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帝都防衛編
噂
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「あ、ルノ殿……悪いが窓側の席には座らないでくれ」
「え?はあっ……分かりました」
「リーリス、それとアイラよ。窓を閉めてくれ」
「分かりました」
「はいはい」
馬車に乗り込んだルノが窓側の席に座ることを止めると、先帝は窓側に座り込んだアイラとリーリスに窓のカーテンを閉じさせる。先帝の指示にルノは不思議がると、彼は誰にも見られていないことを確認して説明を行う。
「ルノ殿が街に戻った事を民衆には隠して置きたい。既に岩人形の大群が押し寄せている事は彼等も知っているからな」
「どういう事ですか?」
「岩人形の討伐は君に任せるべきだと言い張る者も居るという事だ。実際に冒険者ギルドにも岩人形の討伐の依頼が殺到しているよ」
「傍迷惑な話ですね」
アイラによると既に帝都には岩人形の大群が接近しているという噂が広まっているという。最初は帝国も情報抑制を行ったが、何処からか情報が漏れたのか民衆の間にも帝都に危機が迫っている事が知れ渡ってしまう。しかも最近では岩人形に対抗できるのは初級魔術師の英雄であるルノだけだと言われており、実際に彼の今までの功績から考えても信憑性が高いのが問題だった。
「民衆の間ではルノ殿だけが岩人形と対抗できると信じられておる。だからルノ殿を派遣し、帝都に到着する前に岩人形を打ち倒すべきだと告げる者達まで現れおった。情けない話だが、確かに彼等の言葉にも一理ある」
「というか帝国の情報網はどうなってるんですか。国の一大事を報告する前に民衆に知られるなんて……」
「この噂の出所を探ってはみたが、どうにも要領を得ない。最初に誰が噂を立てたのかも判明していない」
「……私も調べたけど、結局わからなかった」
帝都の民の間ではルノの存在は既に知れ渡っており、彼の今までの功績も当然だが広まっている。竜種を単独で3体も撃破し、その前には王城に乗り込んでは四天王を撃破して皇帝と和解、更には旅の間に複数のS級冒険者を打ち破た話まで伝わっている。
そんな彼だからこそ民衆は1万を超える岩人形の大群であろうとルノならばどうにか出来るのではないかと考える者も少なくはなく、彼が戻ればこの国の危機を乗り越えられると信じられていた。だからこそ先帝は誰にも知られないように帝都の城門にてルノとリーリスを迎え入れ、何者にも気づかれぬように移送を行う。
「噂が誰が広めたのかは分からんが、十中八九は魔王軍の仕業だと考えるべきだろう。奴等が民衆を利用してルノ殿を呼び寄せようとしているとも考えられる」
「それだとルノさんを単独で討伐に向かわせるのは不味いですね。でも、いくら隠しても私達が戻ってきたことは知られちゃうんじゃないですか?」
「大丈夫じゃ。お主たちが帰還に合わせて出迎えの準備は整えていた。姿を現さなければ気付かれる事はないだろう。問題は魔王軍が既に街中に潜入し、噂を広めている事……ヒカゲがいれば噂の出所を調べて貰えるのだが、一緒ではなかったのか?」
「ヒカゲさんとは日の国で別れましたよ。色々と大変そうでした」
日の国で起きた殺人事件により、大量のアダマンタイトが魔王軍に流れた可能性があり、しかも日の国の中でも一、二を誇る腕前の刀匠のクロガネを失ってしまう。その結果、日の国も本格的に魔王軍の調査を行うために日影を動かす。これまでは帝国と同盟国という好で日影の部隊の一部を帝国に預けていたが、今後はヒカゲが指揮を取って大々的な調査を行っている。
「ヒカゲさんは各地に散らばっている日影の忍者を収集しているみたいですよ。魔王軍の調査のために頑張っています」
「そうか。それならば仕方ないが……問題は四天王が二人欠けた状態で岩人形を迎え撃つ事だな」
「ギリョウさんの容体は良くないんですか?」
「普通に生活する分には問題はないが、奴も儂と同様に年齢を重ね過ぎた。本来ならばお互いに隠居も考えなければいけない身だが……少なくとも戦える身体ではない」
四天王の中でも最年長で居合の達人であるギリョウだが、先のエルフ王国との会談の際に身体を無理に酷使した事で現在も回復し切れておらず、本来ならば戦える状態ではない。しかし、彼の代役を務めるほどの人材は存在せず、現在の彼は新兵の教育に励んでおり、戦闘の指揮という点では他の四天王よりも優れているので引退はしていない。
「ドリアさんとダンテさんはどうしてるんですか?」
「ドリアは岩人形に対抗するために魔術師部隊に岩人形との戦闘対策を立てている。ドリアは兵士の士気が落ちないように訓練に励んでおる」
リーリスとヒカゲを除いた各四天王も岩人形の対策を立てて準備に励んでいるらしく、彼等以外の人間も岩人形の帝都襲撃に備えている。しかし、相手が他国の軍隊ならば対抗策は幾らでも存在するが、魔物の軍勢が襲撃を仕掛ける事は滅多になく、対抗策も立てにくい。
