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冒険者編
寝返り
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「何時までも調子に乗ってんじゃねえっ!!」
「うわっ……」
「く、くそっ!!どうして避けられる!?」
執拗に攻撃を仕掛けるルノに対して勘雄郎は槍を振り抜くが、あっさりとルノは体勢を屈めて回避を行い、逆に勘十郎に手を伸ばす。
「捕まえた!!」
「は、離せっ!?」
ルノが掴んだのは勘十郎の肉体ではなく、彼が所持している槍であり、そのまま奪い取ろうとする。槍さえ奪う事さえ出来れば相手も戦意を失うと判断し、ルノは槍を力尽くで奪い取ろうとした瞬間、勘十郎は右足を繰り出す。
「うおらぁっ!!」
「うわっ……!?」
「目潰し!?」
咄嗟に勘十郎は足元の砂利を蹴り上げ、ルノの顔面に放つ。結果として視界を封じられたルノは槍を離してしまい、絶好の好機を逃さないとばかりに勘十郎は攻撃を仕掛ける。
「これで終わりだっ!!」
「油断禁物」
「ぐえっ!?」
『先生!?』
しかし、ルノの肉体に槍を突き出す前にヒカゲが背後から接近し、足払いを仕掛ける。体制を崩した勘十郎はそのまま地面に背中から倒れこむと思われたが、咄嗟に彼は槍を地面に突き刺し、どうにか倒れる事だけは回避した。
「このっ……二人がかりで戦うなんて卑怯だぞ」
「さっきは三人でかかってこいとか言ってたじゃないですか。ば~かば~かっ!!」
「むかつくなおいっ!?」
安全な場所で罵声を浴びせるリーリスに勘十郎は怒鳴りつけるが、その間にもヒカゲは武器を構え、瞼を擦りながらルノが勘十郎と向かい合う。流石に分が悪いと判断した勘十郎は他の男達に声を掛ける。
「ちっ……仕方ない、お前等は先に逃げろ!!こいつらは俺が足止めする!!」
「せ、先生!!」
「貰った金の分だけは働いてやる……さあ、行けっ!!」
「くっ……すまねえっ!!」
「逃げろっ!!」
勘十郎の言葉に男達は走り出し、そのまま家を抜け出す。そんな彼等の行動にヒカゲが止めようとしたが、勘十郎が前に出て彼女を制止する。
「おっと、行かせねえぞ」
「……邪魔をするなら容赦はしない」
「違うっ!!あいつらを捕まえた所で碌な情報は持ってねえよ」
「どういう意味ですか?」
全員が逃げ出したのを確認した勘十郎は安堵の表情を抱き、懐からパイプを取り出して火を点ける。こんな状況で余裕の態度を保つ勘十郎に3人は警戒するが、彼はパイプを吸いながら槍を地面に放り投げてしまう。
「参りました!!」
『はい?』
そのまま勘十郎は深々と頭を下げ、3人はその彼の行動に呆気に取られる。最初は油断を誘うための演技かと思ったが、勘十郎は動く様子はなく、両手を上げて向かい合う。
「俺の負けだ!!俺の知っている事は全て話すから、許して下さい!!」
「ええっ……さっきの威勢はどうしたんですか?」
「あんなの演技に決まってるだろ。なんでむさ苦しいおっさん連中を助けるために俺が命を賭けなきゃならねえんだよ」
やってられないとばかりに勘十郎は溜息を吐き出し、わざとらしく首を振る。その行為にルノ達は顔を見合わせ、別に情報を提供してくれるのであれば逃げ出した連中を追いかける必要はない。
「本当に降参するんですか?裏切ったら許しませんよ。寝ている間に耳にナメクジを投入しますから」
「おい、止めろよ!!そんな陰湿ないやがらせ!?」
「いいから私達の質問に答える……貴方は何者?」
「あ、ああ……俺はこの街の商人に雇われた用心棒だ」
「商人の名前は?」
