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冒険者編

見張り役

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――翌日の朝、宿屋の前には疲れた表情のヒカゲと青空組の衣装を纏った少年が存在し、一昨日に鰻屋にて遭遇した「ソウシ」という名前の隊員だった。どうして彼がここに居るのかルノは不思議に思い、本人に尋ねる。


「あの……確か青空組の方ですよね。どうしてここに?」
「どうも、鰻屋で別れた以来ですね」
「あ、どうも……えっと、どうしてここに?」
「それは俺より、この人の方から聞いた方がいいですよ」


不思議そうにルノとリーリスはヒカゲに視線を向けると、彼女は疲れた表情を浮かべながら説明した。


「上の人達とは話をつけてきた。だけど、二人が調査に加わる条件として青空組の隊員も同行する事を言いつけられた」
「という事で、ここから俺も同行させて貰いますよ」
「つまり、私達の見張り役という事ですね」
「まあ、正直に言えばそういう事なりますね」


ソウシは面倒臭そうに欠伸を行いながら刀を肩の上に担ぎ、そんな彼の態度にリーリスは納得したように頷く。だが、どうして事件の調査に青空組の隊員を派遣するのか疑問を抱いたルノはリーリスに小声で尋ねる。


「つまり……どういう事?」
「要は私達が青空組の事件の捜査を邪魔させないように派遣させられた見張り役という事ですよ。どうやら日の国としては自分の国で起きた事件を他国の人間に介入されたくないようですね」
「察しがいいっすね。俺は要は御二人の面倒役を任された貧乏くじを引かされた隊員という訳です。まあ、適当によろしくお願いします」


二人の会話が聞こえていたのかソウシは悪びれもせずに自分の与えられた役割を伝え、日の国側が暗にルノとリーリスの事件の調査に関わる事を拒否している事を伝える。あくまでも日の国の政府は自分達の国で起きた事件に他国の人間が関わることを良しとせず、表向きは事件の調査の協力として青空組の隊員を派遣させ、裏では彼等が青空組の捜査に邪魔しないように見張り役として同行させようとしていた。


「という事で今後は御二人が日の国にいる間は俺も行動を共にさせてもらいます。観光名所ぐらいなら案内出来ますよ」
「観光って……事件の調査は協力してくれないんですか?」
「生憎と俺の口からは何とも言えませんね。だけど、余所者に事件を解決させたら青空組の面子が潰れるんですよ。そこの所は理解してくれませんかね?」


ルノの言葉にソウシは自分の与えられた役目をあっさりと伝える。本来ならば隠すべき重要な役割なのだろうが、当の本人はやる気がないのか眠たそうに欠伸を行う。


「まあ、俺としては別に誰が事件を解決しようとどうでもいいんですけどね。御二人がどうしても事件を調べたいというのなら自由にしてください」
「それでいいんですか?ソウシさんの立場が危うくなりますよ」
「生憎と俺は自分の立場にそれほど執着はないんでね。別に仕事でへまをして首にされようとどうでもいいんですよ」
「どうでもいいって……それならどうして今の仕事に入ったんですか?」
「そりゃ、給料も高いし、帯刀も許されてるし、女にもモテるから?実際の所、俺は隊長と副隊長と違って人斬りはそんなに好きじゃないので」
「人斬り?」
「青空組は犯罪者を取り締まる権限を持っている。つまり、自分達の判断で犯罪者を斬殺する事が許可されている……特に一番隊は最も多く犯罪者を殺害している」
「えっ!?」


ソウシの言葉にヒカゲが反応し、青空組の隊員にだけ与えられる権力をルノ達に説明する。幾ら相手が犯罪者とはいえ、只の隊員が犯罪者を斬殺する権限を持っている事にルノは驚きを隠せない。日本で例えるなら普通の警察官が犯罪者を射殺する事を許可されているような物であり、青空組が実は途轍もなく恐ろしい存在に感じられた。


「ちょっとちょっと、人聞きの悪い事を言わないで下さいよ。俺は他の二人と違って別に好きで人を殺しているわけじゃないですよ?」
「……一番隊の隊員に指定された人間はすぐに死亡するか、あるいは他の隊に異動する。理由は一番隊が青空組の中で最も武闘派で有名だけど、反面に多くの犯罪者からは強く妬まれている。中には殺される程の罪を犯していない人間まで斬っているという噂まで流れている」
「そんなのただの噂ですよ。あの二人と違って、俺は悪人と判断したうえで人斬りを行っているんですから」


ヒカゲの言葉にソウシは気を悪くした様子も見せずに返答し、方に乗せていた刀を腰に戻す。ルノは先日に遭遇した他の二人の隊員を思い出し、最初に彼等が鰻屋で遭遇した時に騒ぎを起こしたガリュウという男性を切り殺そうとした事を思い出す。

あの時にルノが止めに入らなければ3人は間違いなくガリュウを切り殺しており、多くの人間に迷惑を掛けていただろう。しかし、ガリュウがこの帯刀を許されていない立場であるにも関わらず刀を装備していた事も問題であり、彼が犯罪者であった事も間違いない。
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