最弱職の初級魔術師 初級魔法を極めたらいつの間にか「千の魔術師」と呼ばれていました。

カタナヅキ

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帝都防衛編

帝国の武器庫

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「ううん……これだと1回使うとしばらくは扱えそうにありませんね。まあ、魔法の氷は溶けやすいのでしばらくすれば元に戻るんでしょうけど」
「火球で溶かそうか?」
「止めてくださいよ。ルノさんの場合だと大砲その物を溶かしかねませんから」


氷結化してしまった水大砲に関しては放置する事を決め、溶けるまでの間にリーリスは大砲の調整を考える。発射する度に氷結化してしまうと連発は出来ず、他の大砲と交換させるにも砲門まで凍り付いては時間が掛かってしまう。但し、単発ではあるが凄まじい威力の砲撃を行えるのは間違いなく、改良を加えれば岩人形の大群にも十分に対抗出来るだろう。


「リーリスよ。この水大砲ならば岩人形以外の魔物にも対抗できるのではないか?」
「どうでしょうかね。確かに威力という点では申し分はないですけど、実は大砲の砲弾は吸魔石しか利用できないんですよ」
「え?そうなの?」
「普通の魔石でも試したんですけど、どうも上手くいかなくて……素材に問題があるのか吸魔石しか受け付けないんです」
「ふむ……つまり、この水大砲ではルノ殿が用意した吸魔石しか砲撃できないのか」


岩人形との戦闘に備えて帝国は水属性の魔石を大量に用意しようとしたが、リーリスが改良を加えた水大砲は吸魔石しか受け付けず、市販の魔石では使用できない。そのため、岩人形との戦闘では大量の吸魔石を必要とする。


「ちなみにルノさんはどれくらいの吸魔石を用意したんですか?結構あったと思いますけど」
「どれくらいというか、全部使っちゃったよ。えっと、ゲースに入る吸魔石の数が100個だから……15個くらい?」
「という事は……1500個!?それほど魔力を詰めたというのか?」
「どんだけ頑張ったんですか」


ほんの数日で王城に保管されていた全ての吸魔石にルノは魔力を注ぎ込み、合計で1500個の水属性の吸魔石を完成させたことになる。当然、新しく覚えた固有スキルのお陰でもあるが、それでもルノの膨大な魔力に先帝は愕然とした。


「それだけの数があれば十分に対抗できますね。問題があるとすれば水大砲が発射の度に凍り付く事ですか……」
「ねえ、リーリス。この水大砲以外に岩人形に対抗できる兵器とか作ってないの?」
「そうですね。ルノさんが鬼武者に乗り込んで暴れまわるというのはどうでしょうか?」
「それをするぐらいなら氷竜を作り出して暴れるよ」


ルノが問いたいのは普通の人間でも扱え、岩人形を打ち倒す程の兵器が他に存在しないのかだが、リーリスによると岩人形を破壊できる程の兵器は存在しないらしい。


「他の兵器と言われましても基本的には私の遊び半分で作った物しかありませんね。靴の裏にバネを取り付けたりとか、割りばしとゴムでゴム鉄砲を作るとか……」
「子供かっ!!」
「そんな事に予算を割いていたのか……」
「あ、でもそういえば一つだけ凄いのありましたよ。まあ、失敗作なんですけど……」


リーリスは何かを思い出したのか、二人を連れて武器庫へと向かう。ちなみに武器庫は王城の地下に存在し、侵入者対策のために厳重な警備が敷かれている。


「実はデキン大臣に予算を回してもらうかわりに凄い兵器を作ってくれと頼まれた事があったんですよ。正直、面倒な話だと思ったんですけど予算を上げてもらうために私も張り切りましてね」
「デキンの奴がそんな事を……」
「どんな兵器?」
「大勢の敵を一網打尽に出来る武器を用意しろと言われたので、水大砲の製作前に作り出した奴です。こちらは自信作だったんですけど、扱える人が居なくて困ってたんですよね」


廊下を移動し、武器庫へと続く地下の階段を降りると、大きな扉の前に辿り着く。入口には数人の屈強な兵士が待機しており、3人の姿を見て慌てて敬礼を行う。


「こ、これは先帝様!!ルノ様!!あと……リーリス様!!何か御用でしょうか!?」
「なんで私だけ間があったんですか。名前忘れてましたね?」
「そ、そんな事はありません!!」
「なら私の目を見て答えて下さいよ」
「リーリス、あまり苛めるな。それよりも中に入りたい、扉を開けてくれ」
『はっ!!』


先帝の言葉に兵士達は慌てて左右に移動し、扉を押し開く。内部は1本道の廊下が広がっており、ルノが奥に進もうとするとリーリスが呼び止める。


「あ、そっちじゃありませんよ。こっちです」
「え?」
「この奥は行き止まりなんです。本当の通路は……ここ!!」


リーリスは右側の煉瓦の壁を指差し、帝国の紋章が刻まれている煉瓦を押し込む。すると壁が自動的に動き出し、床の一部が盛り上がると、兵士達が即座に床を剥がす。


「隠し通路になってるんです。この階段の先に武器庫に繋がっているんです」
「おおっ……なんかゲームっぽい演出だな」
「以前に脱走した囚人が武器庫に忍び込んだ事件があってな。それ以来、武器庫にはこのような仕掛けを施したのだ」
「ちなみに設計したのは私です」
「お前かいっ」


雑談を行いながら3人は階段を降りると、やがて大きな鋼鉄製の扉の前に到着する。こちらは厳重な鍵が施されているだけで見張りは存在せず、同行した兵士が鍵を機所して扉を開く。
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