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帝都防衛編
対策会議
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――ルノ達が帰還してから10日が経過し、遂に岩人形の大群は山岳地帯を抜け出したという報告が届いた。偵察隊として送り込まれていた暗殺者の職業で構成された兵士の報告によると、予想よりも早く帝都に到着する可能性が出てきた。皇帝は全ての将軍を会議室に呼び集め、岩人形の対抗策を話し合う。
「皆の者、よくぞ集まってくれた。それでは早速会議を行う」
「進行役は儂が行うぞ」
『はっ!!』
皇帝の隣には先帝が座り、会議が開催される。ちなみに会議室にはヒカゲを除く四天王も勢ぞろいしており、ルノも会議に参加していた。彼は将軍ではないが会議に参加する事に不満を抱く者は居らず、むしろ安心感を抱く。
「おおっ……あれが例の初級魔術師の異世界人か」
「俺、初めて見た。後でサイン貰おうかな……」
「止めなさい。みっともない……握手で我慢しなさい」
ちなみに四天王を除いた将軍の数はそれほど多くはなく、その殆どが若手である。将軍の中で最も最年長なのはギリョウだが、一番下の年齢の人間はリーリスだが、ルノを含めれば彼が最年少となる。
「それでは偵察隊の報告を聞こう。皆も報告は聞いているだろうが、念のために確認しておくぞ」
「分かりました。偵察隊の報告では岩人形は山岳地帯を抜け出し、草原へと躍り出ています。ここまでで特に大きな被害は受けていません。また、既に帝都周辺の村と町の住民の避難は終了しています」
「あいつらの足が遅いのが幸いだったな」
「だが、喜んでばかりはいられんぞ。被害が無い事は良い事だが、問題は本当にこの帝都で迎え撃てるのか?」
「敵の総数は約1万……既に帝都の防壁には水大砲の準備は済んでいますが、相手がどのように動くのかが問題です」
リーリスが開発した水大砲は既に防壁に運び出されているが、岩人形がどのように攻め込むかによって対応策を変化しなければならない。仮に岩人形が帝都を包囲した場合、水大砲は防壁の全体に配置する必要がある。逆に一点に相手が攻撃を集中する場合は水大砲を一か所に配備する必要がある。
「陛下、ここは軍隊を派遣するわけにいかないんですか?籠城するよりそっちの方が確実に倒せるんじゃないですか?」
「ダンテよ、無茶を言うな。相手は1万を超える岩人形の大群、ルノ殿ならばともかく、我々では太刀打できん」
「はっ!!爺さんも老いたな、昔のあんたなら危機として敵陣に飛び込んでいくのによ」
「もう儂は引退を控えている身……後は若い世代に託すのみじゃ」
ダンテは籠城を反対し、草原に進出した岩人形の討伐を提案する。確かに帝国軍にルノが同行すれば草原で岩人形も打ち倒す事は可能だろうが、それでも被害は免れない。しかも岩人形の大群を率いているのは魔王軍であり、何の対策も無しに岩人形を帝都に誘導しているとは考えにくい。
「それで例の岩人形と同行しているという人物に関して情報は集まったのか?」
「今のところは特に何も……全身をローブで覆い隠しているので詳しい容姿も判明していません。近づいて確かめようにも岩人形に護衛されているので接近する事も無理です」
「そもそも奴等はどうやって岩人形を操作しているのだ?もしや神器を所有しているのでは……!?」
「そこは重要ではないだろう。問題はどうやって岩人形を撃退するかだ」
敵がどのような手段で岩人形の大群を誘導しているのかも判明していないが、重要なのは1万の岩人形を相手に被害を最小限に抑えて撃退するかであり、全員の視線がルノに集う。
「というかよ……この坊主が出向いて岩人形をぶっ飛ばせば何もかも解決するんじゃねえのか?火竜や土竜を倒せるぐらいの力があるなら岩人形なんて蟻みたいなもんだろ?」
「ダンテよ、口を慎め!!ルノ殿はこれまでに帝国のために活躍してくれた。共に戦ってくれるだけで十分ではないか」
「でもよ、こいつが一人でぱぱっと解決すれば被害も出ないし、無駄な犠牲も防げるんだぜ?もう難しい事は考える必要もなくなるし……」
「貴様、それでも帝国軍人か!!我が国の危機を他人任せで解決しようというのか!!」
「まあ、落ち着くのだ。ダンテの言い分も分からんではない」
ダンテの発言にギリョウは激高するが、皇帝が慌てて彼を宥める。実際のところ、ルノならば十分に岩人形の大群を単独で撃破する能力は所有しており、民衆の間でも彼を戦いに向かわせるように指示する人間も多い。しかし、これまでに帝国は何度もルノに窮地を救われている。そして今回も彼1人に問題を任せた場合、帝国は威厳を失う。
「だが、何でもかんでもルノ殿に任せて本当に良いのか?本来、この帝国を外部からの危機から守るのは将軍の仕事だぞ。お前の発言は自分の仕事をルノ殿に押し付けているようにしか聞こえん」
「うっ……口が過ぎました」
