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冒険者編
刀匠の正体
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「あれ、本当ですね……って、これって魔王軍の紋様じゃないですか!?」
「やっぱり……」
「魔王軍?何だそりゃ……」
ルノの言葉にリーリスが刀身に刻まれた紋様を確認すると、魔王軍の象徴である「髑髏」で間違いなかった。どうして刃に魔王軍の髑髏が刻まれているのかは不明だが、ルノは先ほどイサムが話していた刀匠の存在を思い出す。
「この刀を作った人は誰ですか?」
「え?あ、ああ……えっと、誰だっけ?」
「確か名前は……そうだ、クロガネとか名乗ってたな」
「ああ、最近流れ着いた小髭族のおっさんだが、中々気前のいい奴だったよ」
「クロガネ……」
「一体何の話をしてるんですか?」
二人の刀を作り出したのはクロガネという名前の小髭族である事が判明し、元々はこの国の人間ではなく、異国から流れ着いた男だと判明する。元々は普通の鍛冶師だったらしいがこの国に訪れて刀匠となり、現在では青空組の隊員の刀の発注を任される程の腕を持っているらしい。
「この国の刀に興味を抱いて小髭族が大勢やってくるんだが、殆どは居座らずに帰っちまうんだよ。理由はあいつらは自分の作り出す武器が最高品だと思い込んでいて、俺達の国の刀を認めようとはしねえからだ。日の国の武器が有名なのは素材が優れているだけで、武器その物は大したことはないとほざく奴までいやがる」
「だが、俺達の刀を打ってくれるクロガネは流れ者だが、あの人は良い人だよ。10年も前にここに流れ着いて色々な刀匠の所に訪れては頭を下げて弟子入りし、その技術を学んで今では超一流の刀匠として有名な存在になっている」
「その割には隊長は名前を忘れてましたね」
「うるせっ!!茶化すんじゃねえよ……俺も直に会ったのは1回だけなんだよ。忘れてても仕方ねえだろ」
「無駄に誇り高い小髭族が多種族の鍛冶師に頭を下げて弟子入り……10年で刀匠の技術を極めたとは凄いですね」
「ああ、そこは俺達も驚いたよ。最初は余所者なんかが作る刀なんか使えるかと思ってたんだが、実際に渡してくれた刀を受け取ったら文句も言えない。この刀は賊を斬っているんだが、刃毀れ一つ起こしはしないんだよ」
「最も頑丈さと重さを重要視しすぎて切れ味は相当に悪いがな」
「だから切れ味の問題はトシゾウさんの腕が悪いからでは?」
「てめえを今すぐ叩き切ってやろうかっ!?」
3人の言葉にルノはリーリスと顔を見合わせ、話を聞く限りではクロガネという小髭族の刀匠は青空組の隊員の刀作りを任せられる程に信頼された人物らしく、それだけに怪しさを感じた。
「リーリス、どう思う?」
「う~ん……先日のリディアの一件がありますしね。国の重要人物が魔王軍だったという点ではうちの大臣もそうでしたし……当たりかもしれません」
「おいおい、何の話をしてるんだよ?」
「あの、ちょっとこの刀を調べさせて貰えませんか?何か分かるかもしれませんし……」
「そいつは勘弁してくれよ。俺達にとって刀は命だ。あんまり他人に貸すような代物じゃねえ……今回はこいつのわがままに付き合わされたがよ」
「悪かったよ……」
イサムはルノの手から自分の刀を取り上げ、鞘に戻す。もう少しだけ刀の紋様を調べたかったが、重要なのはクロガネという人物であり、ルノは彼の所在を尋ねる。
「そのクロガネという人は何処にいるんですか?会ってみたいんですけど……」
「お、兄さんも刀に興味を抱いたのか?だけどクロガネ先生は一般人からは滅多に仕事の依頼を引き受けないからな……まあ、場所を教えるだけならいいか」
ルノの質問にイサムはクロガネが開いている店の場所を教え、そのままソウシとトシゾウを引き連れて鰻屋に戻るらしく、別れの言葉を告げて立ち去った。
「じゃあな兄さん、今度会ったときは俺とも手合せしてくれよ」
「隊長……一般人に手を出したら解雇ですよ」
「ちっ……次は負けねえからな!!」
「あ、はい……お気をつけて」
「変わった人たちでしたね。まるで新選組の有名な3人のような名前でしたし」
腕を振って立ち去る3人組を見送った後、ルノはイサムから教わった情報を頼りにクロガネが存在するという場所に向かう前にヒカゲを探す事にした。
「そういえばヒカゲさんが遅いね。結構時間が経ってると思うんだけど」
「言われてみればそうですね。どこに行ったんでしょうか、あのくのいちは……」
「ここに居る」
「わあっ!?びっくりした!!」
リーリスの背後から両手に衣服を抱えたヒカゲが姿を現し、彼女は立ち去った3人組の方向に視線を向けて首を傾げる。
「青空組……一番隊の3人衆。どうして2人と会っていたの?」
「あのトシゾウという人にルノさんが絡まれたんですよ。それよりヒカゲさんこそ今まで何処に行ってたんですか?結構待ったんですよ」
「色々と準備をしていた……二人のためにこの国の服も用意した」
「袴と……着物?」
「この国で目立つ行動は避けて欲しい。そのためにまずは服から着替える」
「なるほど、一理ありますね」
