旋氷弾から凄まじい冷気が迸り、魔王の肉体を氷結化させようとする。あまりの冷気に魔王の右腕が凍り付くが、即座に魔王は腕を振り下ろす。


『ふんっ!!』
「嘘っ!?」


凍り付いた腕を振り払い、氷結化した右腕を自ら破壊して引き剥がす。その光景にルノは驚くが、魔王は失った右腕に視線を向け、トカゲの尻尾のように再生させた。


『今のは驚いたぞ。だが、この程度では我は倒せない』
「それなら……白雷!!」


瞬時に再生を果たした魔王に対してルノは白色の電撃を与えるが、魔王は意にも介さずにルノの元へ近づき、電流を浴びながらも話しかける。


『ほう、面白い魔法の使い方をするな』
「き、効かない!?」
「無駄だ!!魔王様にその程度の魔法など通用しない!!」


電撃を受けても無傷で歩み寄る魔王に対し、ルノは慌てて後方に下がると、今度は両手を地面に構えて土塊の魔法で魔王の周囲を土壁で取り囲む。


「大人しくしてろ!!」
『む……?』


土壁によって周囲を取り囲まれた魔王は内部から抜け出す様子はなく、その隙にルノは土壁越しに魔王の位置に向けて掌を突き出す。


「黒炎槍!!」


ルノの魔法の中では最大の火力を誇る黒炎の槍を放ち、土壁を溶解させて内部に存在する魔王に衝突させる。しかし、土壁に取り囲まれていても魔王は攻撃が来ることを予測していたように左手を前に出して黒炎槍を受け止める。


「そんなっ!?」
『なるほど、確かに奴等では敵わないはずだ』


炎を吸収するように魔王の体内に取り込み、透明だったはずの肉体が赤黒く変色し、更に電流を帯びる。ルノの魔法を「吸収」した魔王は両手を構え、それを見たルノは咄嗟に身を守る為に氷塊の魔法を発動させた。


『楽しめたぞ……勇者よ』
「氷塊!!」


魔王の前に厚さが1メートルも存在する氷壁が誕生するが、魔王はそれを見ても動じず、右手を突き出して黒炎を解き放つ。火炎放射のように解き放たれた黒炎が氷壁を一瞬にして飲み込み、それを目撃したルノは目を見開く。


『さらばだ』
「っ……!?」



――次の瞬間、黒炎は氷壁を完全に溶かし尽くし、さらに周辺一帯を焼き払う。その光景に魔獣達は目を見開き、炎に飲み込まれた主人を見て鳴き声を上げた。




※ある準備を行うため、申し訳ありませんが明日は1話投稿になります。
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