122 / 657
冒険者編
七大魔剣 〈月光〉
しおりを挟む
「ぎゃああああっ!?」
「お、おい!!あんた、一体何を……うぎゃあっ!?」
「ひ、人斬りだっ!!」
宿屋に存在した人間の介抱を行っていた住民の悲鳴が響き渡り、ルノ達が視線を向けると上半身をはだけた状態の男が存在し、蛍光色に輝く刀身の刀を握りしめていた。男の顔を見たルノは自分達が探している似顔絵の人物と同じ顔をしている事に気付き、この男が「黒兵衛」をだと確信した。
「くっ……この程度では足りんか」
「ひいいっ!!」
「た、助けて……!!」
「あ、足がぁっ!!」
「何てことを……」
黒兵衛の周囲には切り付けられた一般人の姿が存在し、急所を切られたようだが傷跡からは血液が一滴も噴出さず、瘡蓋のように血液が凝固して傷跡を塞いでいた。それを確認した黒兵衛は奇妙な輝きを行う刀を握りしめ、他の人間に斬りかかる。
「もっとだ!!もっと寄越せっ!!」
「うわっ!?」
「逃げろぉっ!!」
「ちっ……このくそ野郎!!」
「あ、ちょっと!?まだ動いちゃ……」
民間人に斬りかかろうとした黒兵衛にソウシは刀を構えて駆け抜け、鞘から刃を引き抜く。
「抜刀!!」
「ぬぅっ!?」
剣道の居合のように高速に引き抜かれた刃が黒兵衛の左腕を切り裂き、激しい血飛沫が生じる。その光景に他の人間は歓喜と驚愕が入り混じった声を上げるが、即座に黒兵衛は切り付けられた腕を確認し、苦痛の表情を浮かべながらもソウシを睨みつける。
「お前は……まだ生きていたのか」
「はっ、あの程度で死ぬかよ……まあ、正直に言えば死にかけたのは事実だけどよ」
「ち、油断していたか……」
黒兵衛は切り付けられた腕を確認し、切断までには至らなかったが傷跡が深く、血が止まらなかった。それを確認したソウシは身体をふらつかせながらも刀を構え、黒兵衛と向かい合う。
「……その傷じゃもう戦えないだろ。降伏しな」
「傷?何の話だ?」
「頭がいかれてんのか?それとも、理解が追い付いていないのか?その腕でどうやって戦うんだよ」
刀の峰の部分を肩に起きながらソウシは黒兵衛の様子を伺い、左腕に深手を負いながらも冷静さを保っている相手に敬意を抱く一方、妙に余裕の態度を貫く彼に疑問を抱く。そんな彼の気持ちを読み取るように黒兵衛は口元に笑みを浮かべ、自身の刀を傷口の前に構える。
「この刀にはこんな使い方もある」
「なっ!?」
黒兵衛が自分の握りしめる刀の刀身部分を傷口に近づけた瞬間、噴き出していた血液が刃に吸収されるように消え去り、傷跡に残された血液が固まって止血の役割を行う。刀で斬られた人間と同様に血液を固める事で致命傷になりかねない傷跡を塞いだ黒兵衛の行動にソウシは目を見開き、その一方で黒兵衛は斬られた腕が問題なく動くことを確認すると、ソウシに刃を構える。
「どんな方法を使ったのかは知らんが、ここまでだな」
「おいおい……冗談じゃねえや」
何事も無かったかのように両手で刀を構える黒兵衛にソウシは引きつった笑みを浮かべ、まだ完全に回復しきっていない状態で戦闘を挑んだことを後悔する。しかし、当然ながらに相手は待つはずがなく、刀を振り落とす。
「残念だったな小童っ!!」
「うおっ!?」
上段から振り下ろされた刃に対してソウシは咄嗟に刀で受け止める。だが、刀はあくまでも囮だったのか黒兵衛は即座に前蹴りを繰り出す。
「邪魔だっ!!」
「ぐはっ!?」
「ああっ!?や、やられちまった!!」
「あの青空組が……」
腹部に強烈な一撃を食らったソウシは地面に倒れこみ、その様子を観察していた一般人は悲鳴を上げる。その様子を見ながら黒兵衛は倒れたソウシに近づき、止めを刺すために刃を構える。
「さらばだ小僧!!」
「ぐっ……!!」
「氷盾!!」
だが、黒兵衛が頭上から振り落とした刃はソウシの肉体に届く事はなく、二人の間に突如として誕生した雪の結晶を想像させる氷の塊に阻まれ、刃が弾かれた金属音が響き渡る。唐突に現れた氷の盾に黒兵衛は目を見開き、同時に彼の横からルノの声が響く。
