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帝都防衛編
最高幹部
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「なんで……こんな事に」
目の前に横たわる幼い双子の少女の死体にルノは涙を流し、彼女達が犯罪者である事、大勢に人間に被害を与えようとした事は理解している。それでも最後まで姉の事を心配していた妹の姿を見てルノは哀れむ。
「クゥ~ンッ……」
「キュロロッ……」
「ブモォッ……」
「……ああ、ごめんね。今から鎖を外すから……」
主人が悲しんでいる姿に「チェーン」と呼ばれる鎖の神器で拘束された魔獣達が悲しそうな声を上げ、ルノは起き上がって皆の元へ向かう。その際に倒れているカイに視線を向け、面倒ではあるが彼の身体を持ち上げて魔獣達の元へ近づこうとした時、ルノが吹き飛ばしたはずの「白霧」が再び砦の中に押し寄せてきた。
「何だこの霧は……消えろっ!!」
苛立ちを隠さずにルノは再び風圧の魔法を放ち、周囲から迫る白霧を吹き飛ばす。しかし、どういう事なのかいくら吹き飛ばされても白霧は数秒もしない内に復活し、砦の中に侵入してくる。その様子に疑問を抱いたルノは魔獣達の元へ急ぎ、彼等の身を守る為に鎖を外そうとする。
「皆、待っててね。すぐに外してあげるから」
「ウォンッ!!」
「キュロロッ!?」
「ブモォッ!!」
だが、ルノが鎖に手を触れようとした瞬間、魔獣達は暴れ出し、何かを警戒するように叫び声を上げる。そんな彼等の反応に戸惑いながらもルノは鎖に視線を向け、直接触れるのは不味いと判断した。
「触るなっ……と言ってるの?でも、それならどうやって解除すればいいの?」
「貴様は……もう、お終いだ」
「お前……気が付いていたのか」
ルノが肩に担いでいるカイが声を上げ、ルノは彼の身体を降ろすと、カイは血反吐を吐きながらも口元に笑みを浮かべていた。話している間にも白霧が周囲から押し迫り、ルノはカイを睨みつける。
「さっきの女の子達が殺された。まだ仲間がいたんだな」
「ふっ……探しても無駄だ。俺も奴の正体は知らない……」
「どういう意味?」
「言葉通りの意味だ……魔王軍、最高幹部のクズノ……奴は霧を操る」
「霧……」
カイの言葉にルノは周囲から迫る白霧に視線を向け、双子が殺されたときも霧に包み込まれた後であり、ルノは敵が白霧の中に隠れている事に気付く。
「そいつは何処にいる!!」
「無駄だ……奴の姿を見た者はいない。常に指示を与えるときも霧の中で隠れる奴だ。最もあの双子なら何か知っていたかもしれないがな……」
ルノを煽るようにカイは双子が存在する場所に視線を向けようとしたが、既に白霧によって覆い隠されており、彼は溜息を吐き出す。
「ちっ……生意気なガキ共め。勝手に死にやがって……」
「仲は良かったの?」
「ふんっ……笑わせるな」
何処となく寂しげな表情を浮かべながらカイは懐に手を伸ばし、咄嗟にルノは掌を構えたが、彼が取り出したのは水晶玉だった。吸魔石のように無色透明な水晶玉をカイは見つめ、ルノに差し出す。
「早く受け取れ……」
「これは?」
「持てば分かる」
唐突に差し出された水晶玉にルノは困惑し、カイは早々に受け取るように指示する。話している間にも白霧が押し寄せており、仕方なくルノは水晶玉を受け取る。
「……何も起きない」
「そんなはずはない……聞こえてくるはずだ」
「何を言って……何だ?」
ルノが受け取った水晶玉が徐々に光り輝き、やがて中心部に人間の影が誕生する。そしてルノの脳内に機会音声のような声が響く。
『キコエルカ……ニンゲンヨ』
「だ、誰だ!?」
『ワガナハ……マオウ』
脳内に「マオウ」を自称する声が響き渡り、ルノは目を見開く。どういう事なのかとカイに視線を向けると、彼は疲れた表情を浮かべながら説明する。
「遠方の相手と会話する事が出来る水晶玉だ……俺達は「連絡玉」と呼んでいる」
「連絡玉……じゃあ、今話している相手は」
「魔王様だ」
カイの言葉にルノは冷や汗を流し、何時の間にか周囲に押し寄せていた白霧が自分達を取り囲んでいる事に気付く。しかし、白霧は一定の距離を保って留まり、近付く様子はない。霧を操作している魔王軍の最高幹部のクズノも様子を伺っているのではないかと考えながらルノは連絡玉を通して魔王を自称する何者かと話す。
「もしもし……聞こえる?」
『モンダイナイ……』
「電話みたいな物か……でかいスマホだな」
『スマホ……?』
「無駄話をするな!!魔王様の言葉を聞け!!」
ルノが連絡玉に話しかけていると、カイが憤ったように声を荒げるが、そんな彼を無視してルノは魔王に問い質す。
「お前が魔王か」
『ソウダ』
「そう、ならお前は何処にいる。その面、殴り飛ばしてやる」
『………』
挑発を込めたルノの言葉に黙り込み、自分の方から連絡を送ってきた魔王の真意は分からないが、ルノは更に怒鳴りつける。
「隠れてないで出てこい……必ず見つけてぶっとばしてやる!!」
『ソレガ、オマエノノゾミカ……?』
