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冒険者編

日の国の刀の原材料

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「ほら、回復してあげますから腕を見せてください。あ、でもこの国では魔法は禁止されてましたね。仕方ないから帝国印の回復薬を使いますよ」
「何処に持ってたのそんな物……あ、アイテムボックスか」
「ぐううっ……すまねえ」


トシゾウが折れた腕を差し出し、リーリスがスキルを発動して異空間から回復薬を取り出し、折れた腕に振りかける。飲んでも効果はあるが直接傷口に振りかける方が効果が高く、折れた腕に緑色の液体が流し込まれた途端に骨が修復して曲がっていた腕も元に戻る。


「ぐううっ……いでぇっ!?」
「あれ、痛いの?」
「曲がった骨を元に戻してますからね。そりゃ痛いですよ」
「すまねえな嬢ちゃん……きっちり、薬代は払うぜ」
「あ、じゃあ銀貨8枚になります」
「お、おう……結構するんだな」


イサムがトシゾウの代わりに薬代を支払い、リーリスは鼻歌を鳴らしながら受け取ると、地面に落ちていたトシゾウの刀に気付く。彼女はそれを拾い上げ、ルノの一撃を受けたにも関わらずに折れていない刃に不思議に思う。


「あれ……この刀、普通の金属じゃないですね。もしかして魔法金属ですか?そういえば日の国にしか存在しない黒鋼という魔法金属で武器を作り出していると聞いた事がありますけど、この刀にも黒鋼が使われているんですか?」
「どうでもいいから返せよ。女が刀なんて持つもんじゃねえ」


けがの治療を終えたトシゾウがリーリスの手から自分の刀を取り戻し、刃に損傷がない事を確認すると、安堵の息を吐いて鞘に戻す。一方でルノはイサムから借りた刀の刀身に視線を向け、こちらも刃毀れさえしていない事に気付き、相当な頑丈性を持っている事が判明する。


「この刀、凄いですね。普通の剣だと思いっきり振り回すと刃が折れちゃうのに……」
「え?ちょっと待ってください。さり気無くとんでもない事を言いましたよね今?」


ルノが基本的に武器の類を扱わないのは彼の職業が魔術師という理由もあるが、普通の金属製の武器ではルノの身体能力から繰り出される攻撃には耐えきれず、武器その物が壊れてしまうからである。彼が全力で武器を使おうとすれば剣や斧の場合だと柄の部分が砕けてしまい、酷い時には握りしめただけで壊れてしまう。

ちなみにそれほどの身体能力を持て余しているのならば日常生活に不便はないのかと思われるかもしれないが、肉体の能力に関しては本人の意思で操作する事が出来る。分かりやすく言えば普段のルノは普通の人間だが、彼が怒りを抱いたり、あるいは戦意を抱くと身体能力が一気に跳ね上がる。普通の人間に例えるなら「火事場の馬鹿力」を自在に引き出せるような感覚に近い。


「この剣、よく見たら刀身が殆ど黒に染まってる……これが黒鋼なんですか?」
「ああ、この国でしか生産されていない最高の金属だ。まあ、別の地方ではアダマンタイトとも呼ばれているらしいがな」
「アダマンタイト!?伝説の魔法金属じゃないですか!!」
「何だ、知ってんのか嬢ちゃん?」


黒鋼の別名が「アダマンタイト」と知ったリーリスは驚愕し、彼女の知識では伝説の聖剣にも使用されている伝説級の金属であり、普通ならば滅多に手に入らない代物である。しかし、日の国ではこのアダマンタイトを作り出す技術を保有しているらしく、この国の刀匠にしか扱えない貴重な金属である。


「信じられませんね……アダマンタイトを作り出せる技術がこの国にあるなんて初めて知りましたよ」
「あんまり他の人間には話さないでくれよ。本当は秘密なんだが、この国に存在する刀は全て黒鋼と鋼鉄の合金なんだよ。特に俺とトシゾウの刀はアダマンタイトの比率が高いからな」
「そんなに黒鋼は異国では有名なのか?硬いだけで碌に切れ味もない金属だぞ」
「そいつはトシゾウさんの腕が悪いだけじゃないんですかね?」
「ああっ!?」


唐突にトシゾウの背後から声が上がり、振り返るとそこにはガリュウを連れて行ったはずのソウシが存在し、既に屯所にガリュウを送り込んできたのか団子を頬張りながら姿を現した。


「おお、ソウシか。もう戻ってきたのか?」
「鰻屋に言ったらあんた等が居ないから探しましたよ。例の男はちゃんと引き渡してきましたよ」
「悪い悪い、そういえばお前の事をすっかり忘れてたな。まあ、この通り仲直りしたから安心しな」
「別に心配なんてしてませんでしたけど……それでどういう状況なんですか?」
「ちっ……」


戻ってきたソウシにイサムが事情を説明し、トシゾウは気に入らなそうにリーリスから刀を回収すると、ルノが未だにイサムの刀を見ている事に気付く。


「おい、何してんだ。さっさとその刀を隊長に返せよ」
「あ、すいません……ちょっと気になる事があって」
「気になる事だと?」
「この刀のここの部分……どうして髑髏が刻まれているんですか?」
「えっ」


ルノの言葉にリーリスが視線を向けると、確かに刃の部分には「髑髏」が刻まれていた。
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