104 / 657
冒険者編
寝返り
しおりを挟む
「何時までも調子に乗ってんじゃねえっ!!」
「うわっ……」
「く、くそっ!!どうして避けられる!?」
執拗に攻撃を仕掛けるルノに対して勘雄郎は槍を振り抜くが、あっさりとルノは体勢を屈めて回避を行い、逆に勘十郎に手を伸ばす。
「捕まえた!!」
「は、離せっ!?」
ルノが掴んだのは勘十郎の肉体ではなく、彼が所持している槍であり、そのまま奪い取ろうとする。槍さえ奪う事さえ出来れば相手も戦意を失うと判断し、ルノは槍を力尽くで奪い取ろうとした瞬間、勘十郎は右足を繰り出す。
「うおらぁっ!!」
「うわっ……!?」
「目潰し!?」
咄嗟に勘十郎は足元の砂利を蹴り上げ、ルノの顔面に放つ。結果として視界を封じられたルノは槍を離してしまい、絶好の好機を逃さないとばかりに勘十郎は攻撃を仕掛ける。
「これで終わりだっ!!」
「油断禁物」
「ぐえっ!?」
『先生!?』
しかし、ルノの肉体に槍を突き出す前にヒカゲが背後から接近し、足払いを仕掛ける。体制を崩した勘十郎はそのまま地面に背中から倒れこむと思われたが、咄嗟に彼は槍を地面に突き刺し、どうにか倒れる事だけは回避した。
「このっ……二人がかりで戦うなんて卑怯だぞ」
「さっきは三人でかかってこいとか言ってたじゃないですか。ば~かば~かっ!!」
「むかつくなおいっ!?」
安全な場所で罵声を浴びせるリーリスに勘十郎は怒鳴りつけるが、その間にもヒカゲは武器を構え、瞼を擦りながらルノが勘十郎と向かい合う。流石に分が悪いと判断した勘十郎は他の男達に声を掛ける。
「ちっ……仕方ない、お前等は先に逃げろ!!こいつらは俺が足止めする!!」
「せ、先生!!」
「貰った金の分だけは働いてやる……さあ、行けっ!!」
「くっ……すまねえっ!!」
「逃げろっ!!」
勘十郎の言葉に男達は走り出し、そのまま家を抜け出す。そんな彼等の行動にヒカゲが止めようとしたが、勘十郎が前に出て彼女を制止する。
「おっと、行かせねえぞ」
「……邪魔をするなら容赦はしない」
「違うっ!!あいつらを捕まえた所で碌な情報は持ってねえよ」
「どういう意味ですか?」
全員が逃げ出したのを確認した勘十郎は安堵の表情を抱き、懐からパイプを取り出して火を点ける。こんな状況で余裕の態度を保つ勘十郎に3人は警戒するが、彼はパイプを吸いながら槍を地面に放り投げてしまう。
「参りました!!」
『はい?』
そのまま勘十郎は深々と頭を下げ、3人はその彼の行動に呆気に取られる。最初は油断を誘うための演技かと思ったが、勘十郎は動く様子はなく、両手を上げて向かい合う。
「俺の負けだ!!俺の知っている事は全て話すから、許して下さい!!」
「ええっ……さっきの威勢はどうしたんですか?」
「あんなの演技に決まってるだろ。なんでむさ苦しいおっさん連中を助けるために俺が命を賭けなきゃならねえんだよ」
やってられないとばかりに勘十郎は溜息を吐き出し、わざとらしく首を振る。その行為にルノ達は顔を見合わせ、別に情報を提供してくれるのであれば逃げ出した連中を追いかける必要はない。
「本当に降参するんですか?裏切ったら許しませんよ。寝ている間に耳にナメクジを投入しますから」
「おい、止めろよ!!そんな陰湿ないやがらせ!?」
「いいから私達の質問に答える……貴方は何者?」
「あ、ああ……俺はこの街の商人に雇われた用心棒だ」
「商人の名前は?」
「ゼーニだ。禿げ頭の目立つおっさんだよ」
勘十郎の言葉にルノはヒカゲに視線を向けると彼女は頷き、クロガネに銅像の製作を依頼した商人で間違いないという。そうなると必然的に先ほどの男達もゼーニの部下で間違いなく、彼等がここに訪れた理由を問う。
