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冒険者編
岩人形の大群
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「正直に言えばルノ殿が出向き、岩人形の大群を撃退する事は出来ると思う。しかし、今回の噴火といい、大群が帝都に向かっている事から考えても魔王軍の仕業である可能性が高い。いや、間違いなく奴等が関わっているだろう」
「魔王軍……」
「ゴキブリのようにしつこい奴等ですね。この世界にゴキブリいませんけど……」
「調査の結果、岩人形の大群の中には人間らしき姿を目撃したと報告を受けている。恐らく、エルフ王国との会談の時のように何者かが魔物を誘導しているのだろう」
「……ちなみに私が調べた」
「わあっ!?びっくりした!!久しぶりですね!!」
アイラの背後から暗殺者のコトネが現れ、久しぶりの再会となるが随分と疲れている様子であり、アイラの背中に張り付きながら説明を行う。
「ずっと走りっぱなしだから疲れた……でも、任務はやり遂げた」
「無茶をさせてすまないな。うちのギルドで優秀な暗殺者は君しかいないからな」
「彼女のお陰で色々と情報を掴めたからのう。どうやら敵は岩人形だけではなく、魔王軍も関わっておる。もしも敵の目的が帝都だとした場合、きっとルノ殿が不在の際に何かを仕掛けてくるだろう」
「だからルノさんに残ってほしいんですね」
「うむ。警戒態勢は整えているが、我が国の最大の戦力はルノ殿だ」
流石のルノも単独で岩人形の大群を討伐するには時間が掛かる事は間違いなく、その間に魔王軍が帝都で何らかの行動を取る可能性も否定できない。しかし、リーリスは逆の考えも抱く。
「いえ、もしかしたら敵の狙いはルノさんかもしれませんよ」
「え?どういう事?」
「岩人形の大群に対応できる存在なんて限られています。だから魔王軍の目的はルノさんを呼び寄せて仕留めようとしているんじゃないですかね」
「という事は……敵の目的はルノ殿という事か」
「現状では何も分かりませんね。ですけど、籠城する場合はそれ相応の準備が必要になります。その辺の準備は出来てるんですか?」
「食料に関しては3年分の兵糧がある。水に関しても帝都は地下水を汲んでいるから問題はないが、戦力面という点では不安が大きいのう。相手が岩人形となると並の兵士では敵わん」
籠城中の食料や水に関しては問題はないが、岩人形に対抗できる戦力となると魔物退治のプロの冒険者の力は必要不可欠となる。一応は周辺の村や町からも兵士を集めてはいるが、もしも敵の狙いが帝都ではなく、別の地域だと考えた場合は帝都にだけ戦力を集中させる事は悪手となる。
「敵の狙いが掴めないのが厄介ですね。仮に敵の狙いがルノさんだと仮定した場合、何の策もなく挑むはずがありません。何らかの対策を取っているのかもしれません」
「……ルノに勝てる人間がいるとは思えない」
「それは同感ですけど、ルノさんも一応は人間ですからね。毒を仕込まれたら流石に死にますよ……多分」
「多分というのはどういう意味!?」
レベルが90を超えている時点でこの世界では最高クラスのステータスを誇るルノではあるが、先日の日の国の件もあり、決して無敵な存在ではない。彼の魔法の力は世界最強だが、それを扱うルノ本人は人間である事に変わりはなく、毒を盛られたらあっさりと死んでしまう可能性は高い。
「ですけど今回の行動は魔王軍も追い詰められていると考えられます。わざわざ竜種よりも扱いにくい岩人形を誘導させるなんて面倒な真似をしている当たり、本格的に帝国を潰しに来たようです」
「例の捕まえた幹部から重要な情報は掴めなかったのか?」
「その辺はヒカゲさんに任せているので私達は知りませんよ。ですけど、魔王軍に関わりのある人物が記された資料は手に入れました。今後はこの資料を参考に魔王軍の関係者を日影が調査するようです」
「うむ。それでは一度城に戻るぞ。既にヒカゲ以外の四天王は集めておるからな。アイラとコトネも共に来てくれるか?」
「分かりました」
「……了解」
「あ、それならうちのルウ達は兵士さん達にお願いしていいですか?家まで送り届けて下さい」
「クゥ~ン」
「ブモォッ!!」
「ひいっ!?」