ヒカゲは二人のために服屋に訪れていたらしく、二人に服を渡す。確かにこの国で悪目立ちするとヒカゲに迷惑が掛かると判断したルノとリーリスは仕方なく服を着替える異にした。
「やっぱり……」
「魔王軍?何だそりゃ……」
ルノの言葉にリーリスが刀身に刻まれた紋様を確認すると、魔王軍の象徴である「髑髏」で間違いなかった。どうして刃に魔王軍の髑髏が刻まれているのかは不明だが、ルノは先ほどイサムが話していた刀匠の存在を思い出す。
「この刀を作った人は誰ですか?」
「え?あ、ああ……えっと、誰だっけ?」
「確か名前は……そうだ、クロガネとか名乗ってたな」
「ああ、最近流れ着いた小髭族のおっさんだが、中々気前のいい奴だったよ」
「クロガネ……」
「一体何の話をしてるんですか?」
二人の刀を作り出したのはクロガネという名前の小髭族である事が判明し、元々はこの国の人間ではなく、異国から流れ着いた男だと判明する。元々は普通の鍛冶師だったらしいがこの国に訪れて刀匠となり、現在では青空組の隊員の刀の発注を任される程の腕を持っているらしい。
「この国の刀に興味を抱いて小髭族が大勢やってくるんだが、殆どは居座らずに帰っちまうんだよ。理由はあいつらは自分の作り出す武器が最高品だと思い込んでいて、俺達の国の刀を認めようとはしねえからだ。日の国の武器が有名なのは素材が優れているだけで、武器その物は大したことはないとほざく奴までいやがる」
「だが、俺達の刀を打ってくれるクロガネは流れ者だが、あの人は良い人だよ。10年も前にここに流れ着いて色々な刀匠の所に訪れては頭を下げて弟子入りし、その技術を学んで今では超一流の刀匠として有名な存在になっている」
「その割には隊長は名前を忘れてましたね」
「うるせっ!!茶化すんじゃねえよ……俺も直に会ったのは1回だけなんだよ。忘れてても仕方ねえだろ」
「無駄に誇り高い小髭族が多種族の鍛冶師に頭を下げて弟子入り……10年で刀匠の技術を極めたとは凄いですね」
「ああ、そこは俺達も驚いたよ。最初は余所者なんかが作る刀なんか使えるかと思ってたんだが、実際に渡してくれた刀を受け取ったら文句も言えない。この刀は賊を斬っているんだが、刃毀れ一つ起こしはしないんだよ」
「最も頑丈さと重さを重要視しすぎて切れ味は相当に悪いがな」
「だから切れ味の問題はトシゾウさんの腕が悪いからでは?」
「てめえを今すぐ叩き切ってやろうかっ!?」
3人の言葉にルノはリーリスと顔を見合わせ、話を聞く限りではクロガネという小髭族の刀匠は青空組の隊員の刀作りを任せられる程に信頼された人物らしく、それだけに怪しさを感じた。
「リーリス、どう思う?」
「う~ん……先日のリディアの一件がありますしね。国の重要人物が魔王軍だったという点ではうちの大臣もそうでしたし……当たりかもしれません」
「おいおい、何の話をしてるんだよ?」
「あの、ちょっとこの刀を調べさせて貰えませんか?何か分かるかもしれませんし……」
「そいつは勘弁してくれよ。俺達にとって刀は命だ。あんまり他人に貸すような代物じゃねえ……今回はこいつのわがままに付き合わされたがよ」
「悪かったよ……」
イサムはルノの手から自分の刀を取り上げ、鞘に戻す。もう少しだけ刀の紋様を調べたかったが、重要なのはクロガネという人物であり、ルノは彼の所在を尋ねる。
「そのクロガネという人は何処にいるんですか?会ってみたいんですけど……」
「お、兄さんも刀に興味を抱いたのか?だけどクロガネ先生は一般人からは滅多に仕事の依頼を引き受けないからな……まあ、場所を教えるだけならいいか」
ルノの質問にイサムはクロガネが開いている店の場所を教え、そのままソウシとトシゾウを引き連れて鰻屋に戻るらしく、別れの言葉を告げて立ち去った。
「じゃあな兄さん、今度会ったときは俺とも手合せしてくれよ」
「隊長……一般人に手を出したら解雇ですよ」
「ちっ……次は負けねえからな!!」
「あ、はい……お気をつけて」
「変わった人たちでしたね。まるで新選組の有名な3人のような名前でしたし」
腕を振って立ち去る3人組を見送った後、ルノはイサムから教わった情報を頼りにクロガネが存在するという場所に向かう前にヒカゲを探す事にした。
「そういえばヒカゲさんが遅いね。結構時間が経ってると思うんだけど」
「言われてみればそうですね。どこに行ったんでしょうか、あのくのいちは……」
「ここに居る」
「わあっ!?びっくりした!!」
リーリスの背後から両手に衣服を抱えたヒカゲが姿を現し、彼女は立ち去った3人組の方向に視線を向けて首を傾げる。
「青空組……一番隊の3人衆。どうして2人と会っていたの?」
「あのトシゾウという人にルノさんが絡まれたんですよ。それよりヒカゲさんこそ今まで何処に行ってたんですか?結構待ったんですよ」
「色々と準備をしていた……二人のためにこの国の服も用意した」
「袴と……着物?」
「この国で目立つ行動は避けて欲しい。そのためにまずは服から着替える」
「なるほど、一理ありますね」
ヒカゲは二人のために服屋に訪れていたらしく、二人に服を渡す。確かにこの国で悪目立ちするとヒカゲに迷惑が掛かると判断したルノとリーリスは仕方なく服を着替える異にした。
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