「どうしてこの屋敷に来たんですか?話の内容から銅像を探していたようですけど」
「何だ?そんな事まで知ってるのか?俺等はゼーニの奴がクロガネに依頼した銅像を回収するように命じられたんだよ」
「という事は銅像は受け取っていなかったんですね」
「ああ、だけどクロガネの奴が銅像を制作していたのは間違いない。実際に何度か制作過程を確かめるために訪れていたからな。銅像が殆ど完成していたのは知っている」
「でも、そんな物は見つかりませんでしたよ?」
「この家の何処かに奴の隠している工房があるはずだ。そこに銅像があるんじゃないかと探していたんだが……」
「その前に答えて、クロガネは何処に消えたの?」
「……死んでるよ。あいつはここで殺されていた」
「えっ!?」
予想外の返答にルノは驚愕し、既にクロガネが亡くなっているという言葉に驚きは隠せない。しかし、他の二人は予測していたかの様に頷き、勘十郎は更に話を続ける。
「だが、クロガネを殺したのは俺達じゃねえ。あいつは玄関で死んでたんだよ。俺達が来た時には誰かに殺されていたんだ」
「遺体はどうしたんですか?」
「俺はその場には居なかったんだが、うちの奴らが処理したらしい。もしも誰かに見つかったら不味いからな……真っ先に疑われるのはゼーニの商会だからな。ついでに証拠も残さないように玄関は丹念に掃除したとか言っていたが……」
勘十郎の話によるとクロガネの死体を処理したのはゼーニの商会の人間で間違いなく、玄関口と通路が妙に綺麗だったのは死体の証拠隠滅のためにゼーニの配下が髪の毛一本も残さないように丹念に掃除したという。
「うわっ……」
「く、くそっ!!どうして避けられる!?」
執拗に攻撃を仕掛けるルノに対して勘雄郎は槍を振り抜くが、あっさりとルノは体勢を屈めて回避を行い、逆に勘十郎に手を伸ばす。
「捕まえた!!」
「は、離せっ!?」
ルノが掴んだのは勘十郎の肉体ではなく、彼が所持している槍であり、そのまま奪い取ろうとする。槍さえ奪う事さえ出来れば相手も戦意を失うと判断し、ルノは槍を力尽くで奪い取ろうとした瞬間、勘十郎は右足を繰り出す。
「うおらぁっ!!」
「うわっ……!?」
「目潰し!?」
咄嗟に勘十郎は足元の砂利を蹴り上げ、ルノの顔面に放つ。結果として視界を封じられたルノは槍を離してしまい、絶好の好機を逃さないとばかりに勘十郎は攻撃を仕掛ける。
「これで終わりだっ!!」
「油断禁物」
「ぐえっ!?」
『先生!?』
しかし、ルノの肉体に槍を突き出す前にヒカゲが背後から接近し、足払いを仕掛ける。体制を崩した勘十郎はそのまま地面に背中から倒れこむと思われたが、咄嗟に彼は槍を地面に突き刺し、どうにか倒れる事だけは回避した。
「このっ……二人がかりで戦うなんて卑怯だぞ」
「さっきは三人でかかってこいとか言ってたじゃないですか。ば~かば~かっ!!」
「むかつくなおいっ!?」
安全な場所で罵声を浴びせるリーリスに勘十郎は怒鳴りつけるが、その間にもヒカゲは武器を構え、瞼を擦りながらルノが勘十郎と向かい合う。流石に分が悪いと判断した勘十郎は他の男達に声を掛ける。
「ちっ……仕方ない、お前等は先に逃げろ!!こいつらは俺が足止めする!!」
「せ、先生!!」
「貰った金の分だけは働いてやる……さあ、行けっ!!」
「くっ……すまねえっ!!」
「逃げろっ!!」
勘十郎の言葉に男達は走り出し、そのまま家を抜け出す。そんな彼等の行動にヒカゲが止めようとしたが、勘十郎が前に出て彼女を制止する。
「おっと、行かせねえぞ」
「……邪魔をするなら容赦はしない」
「違うっ!!あいつらを捕まえた所で碌な情報は持ってねえよ」
「どういう意味ですか?」