流石にダンテも先帝の厳しい言葉に罰が悪そうに顔を反らし、そんな彼の反応にギリョウは溜息を吐く。帝国は長い時を平和に過ごし過ぎたため、現在の若手の将軍の殆どは戦の経験がない。それが災いして危機感を抱く機会がなく、安易な考えを恥じらいもなく口にしてしまう事に嘆く。
「皆の者、よくぞ集まってくれた。それでは早速会議を行う」
「進行役は儂が行うぞ」
『はっ!!』
皇帝の隣には先帝が座り、会議が開催される。ちなみに会議室にはヒカゲを除く四天王も勢ぞろいしており、ルノも会議に参加していた。彼は将軍ではないが会議に参加する事に不満を抱く者は居らず、むしろ安心感を抱く。
「おおっ……あれが例の初級魔術師の異世界人か」
「俺、初めて見た。後でサイン貰おうかな……」
「止めなさい。みっともない……握手で我慢しなさい」
ちなみに四天王を除いた将軍の数はそれほど多くはなく、その殆どが若手である。将軍の中で最も最年長なのはギリョウだが、一番下の年齢の人間はリーリスだが、ルノを含めれば彼が最年少となる。
「それでは偵察隊の報告を聞こう。皆も報告は聞いているだろうが、念のために確認しておくぞ」
「分かりました。偵察隊の報告では岩人形は山岳地帯を抜け出し、草原へと躍り出ています。ここまでで特に大きな被害は受けていません。また、既に帝都周辺の村と町の住民の避難は終了しています」
「あいつらの足が遅いのが幸いだったな」
「だが、喜んでばかりはいられんぞ。被害が無い事は良い事だが、問題は本当にこの帝都で迎え撃てるのか?」
「敵の総数は約1万……既に帝都の防壁には水大砲の準備は済んでいますが、相手がどのように動くのかが問題です」
リーリスが開発した水大砲は既に防壁に運び出されているが、岩人形がどのように攻め込むかによって対応策を変化しなければならない。仮に岩人形が帝都を包囲した場合、水大砲は防壁の全体に配置する必要がある。逆に一点に相手が攻撃を集中する場合は水大砲を一か所に配備する必要がある。
「陛下、ここは軍隊を派遣するわけにいかないんですか?籠城するよりそっちの方が確実に倒せるんじゃないですか?」
「ダンテよ、無茶を言うな。相手は1万を超える岩人形の大群、ルノ殿ならばともかく、我々では太刀打できん」
「はっ!!爺さんも老いたな、昔のあんたなら危機として敵陣に飛び込んでいくのによ」
「もう儂は引退を控えている身……後は若い世代に託すのみじゃ」
ダンテは籠城を反対し、草原に進出した岩人形の討伐を提案する。確かに帝国軍にルノが同行すれば草原で岩人形も打ち倒す事は可能だろうが、それでも被害は免れない。しかも岩人形の大群を率いているのは魔王軍であり、何の対策も無しに岩人形を帝都に誘導しているとは考えにくい。
「それで例の岩人形と同行しているという人物に関して情報は集まったのか?」
「今のところは特に何も……全身をローブで覆い隠しているので詳しい容姿も判明していません。近づいて確かめようにも岩人形に護衛されているので接近する事も無理です」
「そもそも奴等はどうやって岩人形を操作しているのだ?もしや神器を所有しているのでは……!?」
「そこは重要ではないだろう。問題はどうやって岩人形を撃退するかだ」
敵がどのような手段で岩人形の大群を誘導しているのかも判明していないが、重要なのは1万の岩人形を相手に被害を最小限に抑えて撃退するかであり、全員の視線がルノに集う。
「というかよ……この坊主が出向いて岩人形をぶっ飛ばせば何もかも解決するんじゃねえのか?火竜や土竜を倒せるぐらいの力があるなら岩人形なんて蟻みたいなもんだろ?」
「ダンテよ、口を慎め!!ルノ殿はこれまでに帝国のために活躍してくれた。共に戦ってくれるだけで十分ではないか」
「でもよ、こいつが一人でぱぱっと解決すれば被害も出ないし、無駄な犠牲も防げるんだぜ?もう難しい事は考える必要もなくなるし……」
「貴様、それでも帝国軍人か!!我が国の危機を他人任せで解決しようというのか!!」
「まあ、落ち着くのだ。ダンテの言い分も分からんではない」
ダンテの発言にギリョウは激高するが、皇帝が慌てて彼を宥める。実際のところ、ルノならば十分に岩人形の大群を単独で撃破する能力は所有しており、民衆の間でも彼を戦いに向かわせるように指示する人間も多い。しかし、これまでに帝国は何度もルノに窮地を救われている。そして今回も彼1人に問題を任せた場合、帝国は威厳を失う。
「だが、何でもかんでもルノ殿に任せて本当に良いのか?本来、この帝国を外部からの危機から守るのは将軍の仕事だぞ。お前の発言は自分の仕事をルノ殿に押し付けているようにしか聞こえん」
「うっ……口が過ぎました」
流石にダンテも先帝の厳しい言葉に罰が悪そうに顔を反らし、そんな彼の反応にギリョウは溜息を吐く。帝国は長い時を平和に過ごし過ぎたため、現在の若手の将軍の殆どは戦の経験がない。それが災いして危機感を抱く機会がなく、安易な考えを恥じらいもなく口にしてしまう事に嘆く。
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