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帝都防衛編
精霊石
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「あれ?でも水属性の魔石なら確か旅の途中で見つけた土竜が住んでいた洞窟にいっぱいあったような」
「そういえば報告書にもそのような事が記されていたのう。その場所に兵士を送り込み、既に回収は終えているが……」
旅の道中にてルノは氷属性の魔力を宿した土竜と遭遇し、その住処には水属性の魔水晶が存在した。リーリスによると土竜の身体から発せられる魔力を鉱石が吸い上げた事で魔石や魔水晶に変質したらしく、土竜を倒さずに放置していれば更に大量の魔水晶も入手できたかもしれない。
「あれ……そういえばリーリスが土竜の死骸から変な物を見つけていたような」
「変な物?」
ルノは土竜を討伐した際、リーリスは死骸から「球体状の魔水晶」を拾い上げていた事を思い出す。通常の魔水晶よりも色が濃く、直に触れると熱が奪われてしまうので彼女はアイテムボックスに収納していた。後で説明を行うと言っていたが実際の所はここまで説明はなく、今も彼女が持っている可能性が高い。
「リーリスがどのような魔水晶を手に入れたのか気になるのう……呼び出すか」
「待ってください。その前にどのような魔石だったのか教えてくれませんか?」
「えっと……これぐらいの大きさで、それと完全な球体型でした。普通の魔水晶よりも色が濃いというか……」
リーリスと同じ魔術師であり、ルノが訪れる前は帝国一の魔法使いと呼ばれていたドリアは魔法に関する知識にも詳しく、彼はルノの説明を受けて驚いた表情を浮かべた。
「それは……もしや精霊石ではないですか!?」
「精霊石?」
「ドリアよ、なんだそれは?」
精霊石という言葉に会議室の全員が首を傾げ、落ち着いたドリアは精霊石の説明を行う。
「精霊石は通常の魔石や魔水晶よりも魔力が込められた鉱石です。この精霊石は自然界にしか存在せず、滅多に手に入らない希少な魔石なんです。そして精霊石はこの場にも存在します」
「何?」
「それは皇帝陛下がお持ちのはずです」
「何と!?」
唐突に呼ばれた皇帝は驚いた声を上げ、ドリアは彼が胸元に下げているペンダントを指さす。
「バルトロス帝国の皇帝陛下のみに受け継がれているペンダント……その中に聖光石と呼ばれる魔石が収まっているはずです」
「聖光石?」
「これの事か?」
皇帝はペンダントを取り出し、机に置いて皆に見せる。外見は翡翠の形状をした黄金製のペンダントであり、どうやら懐中時計のように中身が開く仕組みらしく、内部からは翡翠型の銀色に光り輝く魔石が埋め込まれていた。
「おおっ……なんと神々しい」
「これは我がバルトロス家に伝わる聖光石じゃ。儂も現役の頃はこれを常に身に付けていた」
ルノは聖光石に視線を向け、確かに形状は異なるがリーリスが見つけ出した水属性の精霊石と似通っており、ドリアが説明を続ける。
「この聖光石は聖属性の精霊石という事になります。精霊石は通常の魔石のように使用する事は出来ず、初代勇者が残した神器や聖剣などといった武器でしかその力は引き出せません」
「そういえば父がそのような話を子供の頃によく聞かせてくれたが、あれは真の話だったのか」
「うむ……」
精霊石を扱うには普通の武器や魔道具では利用できず、勇者が残した神器や聖剣でなければ扱えないという話は皇帝も先帝も聞かされていたが、あくまでも御伽噺だと信じ込んでいた二人は驚いた表情を浮かべていた。
「ドリアよ、お主はよくその事を知っていたな」
「いえ、私も書庫の資料を読んだだけなので実際の所は精霊石を見たのも初めてです。ですが、もしもリーリス様が精霊石を手に入れたとすればすぐに取り上げるべきかと……きっと彼女の事だから何かの実験に利用してしまいかねませんから」
「そ、それはいかん!!すぐにリーリスを呼び出さねば!!」
精霊石の価値を知った皇帝は慌ててリーリスを呼び出すように外の兵士へと伝える間、ルノは机の上に置かれた聖光石に視線を向け、ある疑問を抱く。
「そういえば初代勇者の残した聖剣というのはどんな物なんですか?」
「残念ながら全ての聖剣は過去の大戦で失われている。だから帝国には聖剣は一つも存在しないのだ」
「聖剣が存在すれば岩人形との戦闘で役立つことは間違いないが……惜しいのう」
既に聖剣は過去に起きた戦争で紛失したらしく、現在の帝国は一つも残っていない。なので精霊石だけが存在しても意味はなく、強大な魔力を秘めた魔石もそれを引き出す道具がなければ何の意味もない。
「聖剣以外に精霊石の力を引き出す魔道具もないんですか?」
「残念ながら現在帝国が保管している魔道具にはそれらしき物はありませんね。そもそも保管している神器の数も多くはないので……」
「ちなみに帝国にはどれくらいの神器があるんですか?」
