129 / 657
冒険者編
岩人形の大群
しおりを挟む
「正直に言えばルノ殿が出向き、岩人形の大群を撃退する事は出来ると思う。しかし、今回の噴火といい、大群が帝都に向かっている事から考えても魔王軍の仕業である可能性が高い。いや、間違いなく奴等が関わっているだろう」
「魔王軍……」
「ゴキブリのようにしつこい奴等ですね。この世界にゴキブリいませんけど……」
「調査の結果、岩人形の大群の中には人間らしき姿を目撃したと報告を受けている。恐らく、エルフ王国との会談の時のように何者かが魔物を誘導しているのだろう」
「……ちなみに私が調べた」
「わあっ!?びっくりした!!久しぶりですね!!」
アイラの背後から暗殺者のコトネが現れ、久しぶりの再会となるが随分と疲れている様子であり、アイラの背中に張り付きながら説明を行う。
「ずっと走りっぱなしだから疲れた……でも、任務はやり遂げた」
「無茶をさせてすまないな。うちのギルドで優秀な暗殺者は君しかいないからな」
「彼女のお陰で色々と情報を掴めたからのう。どうやら敵は岩人形だけではなく、魔王軍も関わっておる。もしも敵の目的が帝都だとした場合、きっとルノ殿が不在の際に何かを仕掛けてくるだろう」
「だからルノさんに残ってほしいんですね」
「うむ。警戒態勢は整えているが、我が国の最大の戦力はルノ殿だ」
流石のルノも単独で岩人形の大群を討伐するには時間が掛かる事は間違いなく、その間に魔王軍が帝都で何らかの行動を取る可能性も否定できない。しかし、リーリスは逆の考えも抱く。
「いえ、もしかしたら敵の狙いはルノさんかもしれませんよ」
「え?どういう事?」
「岩人形の大群に対応できる存在なんて限られています。だから魔王軍の目的はルノさんを呼び寄せて仕留めようとしているんじゃないですかね」
「という事は……敵の目的はルノ殿という事か」
「現状では何も分かりませんね。ですけど、籠城する場合はそれ相応の準備が必要になります。その辺の準備は出来てるんですか?」
「食料に関しては3年分の兵糧がある。水に関しても帝都は地下水を汲んでいるから問題はないが、戦力面という点では不安が大きいのう。相手が岩人形となると並の兵士では敵わん」
籠城中の食料や水に関しては問題はないが、岩人形に対抗できる戦力となると魔物退治のプロの冒険者の力は必要不可欠となる。一応は周辺の村や町からも兵士を集めてはいるが、もしも敵の狙いが帝都ではなく、別の地域だと考えた場合は帝都にだけ戦力を集中させる事は悪手となる。
「敵の狙いが掴めないのが厄介ですね。仮に敵の狙いがルノさんだと仮定した場合、何の策もなく挑むはずがありません。何らかの対策を取っているのかもしれません」
「……ルノに勝てる人間がいるとは思えない」
「それは同感ですけど、ルノさんも一応は人間ですからね。毒を仕込まれたら流石に死にますよ……多分」
「多分というのはどういう意味!?」
レベルが90を超えている時点でこの世界では最高クラスのステータスを誇るルノではあるが、先日の日の国の件もあり、決して無敵な存在ではない。彼の魔法の力は世界最強だが、それを扱うルノ本人は人間である事に変わりはなく、毒を盛られたらあっさりと死んでしまう可能性は高い。
「ですけど今回の行動は魔王軍も追い詰められていると考えられます。わざわざ竜種よりも扱いにくい岩人形を誘導させるなんて面倒な真似をしている当たり、本格的に帝国を潰しに来たようです」
「例の捕まえた幹部から重要な情報は掴めなかったのか?」
「その辺はヒカゲさんに任せているので私達は知りませんよ。ですけど、魔王軍に関わりのある人物が記された資料は手に入れました。今後はこの資料を参考に魔王軍の関係者を日影が調査するようです」
「うむ。それでは一度城に戻るぞ。既にヒカゲ以外の四天王は集めておるからな。アイラとコトネも共に来てくれるか?」
「分かりました」
「……了解」
「あ、それならうちのルウ達は兵士さん達にお願いしていいですか?家まで送り届けて下さい」
「クゥ~ン」
「ブモォッ!!」
「ひいっ!?」
黒狼とミノタウロス達に関してはルノの屋敷まで兵士に任せると、先帝は馬車に全員乗せて城に急ぐ。火竜、土竜に続いて今度は岩人形を繰り出した魔王軍に対し、帝国は領内に存在するS級冒険者を集結させ、対抗策を練る必要があった――
※次章より帝都防衛編に入ります。
「魔王軍……」
「ゴキブリのようにしつこい奴等ですね。この世界にゴキブリいませんけど……」
