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冒険者編
七大魔剣 〈月光〉
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「ぎゃああああっ!?」
「お、おい!!あんた、一体何を……うぎゃあっ!?」
「ひ、人斬りだっ!!」
宿屋に存在した人間の介抱を行っていた住民の悲鳴が響き渡り、ルノ達が視線を向けると上半身をはだけた状態の男が存在し、蛍光色に輝く刀身の刀を握りしめていた。男の顔を見たルノは自分達が探している似顔絵の人物と同じ顔をしている事に気付き、この男が「黒兵衛」をだと確信した。
「くっ……この程度では足りんか」
「ひいいっ!!」
「た、助けて……!!」
「あ、足がぁっ!!」
「何てことを……」
黒兵衛の周囲には切り付けられた一般人の姿が存在し、急所を切られたようだが傷跡からは血液が一滴も噴出さず、瘡蓋のように血液が凝固して傷跡を塞いでいた。それを確認した黒兵衛は奇妙な輝きを行う刀を握りしめ、他の人間に斬りかかる。
「もっとだ!!もっと寄越せっ!!」
「うわっ!?」
「逃げろぉっ!!」
「ちっ……このくそ野郎!!」
「あ、ちょっと!?まだ動いちゃ……」
民間人に斬りかかろうとした黒兵衛にソウシは刀を構えて駆け抜け、鞘から刃を引き抜く。
「抜刀!!」
「ぬぅっ!?」
剣道の居合のように高速に引き抜かれた刃が黒兵衛の左腕を切り裂き、激しい血飛沫が生じる。その光景に他の人間は歓喜と驚愕が入り混じった声を上げるが、即座に黒兵衛は切り付けられた腕を確認し、苦痛の表情を浮かべながらもソウシを睨みつける。
「お前は……まだ生きていたのか」
「はっ、あの程度で死ぬかよ……まあ、正直に言えば死にかけたのは事実だけどよ」
「ち、油断していたか……」
黒兵衛は切り付けられた腕を確認し、切断までには至らなかったが傷跡が深く、血が止まらなかった。それを確認したソウシは身体をふらつかせながらも刀を構え、黒兵衛と向かい合う。
「……その傷じゃもう戦えないだろ。降伏しな」
「傷?何の話だ?」
「頭がいかれてんのか?それとも、理解が追い付いていないのか?その腕でどうやって戦うんだよ」
刀の峰の部分を肩に起きながらソウシは黒兵衛の様子を伺い、左腕に深手を負いながらも冷静さを保っている相手に敬意を抱く一方、妙に余裕の態度を貫く彼に疑問を抱く。そんな彼の気持ちを読み取るように黒兵衛は口元に笑みを浮かべ、自身の刀を傷口の前に構える。
「この刀にはこんな使い方もある」
「なっ!?」
黒兵衛が自分の握りしめる刀の刀身部分を傷口に近づけた瞬間、噴き出していた血液が刃に吸収されるように消え去り、傷跡に残された血液が固まって止血の役割を行う。刀で斬られた人間と同様に血液を固める事で致命傷になりかねない傷跡を塞いだ黒兵衛の行動にソウシは目を見開き、その一方で黒兵衛は斬られた腕が問題なく動くことを確認すると、ソウシに刃を構える。
「どんな方法を使ったのかは知らんが、ここまでだな」
「おいおい……冗談じゃねえや」
何事も無かったかのように両手で刀を構える黒兵衛にソウシは引きつった笑みを浮かべ、まだ完全に回復しきっていない状態で戦闘を挑んだことを後悔する。しかし、当然ながらに相手は待つはずがなく、刀を振り落とす。
「残念だったな小童っ!!」
「うおっ!?」
上段から振り下ろされた刃に対してソウシは咄嗟に刀で受け止める。だが、刀はあくまでも囮だったのか黒兵衛は即座に前蹴りを繰り出す。
「邪魔だっ!!」
「ぐはっ!?」
「ああっ!?や、やられちまった!!」
「あの青空組が……」
腹部に強烈な一撃を食らったソウシは地面に倒れこみ、その様子を観察していた一般人は悲鳴を上げる。その様子を見ながら黒兵衛は倒れたソウシに近づき、止めを刺すために刃を構える。
「さらばだ小僧!!」
「ぐっ……!!」
「氷盾!!」
だが、黒兵衛が頭上から振り落とした刃はソウシの肉体に届く事はなく、二人の間に突如として誕生した雪の結晶を想像させる氷の塊に阻まれ、刃が弾かれた金属音が響き渡る。唐突に現れた氷の盾に黒兵衛は目を見開き、同時に彼の横からルノの声が響く。
「風圧!!」
「うおおっ!?」
「えっ……!?」
強烈な突風が黒兵衛の肉体に襲い掛かり、そのまま彼は崩壊寸前の建物に衝突し、壁を破壊して内部にまで転がり込む。その光景にソウシは唖然とした表情を浮かべ、何が起きたのか理解できなかった。
「ふうっ……大丈夫ですか?」
「あ、あんた……今、俺を助けたのか?」
ソウシの前に掌を構えた状態のルノが現れ、ここでソウシはやっと自分が彼に助けられたことを理解する。しかし、当のルノは建物の方向に視線を向け、頬に汗を流しながらソウシを庇うように移動する。その一方で呆れた表情を浮かべたリーリスも現れ、ソウシの身体を無理やりに起き上がらせる。
「全く、何してんですか。そんな身体で動いたら本当に死にますよ」
「いででっ!?な、何しやがる!?」
「治療です、よ!!」
「ぎゃあっ!?」
