最弱職の初級魔術師 初級魔法を極めたらいつの間にか「千の魔術師」と呼ばれていました。

カタナヅキ

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帝都防衛編

帝都での出来事

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――アイラの話によると討伐軍が出発してから間もなく城下町にて複数の場所に火災が起きたという。帝国は事前に城下町の警備兵の数を増加させて街中を巡回させていた事が幸いし、即座に対応する。しかし、街に配備されていた兵士達が火事に対応している間、帝都の南側で魔王軍の幹部が現れたという。


『我が名はアリシア!!帝国を滅びに導く者!!』
『我が名はエルミナ!!帝国を破滅に陥れる者!!』


南門に現れたのは双子と思われる金髪銀髪の少女であり、どちらも幼いが見目麗しい外見の少女だったという。双子は南門にて民衆を前に叫び声を上げると、杖を取り出して魔法を発動させる。


『喰らえっ!!これが魔王様の怒りだ!!』
転移テレポート!!』


双子が杖を天空に翳した瞬間、魔法陣が空中に展開し、隕石を想像させる巨大な岩石の塊を生み出したという。魔法陣から出現した岩石は地上の建物に向けて落下し、街道に存在した人々は逃げ惑う。


『さあっ!!これが魔王軍の力……』
『サンダーボルト!!』


しかし、空中から解き放たれた岩石は地面に落ちる寸前に地上に存在した人間の一人が生み出した雷撃によって砕け散り、破片と化して周囲に散らばったという。その際、双子の攻撃を邪魔したのは偶然にも居合わせたS級冒険者のドリスだった。


『呼ばれて来たから何事かと思えば……まさかこのような場所で魔王軍と遭遇するとは思いませんでしたわ!!』
『だ、誰!?』
『私達の邪魔をするなっ!!』
『そういう訳には参りませんわ!!貴方達のような悪党は冒険者としては見過ごせませんわ!!』


ルノとの戦闘でより一層に腕を磨いたドリスは雷属性の砲撃魔法で岩石を吹き飛ばし、双子と向かい合う。まさか自分達を邪魔する存在がここまで早く現れる事を予期していなかったのか、双子は激しく動揺する。


『くっ……こ、こんな人が居るなんて聞いてないよお姉ちゃん』
『こら!!仕事中は姉上と言いなさい!!大丈夫よ……私と貴方なら誰にも負けないわ』
『何を話しているんですの?来ないならこっちから行きますわよ!!』


ドリスと向かい合った双子は最初の時とは態度を一変させ、年齢相応の幼さを感じさせる口調になったが、ドリスは容赦なく攻撃を仕掛けた。


『トリプル・マジック……サンダーランス!!』
『連続魔法!?』
『不味い……逃げなきゃっ!!』


魔術師の中でもレベルが50を超えなければ習得できない「連続魔法」の技能スキルを発動させ、ドリスは一度に3つの砲撃魔法を放つ。それを目撃した双子は慌てて杖を構えて自分達の目の前に魔法陣を作り出す。


『止めてっ!!』
『なっ!?』


ドリスの生み出した3つの電撃は魔法陣に飲み込まれて消えてしまい、それを確認した双子の片割れが杖を振り翳す。


『お返しよっ!!自分の魔法でも受けてなさい!!』
『きゃあっ!?』


双子の姉の方であるエルミナが杖を翳した瞬間、杖先から新しい魔法陣が誕生し、先ほど吸収したドリスの砲撃魔法を生み出す。ドリスは返された自分の砲撃魔法を受けて倒れこみ、電撃によって発火した衣服を慌てて両手で振り払う。


『熱いっ!?誰か、水を……』
『ほりゃっ!!』


この世界の法則として使用者が生み出した魔法は使用者自身の肉体は傷つける事はないが、身体に纏わりついている衣服に関しては別であり、ドリスの服は感電して燃えてしまう。ドリスは必死に炎を振り払おうとすると、小髭族の一人が桶に入った水を彼女の身体に浴びせた。


『ぶはっ……!?た、助かりましたわ……」
『大丈夫か嬢ちゃん?』
『ええ、どうにか……あれ?貴方はもしかして……』
『おお、誰かと思えばドリスの嬢ちゃんじゃねえかっ!!』


偶然にもドリスを救い出したのは彼女と同じくS級冒険者であるガジであり、彼も偶然にも帝都に訪れていたらしく、広場の騒ぎを聞きつけて駆けつけてきたらしい。二人は面識があったらしく、再会を喜ぶ。


『お久しぶりですわね!!貴方から受け取ったこの間の水属性の魔石は非常に良質で役立っていますわ』
『おおっ、そいつは良かった。あの魔石を手に入れるのは苦労したからな……』
『ちょっと、こっちを無視して何を話し込んでいるのよ!!』
『お、お姉ちゃん……もう逃げようよ』


自分達を無視して会話を行うドリスとガジにエルミナは怒鳴りつけるが、アリシアは不安そうな表情を浮かべて姉の服を引っ張り、逃走を促す。しかし、そんな彼女の背後から1人の男性が近づき、刀を構える。


『そこまでだ』
『ひっ!?』
『アリシア!?このっ……きゃあっ!?』
『……童と言えど、暴れるなら容赦はせんぞ』
『おお、ガインの旦那じゃねえか!?』


双子の背後からドリスとガジと同じくS級冒険者である侍のガインが現れ、双子の首筋に日本刀の刃を構える。彼の姿を見てガジは嬉しそうな声を上げ、ドリスは初めて出会うが名前だけは前々から聞いていたガインを目にして驚く。
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