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帝都防衛編
氷の世界
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『馬鹿なっ!?こんなっ……こんな物でぇっ!!』
「……無駄だ」
周辺一帯がルノの魔法によって氷結化され、氷の世界へと変貌する。無数の氷塊から生み出される冷気を蛇竜は防ぐ手段はなく、巨体である事が災いして逃れる事も出来ず、蛇竜の肉体が冷気に襲われ、全身が氷漬けにされていく。逃げようにも凍り付いた肉体では動く事も出来ず、蛇竜は必死に首を動かして火炎の吐息で身体を溶かそうとした。
『こ、こんな物……ぐあっ!?』
「……動きさえ止めればどうにでもできる」
その隙を逃さず、ルノは螺旋氷弾を蛇竜の額に打ち込み、氷結化を更に促す。額に突き刺さった螺旋氷弾によって脳内にまで冷気が達したのか、蛇竜は断末魔の悲鳴を上げる。
『うおぁああっ――!?』
「……これで終わりだ」
完全な氷像と化した蛇竜に視線を向け、ルノは地上に着地すると全ての氷塊を解除させる。冷気を生み出す氷を失っても既に氷結化した物は溶けるまで時間が掛かり、その隙にルノは掌を差し出して全ての初級魔法を発動させた。
「お前、強かったよ……はああっ!!」
右手に黒炎槍、左手に白色の電撃を帯びた螺旋氷弾を生成し、掌を突き出して蛇竜の肉体に放つ。複数の属性を組み合わせた魔法同士が衝突させ、反発作用を引き起こして「光の衝撃波」と化す。次の瞬間、蛇竜の肉体は光の衝撃波に飲み込まれ、頭から胴体の部分が「消滅」した。その光景を確認したルノは光が収まるまで待ち、ステータス画面を開いてレベルの項目を確認する。
「……倒したか」
――ルノの視界にはレベルが「99(限界値)」と表示されたステータス画面が広がり、無事に蛇竜を倒したことで経験値を入手した事を知る。遂にこの世界の最高値までレベルを上昇させたルノは蛇竜の残された半身に視線を向け、三度目の戦闘で遂にガイアを倒す。
「いや、こうしちゃいられない。すぐに皆を助けて帝都に戻らないと!!」
感慨深げにひたるわ暇はなく、穴の底に残した帝国軍を救い出さなければならない。彼等が地上に移動するにはルノの力が必要不可欠であり、急いで全員を引き上げて帝都に向かう必要がある。
「大分魔力を使ったけど、これぐらいなら大丈夫だな。よし、行こう……あれ、何だこれ?」
『職業レベルを限界値まで極めました。これより、職業の変更が可能になります』
「職業の変更?職業を変えられるようになったのか……いや、今はどうでもいいか」
ステータス画面に表示された文章を無視してルノは穴の底で待っているはずの皆の元に向かう――
――30分後、予想よりも時間は掛かってしまったが無事に帝国軍の兵士を乗せた土竜が帝都に到着し、正門前にて人が集まっている姿を発見する。既に魔王軍が襲撃を仕掛けたのかとルノ達は焦ったが、どうにも様子がおかしかった。
「あ、見てください!!南門の前で人混みが出来てますよ!!」
「間に合わなかったか!?」
「いや、様子がおかしい。それに集まっているのは民衆ではないぞ?」
「あ、あれって……」
土竜の頭部からルノは地上に集まっている人間達に見覚えがある事に気付き、集まっているのは帝都に滞在している冒険者であり、しかも先の旅の道中で遭遇したS級冒険者の顔も見えた。どうして彼等がここにいるのかは分からないが、ルノはゆっくりと土竜を下降させ、着地させる。
「た、大変ですわ!!空から土竜が現れましたわよ!?」
「新手か!?」
「いや、待て!!あの頭の上にいるのは……おお、あの時の坊主じゃねえか!!」
「坊主?……ルノ君か!!」
「ルノさんだ!!ルノさんが戻ってきてくれたぞ!!」
南門の前に集まっていたのは冒険者ギルドの冒険者達と先の旅でルノが遭遇した侍のガイン、鍛冶師のガジ、魔術師のドリスが存在し、他にも見知った顔が存在した。
「陛下、ただいま戻りました」
「おお、ヒカゲではないか!!無事に戻ってきたか!!」
「これ、お土産。日の国饅頭です」
「うむ。これが美味くてな……い、いや、それは後にしてくれ」
「何が起きたんですか?」
冒険者の中にはヒカゲの姿も存在し、どうして街中の冒険者がこの場所に集まっているのかを問い質すと、ギルドマスターのアイラが前に出て説明を行う。
「それは私の方から話します。実は先ほど、魔王軍と思われる者たちが街中に出現しました」
「やはり……城下町は無事なのか!?城はどうなっておる!!」
アイラの言葉に先帝は冷や汗を流すが、アイラは言いにくそうに顔を反らし、他の冒険者達も黙り込む。その反応に数多くの犠牲者が生まれたのかとルノ達は焦るが、予想外の返答が帰ってきた。
「その……犠牲者は殆どいません。何人かが怪我をしましたが、確認したところでは命を落とした人間はいません」
「な、何じゃと!?どういう事だ?」
「私達も何が起きたのか完全には把握していないのですが……実は――」