黒狼とミノタウロス達に関してはルノの屋敷まで兵士に任せると、先帝は馬車に全員乗せて城に急ぐ。火竜、土竜に続いて今度は岩人形を繰り出した魔王軍に対し、帝国は領内に存在するS級冒険者を集結させ、対抗策を練る必要があった――
※次章より帝都防衛編に入ります。
「魔王軍……」
「ゴキブリのようにしつこい奴等ですね。この世界にゴキブリいませんけど……」
「調査の結果、岩人形の大群の中には人間らしき姿を目撃したと報告を受けている。恐らく、エルフ王国との会談の時のように何者かが魔物を誘導しているのだろう」
「……ちなみに私が調べた」
「わあっ!?びっくりした!!久しぶりですね!!」
アイラの背後から暗殺者のコトネが現れ、久しぶりの再会となるが随分と疲れている様子であり、アイラの背中に張り付きながら説明を行う。
「ずっと走りっぱなしだから疲れた……でも、任務はやり遂げた」
「無茶をさせてすまないな。うちのギルドで優秀な暗殺者は君しかいないからな」
「彼女のお陰で色々と情報を掴めたからのう。どうやら敵は岩人形だけではなく、魔王軍も関わっておる。もしも敵の目的が帝都だとした場合、きっとルノ殿が不在の際に何かを仕掛けてくるだろう」
「だからルノさんに残ってほしいんですね」
「うむ。警戒態勢は整えているが、我が国の最大の戦力はルノ殿だ」
流石のルノも単独で岩人形の大群を討伐するには時間が掛かる事は間違いなく、その間に魔王軍が帝都で何らかの行動を取る可能性も否定できない。しかし、リーリスは逆の考えも抱く。
「いえ、もしかしたら敵の狙いはルノさんかもしれませんよ」
「え?どういう事?」
「岩人形の大群に対応できる存在なんて限られています。だから魔王軍の目的はルノさんを呼び寄せて仕留めようとしているんじゃないですかね」
「という事は……敵の目的はルノ殿という事か」
「現状では何も分かりませんね。ですけど、籠城する場合はそれ相応の準備が必要になります。その辺の準備は出来てるんですか?」
「食料に関しては3年分の兵糧がある。水に関しても帝都は地下水を汲んでいるから問題はないが、戦力面という点では不安が大きいのう。相手が岩人形となると並の兵士では敵わん」
籠城中の食料や水に関しては問題はないが、岩人形に対抗できる戦力となると魔物退治のプロの冒険者の力は必要不可欠となる。一応は周辺の村や町からも兵士を集めてはいるが、もしも敵の狙いが帝都ではなく、別の地域だと考えた場合は帝都にだけ戦力を集中させる事は悪手となる。
「敵の狙いが掴めないのが厄介ですね。仮に敵の狙いがルノさんだと仮定した場合、何の策もなく挑むはずがありません。何らかの対策を取っているのかもしれません」
「……ルノに勝てる人間がいるとは思えない」
「それは同感ですけど、ルノさんも一応は人間ですからね。毒を仕込まれたら流石に死にますよ……多分」
「多分というのはどういう意味!?」
レベルが90を超えている時点でこの世界では最高クラスのステータスを誇るルノではあるが、先日の日の国の件もあり、決して無敵な存在ではない。彼の魔法の力は世界最強だが、それを扱うルノ本人は人間である事に変わりはなく、毒を盛られたらあっさりと死んでしまう可能性は高い。
「ですけど今回の行動は魔王軍も追い詰められていると考えられます。わざわざ竜種よりも扱いにくい岩人形を誘導させるなんて面倒な真似をしている当たり、本格的に帝国を潰しに来たようです」
「例の捕まえた幹部から重要な情報は掴めなかったのか?」
「その辺はヒカゲさんに任せているので私達は知りませんよ。ですけど、魔王軍に関わりのある人物が記された資料は手に入れました。今後はこの資料を参考に魔王軍の関係者を日影が調査するようです」
「うむ。それでは一度城に戻るぞ。既にヒカゲ以外の四天王は集めておるからな。アイラとコトネも共に来てくれるか?」
「分かりました」
「……了解」
「あ、それならうちのルウ達は兵士さん達にお願いしていいですか?家まで送り届けて下さい」
「クゥ~ン」
「ブモォッ!!」
「ひいっ!?」
黒狼とミノタウロス達に関してはルノの屋敷まで兵士に任せると、先帝は馬車に全員乗せて城に急ぐ。火竜、土竜に続いて今度は岩人形を繰り出した魔王軍に対し、帝国は領内に存在するS級冒険者を集結させ、対抗策を練る必要があった――
※次章より帝都防衛編に入ります。
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