最弱職の初級魔術師 初級魔法を極めたらいつの間にか「千の魔術師」と呼ばれていました。

カタナヅキ

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帝都防衛編

土竜の改造

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「じゃあ、とりあえず派手な物から……ていっ!!」
「な、何だっ!?」
「すげぇっ!!」
「り、竜だぁあああっ!!」


ルノが両手を差し出して氷塊の魔法を発動した瞬間、観光客の目の前で体長が15メートルを超える巨大な「氷竜」が出現する。ルノの魔法の中でも最大規模を誇る氷の魔法であり、ルノの意思で自由自在に動かすことが出来る。こちらもエルフ王国との会談の際に出現した火竜との戦闘で覚えた魔法である。


「ほら、人懐っこいから安心してくださいね」
「うわ、動いたぞ!?」
「只の氷像じゃないのか!?」
「凄すぎるっ!!」


氷竜の首を動かして観光客に近づけると、彼等は近付いてくる竜の頭に騒ぎ出す。その様子を見ながらルノは今度は地面に手を押し当て、土塊の魔法を発動させた。


「今度は別の物を作りますね。えっと……こんな感じかな」
『おおっ!?』


土塊の魔法で土砂を操作し、土の塊を作り出して徐々に別の形に変形させる。今回作り出したのは小型の土竜の土像を作り出す。氷塊の魔法と違ってこちらは形状しか変化出来ないが、それでも観光客は興奮した様子で土蔵の前に集まる。


「す、凄い!!これが英雄の魔法なのか!!」
「信じられない……初級魔法しか使えないんじゃなかったのか?」
「他には!?他にどんな魔法が使えるんだ?」
「じゃあ、次が最後ですよ」


ルノは両手を組み合わせ、久しぶりに火属性と闇属性を組み合わせた「黒炎」を生み出し、更に風属性を組み合わせて炎を槍の形に変えて打ち抜く。


「黒炎槍」
『っ……!?』


天空に向けて投げつけられた黒炎の槍が遥か上空に存在する雲を貫通し、大きな雲に風穴を形成した。あまりの光景に観光客は声も出せない程に驚き、それを確認したルノは彼等に手を振って要塞内に戻る。


「じゃあ、今日のところはここまでで……仕事があるので失礼します」


ルノの言葉が聞こえていたのかは分からないが、誰も彼を引き留めようとはせず、消散する雲の様子を眺めていた――




――ルノが要塞に戻ると既に兵士達が持参した水大砲を氷車から降ろす光景が広がり、土竜の死骸の一体の前に水大砲を運び込んでいた。


「あ、やっと戻ってきました。もう積荷は全部降ろしましたよ」
「ありがとう。じゃあ、魔法を解除するね」


氷車にルノは視線を向け、全員が降りた事を確認すると、氷塊の魔法を解除させる。地上には200台を超える水大砲と1000人の兵士の姿があり、準備は既に終わっていた。


「それじゃあ、後は任せましたよ」
「本当に大丈夫かのう……」
「ここまで来て何を言ってるんですか。ほら、私達は邪魔ですから下がりますよ!!」
「何でお前が仕切ってんだよ……」


全員が安全地帯にまで下がったことを確認すると、ルノは土竜の死骸の前に移動し、その巨体に視線を向ける。土竜の肉体は岩石と性質が似ており、その特性を利用してルノは両手を押し当てると「土塊」の魔法を発動させた。


「土塊!!」
『おおっ!!』


ルノが魔法を発動させた瞬間、土竜の死骸が一瞬だけ震え、その光景を確認した兵士達が驚愕の声を上げる。ルノは送り込む魔力の量を増やし、土竜の肉体を構成する岩石の形状を変化させる。


「いっけぇっ!!」
「嘘だろおい!?」
「まさか本当に!?」
「これは……たまげたのう」


土竜の肉体がルノの掛け声に合わせるように激しく痙攣し、徐々に四肢が動き出す。まるで生まれたての小鹿のように震えながらも土竜の肉体は起き上がり、頭部にルノが乗り込む。


「くううっ……結構きついかも」
「頑張ってください!!そのままこちらに近付けますか?」
「やってみる!!」


段々と操作が慣れてきたのか、土竜の手足をゆっくりと動かし、地響きを鳴らしながらも移動に成功した。目前にまで接近した土竜に対してバルトス達は冷や汗を流すが、実際に蘇ったわけではなく、ルノが土塊の魔法で肉体の岩石を操作しているだけにしか過ぎない。


「これでいいの?」
「十分です!!後は大砲を設置出来るように窪みを作り出してください!!」
「分かった!!」


リーリスの言葉にルノは土竜の背中の甲羅部分に意識を集中させ、大砲を搭載させる窪みを作り出す。肉体全体を操作するのと比べてこちらは容易く、やがて甲羅がハチの巣のように変化した。この穴に兵士達が用意した水大砲を設置し、兵士も配置させれば甲羅の中から水大砲を発射できる。


「これぐらいでいいの?」
「それぐらいで大丈夫です!!今度は私達が乗り込めるように背中の内部に空間を作って下さい!!」
「ちょっと難しいな……こうかな?」


ルノは甲羅に両手を押し当てながら今度は大勢の人間が入り込める程の空間を甲羅の内部に作り出すため、まずは洞窟のような大きな穴を生み出す。さらに中に入り込み、洞窟の広さを調整しながら拡大化させ、やがて大人数の人間が乗り込めるほどの空間を確保した。
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