ルノを含めた帝国の岩人形の討伐軍が派遣された後、帝都で何が起きたのかをアイラは語る。
「……無駄だ」
周辺一帯がルノの魔法によって氷結化され、氷の世界へと変貌する。無数の氷塊から生み出される冷気を蛇竜は防ぐ手段はなく、巨体である事が災いして逃れる事も出来ず、蛇竜の肉体が冷気に襲われ、全身が氷漬けにされていく。逃げようにも凍り付いた肉体では動く事も出来ず、蛇竜は必死に首を動かして火炎の吐息で身体を溶かそうとした。
『こ、こんな物……ぐあっ!?』
「……動きさえ止めればどうにでもできる」
その隙を逃さず、ルノは螺旋氷弾を蛇竜の額に打ち込み、氷結化を更に促す。額に突き刺さった螺旋氷弾によって脳内にまで冷気が達したのか、蛇竜は断末魔の悲鳴を上げる。
『うおぁああっ――!?』
「……これで終わりだ」
完全な氷像と化した蛇竜に視線を向け、ルノは地上に着地すると全ての氷塊を解除させる。冷気を生み出す氷を失っても既に氷結化した物は溶けるまで時間が掛かり、その隙にルノは掌を差し出して全ての初級魔法を発動させた。
「お前、強かったよ……はああっ!!」
右手に黒炎槍、左手に白色の電撃を帯びた螺旋氷弾を生成し、掌を突き出して蛇竜の肉体に放つ。複数の属性を組み合わせた魔法同士が衝突させ、反発作用を引き起こして「光の衝撃波」と化す。次の瞬間、蛇竜の肉体は光の衝撃波に飲み込まれ、頭から胴体の部分が「消滅」した。その光景を確認したルノは光が収まるまで待ち、ステータス画面を開いてレベルの項目を確認する。
「……倒したか」
――ルノの視界にはレベルが「99(限界値)」と表示されたステータス画面が広がり、無事に蛇竜を倒したことで経験値を入手した事を知る。遂にこの世界の最高値までレベルを上昇させたルノは蛇竜の残された半身に視線を向け、三度目の戦闘で遂にガイアを倒す。
「いや、こうしちゃいられない。すぐに皆を助けて帝都に戻らないと!!」
感慨深げにひたるわ暇はなく、穴の底に残した帝国軍を救い出さなければならない。彼等が地上に移動するにはルノの力が必要不可欠であり、急いで全員を引き上げて帝都に向かう必要がある。
「大分魔力を使ったけど、これぐらいなら大丈夫だな。よし、行こう……あれ、何だこれ?」
『職業レベルを限界値まで極めました。これより、職業の変更が可能になります』
「職業の変更?職業を変えられるようになったのか……いや、今はどうでもいいか」
ステータス画面に表示された文章を無視してルノは穴の底で待っているはずの皆の元に向かう――
――30分後、予想よりも時間は掛かってしまったが無事に帝国軍の兵士を乗せた土竜が帝都に到着し、正門前にて人が集まっている姿を発見する。既に魔王軍が襲撃を仕掛けたのかとルノ達は焦ったが、どうにも様子がおかしかった。
「あ、見てください!!南門の前で人混みが出来てますよ!!」
「間に合わなかったか!?」
「いや、様子がおかしい。それに集まっているのは民衆ではないぞ?」
「あ、あれって……」
土竜の頭部からルノは地上に集まっている人間達に見覚えがある事に気付き、集まっているのは帝都に滞在している冒険者であり、しかも先の旅の道中で遭遇したS級冒険者の顔も見えた。どうして彼等がここにいるのかは分からないが、ルノはゆっくりと土竜を下降させ、着地させる。
「た、大変ですわ!!空から土竜が現れましたわよ!?」
「新手か!?」
「いや、待て!!あの頭の上にいるのは……おお、あの時の坊主じゃねえか!!」
「坊主?……ルノ君か!!」
「ルノさんだ!!ルノさんが戻ってきてくれたぞ!!」
南門の前に集まっていたのは冒険者ギルドの冒険者達と先の旅でルノが遭遇した侍のガイン、鍛冶師のガジ、魔術師のドリスが存在し、他にも見知った顔が存在した。
「陛下、ただいま戻りました」
「おお、ヒカゲではないか!!無事に戻ってきたか!!」
「これ、お土産。日の国饅頭です」
「うむ。これが美味くてな……い、いや、それは後にしてくれ」
「何が起きたんですか?」
冒険者の中にはヒカゲの姿も存在し、どうして街中の冒険者がこの場所に集まっているのかを問い質すと、ギルドマスターのアイラが前に出て説明を行う。
「それは私の方から話します。実は先ほど、魔王軍と思われる者たちが街中に出現しました」
「やはり……城下町は無事なのか!?城はどうなっておる!!」
アイラの言葉に先帝は冷や汗を流すが、アイラは言いにくそうに顔を反らし、他の冒険者達も黙り込む。その反応に数多くの犠牲者が生まれたのかとルノ達は焦るが、予想外の返答が帰ってきた。
「その……犠牲者は殆どいません。何人かが怪我をしましたが、確認したところでは命を落とした人間はいません」
「な、何じゃと!?どういう事だ?」
「私達も何が起きたのか完全には把握していないのですが……実は――」
ルノを含めた帝国の岩人形の討伐軍が派遣された後、帝都で何が起きたのかをアイラは語る。
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