「調査の結果、岩人形の大群の中には人間らしき姿を目撃したと報告を受けている。恐らく、エルフ王国との会談の時のように何者かが魔物を誘導しているのだろう」
「……ちなみに私が調べた」
「わあっ!?びっくりした!!久しぶりですね!!」
アイラの背後から暗殺者のコトネが現れ、久しぶりの再会となるが随分と疲れている様子であり、アイラの背中に張り付きながら説明を行う。
「ずっと走りっぱなしだから疲れた……でも、任務はやり遂げた」
「無茶をさせてすまないな。うちのギルドで優秀な暗殺者は君しかいないからな」
「彼女のお陰で色々と情報を掴めたからのう。どうやら敵は岩人形だけではなく、魔王軍も関わっておる。もしも敵の目的が帝都だとした場合、きっとルノ殿が不在の際に何かを仕掛けてくるだろう」
「だからルノさんに残ってほしいんですね」
「うむ。警戒態勢は整えているが、我が国の最大の戦力はルノ殿だ」
流石のルノも単独で岩人形の大群を討伐するには時間が掛かる事は間違いなく、その間に魔王軍が帝都で何らかの行動を取る可能性も否定できない。しかし、リーリスは逆の考えも抱く。
「いえ、もしかしたら敵の狙いはルノさんかもしれませんよ」
「え?どういう事?」
「岩人形の大群に対応できる存在なんて限られています。だから魔王軍の目的はルノさんを呼び寄せて仕留めようとしているんじゃないですかね」
「という事は……敵の目的はルノ殿という事か」
「現状では何も分かりませんね。ですけど、籠城する場合はそれ相応の準備が必要になります。その辺の準備は出来てるんですか?」
「食料に関しては3年分の兵糧がある。水に関しても帝都は地下水を汲んでいるから問題はないが、戦力面という点では不安が大きいのう。相手が岩人形となると並の兵士では敵わん」
籠城中の食料や水に関しては問題はないが、岩人形に対抗できる戦力となると魔物退治のプロの冒険者の力は必要不可欠となる。一応は周辺の村や町からも兵士を集めてはいるが、もしも敵の狙いが帝都ではなく、別の地域だと考えた場合は帝都にだけ戦力を集中させる事は悪手となる。
「敵の狙いが掴めないのが厄介ですね。仮に敵の狙いがルノさんだと仮定した場合、何の策もなく挑むはずがありません。何らかの対策を取っているのかもしれません」
「……ルノに勝てる人間がいるとは思えない」
「それは同感ですけど、ルノさんも一応は人間ですからね。毒を仕込まれたら流石に死にますよ……多分」
「多分というのはどういう意味!?」
レベルが90を超えている時点でこの世界では最高クラスのステータスを誇るルノではあるが、先日の日の国の件もあり、決して無敵な存在ではない。彼の魔法の力は世界最強だが、それを扱うルノ本人は人間である事に変わりはなく、毒を盛られたらあっさりと死んでしまう可能性は高い。
「ですけど今回の行動は魔王軍も追い詰められていると考えられます。わざわざ竜種よりも扱いにくい岩人形を誘導させるなんて面倒な真似をしている当たり、本格的に帝国を潰しに来たようです」
「例の捕まえた幹部から重要な情報は掴めなかったのか?」
「その辺はヒカゲさんに任せているので私達は知りませんよ。ですけど、魔王軍に関わりのある人物が記された資料は手に入れました。今後はこの資料を参考に魔王軍の関係者を日影が調査するようです」
「うむ。それでは一度城に戻るぞ。既にヒカゲ以外の四天王は集めておるからな。アイラとコトネも共に来てくれるか?」
「分かりました」
「……了解」
「あ、それならうちのルウ達は兵士さん達にお願いしていいですか?家まで送り届けて下さい」
「クゥ~ン」
「ブモォッ!!」
「ひいっ!?」
黒狼とミノタウロス達に関してはルノの屋敷まで兵士に任せると、先帝は馬車に全員乗せて城に急ぐ。火竜、土竜に続いて今度は岩人形を繰り出した魔王軍に対し、帝国は領内に存在するS級冒険者を集結させ、対抗策を練る必要があった――
※次章より帝都防衛編に入ります。
0
お気に入りに追加
11,323
あなたにおすすめの小説
校長室のソファの染みを知っていますか?
フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。
しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。
座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る
僕の家族は母様と母様の子供の弟妹達と使い魔達だけだよ?
