最弱職の初級魔術師 初級魔法を極めたらいつの間にか「千の魔術師」と呼ばれていました。

カタナヅキ

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帝都防衛編

閑話 〈ドリアの気苦労〉

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※時系列はルノが召喚される前の話になります。


――帝国一の魔術師と噂されるドリア、彼は四天王の中で温厚な性格の好青年である。10代の頃から魔法の才能を買われ、20才にて将軍の職に就く。しかし、この2年後に彼を上回る程の才能を持ち合わせた少女が将軍に任命された。


「どうも、初めまして。別に将軍になんかなりたくないんですけど、断ると開発部の予算を削ると脅された四天王の末席に加えられる事になりましたリーリスと申します」
「は、はあっ……」
「ドリアよ。この娘の世話役をお主に任せたい。実力は確かなのだが、どうにも性格に問題があってな……なので年齢も近いお主に任せたい」


ドリアの前にはまだ10代半ばの金髪の少女が存在し、先帝の紹介によると最近雇った人材らしく、魔道具の開発部に所属する魔術師だという。魔術師としての素質は高いらしく、しかも2つの職業を生まれ持つ貴重な人材であり、将来性を見込んでこの度に四天王の末席に加える事が決まる。


「リーリスよ、そう不貞腐れるでない。しばらくの間はお前は他の四天王の指導を受けてもらう。そうすればお前の中に秘める魔術師の才能も開花するだろう」
「別に蕾のままでもいいじゃないですか。どうして私が将軍なんかに……」
「あの、彼女は嫌がっているようですが……」
「うむ。気持ちは分かるが今の帝国は国を支えてくれた老臣が次々と亡くなっておる。儂も何時までも生きられるかは分からん……だからこそ次世代の人間を育てなければならん」
「そんな……滅多なことをおっしゃらないで下さい!!」
「ドリアよ、儂はもう年老いた。お主の気持ちは嬉しいが、何時までも甘えるでない。これからはお前達が国を支える番だ。だからこそ、しっかりとこの娘の教育を頼んだぞ」
「……分かりました」


先帝の言葉にドリアは従い、心底面倒くさそうな表情を浮かべるリーリスに視線を向け、彼女の態度に眉を顰めるが敬愛する先帝の命令には逆らえない。これから彼女を自分の手で一流の魔術師に育て上げるために決意する――




――しかし、彼の強い決意も一週間後には無惨に折れてしまい、非常に疲れた表情のドリアは先帝の元へ赴き、頭を下げてリーリスの教育係を外すように懇願した。


「お願いします……あの方は僕の手には負えません」
「ど、どうしたというのだドリアよ!?随分とやつれているようだが……」
「く、訓練を受ける条件として、リーリスさんの魔道具の実験に付き合わされました……彼女の作る道具は確かに有用性はあるのですが、どれも魔力の消耗量が激しくて……」
「な、何を作ったというのだ……お主ほどの人間がここまでになるとは」


ドリアは最初の頃は真面目にリーリスの訓練を指導していたが、彼女がどうしても自分の作り出した魔道具の実験に付き合わなければ訓練には参加しないと言い張り、結局は根負けしてドリアは彼女の自作の魔道具の実験体となる。

その結果、僅か数日足らずでドリアは体重が10kg近くも減量してしまい、老人のような足取りになってしまう。これ程までに弱ったドリアを見るのは先帝も初めてであり、彼は頭を抑えてドリアの要望を聞き入れた。


「お主でも駄目だったか……あの問題児め、遂に四天王全員の心を負ったか」
「ど、どういう意味ですか?ま、まさか……」
「あ~……す、すまんのう。実は他の3人からは口止めされていたのだが、既にお主以外の四天王にもリーリスの教育係を任せたのだが……その、全員が今のお主と同じように教育係から外すように懇願されていてな……」
「そういう事は……早く言ってください!!」
「……すまない」


ドリアは初めて尊敬する先帝バルトスに怒鳴り声を上げてしまい、結局はリーリスが四天王でありながら本来の職務を放置して魔道具の開発に勤しんでいる理由とは、そもそも彼女に教育を行える人間が存在しないという事である。能力の優秀さから考えても解雇に出来る人材ではないため、ルノが訪れるまでリーリスの面倒役を見る人間はいなかった。
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