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冒険者編
ギリョウの過去
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「でもルノさん、武道を学んでいないというのは言い過ぎじゃないですか?ギリョウさんに護身術を学んでいたじゃないですか」
「あ、そっか。でも、本当に簡単な事しか習ってないよ?」
「おい、待て!!今なんて言った!?」
「え?いや、簡単な事しか……」
「違う!!ギリョウだと!?もしかして帝国四天王筆頭のギリョウの事か!?」
ギリョウの名前を出した途端、トシゾウとイサムの顔色が変わる。帝国の四天王の名前は日の国にも名前が届いているのかとルノは疑問を抱くと、リーリスが思い出したように頷いた。
「あ、思い出しました。そういえばギリョウさんは日の国の侍から剣を学んだと言ってましたよ」
「え?ギリョウさんも日の国の人なの?」
「いえ、そういう訳じゃないですけど小さい頃からこの国にちょくちょく訪れて剣術を学んでいたそうです。昔はこの国の殿様の指導も行っていた事もあるとか……」
「こいつは驚いた……まさか、あのギリョウさんの弟子だったとは」
「くそ、あの爺……俺の弟子入りを断ったくせにこんなガキを弟子にしてやがったのか!!」
「いや、別に弟子という程じゃ……」
どうやらギリョウは日の国でも有名な存在らしく、イサムは納得した表情を浮かべ、トシゾウは悔しそうに拳を握りしめる。実際の所はルノがギリョウに教わったのは護身術程度であり、剣に関しては全くと言っていいほど習っていない。普通の魔術師はわざわざ剣を極める事はなく、普通に魔道を極めるのが当たり前のため、ギリョウも本格的にルノに剣術を教えるつもりはなく、簡単な足払い程度しか教えていない。
だが、事情を知らないトシゾウとイサムはルノがギリョウの弟子と思い込み、先ほどの彼の反応の素早さに納得した。しかし、トシゾウはよりにもよって自分が目の仇にしているギリョウの弟子に刀を止められた事が気に食わず、ルノの袖を掴んで引き寄せる。
「おい!!お前、刀は持っているのか!?」
「え、いや……」「
「おい、トシゾウ!!」
「隊長は黙っててくれ!!俺はこいつに決闘を挑む!!」
「決闘?」
「ちょっとちょっと!!何を言い出すんですか?私達は観光に訪れただけですよ?」
唐突に勝負を申し込んできたトシゾウにリーリスが間に割って入り、イサムも宥めるようにトシゾウの肩に手を置く。
「落ち着けトシゾウ。相手は異国人だぞ?迂闊に手を出したら面倒な事になる」
「離せよ隊長!!おい、お前!!てめえも剣士なら挑まれた勝負を断わるような真似はしないよな!?」
「いや、だから剣士じゃないですけど……」
「そうですよ。丸腰の相手に戦いを挑むなんて恥ずかしくないんですか?」
「ぐっ……」
リーリスとイサムの言葉にトシゾウは悔し気に唇を噛みしめ、ルノを睨みつける。そんな彼にルノは溜息を吐き出し、ここで彼の勝負を受ける必要はない。相手の勝手な勘違いで決闘を受ける理由はなく、急いで店を出ようとする。
「もういいや、行こうよリーリス」
「そうですね。ごちそうさまでした~」
「ま、待て!!話はまだ終わってないぞ!!」
「トシゾウ!!いい加減にしやがれ!!頭を冷やせっ!!」
立ち去ろうとするルノとリーリスに対してトシゾウが引き留めようとするが、それを後ろからイサムが引き留める。そんな彼等を置いて店を出ようとした時、慌てて店員が引き留めた。
「あ、お待ちくださいお客様!!お勘定の方ですが、実は銅貨1枚分足りなかったようでして……」
「え?」
店を出た途端、1人の店員がルノ達を引き留め、ヒカゲが支払った代金だけでは足りないことを告げる。
「申し訳ありません。対応した店員が新人なのでどうやら受取金額を間違えていたようで……銅貨1枚分だけ足りなかったようです」
「ああ、それなら別にいいですよ。私が払います」
「すいません。わざわざ引き留めて……」
「おっと、待ちな……お前ら、支払いをしないで店を出たな」
リーリスが店員に銅貨を渡そうとした時、息を荒げたトシゾウが二人の前に現れ、笑みを浮かべながら刀に手を伸ばす。
「食い逃げの現行犯だ。お前らを逮捕する!!」
「はあっ!?何を言ってるんですか?銅貨1枚を支払い忘れただけですよ?」
「そ、そうです。このお客様は別に悪くは……」
「そんなもんは関係あるか!!お前らが代金を支払わずに店を出たのを目撃したんだ。職務上、無視するわけにはいかねえ!!」
「はあっ……トシゾウ、お前な……」
トシゾウのあまりの言い分に全員が呆れた表情を浮かべるが、ルノだけはいい加減に彼の態度に苛立ちを抱き、店員に銅貨を支払う。
「これでいいですか?」
「え、あ、はい。毎度あり……」
「おい、無視してんじゃ……」
「決闘、と言いましたっけ?」
店員に銅貨を支払ったルノはトシゾウに振り返り、冷たい瞳を向ける。そんな彼の反応にリーリスは肩をすくめて溜息を吐き出し、イサムも驚く。
「いいですよ。その決闘、引き受けます」
「へっ、へへっ……やっとその気になったな」
「おい!!別にあんたが引き受ける必要は……」
「大丈夫です。すぐに終わらせますから」