「そうですね。例えばダンテ将軍が利用している盾の正式名称は「反鏡盾」と呼ばれています。こちらは魔法を跳ね返す神器です。私が使っているこの杖も「高魔杖」と呼ばれる神器です」
「あ、それも神器だったんですね」
今更ながらにダンテとドリアが所持している盾と杖が神器である事が判明した。
※今回の投稿の5秒前のやり取り
カタナヅキ「奴にボタンを押させるなぁっ!!」
アイリス「いいや、限界だ!!押すねっ!!今だ!!( ゚Д゚)ノ公開ボタン」
「そういえば報告書にもそのような事が記されていたのう。その場所に兵士を送り込み、既に回収は終えているが……」
旅の道中にてルノは氷属性の魔力を宿した土竜と遭遇し、その住処には水属性の魔水晶が存在した。リーリスによると土竜の身体から発せられる魔力を鉱石が吸い上げた事で魔石や魔水晶に変質したらしく、土竜を倒さずに放置していれば更に大量の魔水晶も入手できたかもしれない。
「あれ……そういえばリーリスが土竜の死骸から変な物を見つけていたような」
「変な物?」
ルノは土竜を討伐した際、リーリスは死骸から「球体状の魔水晶」を拾い上げていた事を思い出す。通常の魔水晶よりも色が濃く、直に触れると熱が奪われてしまうので彼女はアイテムボックスに収納していた。後で説明を行うと言っていたが実際の所はここまで説明はなく、今も彼女が持っている可能性が高い。
「リーリスがどのような魔水晶を手に入れたのか気になるのう……呼び出すか」
「待ってください。その前にどのような魔石だったのか教えてくれませんか?」
「えっと……これぐらいの大きさで、それと完全な球体型でした。普通の魔水晶よりも色が濃いというか……」
リーリスと同じ魔術師であり、ルノが訪れる前は帝国一の魔法使いと呼ばれていたドリアは魔法に関する知識にも詳しく、彼はルノの説明を受けて驚いた表情を浮かべた。
「それは……もしや精霊石ではないですか!?」
「精霊石?」
「ドリアよ、なんだそれは?」
精霊石という言葉に会議室の全員が首を傾げ、落ち着いたドリアは精霊石の説明を行う。
「精霊石は通常の魔石や魔水晶よりも魔力が込められた鉱石です。この精霊石は自然界にしか存在せず、滅多に手に入らない希少な魔石なんです。そして精霊石はこの場にも存在します」
「何?」
「それは皇帝陛下がお持ちのはずです」
「何と!?」
唐突に呼ばれた皇帝は驚いた声を上げ、ドリアは彼が胸元に下げているペンダントを指さす。
「バルトロス帝国の皇帝陛下のみに受け継がれているペンダント……その中に聖光石と呼ばれる魔石が収まっているはずです」
「聖光石?」
「これの事か?」
皇帝はペンダントを取り出し、机に置いて皆に見せる。外見は翡翠の形状をした黄金製のペンダントであり、どうやら懐中時計のように中身が開く仕組みらしく、内部からは翡翠型の銀色に光り輝く魔石が埋め込まれていた。
「おおっ……なんと神々しい」
「これは我がバルトロス家に伝わる聖光石じゃ。儂も現役の頃はこれを常に身に付けていた」
ルノは聖光石に視線を向け、確かに形状は異なるがリーリスが見つけ出した水属性の精霊石と似通っており、ドリアが説明を続ける。
「この聖光石は聖属性の精霊石という事になります。精霊石は通常の魔石のように使用する事は出来ず、初代勇者が残した神器や聖剣などといった武器でしかその力は引き出せません」
「そういえば父がそのような話を子供の頃によく聞かせてくれたが、あれは真の話だったのか」
「うむ……」
精霊石を扱うには普通の武器や魔道具では利用できず、勇者が残した神器や聖剣でなければ扱えないという話は皇帝も先帝も聞かされていたが、あくまでも御伽噺だと信じ込んでいた二人は驚いた表情を浮かべていた。
「ドリアよ、お主はよくその事を知っていたな」
「いえ、私も書庫の資料を読んだだけなので実際の所は精霊石を見たのも初めてです。ですが、もしもリーリス様が精霊石を手に入れたとすればすぐに取り上げるべきかと……きっと彼女の事だから何かの実験に利用してしまいかねませんから」
「そ、それはいかん!!すぐにリーリスを呼び出さねば!!」
精霊石の価値を知った皇帝は慌ててリーリスを呼び出すように外の兵士へと伝える間、ルノは机の上に置かれた聖光石に視線を向け、ある疑問を抱く。
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「ちなみに帝国にはどれくらいの神器があるんですか?」
「そうですね。例えばダンテ将軍が利用している盾の正式名称は「反鏡盾」と呼ばれています。こちらは魔法を跳ね返す神器です。私が使っているこの杖も「高魔杖」と呼ばれる神器です」
「あ、それも神器だったんですね」
今更ながらにダンテとドリアが所持している盾と杖が神器である事が判明した。
※今回の投稿の5秒前のやり取り
カタナヅキ「奴にボタンを押させるなぁっ!!」
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