「ゼーニだ。禿げ頭の目立つおっさんだよ」
勘十郎の言葉にルノはヒカゲに視線を向けると彼女は頷き、クロガネに銅像の製作を依頼した商人で間違いないという。そうなると必然的に先ほどの男達もゼーニの部下で間違いなく、彼等がここに訪れた理由を問う。
「どうしてこの屋敷に来たんですか?話の内容から銅像を探していたようですけど」
「何だ?そんな事まで知ってるのか?俺等はゼーニの奴がクロガネに依頼した銅像を回収するように命じられたんだよ」
「という事は銅像は受け取っていなかったんですね」
「ああ、だけどクロガネの奴が銅像を制作していたのは間違いない。実際に何度か制作過程を確かめるために訪れていたからな。銅像が殆ど完成していたのは知っている」
「でも、そんな物は見つかりませんでしたよ?」
「この家の何処かに奴の隠している工房があるはずだ。そこに銅像があるんじゃないかと探していたんだが……」
「その前に答えて、クロガネは何処に消えたの?」
「……死んでるよ。あいつはここで殺されていた」
「えっ!?」
予想外の返答にルノは驚愕し、既にクロガネが亡くなっているという言葉に驚きは隠せない。しかし、他の二人は予測していたかの様に頷き、勘十郎は更に話を続ける。
「だが、クロガネを殺したのは俺達じゃねえ。あいつは玄関で死んでたんだよ。俺達が来た時には誰かに殺されていたんだ」
「遺体はどうしたんですか?」
「俺はその場には居なかったんだが、うちの奴らが処理したらしい。もしも誰かに見つかったら不味いからな……真っ先に疑われるのはゼーニの商会だからな。ついでに証拠も残さないように玄関は丹念に掃除したとか言っていたが……」
勘十郎の話によるとクロガネの死体を処理したのはゼーニの商会の人間で間違いなく、玄関口と通路が妙に綺麗だったのは死体の証拠隠滅のためにゼーニの配下が髪の毛一本も残さないように丹念に掃除したという。
「うわっ……」
「く、くそっ!!どうして避けられる!?」
執拗に攻撃を仕掛けるルノに対して勘雄郎は槍を振り抜くが、あっさりとルノは体勢を屈めて回避を行い、逆に勘十郎に手を伸ばす。
「捕まえた!!」
「は、離せっ!?」
ルノが掴んだのは勘十郎の肉体ではなく、彼が所持している槍であり、そのまま奪い取ろうとする。槍さえ奪う事さえ出来れば相手も戦意を失うと判断し、ルノは槍を力尽くで奪い取ろうとした瞬間、勘十郎は右足を繰り出す。
「うおらぁっ!!」
「うわっ……!?」
「目潰し!?」
咄嗟に勘十郎は足元の砂利を蹴り上げ、ルノの顔面に放つ。結果として視界を封じられたルノは槍を離してしまい、絶好の好機を逃さないとばかりに勘十郎は攻撃を仕掛ける。
「これで終わりだっ!!」
「油断禁物」
「ぐえっ!?」
『先生!?』
しかし、ルノの肉体に槍を突き出す前にヒカゲが背後から接近し、足払いを仕掛ける。体制を崩した勘十郎はそのまま地面に背中から倒れこむと思われたが、咄嗟に彼は槍を地面に突き刺し、どうにか倒れる事だけは回避した。
「このっ……二人がかりで戦うなんて卑怯だぞ」
「さっきは三人でかかってこいとか言ってたじゃないですか。ば~かば~かっ!!」
「むかつくなおいっ!?」
安全な場所で罵声を浴びせるリーリスに勘十郎は怒鳴りつけるが、その間にもヒカゲは武器を構え、瞼を擦りながらルノが勘十郎と向かい合う。流石に分が悪いと判断した勘十郎は他の男達に声を掛ける。
「ちっ……仕方ない、お前等は先に逃げろ!!こいつらは俺が足止めする!!」
「せ、先生!!」
「貰った金の分だけは働いてやる……さあ、行けっ!!」
「くっ……すまねえっ!!」
「逃げろっ!!」
