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冒険者編
家主の捜索
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「何かがおかしいですね……人の気配がしないのに出入口だけが綺麗に掃除された痕跡が残っている。もう少し調べてみましょうか」
「……この水は何処から持ってきたんだろう。井戸があるのかな?」
「あ、それです。まずは桶の水を汲んだ場所を探しましょう。台所の壺の中に入っていた水は腐っていましたから、きっと井戸があるはずですよ」
「基本的に日の国の人間は井戸水で生活している」
3人は屋敷の裏に移動し、井戸を発見する。先ほどまで誰かが水を汲んでいたのか、桶に水が溜められた状態で放置されており、汚れた水を捨てたのか地面の一部が湿っていた。
「ふむ……どうやらここで水を汲んでいたのは間違いないですね。だけど、汚れた水をそのまま流し捨てしているのが気になりますね」
「誰かがここで水を汲んで掃除をしていたのは間違いないか……でも、それならどうして人が居ないんだろう?」
「掃除の途中で用事を思い出して抜け出したとか?」
「……調べて見る」
忍者であるヒカゲが地面に視線を向け、普段は細めの目を大きく開いて観察するように覗き込む。ルノも覚えている観察能力を強化する「観察眼」を使用しているらしく、彼女は井戸が存在する地面に視線を向け、足跡を見つけだす。
「見つけた……足跡がある。しかも草履じゃなくてブーツか何かで踏みつけたような跡が残っている」
「よく見つけましたね。足跡の大きさは分かりますか?」
「少なくとも巨人族じゃない、足跡が小さすぎる。だけど、小髭族でもなさそう。足跡が少し大きい……多分、人間の物」
「人間?じゃあ、使用人が掃除をしていたのかな?」
「分からない……だけど、嫌な予感がする」
「もう一度現場に戻りましょうか」
「現場って……刑事じゃないんだからさ」
ルノ達は玄関口に戻ると、今度は出入口側の通路を隈なく調べる。しかし、掃除されたばかりなので手掛かりになりそうな物はなく、気になる物も特にない。
「う~ん……特に何もなさそうですね」
「綺麗に掃除してある……だけど、それが逆に怪しい」
「証拠隠滅のために掃除をしたのかもしれませんね」
「証拠って……何の話?」
リーリスは何処からか取り出したのか虫眼鏡を取り出して床板を調べ、ヒカゲも蜘蛛のように天井に張り付いて調べる。一方でルノは誰か帰ってこないのかと外に視線を向けると、不意に玄関に置いてある花瓶を見て驚く。
「これは……」
「どうしました?」
「この花瓶にも髑髏が刻まれてる」
「あれ、本当ですね」
花瓶にはクロガネが作り出した刀の刀身に刻まれていた髑髏が存在し、ヒカゲが思い出したように台所を指さす。
「そういえば包丁にもそれと同じ髑髏が刻まれていた」
「え?包丁に?」
「大きさは違ったけど、全部の刃物に髑髏が刻まれていた。もしかしたら髑髏が刻まれた物はこの家の家主が作り出した作品かもしれない」
「花瓶も?」
「別に小髭族は金属品しか作れない訳じゃないですよ。意外と陶芸家も多くて……ん?もしかして皿にも同じものが刻んであるんじゃないですか?」
「刻んであった」
ヒカゲによるとこの家には「髑髏」で刻まれた日用品が溢れており、クロガネの趣味なのか包丁や鋏、更には花瓶や皿の類にまで髑髏が刻まれていたという。こうなるとクロガネが自分の作品に髑髏を刻んでいるとしか思えず、本人の趣味なのか、あるいは別の意図があるのかも知れない。
「ふむ……工房の方を見てみますか。きっと、この屋敷の何処かにあるはずです」
「工房……よし、探そう」
クロガネは刀匠であり、屋敷の中に工房が存在してもおかしくはなく、ルノ達は屋敷の捜索を再開する。しかし、どういう事なのか家の中を調べてもそれらしき場所は見つからず、結局は玄関に戻ってしまう。
「おかしいですね。大抵の小髭族は家にも工房を持っているはずなんですけど……」
「普段はここで生活していて仕事の時は別の場所で刀を作っているんじゃない?」
「う~ん……気になりますね」
「二人とも、こっちに来て」
玄関で話していた二人の元に外からヒカゲが声を掛け、何か発見したのかと彼女の後に続くと、ヒカゲが辿り着いたのは先ほども訪れた裏庭だった。
「どうしたんですか?こんな場所に呼び出して……」
「この花壇を見て」
「花壇?」
ヒカゲは裏庭に存在する花壇を指差し、植えられている殆どの花が萎れており、完全には枯れていないがしばらくのは間は水を与えられていない様子だった。
「元気なさそう……俺の魔法ならすぐに元気に出来るのに」
「いや、ルノさんの場合だとやり過ぎると大変なことが起きるんだから辞めてくださいよ。あれ、だけどなんでこの花だけが元気なんでしょうかね?」
「そう、そこが気になる」
花壇の中で一輪だけ萎れていない綺麗な花が存在し、不思議に思ったルノは花びらを覗き込むと、すぐに違和感を抱く。
「あれ、これってもしかして……造花?」
「正解、よく出来ているけどこれだけが偽物」
花壇に植えられている植物の中で唯一萎れていない花の正体が「造花」であると判明し、一輪だけ造花を花壇に植えているという謎の行為にルノは首を傾げる。
