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帝都防衛編

双子の行方

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帝都の南側で起きた騒動を当事者のドリスから聞き終えたアイラが代わりに説明を行い、討伐軍が帰還した時に南門の前で人混みが出来ていた事を説明する。


「それで南門にこんなに人が集まっていたんですか?」
「ああ、城門に集まっていたのは兵士が見た事もない竜種がこちらに近づいていると言われてね。だから冒険者である私達が対応するために残ったんだが、まさか未確認生物の正体が土竜だとは思わなかったが……」
「私も今戻ってきた所」


討伐軍達が帰還した際に冒険者と兵士が南門に集まっていたのは魔王軍を名乗る幹部の双子が原因であり、ヒカゲが居合わせたのも偶然らしい。幸いというべきか街中に火災は既に消火済みであり、現在確認出来る限りでは被害者は少数で済んだという。


「今度はこちらから聞かせてください。一体、何が起きたんですか?」
「うむ……話は長くなるが――」


討伐軍の間に何が起きたのかは先帝が自ら説明を行い、その間にルノ達は土竜に積み込まれた物資を運び込む。無事だった水大砲の他にも岩人形の死骸から回収した経験石も存在し、後でルノが倒した蛇竜の素材も回収する必要がある。結果的には無事に今回も危機を乗り越えたが、反省点も多い。


「やはり岩人形の大軍は囮だったか……もっと帝都に戦力を残して置けば今回のような事態を防げたかもしれん」
「まあ、四天王全員が動いたのは問題でしたね。何人か残しておくべきでした」
「相手の狙いがルノ様だと思い込んでいたのも問題でした……魔王軍の目的は帝国の崩壊だと知っていたのに」
「私も長く帝都を離れていたのもいけなかった」
「うじうじ考えてんじゃねえよ!!終わったもんはしょうがないだろ!!」
「貴様はもっと真面目に捉えんかっ!!」


流石に今回ばかりはリーリスも自分達の行動の浅はかさを反省しているにも関わらず、ダンテは不機嫌そうに呟く。結果としては魔王軍の策略に引っかかってしまったが、それでも岩人形の全滅と蛇竜という脅威を倒したのも事実である。

しかし、今回の遠征はそもそもルノ一人でも問題なく対応出来たのは間違いなく、あまりに魔王軍の行動に警戒しすぎて必要以上に戦力を分散させ、帝都の警備を弱めたのは問題だった。


「皆の者、反省は後だ。まずは城に戻るぞ」
「そうですね。魔王軍が完全に撤退したとは限りませんし、ここは一旦城に戻って態勢を立て直しましょうか」
「あ、それなら家によってもいいかな?ロプス達が心配だから……」
「うむ。だが、出来るだけ早く戻ってきてくれ」
「はい!!」


先帝から許可を得たルノは氷板スケボを作り出し、自宅の屋敷に向かう。屋敷に残してきた魔獣達が無事なのかを確かめるために急ぐ――




――数分後、屋敷に戻ったルノは鉄柵を乗り越えて敷地内に入ると違和感を感じ取る。普段ならば裏庭に存在するはずのルウ達の姿が見えず、それどころか屋敷の門が開かれている事に気付く。


「皆!!何処にいるの!?」


ルノが大声で呼び出しても反応はなく、危機感を抱いたルノは玄関から中に入る。特に屋敷の中は何者かに荒らされている様子はないが、家政婦のように家事を行っているロプスやミノの姿は見えず、不安を煽る。


「ロプス!!ミノ!!ルウ!!スラミン!!何処にいるの!?」
「……ぷるぷるっ」
「スラミン!?」


皆の名前を叫んでいると玄関からスラミンの声が聞こえ、どうやら玄関口に置いてある花瓶の中に隠れていたらしく、ルノの姿を見て慌てて飛び込む。


「ぷるるんっ!!」
「うわっ……大丈夫?」
「ぷるぷるっ!!」


スラミンを抱き上げると何が起きたのかルノが尋ねると、スラミンはこれまでに無い程に身体を小刻みに震わせ、玄関の扉を見るように促す。不思議に思いながらもルノは玄関に視線を向けると、そこには短剣を突き刺して固定された手紙が存在し、それを見てルノは目を見開く。


「これは……!!」


手紙には髑髏の紋様が刻まれており、すぐに短剣を引き抜いて手紙の内容を開くと、そこには短めの文章が記されていた。


『お前達が作り出した白原の砦にて待つ。1時間以内に来なければ魔獣の命はない』


文章を読み上げたルノは手紙を握りしめ、これまでに無い程の怒りを抱く。それを感じ取ったスラミンは怯えたように彼から離れるが、ルノは玄関の扉を荒々しく開いて外へ飛び出した――
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