闇夜の現し人(ヤミヨノウツシビト)
ファンタジー
ー 母さんは、「絶世の美女」と呼ばれるほど美しく、国の中で最も権力の強い貴族と呼ばれる公爵様の寵姫だった。
しかし、それをよく思わない正妻やその親戚たちに毒を盛られてしまった。
幸い発熱だけですんだがお腹に子が出来てしまった以上ここにいては危険だと判断し、仲の良かった侍女数名に「ここを離れる」と言い残し公爵家を後にした。
お母さん大好きっ子な主人公は、毒を盛られるという失態をおかした父親や毒を盛った親戚たちを嫌悪するがお母さんが日々、「家族で暮らしたい」と話していたため、ある出来事をきっかけに一緒に暮らし始めた。
しかし、自分が家族だと認めた者がいれば初めて見た者は跪くと言われる程の華の顔(カンバセ)を綻ばせ笑うが、家族がいなければ心底どうでもいいというような表情をしていて、人形の方がまだ表情があると言われていた。
『無能で無価値の稚拙な愚父共が僕の家族を名乗る資格なんて無いんだよ?』
さぁ、ここに超絶チートを持つ自分が認めた家族以外の生き物全てを嫌う主人公の物語が始まる。
〈念の為〉
稚拙→ちせつ
愚父→ぐふ
⚠︎注意⚠︎
不定期更新です。作者の妄想をつぎ込んだ作品です。
「お姉様の赤ちゃん、私にちょうだい?」
サイコちゃん
恋愛
実家に妊娠を知らせた途端、妹からお腹の子をくれと言われた。姉であるイヴェットは自分の持ち物や恋人をいつも妹に奪われてきた。しかし赤ん坊をくれというのはあまりに酷過ぎる。そのことを夫に相談すると、彼は「良かったね! 家族ぐるみで育ててもらえるんだね!」と言い放った。妹と両親が異常であることを伝えても、夫は理解を示してくれない。やがて夫婦は離婚してイヴェットはひとり苦境へ立ち向かうことになったが、“医術と魔術の天才”である治療人アランが彼女に味方して――
【完】あの、……どなたでしょうか?
桐生桜月姫
恋愛
「キャサリン・ルーラー
爵位を傘に取る卑しい女め、今この時を以て貴様との婚約を破棄する。」
見た目だけは、麗しの王太子殿下から出た言葉に、婚約破棄を突きつけられた美しい女性は………
「あの、……どなたのことでしょうか?」
まさかの意味不明発言!!
今ここに幕開ける、波瀾万丈の間違い婚約破棄ラブコメ!!
結末やいかに!!
*******************
執筆終了済みです。
父が死んだのでようやく邪魔な女とその息子を処分できる
兎屋亀吉
恋愛
伯爵家の当主だった父が亡くなりました。これでようやく、父の愛妾として我が物顔で屋敷内をうろつくばい菌のような女とその息子を処分することができます。父が死ねば息子が当主になれるとでも思ったのかもしれませんが、父がいなくなった今となっては思う通りになることなど何一つありませんよ。今まで父の威を借りてさんざんいびってくれた仕返しといきましょうか。根に持つタイプの陰険女主人公。
初夜に「俺がお前を抱く事は無い!」と叫んだら長年の婚約者だった新妻に「気持ち悪い」と言われた上に父にも予想外の事を言われた男とその浮気女の話
ラララキヲ
恋愛
長年の婚約者を欺いて平民女と浮気していた侯爵家長男。3年後の白い結婚での離婚を浮気女に約束して、新妻の寝室へと向かう。
初夜に「俺がお前を抱く事は無い!」と愛する夫から宣言された無様な女を嘲笑う為だけに。
しかし寝室に居た妻は……
希望通りの白い結婚と愛人との未来輝く生活の筈が……全てを周りに知られていた上に自分の父親である侯爵家当主から言われた言葉は──
一人の女性を蹴落として掴んだ彼らの未来は……──
<【ざまぁ編】【イリーナ編】【コザック第二の人生編(ザマァ有)】となりました>
◇テンプレ浮気クソ男女。
◇軽い触れ合い表現があるのでR15に
◇ふんわり世界観。ゆるふわ設定。
◇ご都合展開。矛盾は察して下さい…
◇なろうにも上げてます。
※HOTランキング入り(1位)!?[恋愛::3位]ありがとうございます!恐縮です!期待に添えればよいのですがッ!!(;><)
美しい姉と痩せこけた妹
サイコちゃん
ファンタジー
若き公爵は虐待を受けた姉妹を引き取ることにした。やがて訪れたのは美しい姉と痩せこけた妹だった。姉が夢中でケーキを食べる中、妹はそれがケーキだと分からない。姉がドレスのプレゼントに喜ぶ中、妹はそれがドレスだと分からない。公爵はあまりに差のある姉妹に疑念を抱いた――
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。
このユーザをミュートしますか?
※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。