最弱職の初級魔術師 初級魔法を極めたらいつの間にか「千の魔術師」と呼ばれていました。

カタナヅキ

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帝都防衛編

会議の結果

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「では話を戻すぞ。先に言った通り、既に岩人形の対抗策は終わっている。問題はどれほど被害を抑えて討伐するかだが……」
「た、大変です!!」
「おい、止まれ!!今は会議中だぞ!!」


会議室の扉が押し開かれ、1人の兵士が入り込む。扉の見張り役を行っていた兵士を振り切って中に入り込んだらしく、他の兵士が身体を抑えつける。しかし、それを見た皇帝が制止した。


「落ち着け!!何事だというのだ?」
「も、申し訳ありません!!この者が会議中なので立ち入りを禁じていると言ったにもかかわらず、中に入ろうとしたので……」
「緊急!!緊急なんです!!」
「ふむ……そちは伝令役の兵士だな?一体何事だ?」


兵士の慌てように不審に思った先帝が彼を離すように命じると、最初に入り込んできた兵士はその場に跪き、報告する。


「先程、偵察部隊から新たな報告が届きました!!」
「ほう、相手に何か動きがあったのか?」
「そ、それが……敵の姿を見失ったとの事です!!」
「何だと!?」


会議室の動揺が走り、1万を超える大群を見失ったという報告に戸惑いを隠せない。最初に兵士に怒鳴りつけたのはダンテだった。


「おい、何を言ってやがる!!1万の岩人形が霞のように消えたって言うのか?」
「そ、それは……」
「止めんかダンテ……お主を責めているわけではない。聞いた通りの報告を行うのだ」


ギリョウが即座にダンテを抑え、兵士に報告の詳細を尋ねる。すると彼は報告書と思われる羊皮紙を数枚取り出し、傍に存在したリーリスに渡す。


「こ、これが偵察隊の報告書です」
「どれどれ……ふむふむ、なんとっ!!そんな事が!?」
「なんて書いてあるの?」


速読のスキルを持つリーリスは報告書を数秒で読み取り、驚愕の表情を浮かべる。彼女は即座に皇帝に報告書を渡すと、口頭で内容を説明する。


「偵察隊が監視を行っていた際、唐突に草原に謎の地響きが発生し、岩人形の大群が姿をけしたそうです。彼等は安全のために500メートル程離れた場所で「遠視」と「観察眼」のスキルで観察していたそうですが、突然に消え去ったと書いてあります」
「んな馬鹿な……1万だぞ!?しかも1体1体が馬鹿でかい岩人形を見失うなんてあり得るのか?」
「どういう風に消えたのですか?」
「報告書によると偵察隊も慌てて現地に向かったそうですが、残されていたのは巨大な落とし穴があったそうです。もしかしたら地盤が崩れたのではないかという程に大きな穴がありました」
「穴……?その落とし穴に岩人形の大群が沈んだというのか?」


リーリスの言葉に会議室の誰もが唖然とした表情を浮かべるが、彼女の言葉はまだ終わっていなかった。


「偵察隊が調べたところ、落とし穴の規模は凄まじく、穴の底が見えない程の深さだったようです。調べようにも深すぎて底には降りられず、引き返すしかなかったという事です」
「そんな馬鹿な……」
「ちなみにこの事態が起きたのは数時間前……つまり我々は岩人形の居場所を見失いました」
「何てことだ……」
「事故……とは考えにくいですね。偶然にも地割れが発生し、岩人形だけを飲み込んだ等考えられません」
「うむ……」


帝都に接近していた岩人形が姿を消したという報告に誰もが動揺を隠しきれず、間違いなく今回の事態も魔王軍の仕業だろう。しかし、どのような手段で岩人形を覆い隠したのかが分からず、誰もが思い悩む中、ルノは手を上げる。


「あの……もしかして魔法で地面を掘って地中に潜り込んだんじゃないですか?」


突拍子もないルノの言葉に会議室に静寂が訪れるが、真っ先に反応したのは苛立ち気味のダンテだった。


「馬鹿かお前はっ!!そんな魔法があるわけないだろうが!!」
「え?でも俺は出来ますよ」
「えっ!?」
「あっ……そういえば確かに会談の時に襲撃した魔人族を地中に封じ込めた時の事ですね」
「おお、あの時は驚かされたのう」


ダンテはエルフ王国との会談の際、王子の引き渡しのための護衛部隊には参加していないので知らない事だが、部隊に参加していたドリアとギリョウはルノが「土塊」の魔法で初めて遭遇したガイアを地割れで封じ込めたことを思い出す。


「なるほど……土塊の魔法で地面を陥没させ、岩人形を地中へと隠したという事か」
「ちょ、ちょっと待ってください!!それでも1万の大群ですよ!?それだけの規模の岩人形を姿かたちさえ見えない程の深度にまで地面を陥没させるなんて……有り得ません!!」
「ルノさんならどうですか?」
「う~んっ……やってみないと分からないけど、流石に一瞬で沈めるのは無理かな」


ルノの推測が正しい場合、今回の魔王軍の中には土塊の魔法を操り、しかも1万の岩人形を地中に沈める事が出来る程に魔法を極めた存在が居る事になる。
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