※とりあえずは今日はここで終わりです。母親が無事に家から近い病院に転院したのでこれで投稿にも集中できます(´∀`)大分元気になりました。
「……この水は何処から持ってきたんだろう。井戸があるのかな?」
「あ、それです。まずは桶の水を汲んだ場所を探しましょう。台所の壺の中に入っていた水は腐っていましたから、きっと井戸があるはずですよ」
「基本的に日の国の人間は井戸水で生活している」
3人は屋敷の裏に移動し、井戸を発見する。先ほどまで誰かが水を汲んでいたのか、桶に水が溜められた状態で放置されており、汚れた水を捨てたのか地面の一部が湿っていた。
「ふむ……どうやらここで水を汲んでいたのは間違いないですね。だけど、汚れた水をそのまま流し捨てしているのが気になりますね」
「誰かがここで水を汲んで掃除をしていたのは間違いないか……でも、それならどうして人が居ないんだろう?」
「掃除の途中で用事を思い出して抜け出したとか?」
「……調べて見る」
忍者であるヒカゲが地面に視線を向け、普段は細めの目を大きく開いて観察するように覗き込む。ルノも覚えている観察能力を強化する「観察眼」を使用しているらしく、彼女は井戸が存在する地面に視線を向け、足跡を見つけだす。
「見つけた……足跡がある。しかも草履じゃなくてブーツか何かで踏みつけたような跡が残っている」
「よく見つけましたね。足跡の大きさは分かりますか?」
「少なくとも巨人族じゃない、足跡が小さすぎる。だけど、小髭族でもなさそう。足跡が少し大きい……多分、人間の物」
「人間?じゃあ、使用人が掃除をしていたのかな?」
「分からない……だけど、嫌な予感がする」
「もう一度現場に戻りましょうか」
「現場って……刑事じゃないんだからさ」
ルノ達は玄関口に戻ると、今度は出入口側の通路を隈なく調べる。しかし、掃除されたばかりなので手掛かりになりそうな物はなく、気になる物も特にない。
「う~ん……特に何もなさそうですね」
「綺麗に掃除してある……だけど、それが逆に怪しい」
「証拠隠滅のために掃除をしたのかもしれませんね」
「証拠って……何の話?」
リーリスは何処からか取り出したのか虫眼鏡を取り出して床板を調べ、ヒカゲも蜘蛛のように天井に張り付いて調べる。一方でルノは誰か帰ってこないのかと外に視線を向けると、不意に玄関に置いてある花瓶を見て驚く。
「これは……」
「どうしました?」
「この花瓶にも髑髏が刻まれてる」
「あれ、本当ですね」
花瓶にはクロガネが作り出した刀の刀身に刻まれていた髑髏が存在し、ヒカゲが思い出したように台所を指さす。
「そういえば包丁にもそれと同じ髑髏が刻まれていた」
「え?包丁に?」
「大きさは違ったけど、全部の刃物に髑髏が刻まれていた。もしかしたら髑髏が刻まれた物はこの家の家主が作り出した作品かもしれない」
「花瓶も?」
「別に小髭族は金属品しか作れない訳じゃないですよ。意外と陶芸家も多くて……ん?もしかして皿にも同じものが刻んであるんじゃないですか?」
「刻んであった」
ヒカゲによるとこの家には「髑髏」で刻まれた日用品が溢れており、クロガネの趣味なのか包丁や鋏、更には花瓶や皿の類にまで髑髏が刻まれていたという。こうなるとクロガネが自分の作品に髑髏を刻んでいるとしか思えず、本人の趣味なのか、あるいは別の意図があるのかも知れない。
「ふむ……工房の方を見てみますか。きっと、この屋敷の何処かにあるはずです」
「工房……よし、探そう」
クロガネは刀匠であり、屋敷の中に工房が存在してもおかしくはなく、ルノ達は屋敷の捜索を再開する。しかし、どういう事なのか家の中を調べてもそれらしき場所は見つからず、結局は玄関に戻ってしまう。
「おかしいですね。大抵の小髭族は家にも工房を持っているはずなんですけど……」
「普段はここで生活していて仕事の時は別の場所で刀を作っているんじゃない?」
「う~ん……気になりますね」
「二人とも、こっちに来て」
玄関で話していた二人の元に外からヒカゲが声を掛け、何か発見したのかと彼女の後に続くと、ヒカゲが辿り着いたのは先ほども訪れた裏庭だった。
「どうしたんですか?こんな場所に呼び出して……」
「この花壇を見て」
「花壇?」
ヒカゲは裏庭に存在する花壇を指差し、植えられている殆どの花が萎れており、完全には枯れていないがしばらくのは間は水を与えられていない様子だった。
「元気なさそう……俺の魔法ならすぐに元気に出来るのに」
「いや、ルノさんの場合だとやり過ぎると大変なことが起きるんだから辞めてくださいよ。あれ、だけどなんでこの花だけが元気なんでしょうかね?」
「そう、そこが気になる」
花壇の中で一輪だけ萎れていない綺麗な花が存在し、不思議に思ったルノは花びらを覗き込むと、すぐに違和感を抱く。
「あれ、これってもしかして……造花?」
「正解、よく出来ているけどこれだけが偽物」
花壇に植えられている植物の中で唯一萎れていない花の正体が「造花」であると判明し、一輪だけ造花を花壇に植えているという謎の行為にルノは首を傾げる。
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