イサムが慌てて二人を止めようとするが、ルノとしては勝手な勘違いで自分の話も聞かないトシゾウを許せず、彼の要望通りに決闘を引き受ける事を決めた。
「あ、そっか。でも、本当に簡単な事しか習ってないよ?」
「おい、待て!!今なんて言った!?」
「え?いや、簡単な事しか……」
「違う!!ギリョウだと!?もしかして帝国四天王筆頭のギリョウの事か!?」
ギリョウの名前を出した途端、トシゾウとイサムの顔色が変わる。帝国の四天王の名前は日の国にも名前が届いているのかとルノは疑問を抱くと、リーリスが思い出したように頷いた。
「あ、思い出しました。そういえばギリョウさんは日の国の侍から剣を学んだと言ってましたよ」
「え?ギリョウさんも日の国の人なの?」
「いえ、そういう訳じゃないですけど小さい頃からこの国にちょくちょく訪れて剣術を学んでいたそうです。昔はこの国の殿様の指導も行っていた事もあるとか……」
「こいつは驚いた……まさか、あのギリョウさんの弟子だったとは」
「くそ、あの爺……俺の弟子入りを断ったくせにこんなガキを弟子にしてやがったのか!!」
「いや、別に弟子という程じゃ……」
どうやらギリョウは日の国でも有名な存在らしく、イサムは納得した表情を浮かべ、トシゾウは悔しそうに拳を握りしめる。実際の所はルノがギリョウに教わったのは護身術程度であり、剣に関しては全くと言っていいほど習っていない。普通の魔術師はわざわざ剣を極める事はなく、普通に魔道を極めるのが当たり前のため、ギリョウも本格的にルノに剣術を教えるつもりはなく、簡単な足払い程度しか教えていない。
だが、事情を知らないトシゾウとイサムはルノがギリョウの弟子と思い込み、先ほどの彼の反応の素早さに納得した。しかし、トシゾウはよりにもよって自分が目の仇にしているギリョウの弟子に刀を止められた事が気に食わず、ルノの袖を掴んで引き寄せる。
「おい!!お前、刀は持っているのか!?」
「え、いや……」「
「おい、トシゾウ!!」
「隊長は黙っててくれ!!俺はこいつに決闘を挑む!!」
「決闘?」
「ちょっとちょっと!!何を言い出すんですか?私達は観光に訪れただけですよ?」
唐突に勝負を申し込んできたトシゾウにリーリスが間に割って入り、イサムも宥めるようにトシゾウの肩に手を置く。
「落ち着けトシゾウ。相手は異国人だぞ?迂闊に手を出したら面倒な事になる」
「離せよ隊長!!おい、お前!!てめえも剣士なら挑まれた勝負を断わるような真似はしないよな!?」
「いや、だから剣士じゃないですけど……」
「そうですよ。丸腰の相手に戦いを挑むなんて恥ずかしくないんですか?」
「ぐっ……」
リーリスとイサムの言葉にトシゾウは悔し気に唇を噛みしめ、ルノを睨みつける。そんな彼にルノは溜息を吐き出し、ここで彼の勝負を受ける必要はない。相手の勝手な勘違いで決闘を受ける理由はなく、急いで店を出ようとする。
「もういいや、行こうよリーリス」
「そうですね。ごちそうさまでした~」
「ま、待て!!話はまだ終わってないぞ!!」
「トシゾウ!!いい加減にしやがれ!!頭を冷やせっ!!」
立ち去ろうとするルノとリーリスに対してトシゾウが引き留めようとするが、それを後ろからイサムが引き留める。そんな彼等を置いて店を出ようとした時、慌てて店員が引き留めた。
「あ、お待ちくださいお客様!!お勘定の方ですが、実は銅貨1枚分足りなかったようでして……」
「え?」
店を出た途端、1人の店員がルノ達を引き留め、ヒカゲが支払った代金だけでは足りないことを告げる。
「申し訳ありません。対応した店員が新人なのでどうやら受取金額を間違えていたようで……銅貨1枚分だけ足りなかったようです」
「ああ、それなら別にいいですよ。私が払います」
「すいません。わざわざ引き留めて……」
「おっと、待ちな……お前ら、支払いをしないで店を出たな」
リーリスが店員に銅貨を渡そうとした時、息を荒げたトシゾウが二人の前に現れ、笑みを浮かべながら刀に手を伸ばす。
「食い逃げの現行犯だ。お前らを逮捕する!!」
「はあっ!?何を言ってるんですか?銅貨1枚を支払い忘れただけですよ?」
「そ、そうです。このお客様は別に悪くは……」
「そんなもんは関係あるか!!お前らが代金を支払わずに店を出たのを目撃したんだ。職務上、無視するわけにはいかねえ!!」
「はあっ……トシゾウ、お前な……」
トシゾウのあまりの言い分に全員が呆れた表情を浮かべるが、ルノだけはいい加減に彼の態度に苛立ちを抱き、店員に銅貨を支払う。
「これでいいですか?」
「え、あ、はい。毎度あり……」
「おい、無視してんじゃ……」
「決闘、と言いましたっけ?」
店員に銅貨を支払ったルノはトシゾウに振り返り、冷たい瞳を向ける。そんな彼の反応にリーリスは肩をすくめて溜息を吐き出し、イサムも驚く。
「いいですよ。その決闘、引き受けます」
「へっ、へへっ……やっとその気になったな」
「おい!!別にあんたが引き受ける必要は……」
「大丈夫です。すぐに終わらせますから」
イサムが慌てて二人を止めようとするが、ルノとしては勝手な勘違いで自分の話も聞かないトシゾウを許せず、彼の要望通りに決闘を引き受ける事を決めた。
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