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冒険者編
敵は一人ではない
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「ぐううっ……うおおおおっ!!」
「うわ、出てきた!!」
「ゾンビみたいになってますね」
「あんたら余裕だな……」
建物から黒兵衛が姿を現し、衝突の際に身体の至る箇所を出血していたが、即座に左腕のように刃を翳して血液を凝固させて致命傷を避ける。だが、骨折までは修復できないらしく、右腕の小指と薬指が折れた事に気付き、反対の手で力尽くに曲がった指を握りしめる。
「うぐぁっ……!?き、貴様……!!」
「風圧」
「ぐはぁっ!?」
「容赦ないですね!!」
戦闘状態を整えようとした黒兵衛に対してルノは再び風圧の魔法を喰らわせ、建物の中にもう一度吹き飛ばす。破壊された壁の穴に黒兵衛が通過した瞬間、建物が崩れてしまう。
「があああああっ……!?」
「あ、しまった……やり過ぎたかな?」
「建物の中に他の人が居ないことを祈りましょう」
「ええっ……」
二人のやり取りにソウシは呆然とするが、崩壊した建物の瓦礫を跳ね除け、全身が血塗れの状態の黒兵衛が姿を現す。立ち上がる事も出来ないのか動物のように四つん這いの状態で自身の身体に乗り込んだ瓦礫を振り払い、血走った目でルノを睨みつける。
「ぐふぅっ……き、さまぁっ……!!」
「うわ、まだ息がありますよ!?ルノさん、もう一発喰らわせて下さい!!」
「いや、これ以上やったら死んじゃうよ……」
「それなら俺が……おら、大人しくしろ!!」
ゴキブリ並の生命力で黒兵衛は崩壊した建物から抜け出すが、もう戦える状態ではなく、傷跡の血液を固める事も出来ない様子だった。既に刀は手元から離れており、それを確認したソウシは倒れこんでいる黒兵衛に近づき、その頭に自分の鞘を叩きこむ。
「寝てろっ!!」
「ぐがぁっ!?」
鞘が頭部に叩きこまれ、今度こそ完全に気絶したのか黒兵衛は動かなくなり、その様子を見ていたルノは安堵の息を吐く。これ以上に魔法で痛めつけたら死んでいた可能性があるため、ソウシのお陰で殺人犯にならずに済んだ。
「ふうっ……一応は礼を言っておきますよ。あんたらのお陰で殺人犯を逮捕できた」
「礼も何も貴方が勝手に突っ走ってこんな事態に陥ったんじゃないですか」
「……それを言われると何も言えねえや」
リーリスの言葉にソウシは罰が悪そうに顔を反らし、本来ならば他の青空組の人間を呼び集めて宿に向かっていれば怪我人も出さずに黒兵衛を拘束できた可能性がある。だが、これで殺人事件の犯人を捕まえる事には成功し、これで事件は解決かと思われたが、ルノはある疑問を抱く。
「あれ……ちょっと待って、本当にこの人だけなの?」
「え、どういう意味ですか?」
「いや、だってさ……話を聞く限りだと火災が起きた時、この人はソウシさんと戦っていたんだよね。それなら誰が火事を引き起こしたのかなって……」
「……何だって?」
ルノの言葉にソウシとリーリスは目を見開き、確かに宿屋の火災の謎は解けていない。宿の人間の話では火災は建物内の複数の箇所で同時に起きたらしく、ソウシと戦闘を行っていた黒兵衛が火事を引き起こしたとは考えにくい。
「それじゃあ、この火事は一体誰が……危ないっ!?」
「えっ?」
「ルノさん!!後ろです!!」
ソウシが表情を一変させて叫び声を上げ、リーリスの驚いた声が響き、ルノは背後から近づく気配に気づいて振り返ると、そこには治療を受けていた人間達が動き出していた。
「うおおっ!!」
「わっ、びっくりした」
ルノの背後から接近してきたのは短刀を抱えた男性であり、彼の背中に向けて突き刺すが咄嗟に躱されてしまう。しかし、他にも数人の人間が起き上がり、懐に隠していた武器を取り出す。
「死ねえっ!!」
「手裏剣!?」
「忍者ですか!?」
介抱されていた年若い女性が起き上がると、着物の中に隠していた手裏剣を取り出し、ルノに投擲する。まさかこんな場所で忍者が扱う武器を見られるとは思わなかったが、冷静にルノは自分に向かってきた手裏剣を指で掴み取る。
「危なっ」
「そんなっ!?す、素手で!?」
「お、おい……何が起きてんだ?」
「危ないから離れてください!!巻き添えを喰らいますよ!!」
介抱のために訪れた住民達は目の前の光景に理解が追い付かずに立ち尽くしてしまう。そんな彼等にリーリスは避難するように伝えるが、その間にも次々と宿に宿泊していた客が動き出す。
「こいつはどうだ!!」
「おっと」
「嘘っ!?」
今度は少年が苦無を取り出して投げつけるが、ルノはそれを見て正面から苦無を掴み取る。恐るべき動体視力と反射神経を誇る彼に少年は目を見開くが、その隙にソウシが柄で少年の腹部を叩きこむ。
「おらぁっ!!」
「ぐへぇっ!?」
「ちょ、相手は子供ですよ?」
「……だから殺さないでやったんですよ」
子供が相手であろうと容赦なく叩きのめしたソウシは柄を握りしめ、残りの人間を確認する。ルノに襲い掛かった女性と男性は短刀を構えて距離を開き、こちらの様子を伺う。正確に言えば打つ手がなくて何も出来ないというのが正しく、自分達の攻撃を容易く対応するルノに彼等もどのように対処すれば良いのか混乱していた。