「え?はあっ……分かりました」
「リーリス、それとアイラよ。窓を閉めてくれ」
「分かりました」
「はいはい」
馬車に乗り込んだルノが窓側の席に座ることを止めると、先帝は窓側に座り込んだアイラとリーリスに窓のカーテンを閉じさせる。先帝の指示にルノは不思議がると、彼は誰にも見られていないことを確認して説明を行う。
「ルノ殿が街に戻った事を民衆には隠して置きたい。既に岩人形の大群が押し寄せている事は彼等も知っているからな」
「どういう事ですか?」
「岩人形の討伐は君に任せるべきだと言い張る者も居るという事だ。実際に冒険者ギルドにも岩人形の討伐の依頼が殺到しているよ」
「傍迷惑な話ですね」
アイラによると既に帝都には岩人形の大群が接近しているという噂が広まっているという。最初は帝国も情報抑制を行ったが、何処からか情報が漏れたのか民衆の間にも帝都に危機が迫っている事が知れ渡ってしまう。しかも最近では岩人形に対抗できるのは初級魔術師の英雄であるルノだけだと言われており、実際に彼の今までの功績から考えても信憑性が高いのが問題だった。
「民衆の間ではルノ殿だけが岩人形と対抗できると信じられておる。だからルノ殿を派遣し、帝都に到着する前に岩人形を打ち倒すべきだと告げる者達まで現れおった。情けない話だが、確かに彼等の言葉にも一理ある」
「というか帝国の情報網はどうなってるんですか。国の一大事を報告する前に民衆に知られるなんて……」
「この噂の出所を探ってはみたが、どうにも要領を得ない。最初に誰が噂を立てたのかも判明していない」
「……私も調べたけど、結局わからなかった」
帝都の民の間ではルノの存在は既に知れ渡っており、彼の今までの功績も当然だが広まっている。竜種を単独で3体も撃破し、その前には王城に乗り込んでは四天王を撃破して皇帝と和解、更には旅の間に複数のS級冒険者を打ち破た話まで伝わっている。
そんな彼だからこそ民衆は1万を超える岩人形の大群であろうとルノならばどうにか出来るのではないかと考える者も少なくはなく、彼が戻ればこの国の危機を乗り越えられると信じられていた。だからこそ先帝は誰にも知られないように帝都の城門にてルノとリーリスを迎え入れ、何者にも気づかれぬように移送を行う。
「噂が誰が広めたのかは分からんが、十中八九は魔王軍の仕業だと考えるべきだろう。奴等が民衆を利用してルノ殿を呼び寄せようとしているとも考えられる」
「それだとルノさんを単独で討伐に向かわせるのは不味いですね。でも、いくら隠しても私達が戻ってきたことは知られちゃうんじゃないですか?」
「大丈夫じゃ。お主たちが帰還に合わせて出迎えの準備は整えていた。姿を現さなければ気付かれる事はないだろう。問題は魔王軍が既に街中に潜入し、噂を広めている事……ヒカゲがいれば噂の出所を調べて貰えるのだが、一緒ではなかったのか?」
「ヒカゲさんとは日の国で別れましたよ。色々と大変そうでした」
日の国で起きた殺人事件により、大量のアダマンタイトが魔王軍に流れた可能性があり、しかも日の国の中でも一、二を誇る腕前の刀匠のクロガネを失ってしまう。その結果、日の国も本格的に魔王軍の調査を行うために日影を動かす。これまでは帝国と同盟国という好で日影の部隊の一部を帝国に預けていたが、今後はヒカゲが指揮を取って大々的な調査を行っている。
「ヒカゲさんは各地に散らばっている日影の忍者を収集しているみたいですよ。魔王軍の調査のために頑張っています」
「そうか。それならば仕方ないが……問題は四天王が二人欠けた状態で岩人形を迎え撃つ事だな」
「ギリョウさんの容体は良くないんですか?」
「普通に生活する分には問題はないが、奴も儂と同様に年齢を重ね過ぎた。本来ならばお互いに隠居も考えなければいけない身だが……少なくとも戦える身体ではない」
四天王の中でも最年長で居合の達人であるギリョウだが、先のエルフ王国との会談の際に身体を無理に酷使した事で現在も回復し切れておらず、本来ならば戦える状態ではない。しかし、彼の代役を務めるほどの人材は存在せず、現在の彼は新兵の教育に励んでおり、戦闘の指揮という点では他の四天王よりも優れているので引退はしていない。
「ドリアさんとダンテさんはどうしてるんですか?」
「ドリアは岩人形に対抗するために魔術師部隊に岩人形との戦闘対策を立てている。ドリアは兵士の士気が落ちないように訓練に励んでおる」
リーリスとヒカゲを除いた各四天王も岩人形の対策を立てて準備に励んでいるらしく、彼等以外の人間も岩人形の帝都襲撃に備えている。しかし、相手が他国の軍隊ならば対抗策は幾らでも存在するが、魔物の軍勢が襲撃を仕掛ける事は滅多になく、対抗策も立てにくい。
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