勘十郎の言葉に男達は走り出し、そのまま家を抜け出す。そんな彼等の行動にヒカゲが止めようとしたが、勘十郎が前に出て彼女を制止する。
「おっと、行かせねえぞ」
「……邪魔をするなら容赦はしない」
「違うっ!!あいつらを捕まえた所で碌な情報は持ってねえよ」
「どういう意味ですか?」
全員が逃げ出したのを確認した勘十郎は安堵の表情を抱き、懐からパイプを取り出して火を点ける。こんな状況で余裕の態度を保つ勘十郎に3人は警戒するが、彼はパイプを吸いながら槍を地面に放り投げてしまう。
「参りました!!」
『はい?』
そのまま勘十郎は深々と頭を下げ、3人はその彼の行動に呆気に取られる。最初は油断を誘うための演技かと思ったが、勘十郎は動く様子はなく、両手を上げて向かい合う。
「俺の負けだ!!俺の知っている事は全て話すから、許して下さい!!」
「ええっ……さっきの威勢はどうしたんですか?」
「あんなの演技に決まってるだろ。なんでむさ苦しいおっさん連中を助けるために俺が命を賭けなきゃならねえんだよ」
やってられないとばかりに勘十郎は溜息を吐き出し、わざとらしく首を振る。その行為にルノ達は顔を見合わせ、別に情報を提供してくれるのであれば逃げ出した連中を追いかける必要はない。
「本当に降参するんですか?裏切ったら許しませんよ。寝ている間に耳にナメクジを投入しますから」
「おい、止めろよ!!そんな陰湿ないやがらせ!?」
「いいから私達の質問に答える……貴方は何者?」
「あ、ああ……俺はこの街の商人に雇われた用心棒だ」
「商人の名前は?」
「ゼーニだ。禿げ頭の目立つおっさんだよ」
勘十郎の言葉にルノはヒカゲに視線を向けると彼女は頷き、クロガネに銅像の製作を依頼した商人で間違いないという。そうなると必然的に先ほどの男達もゼーニの部下で間違いなく、彼等がここに訪れた理由を問う。
「どうしてこの屋敷に来たんですか?話の内容から銅像を探していたようですけど」
「何だ?そんな事まで知ってるのか?俺等はゼーニの奴がクロガネに依頼した銅像を回収するように命じられたんだよ」
「という事は銅像は受け取っていなかったんですね」
「ああ、だけどクロガネの奴が銅像を制作していたのは間違いない。実際に何度か制作過程を確かめるために訪れていたからな。銅像が殆ど完成していたのは知っている」
「でも、そんな物は見つかりませんでしたよ?」
「この家の何処かに奴の隠している工房があるはずだ。そこに銅像があるんじゃないかと探していたんだが……」
「その前に答えて、クロガネは何処に消えたの?」
「……死んでるよ。あいつはここで殺されていた」
「えっ!?」
予想外の返答にルノは驚愕し、既にクロガネが亡くなっているという言葉に驚きは隠せない。しかし、他の二人は予測していたかの様に頷き、勘十郎は更に話を続ける。
「だが、クロガネを殺したのは俺達じゃねえ。あいつは玄関で死んでたんだよ。俺達が来た時には誰かに殺されていたんだ」
「遺体はどうしたんですか?」
「俺はその場には居なかったんだが、うちの奴らが処理したらしい。もしも誰かに見つかったら不味いからな……真っ先に疑われるのはゼーニの商会だからな。ついでに証拠も残さないように玄関は丹念に掃除したとか言っていたが……」
勘十郎の話によるとクロガネの死体を処理したのはゼーニの商会の人間で間違いなく、玄関口と通路が妙に綺麗だったのは死体の証拠隠滅のためにゼーニの配下が髪の毛一本も残さないように丹念に掃除したという。
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