「風圧!!」
「うおおっ!?」
「えっ……!?」
強烈な突風が黒兵衛の肉体に襲い掛かり、そのまま彼は崩壊寸前の建物に衝突し、壁を破壊して内部にまで転がり込む。その光景にソウシは唖然とした表情を浮かべ、何が起きたのか理解できなかった。
「ふうっ……大丈夫ですか?」
「あ、あんた……今、俺を助けたのか?」
ソウシの前に掌を構えた状態のルノが現れ、ここでソウシはやっと自分が彼に助けられたことを理解する。しかし、当のルノは建物の方向に視線を向け、頬に汗を流しながらソウシを庇うように移動する。その一方で呆れた表情を浮かべたリーリスも現れ、ソウシの身体を無理やりに起き上がらせる。
「全く、何してんですか。そんな身体で動いたら本当に死にますよ」
「いででっ!?な、何しやがる!?」
「治療です、よ!!」
「ぎゃあっ!?」
リーリスはソウシを後ろから持ち上げるように立ち上がらせ、戦闘に巻き込まれないように引きずる。それを確認したルノは建物に視線を向け、黒兵衛が出てくるのを待つ。
「お、おい!!あんた、一体何を……うぎゃあっ!?」
「ひ、人斬りだっ!!」
宿屋に存在した人間の介抱を行っていた住民の悲鳴が響き渡り、ルノ達が視線を向けると上半身をはだけた状態の男が存在し、蛍光色に輝く刀身の刀を握りしめていた。男の顔を見たルノは自分達が探している似顔絵の人物と同じ顔をしている事に気付き、この男が「黒兵衛」をだと確信した。
「くっ……この程度では足りんか」
「ひいいっ!!」
「た、助けて……!!」
「あ、足がぁっ!!」
「何てことを……」
黒兵衛の周囲には切り付けられた一般人の姿が存在し、急所を切られたようだが傷跡からは血液が一滴も噴出さず、瘡蓋のように血液が凝固して傷跡を塞いでいた。それを確認した黒兵衛は奇妙な輝きを行う刀を握りしめ、他の人間に斬りかかる。
「もっとだ!!もっと寄越せっ!!」
「うわっ!?」
「逃げろぉっ!!」
「ちっ……このくそ野郎!!」
「あ、ちょっと!?まだ動いちゃ……」
民間人に斬りかかろうとした黒兵衛にソウシは刀を構えて駆け抜け、鞘から刃を引き抜く。
「抜刀!!」
「ぬぅっ!?」
剣道の居合のように高速に引き抜かれた刃が黒兵衛の左腕を切り裂き、激しい血飛沫が生じる。その光景に他の人間は歓喜と驚愕が入り混じった声を上げるが、即座に黒兵衛は切り付けられた腕を確認し、苦痛の表情を浮かべながらもソウシを睨みつける。
「お前は……まだ生きていたのか」
「はっ、あの程度で死ぬかよ……まあ、正直に言えば死にかけたのは事実だけどよ」
「ち、油断していたか……」
黒兵衛は切り付けられた腕を確認し、切断までには至らなかったが傷跡が深く、血が止まらなかった。それを確認したソウシは身体をふらつかせながらも刀を構え、黒兵衛と向かい合う。
「……その傷じゃもう戦えないだろ。降伏しな」
「傷?何の話だ?」
「頭がいかれてんのか?それとも、理解が追い付いていないのか?その腕でどうやって戦うんだよ」
刀の峰の部分を肩に起きながらソウシは黒兵衛の様子を伺い、左腕に深手を負いながらも冷静さを保っている相手に敬意を抱く一方、妙に余裕の態度を貫く彼に疑問を抱く。そんな彼の気持ちを読み取るように黒兵衛は口元に笑みを浮かべ、自身の刀を傷口の前に構える。
「この刀にはこんな使い方もある」
「なっ!?」
黒兵衛が自分の握りしめる刀の刀身部分を傷口に近づけた瞬間、噴き出していた血液が刃に吸収されるように消え去り、傷跡に残された血液が固まって止血の役割を行う。刀で斬られた人間と同様に血液を固める事で致命傷になりかねない傷跡を塞いだ黒兵衛の行動にソウシは目を見開き、その一方で黒兵衛は斬られた腕が問題なく動くことを確認すると、ソウシに刃を構える。