「そうだ」
『ナラバ……ソノネガイヲカナエヨウ』
「えっ……?」
目の前に横たわる幼い双子の少女の死体にルノは涙を流し、彼女達が犯罪者である事、大勢に人間に被害を与えようとした事は理解している。それでも最後まで姉の事を心配していた妹の姿を見てルノは哀れむ。
「クゥ~ンッ……」
「キュロロッ……」
「ブモォッ……」
「……ああ、ごめんね。今から鎖を外すから……」
主人が悲しんでいる姿に「チェーン」と呼ばれる鎖の神器で拘束された魔獣達が悲しそうな声を上げ、ルノは起き上がって皆の元へ向かう。その際に倒れているカイに視線を向け、面倒ではあるが彼の身体を持ち上げて魔獣達の元へ近づこうとした時、ルノが吹き飛ばしたはずの「白霧」が再び砦の中に押し寄せてきた。
「何だこの霧は……消えろっ!!」
苛立ちを隠さずにルノは再び風圧の魔法を放ち、周囲から迫る白霧を吹き飛ばす。しかし、どういう事なのかいくら吹き飛ばされても白霧は数秒もしない内に復活し、砦の中に侵入してくる。その様子に疑問を抱いたルノは魔獣達の元へ急ぎ、彼等の身を守る為に鎖を外そうとする。
「皆、待っててね。すぐに外してあげるから」
「ウォンッ!!」
「キュロロッ!?」
「ブモォッ!!」
だが、ルノが鎖に手を触れようとした瞬間、魔獣達は暴れ出し、何かを警戒するように叫び声を上げる。そんな彼等の反応に戸惑いながらもルノは鎖に視線を向け、直接触れるのは不味いと判断した。
「触るなっ……と言ってるの?でも、それならどうやって解除すればいいの?」
「貴様は……もう、お終いだ」
「お前……気が付いていたのか」
ルノが肩に担いでいるカイが声を上げ、ルノは彼の身体を降ろすと、カイは血反吐を吐きながらも口元に笑みを浮かべていた。話している間にも白霧が周囲から押し迫り、ルノはカイを睨みつける。
「さっきの女の子達が殺された。まだ仲間がいたんだな」
「ふっ……探しても無駄だ。俺も奴の正体は知らない……」
「どういう意味?」
「言葉通りの意味だ……魔王軍、最高幹部のクズノ……奴は霧を操る」
「霧……」
カイの言葉にルノは周囲から迫る白霧に視線を向け、双子が殺されたときも霧に包み込まれた後であり、ルノは敵が白霧の中に隠れている事に気付く。
「そいつは何処にいる!!」
「無駄だ……奴の姿を見た者はいない。常に指示を与えるときも霧の中で隠れる奴だ。最もあの双子なら何か知っていたかもしれないがな……」
ルノを煽るようにカイは双子が存在する場所に視線を向けようとしたが、既に白霧によって覆い隠されており、彼は溜息を吐き出す。
「ちっ……生意気なガキ共め。勝手に死にやがって……」
「仲は良かったの?」
「ふんっ……笑わせるな」
何処となく寂しげな表情を浮かべながらカイは懐に手を伸ばし、咄嗟にルノは掌を構えたが、彼が取り出したのは水晶玉だった。吸魔石のように無色透明な水晶玉をカイは見つめ、ルノに差し出す。
「早く受け取れ……」
「これは?」
「持てば分かる」
唐突に差し出された水晶玉にルノは困惑し、カイは早々に受け取るように指示する。話している間にも白霧が押し寄せており、仕方なくルノは水晶玉を受け取る。
「……何も起きない」
「そんなはずはない……聞こえてくるはずだ」
「何を言って……何だ?」
ルノが受け取った水晶玉が徐々に光り輝き、やがて中心部に人間の影が誕生する。そしてルノの脳内に機会音声のような声が響く。
『キコエルカ……ニンゲンヨ』
「だ、誰だ!?」
『ワガナハ……マオウ』
脳内に「マオウ」を自称する声が響き渡り、ルノは目を見開く。どういう事なのかとカイに視線を向けると、彼は疲れた表情を浮かべながら説明する。
「遠方の相手と会話する事が出来る水晶玉だ……俺達は「連絡玉」と呼んでいる」
「連絡玉……じゃあ、今話している相手は」
「魔王様だ」
カイの言葉にルノは冷や汗を流し、何時の間にか周囲に押し寄せていた白霧が自分達を取り囲んでいる事に気付く。しかし、白霧は一定の距離を保って留まり、近付く様子はない。霧を操作している魔王軍の最高幹部のクズノも様子を伺っているのではないかと考えながらルノは連絡玉を通して魔王を自称する何者かと話す。
「もしもし……聞こえる?」
『モンダイナイ……』
「電話みたいな物か……でかいスマホだな」
『スマホ……?』
「無駄話をするな!!魔王様の言葉を聞け!!」
ルノが連絡玉に話しかけていると、カイが憤ったように声を荒げるが、そんな彼を無視してルノは魔王に問い質す。
「お前が魔王か」
『ソウダ』
「そう、ならお前は何処にいる。その面、殴り飛ばしてやる」
『………』
挑発を込めたルノの言葉に黙り込み、自分の方から連絡を送ってきた魔王の真意は分からないが、ルノは更に怒鳴りつける。
「隠れてないで出てこい……必ず見つけてぶっとばしてやる!!」
『ソレガ、オマエノノゾミカ……?』
「そうだ」
『ナラバ……ソノネガイヲカナエヨウ』
「えっ……?」
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