リーリスはソウシを後ろから持ち上げるように立ち上がらせ、戦闘に巻き込まれないように引きずる。それを確認したルノは建物に視線を向け、黒兵衛が出てくるのを待つ。
「お、おい!!あんた、一体何を……うぎゃあっ!?」
「ひ、人斬りだっ!!」
宿屋に存在した人間の介抱を行っていた住民の悲鳴が響き渡り、ルノ達が視線を向けると上半身をはだけた状態の男が存在し、蛍光色に輝く刀身の刀を握りしめていた。男の顔を見たルノは自分達が探している似顔絵の人物と同じ顔をしている事に気付き、この男が「黒兵衛」をだと確信した。
「くっ……この程度では足りんか」
「ひいいっ!!」
「た、助けて……!!」
「あ、足がぁっ!!」
「何てことを……」
黒兵衛の周囲には切り付けられた一般人の姿が存在し、急所を切られたようだが傷跡からは血液が一滴も噴出さず、瘡蓋のように血液が凝固して傷跡を塞いでいた。それを確認した黒兵衛は奇妙な輝きを行う刀を握りしめ、他の人間に斬りかかる。
「もっとだ!!もっと寄越せっ!!」
「うわっ!?」
「逃げろぉっ!!」
「ちっ……このくそ野郎!!」
「あ、ちょっと!?まだ動いちゃ……」
民間人に斬りかかろうとした黒兵衛にソウシは刀を構えて駆け抜け、鞘から刃を引き抜く。
「抜刀!!」
「ぬぅっ!?」
剣道の居合のように高速に引き抜かれた刃が黒兵衛の左腕を切り裂き、激しい血飛沫が生じる。その光景に他の人間は歓喜と驚愕が入り混じった声を上げるが、即座に黒兵衛は切り付けられた腕を確認し、苦痛の表情を浮かべながらもソウシを睨みつける。
「お前は……まだ生きていたのか」
「はっ、あの程度で死ぬかよ……まあ、正直に言えば死にかけたのは事実だけどよ」
「ち、油断していたか……」
黒兵衛は切り付けられた腕を確認し、切断までには至らなかったが傷跡が深く、血が止まらなかった。それを確認したソウシは身体をふらつかせながらも刀を構え、黒兵衛と向かい合う。
「……その傷じゃもう戦えないだろ。降伏しな」
「傷?何の話だ?」
「頭がいかれてんのか?それとも、理解が追い付いていないのか?その腕でどうやって戦うんだよ」
刀の峰の部分を肩に起きながらソウシは黒兵衛の様子を伺い、左腕に深手を負いながらも冷静さを保っている相手に敬意を抱く一方、妙に余裕の態度を貫く彼に疑問を抱く。そんな彼の気持ちを読み取るように黒兵衛は口元に笑みを浮かべ、自身の刀を傷口の前に構える。
「この刀にはこんな使い方もある」
「なっ!?」
黒兵衛が自分の握りしめる刀の刀身部分を傷口に近づけた瞬間、噴き出していた血液が刃に吸収されるように消え去り、傷跡に残された血液が固まって止血の役割を行う。刀で斬られた人間と同様に血液を固める事で致命傷になりかねない傷跡を塞いだ黒兵衛の行動にソウシは目を見開き、その一方で黒兵衛は斬られた腕が問題なく動くことを確認すると、ソウシに刃を構える。
「どんな方法を使ったのかは知らんが、ここまでだな」
「おいおい……冗談じゃねえや」
何事も無かったかのように両手で刀を構える黒兵衛にソウシは引きつった笑みを浮かべ、まだ完全に回復しきっていない状態で戦闘を挑んだことを後悔する。しかし、当然ながらに相手は待つはずがなく、刀を振り落とす。
「残念だったな小童っ!!」
「うおっ!?」
上段から振り下ろされた刃に対してソウシは咄嗟に刀で受け止める。だが、刀はあくまでも囮だったのか黒兵衛は即座に前蹴りを繰り出す。
「邪魔だっ!!」
「ぐはっ!?」
「ああっ!?や、やられちまった!!」
「あの青空組が……」
腹部に強烈な一撃を食らったソウシは地面に倒れこみ、その様子を観察していた一般人は悲鳴を上げる。その様子を見ながら黒兵衛は倒れたソウシに近づき、止めを刺すために刃を構える。
「さらばだ小僧!!」
「ぐっ……!!」
「氷盾!!」
だが、黒兵衛が頭上から振り落とした刃はソウシの肉体に届く事はなく、二人の間に突如として誕生した雪の結晶を想像させる氷の塊に阻まれ、刃が弾かれた金属音が響き渡る。唐突に現れた氷の盾に黒兵衛は目を見開き、同時に彼の横からルノの声が響く。
「風圧!!」
「うおおっ!?」
「えっ……!?」
強烈な突風が黒兵衛の肉体に襲い掛かり、そのまま彼は崩壊寸前の建物に衝突し、壁を破壊して内部にまで転がり込む。その光景にソウシは唖然とした表情を浮かべ、何が起きたのか理解できなかった。
「ふうっ……大丈夫ですか?」
「あ、あんた……今、俺を助けたのか?」
ソウシの前に掌を構えた状態のルノが現れ、ここでソウシはやっと自分が彼に助けられたことを理解する。しかし、当のルノは建物の方向に視線を向け、頬に汗を流しながらソウシを庇うように移動する。その一方で呆れた表情を浮かべたリーリスも現れ、ソウシの身体を無理やりに起き上がらせる。
「全く、何してんですか。そんな身体で動いたら本当に死にますよ」
「いででっ!?な、何しやがる!?」
「治療です、よ!!」
「ぎゃあっ!?」
リーリスはソウシを後ろから持ち上げるように立ち上がらせ、戦闘に巻き込まれないように引きずる。それを確認したルノは建物に視線を向け、黒兵衛が出てくるのを待つ。
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