「どんな方法を使ったのかは知らんが、ここまでだな」
「おいおい……冗談じゃねえや」
何事も無かったかのように両手で刀を構える黒兵衛にソウシは引きつった笑みを浮かべ、まだ完全に回復しきっていない状態で戦闘を挑んだことを後悔する。しかし、当然ながらに相手は待つはずがなく、刀を振り落とす。
「残念だったな小童っ!!」
「うおっ!?」
上段から振り下ろされた刃に対してソウシは咄嗟に刀で受け止める。だが、刀はあくまでも囮だったのか黒兵衛は即座に前蹴りを繰り出す。
「邪魔だっ!!」
「ぐはっ!?」
「ああっ!?や、やられちまった!!」
「あの青空組が……」
腹部に強烈な一撃を食らったソウシは地面に倒れこみ、その様子を観察していた一般人は悲鳴を上げる。その様子を見ながら黒兵衛は倒れたソウシに近づき、止めを刺すために刃を構える。
「さらばだ小僧!!」
「ぐっ……!!」
「氷盾!!」
だが、黒兵衛が頭上から振り落とした刃はソウシの肉体に届く事はなく、二人の間に突如として誕生した雪の結晶を想像させる氷の塊に阻まれ、刃が弾かれた金属音が響き渡る。唐突に現れた氷の盾に黒兵衛は目を見開き、同時に彼の横からルノの声が響く。
「風圧!!」
「うおおっ!?」
「えっ……!?」
強烈な突風が黒兵衛の肉体に襲い掛かり、そのまま彼は崩壊寸前の建物に衝突し、壁を破壊して内部にまで転がり込む。その光景にソウシは唖然とした表情を浮かべ、何が起きたのか理解できなかった。
「ふうっ……大丈夫ですか?」
「あ、あんた……今、俺を助けたのか?」
ソウシの前に掌を構えた状態のルノが現れ、ここでソウシはやっと自分が彼に助けられたことを理解する。しかし、当のルノは建物の方向に視線を向け、頬に汗を流しながらソウシを庇うように移動する。その一方で呆れた表情を浮かべたリーリスも現れ、ソウシの身体を無理やりに起き上がらせる。
「全く、何してんですか。そんな身体で動いたら本当に死にますよ」
「いででっ!?な、何しやがる!?」
「治療です、よ!!」
「ぎゃあっ!?」
リーリスはソウシを後ろから持ち上げるように立ち上がらせ、戦闘に巻き込まれないように引きずる。それを確認したルノは建物に視線を向け、黒兵衛が出てくるのを待つ。
1
お気に入りに追加
11,311
あなたにおすすめの小説


夫の色のドレスを着るのをやめた結果、夫が我慢をやめてしまいました
氷雨そら
恋愛
夫の色のドレスは私には似合わない。
ある夜会、夫と一緒にいたのは夫の愛人だという噂が流れている令嬢だった。彼女は夫の瞳の色のドレスを私とは違い完璧に着こなしていた。噂が事実なのだと確信した私は、もう夫の色のドレスは着ないことに決めた。
小説家になろう様にも掲載中です

元おっさんの俺、公爵家嫡男に転生~普通にしてるだけなのに、次々と問題が降りかかってくる~
おとら@ 書籍発売中
ファンタジー
アルカディア王国の公爵家嫡男であるアレク(十六歳)はある日突然、前触れもなく前世の記憶を蘇らせる。
どうやら、それまでの自分はグータラ生活を送っていて、ろくでもない評判のようだ。
そんな中、アラフォー社畜だった前世の記憶が蘇り混乱しつつも、今の生活に慣れようとするが……。
その行動は以前とは違く見え、色々と勘違いをされる羽目に。
その結果、様々な女性に迫られることになる。
元婚約者にしてツンデレ王女、専属メイドのお調子者エルフ、決闘を仕掛けてくるクーデレ竜人姫、世話をすることなったドジっ子犬耳娘など……。
「ハーレムは嫌だァァァァ! どうしてこうなった!?」
今日も、そんな彼の悲鳴が響き渡る。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。

Sランク昇進を記念して追放された俺は、追放サイドの令嬢を助けたことがきっかけで、彼女が押しかけ女房のようになって困る!