全員が逃げ出したのを確認した勘十郎は安堵の表情を抱き、懐からパイプを取り出して火を点ける。こんな状況で余裕の態度を保つ勘十郎に3人は警戒するが、彼はパイプを吸いながら槍を地面に放り投げてしまう。
「参りました!!」
『はい?』
そのまま勘十郎は深々と頭を下げ、3人はその彼の行動に呆気に取られる。最初は油断を誘うための演技かと思ったが、勘十郎は動く様子はなく、両手を上げて向かい合う。
「俺の負けだ!!俺の知っている事は全て話すから、許して下さい!!」
「ええっ……さっきの威勢はどうしたんですか?」
「あんなの演技に決まってるだろ。なんでむさ苦しいおっさん連中を助けるために俺が命を賭けなきゃならねえんだよ」
やってられないとばかりに勘十郎は溜息を吐き出し、わざとらしく首を振る。その行為にルノ達は顔を見合わせ、別に情報を提供してくれるのであれば逃げ出した連中を追いかける必要はない。
「本当に降参するんですか?裏切ったら許しませんよ。寝ている間に耳にナメクジを投入しますから」
「おい、止めろよ!!そんな陰湿ないやがらせ!?」
「いいから私達の質問に答える……貴方は何者?」
「あ、ああ……俺はこの街の商人に雇われた用心棒だ」
「商人の名前は?」
「ゼーニだ。禿げ頭の目立つおっさんだよ」
勘十郎の言葉にルノはヒカゲに視線を向けると彼女は頷き、クロガネに銅像の製作を依頼した商人で間違いないという。そうなると必然的に先ほどの男達もゼーニの部下で間違いなく、彼等がここに訪れた理由を問う。
「どうしてこの屋敷に来たんですか?話の内容から銅像を探していたようですけど」
「何だ?そんな事まで知ってるのか?俺等はゼーニの奴がクロガネに依頼した銅像を回収するように命じられたんだよ」
「という事は銅像は受け取っていなかったんですね」
「ああ、だけどクロガネの奴が銅像を制作していたのは間違いない。実際に何度か制作過程を確かめるために訪れていたからな。銅像が殆ど完成していたのは知っている」
「でも、そんな物は見つかりませんでしたよ?」
「この家の何処かに奴の隠している工房があるはずだ。そこに銅像があるんじゃないかと探していたんだが……」
「その前に答えて、クロガネは何処に消えたの?」
「……死んでるよ。あいつはここで殺されていた」
「えっ!?」
予想外の返答にルノは驚愕し、既にクロガネが亡くなっているという言葉に驚きは隠せない。しかし、他の二人は予測していたかの様に頷き、勘十郎は更に話を続ける。
「だが、クロガネを殺したのは俺達じゃねえ。あいつは玄関で死んでたんだよ。俺達が来た時には誰かに殺されていたんだ」
「遺体はどうしたんですか?」
「俺はその場には居なかったんだが、うちの奴らが処理したらしい。もしも誰かに見つかったら不味いからな……真っ先に疑われるのはゼーニの商会だからな。ついでに証拠も残さないように玄関は丹念に掃除したとか言っていたが……」
勘十郎の話によるとクロガネの死体を処理したのはゼーニの商会の人間で間違いなく、玄関口と通路が妙に綺麗だったのは死体の証拠隠滅のためにゼーニの配下が髪の毛一本も残さないように丹念に掃除したという。
0
お気に入りに追加
11,323
あなたにおすすめの小説
校長室のソファの染みを知っていますか?
フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。
しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。
座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る
僕の家族は母様と母様の子供の弟妹達と使い魔達だけだよ?