※「最強の職業は付与魔術師かもしれない」の最終回(仮)も投稿しています。
「うわ、出てきた!!」
「ゾンビみたいになってますね」
「あんたら余裕だな……」
建物から黒兵衛が姿を現し、衝突の際に身体の至る箇所を出血していたが、即座に左腕のように刃を翳して血液を凝固させて致命傷を避ける。だが、骨折までは修復できないらしく、右腕の小指と薬指が折れた事に気付き、反対の手で力尽くに曲がった指を握りしめる。
「うぐぁっ……!?き、貴様……!!」
「風圧」
「ぐはぁっ!?」
「容赦ないですね!!」
戦闘状態を整えようとした黒兵衛に対してルノは再び風圧の魔法を喰らわせ、建物の中にもう一度吹き飛ばす。破壊された壁の穴に黒兵衛が通過した瞬間、建物が崩れてしまう。
「があああああっ……!?」
「あ、しまった……やり過ぎたかな?」
「建物の中に他の人が居ないことを祈りましょう」
「ええっ……」
二人のやり取りにソウシは呆然とするが、崩壊した建物の瓦礫を跳ね除け、全身が血塗れの状態の黒兵衛が姿を現す。立ち上がる事も出来ないのか動物のように四つん這いの状態で自身の身体に乗り込んだ瓦礫を振り払い、血走った目でルノを睨みつける。
「ぐふぅっ……き、さまぁっ……!!」
「うわ、まだ息がありますよ!?ルノさん、もう一発喰らわせて下さい!!」
「いや、これ以上やったら死んじゃうよ……」
「それなら俺が……おら、大人しくしろ!!」
ゴキブリ並の生命力で黒兵衛は崩壊した建物から抜け出すが、もう戦える状態ではなく、傷跡の血液を固める事も出来ない様子だった。既に刀は手元から離れており、それを確認したソウシは倒れこんでいる黒兵衛に近づき、その頭に自分の鞘を叩きこむ。
「寝てろっ!!」
「ぐがぁっ!?」
鞘が頭部に叩きこまれ、今度こそ完全に気絶したのか黒兵衛は動かなくなり、その様子を見ていたルノは安堵の息を吐く。これ以上に魔法で痛めつけたら死んでいた可能性があるため、ソウシのお陰で殺人犯にならずに済んだ。
「ふうっ……一応は礼を言っておきますよ。あんたらのお陰で殺人犯を逮捕できた」
「礼も何も貴方が勝手に突っ走ってこんな事態に陥ったんじゃないですか」
「……それを言われると何も言えねえや」
リーリスの言葉にソウシは罰が悪そうに顔を反らし、本来ならば他の青空組の人間を呼び集めて宿に向かっていれば怪我人も出さずに黒兵衛を拘束できた可能性がある。だが、これで殺人事件の犯人を捕まえる事には成功し、これで事件は解決かと思われたが、ルノはある疑問を抱く。
「あれ……ちょっと待って、本当にこの人だけなの?」
「え、どういう意味ですか?」
「いや、だってさ……話を聞く限りだと火災が起きた時、この人はソウシさんと戦っていたんだよね。それなら誰が火事を引き起こしたのかなって……」
「……何だって?」
ルノの言葉にソウシとリーリスは目を見開き、確かに宿屋の火災の謎は解けていない。宿の人間の話では火災は建物内の複数の箇所で同時に起きたらしく、ソウシと戦闘を行っていた黒兵衛が火事を引き起こしたとは考えにくい。
「それじゃあ、この火事は一体誰が……危ないっ!?」
「えっ?」
「ルノさん!!後ろです!!」
ソウシが表情を一変させて叫び声を上げ、リーリスの驚いた声が響き、ルノは背後から近づく気配に気づいて振り返ると、そこには治療を受けていた人間達が動き出していた。
「うおおっ!!」
「わっ、びっくりした」
ルノの背後から接近してきたのは短刀を抱えた男性であり、彼の背中に向けて突き刺すが咄嗟に躱されてしまう。しかし、他にも数人の人間が起き上がり、懐に隠していた武器を取り出す。
「死ねえっ!!」
「手裏剣!?」
「忍者ですか!?」
介抱されていた年若い女性が起き上がると、着物の中に隠していた手裏剣を取り出し、ルノに投擲する。まさかこんな場所で忍者が扱う武器を見られるとは思わなかったが、冷静にルノは自分に向かってきた手裏剣を指で掴み取る。
「危なっ」
「そんなっ!?す、素手で!?」
「お、おい……何が起きてんだ?」
「危ないから離れてください!!巻き添えを喰らいますよ!!」
介抱のために訪れた住民達は目の前の光景に理解が追い付かずに立ち尽くしてしまう。そんな彼等にリーリスは避難するように伝えるが、その間にも次々と宿に宿泊していた客が動き出す。
「こいつはどうだ!!」
「おっと」
「嘘っ!?」
今度は少年が苦無を取り出して投げつけるが、ルノはそれを見て正面から苦無を掴み取る。恐るべき動体視力と反射神経を誇る彼に少年は目を見開くが、その隙にソウシが柄で少年の腹部を叩きこむ。
「おらぁっ!!」
「ぐへぇっ!?」
「ちょ、相手は子供ですよ?」
「……だから殺さないでやったんですよ」
子供が相手であろうと容赦なく叩きのめしたソウシは柄を握りしめ、残りの人間を確認する。ルノに襲い掛かった女性と男性は短刀を構えて距離を開き、こちらの様子を伺う。正確に言えば打つ手がなくて何も出来ないというのが正しく、自分達の攻撃を容易く対応するルノに彼等もどのように対処すれば良いのか混乱していた。
※「最強の職業は付与魔術師かもしれない」の最終回(仮)も投稿しています。
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