仁徳
ファンタジー
シロウ・オルダーは、Sランク昇進をきっかけに赤いバラという冒険者チームから『スキル非所持の無能』とを侮蔑され、パーティーから追放される。
しかし彼は、異世界の知識を利用して新な魔法を生み出すスキル【魔学者】を使用できるが、彼はそのスキルを隠し、無能を演じていただけだった。
そうとは知らずに、彼を追放した赤いバラは、今までシロウのサポートのお陰で強くなっていたことを知らずに、ダンジョンに挑む。だが、初めての敗北を経験したり、その後借金を背負ったり地位と名声を失っていく。
一方自由になったシロウは、新な町での冒険者活動で活躍し、一目置かれる存在となりながら、追放したマリーを助けたことで惚れられてしまう。手料理を振る舞ったり、背中を流したり、それはまるで押しかけ女房だった!
これは、チート能力を手に入れてしまったことで、無能を演じたシロウがパーティーを追放され、その後ソロとして活躍して無双すると、他のパーティーから追放されたエルフや魔族といった様々な追放少女が集まり、いつの間にかハーレムパーティーを結成している物語!
【書籍化進行中、完結】私だけが知らない
綾雅(ヤンデレ攻略対象、電子書籍化)
ファンタジー
書籍化進行中です。詳細はしばらくお待ちください(o´-ω-)o)ペコッ
目が覚めたら何も覚えていなかった。父と兄を名乗る二人は泣きながら謝る。痩せ細った体、痣が残る肌、誰もが過保護に私を気遣う。けれど、誰もが何が起きたのかを語らなかった。
優しい家族、ぬるま湯のような生活、穏やかに過ぎていく日常……その陰で、人々は己の犯した罪を隠しつつ微笑む。私を守るため、そう言いながら真実から遠ざけた。
やがて、すべてを知った私は――ひとつの決断をする。
記憶喪失から始まる物語。冤罪で殺されかけた私は蘇り、陥れようとした者は断罪される。優しい嘘に隠された真実が徐々に明らかになっていく。
【同時掲載】 小説家になろう、アルファポリス、カクヨム、エブリスタ
2024/12/26……書籍化確定、公表
2023/12/20……小説家になろう 日間、ファンタジー 27位
2023/12/19……番外編完結
2023/12/11……本編完結(番外編、12/12)
2023/08/27……エブリスタ ファンタジートレンド 1位
2023/08/26……カテゴリー変更「恋愛」⇒「ファンタジー」
2023/08/25……アルファポリス HOT女性向け 13位
2023/08/22……小説家になろう 異世界恋愛、日間 22位
2023/08/21……カクヨム 恋愛週間 17位
2023/08/16……カクヨム 恋愛日間 12位
2023/08/14……連載開始

【一話完結】断罪が予定されている卒業パーティーに欠席したら、みんな死んでしまいました
ツカノ
ファンタジー
とある国の王太子が、卒業パーティーの日に最愛のスワロー・アーチェリー男爵令嬢を虐げた婚約者のロビン・クック公爵令嬢を断罪し婚約破棄をしようとしたが、何故か公爵令嬢は現れない。これでは断罪どころか婚約破棄ができないと王太子が焦り始めた時、招かれざる客が現れる。そして、招かれざる客の登場により、彼らの運命は転がる石のように急転直下し、恐怖が始まったのだった。さて彼らの運命は、如何。

友人(勇者)に恋人も幼馴染も取られたけど悔しくない。 だって俺は転生者だから。
石のやっさん
ファンタジー
パーティでお荷物扱いされていた魔法戦士のセレスは、とうとう勇者でありパーティーリーダーのリヒトにクビを宣告されてしまう。幼馴染も恋人も全部リヒトの物で、居場所がどこにもない状態だった。
だが、此の状態は彼にとっては『本当の幸せ』を掴む事に必要だった
何故なら、彼は『転生者』だから…
今度は違う切り口からのアプローチ。
追放の話しの一話は、前作とかなり似ていますが2話からは、かなり変わります。
こうご期待。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。
このユーザをミュートしますか?
※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。