闇夜の現し人(ヤミヨノウツシビト)
ファンタジー
ー 母さんは、「絶世の美女」と呼ばれるほど美しく、国の中で最も権力の強い貴族と呼ばれる公爵様の寵姫だった。
しかし、それをよく思わない正妻やその親戚たちに毒を盛られてしまった。
幸い発熱だけですんだがお腹に子が出来てしまった以上ここにいては危険だと判断し、仲の良かった侍女数名に「ここを離れる」と言い残し公爵家を後にした。
お母さん大好きっ子な主人公は、毒を盛られるという失態をおかした父親や毒を盛った親戚たちを嫌悪するがお母さんが日々、「家族で暮らしたい」と話していたため、ある出来事をきっかけに一緒に暮らし始めた。
しかし、自分が家族だと認めた者がいれば初めて見た者は跪くと言われる程の華の顔(カンバセ)を綻ばせ笑うが、家族がいなければ心底どうでもいいというような表情をしていて、人形の方がまだ表情があると言われていた。
『無能で無価値の稚拙な愚父共が僕の家族を名乗る資格なんて無いんだよ?』
さぁ、ここに超絶チートを持つ自分が認めた家族以外の生き物全てを嫌う主人公の物語が始まる。
〈念の為〉
稚拙→ちせつ
愚父→ぐふ
⚠︎注意⚠︎
不定期更新です。作者の妄想をつぎ込んだ作品です。
【完】あの、……どなたでしょうか?
桐生桜月姫
恋愛
「キャサリン・ルーラー
爵位を傘に取る卑しい女め、今この時を以て貴様との婚約を破棄する。」
見た目だけは、麗しの王太子殿下から出た言葉に、婚約破棄を突きつけられた美しい女性は………
「あの、……どなたのことでしょうか?」
まさかの意味不明発言!!
今ここに幕開ける、波瀾万丈の間違い婚約破棄ラブコメ!!
結末やいかに!!
*******************
執筆終了済みです。
「お姉様の赤ちゃん、私にちょうだい?」
サイコちゃん
恋愛
実家に妊娠を知らせた途端、妹からお腹の子をくれと言われた。姉であるイヴェットは自分の持ち物や恋人をいつも妹に奪われてきた。しかし赤ん坊をくれというのはあまりに酷過ぎる。そのことを夫に相談すると、彼は「良かったね! 家族ぐるみで育ててもらえるんだね!」と言い放った。妹と両親が異常であることを伝えても、夫は理解を示してくれない。やがて夫婦は離婚してイヴェットはひとり苦境へ立ち向かうことになったが、“医術と魔術の天才”である治療人アランが彼女に味方して――
父が死んだのでようやく邪魔な女とその息子を処分できる
兎屋亀吉
恋愛
伯爵家の当主だった父が亡くなりました。これでようやく、父の愛妾として我が物顔で屋敷内をうろつくばい菌のような女とその息子を処分することができます。父が死ねば息子が当主になれるとでも思ったのかもしれませんが、父がいなくなった今となっては思う通りになることなど何一つありませんよ。今まで父の威を借りてさんざんいびってくれた仕返しといきましょうか。根に持つタイプの陰険女主人公。
(完結)醜くなった花嫁の末路「どうぞ、お笑いください。元旦那様」
音爽(ネソウ)
ファンタジー
容姿が気に入らないと白い結婚を強いられた妻。
本邸から追い出されはしなかったが、夫は離れに愛人を囲い顔さえ見せない。
しかし、3年と待たず離縁が決定する事態に。そして元夫の家は……。
*6月18日HOTランキング入りしました、ありがとうございます。
初夜に「俺がお前を抱く事は無い!」と叫んだら長年の婚約者だった新妻に「気持ち悪い」と言われた上に父にも予想外の事を言われた男とその浮気女の話
ラララキヲ
恋愛
長年の婚約者を欺いて平民女と浮気していた侯爵家長男。3年後の白い結婚での離婚を浮気女に約束して、新妻の寝室へと向かう。
初夜に「俺がお前を抱く事は無い!」と愛する夫から宣言された無様な女を嘲笑う為だけに。
しかし寝室に居た妻は……
希望通りの白い結婚と愛人との未来輝く生活の筈が……全てを周りに知られていた上に自分の父親である侯爵家当主から言われた言葉は──
一人の女性を蹴落として掴んだ彼らの未来は……──
<【ざまぁ編】【イリーナ編】【コザック第二の人生編(ザマァ有)】となりました>
◇テンプレ浮気クソ男女。
◇軽い触れ合い表現があるのでR15に
◇ふんわり世界観。ゆるふわ設定。
◇ご都合展開。矛盾は察して下さい…
◇なろうにも上げてます。
※HOTランキング入り(1位)!?[恋愛::3位]ありがとうございます!恐縮です!期待に添えればよいのですがッ!!(;><)
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。
このユーザをミュートしますか?
※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。