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帝都防衛編
閑話 〈落ちぶれガイア〉
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――時刻は一か月ほど前に遡り、人気のない山中にてガイアは暮らしていた。日影の里からどうにか抜け出した彼は誰も住んでいない山奥に住み着き、小動物を糧に暮らしていた。
「ぐうっ……まさか、この俺がこれほど惨めな物しか食べられんとは……あの男めっ!!」
角兎の肉を頬張りながらガイアは悔し気に骨を吐き出し、深いため息を吐き出す。既に山の中に生息する動物は食い尽くしており、このままでは餓死してしまう。しかし、新しい場所に移る体力も残っていない。
「いかん、このままでは死んでしまう……竜の中の竜と呼ばれた我が餓死など冗談ではないぞ」
一か月前と比べてもガイアの身体はやせ細っており、どうしてこの状態に陥るまで山奥に隠れていたのかと言うと、理由は彼は未だに日の国の領地に離れられなかったからである。里を抜け出した後もガイアは執拗に日影の忍に追いまわされ、休まる暇もなく彼等から逃れるために逃げ続けてきた。
「くそっ……我に攻撃が通じないからといって毒や煙を仕掛けおって……」
ガイアに物理攻撃が薄いと気付いた忍者達は攻撃方法を変え、様々な方法でガイアを仕留めようとする。事前にガイアが狙いそうな獲物に毒を仕込ませたり、ガイアが寝ている洞窟に火を焚き、煙を送り込んで出てきたところを爆薬を投擲する。結果的には全て失敗に終わってはいるが、ガイアは度重なる忍者の襲撃によってノイローゼ気味になってしまい、心休まる暇がなかった。
「ここを離れるしかない……しかし、逃げた先に奴等が待ち伏せていたら……ああ、誰か助けてくれ」
「他者に助けを求めるとは……どうやら随分と追い込まれたようだな」
「だ、誰だ!?」
岩壁を自分の爪で掘り起こして作り出した洞窟の中で丸まっていたガイアの前に人影が現れ、慌ててガイアは起き上がると、そこには黒装束を纏った少年の姿が存在した。咄嗟に日影の忍者が現れたのかとガイアは身構え、大きく口を開く。
「くそがっ!!ここまで嗅ぎ付けたのか……死ねっ!!」
「待て、俺は……」
「アガアアアアッ!!」
相手の言葉を最後まで聞き取らずに顎を外れんばかりに開いて火炎の吐息を放つ。しかし、最近は真面な食事もとっていなかった事が原因なのか、口から出てきたのは蝋燭のように弱弱しい火の塊しか吐き出せなかった。
「い、いかん……腹が減り過ぎて、もう炎も吐けん」
「……いいから黙って話を聞け」
少年は溜息を吐きながらガイアの前に魚の干物を放り投げると、それを見たガイアは目の色を変え、罠である可能性を考えずに食らいつく。
「うおおっ!!」
「おい!!犬のように喰うな!!本当にこんな奴を連れ出すのか……?」
「う、美味い……美味すぎる!!」
久しぶりの真面な食事にガイアは涙を流し、その姿に少年は頭を抑え、ガイアに命令を下す。
「付いて来い……魔王様がお呼びだ」
「何だと……!?」
魔王という言葉にガイアは干物を貪るのを止め、少年を睨みつける。その姿には何処か見覚えがあり、魔王軍の幹部である事を思い出す。
「お前は……あの時の!!」
「それを食ったら黙ってついて来い……お前を解放するときが来た。逆らおうとは思うなよ」
「……解放、だと?」
「そうだ。これが終ればお前は晴れて自由の身だ。その首輪も外してやろう」
少年は冷たい瞳でガイアを睨みつけ、手元から魔王軍の証である髑髏のペンダントを取り出した。
「ぐうっ……まさか、この俺がこれほど惨めな物しか食べられんとは……あの男めっ!!」
角兎の肉を頬張りながらガイアは悔し気に骨を吐き出し、深いため息を吐き出す。既に山の中に生息する動物は食い尽くしており、このままでは餓死してしまう。しかし、新しい場所に移る体力も残っていない。
「いかん、このままでは死んでしまう……竜の中の竜と呼ばれた我が餓死など冗談ではないぞ」
一か月前と比べてもガイアの身体はやせ細っており、どうしてこの状態に陥るまで山奥に隠れていたのかと言うと、理由は彼は未だに日の国の領地に離れられなかったからである。里を抜け出した後もガイアは執拗に日影の忍に追いまわされ、休まる暇もなく彼等から逃れるために逃げ続けてきた。
「くそっ……我に攻撃が通じないからといって毒や煙を仕掛けおって……」
ガイアに物理攻撃が薄いと気付いた忍者達は攻撃方法を変え、様々な方法でガイアを仕留めようとする。事前にガイアが狙いそうな獲物に毒を仕込ませたり、ガイアが寝ている洞窟に火を焚き、煙を送り込んで出てきたところを爆薬を投擲する。結果的には全て失敗に終わってはいるが、ガイアは度重なる忍者の襲撃によってノイローゼ気味になってしまい、心休まる暇がなかった。
「ここを離れるしかない……しかし、逃げた先に奴等が待ち伏せていたら……ああ、誰か助けてくれ」
「他者に助けを求めるとは……どうやら随分と追い込まれたようだな」
「だ、誰だ!?」
岩壁を自分の爪で掘り起こして作り出した洞窟の中で丸まっていたガイアの前に人影が現れ、慌ててガイアは起き上がると、そこには黒装束を纏った少年の姿が存在した。咄嗟に日影の忍者が現れたのかとガイアは身構え、大きく口を開く。
「くそがっ!!ここまで嗅ぎ付けたのか……死ねっ!!」
「待て、俺は……」
「アガアアアアッ!!」
相手の言葉を最後まで聞き取らずに顎を外れんばかりに開いて火炎の吐息を放つ。しかし、最近は真面な食事もとっていなかった事が原因なのか、口から出てきたのは蝋燭のように弱弱しい火の塊しか吐き出せなかった。
「い、いかん……腹が減り過ぎて、もう炎も吐けん」
「……いいから黙って話を聞け」
少年は溜息を吐きながらガイアの前に魚の干物を放り投げると、それを見たガイアは目の色を変え、罠である可能性を考えずに食らいつく。
「うおおっ!!」
「おい!!犬のように喰うな!!本当にこんな奴を連れ出すのか……?」
「う、美味い……美味すぎる!!」
久しぶりの真面な食事にガイアは涙を流し、その姿に少年は頭を抑え、ガイアに命令を下す。
「付いて来い……魔王様がお呼びだ」
「何だと……!?」
魔王という言葉にガイアは干物を貪るのを止め、少年を睨みつける。その姿には何処か見覚えがあり、魔王軍の幹部である事を思い出す。
「お前は……あの時の!!」
「それを食ったら黙ってついて来い……お前を解放するときが来た。逆らおうとは思うなよ」
「……解放、だと?」
「そうだ。これが終ればお前は晴れて自由の身だ。その首輪も外してやろう」
少年は冷たい瞳でガイアを睨みつけ、手元から魔王軍の証である髑髏のペンダントを取り出した。
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