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冒険者編
青空組三人衆
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「なるほど……つまりあんた等はここでこいつを斬ると店の人の迷惑だから辞めてくれと言ってるんだな?」
「まあ、そういう事ですね。この国の事はよく知りませんけど、いくら何でも店の中で殺人なんて不味いでしょう?」
「トシゾウ、そこの人の言うとおりだ」
「しかし隊長……」
「話を最後まで聞け。お二人さん、こいつが罪を犯したのは事実だ。この国で許可もなく帯刀する事は許されない事だ……だが、確かに店中で殺そうとしたのはやりすぎたな。こいつは俺達が連れて行く、それで文句はないな?」
「ええ、別にそれでいいですよ。別にその人の事を庇うわけじゃないですから」
イサムの言葉にリーリスは頷き、ルノとしてもガリュウを庇うつもりはない。事情はどうであれ彼が他の人間に迷惑を掛け、帯刀という罪を犯した事は間違いなく、後は彼等に任せる事にした。
「ソウシ、こいつを屯所まで連れていけ」
「え~?なんで僕が……」
「てめえだけずっと座って何もしてなかったからだよ。ほら、文句を言わずに年上のいう事は聞け」
「ちぇっ……ほら、行きますよ」
「ま、まっへくれ……鼻血が……」
「うるさいな……そらっ!!」
「ぎゃああっっ!?」
鼻血を垂らしているガリュウを蹴り飛ばし、ソウシと呼ばれた少年は彼を連れて出ていく。その光景を確認した客は安心した表情を浮かべるが、トシゾウとイサムは険しい表情を保ったままルノに視線を向ける。
「なあ、兄さん……あんた等は何者だ?このトシゾウという男は俺の中でも2番か3番目を誇る剣の達人だぞ」
「ちょっと待ってください。隊長、それなら1番目はあんただって言うのか?」
「あん?この間のの試合は俺の勝ちで終わっただろ?」
「あんときは腹の調子が悪かったんだ!!今やったら俺が勝つに決まってんだろ!!」
「ああん?」
「ああっ!?」
「何か勝手に喧嘩を始めたけど……」
「今のうちに行きましょうか」
何故か会話の最中にイサムとトシゾウはお互いの袖を掴み、睨み合う。その間にルノとリーリスは席を立とうとしたが、慌ててトシゾウがルノの肩を掴む。
「おい、待てよ!!まだ話は終わって……おわぁっ!?」
「あ、ごめんなさい」
トシゾウは力尽くでも引き留めようとしたが、予想外にもルノの方が力が強く、肩を掴んだはずのトシゾウの方が転んでしまう。慌ててルノが彼に手を伸ばすと、頬を赤くしたトシゾウが手を振り払う。
「大丈夫ですか?」
「う、うるせえっ!!お前、一体何者だ!?」
「おいおい、トシゾウ。一般人相手に何で喧嘩腰で話してんだ。悪いね兄さん、こいつは俺よりも血の気が多くてな……ほら、さっさと起き上がれ」
「いててっ!?自分で立てるわっ!!」
イサムがトシゾウの首を掴み、自分よりも長身の相手を片腕のみで持ち上げる。別にこの程度の芸当は高レベルの人間ならばそれほど驚くような事ではないが、長袖から露わになったイサムの腕の筋肉は見事な物だった。
「そういえばまだ名前を名乗っていなかったな。俺の名前はイサム、こう見えても青空組の一番隊の隊長を務めている。こいつは俺の隊の副隊長のトシゾウ、そんでさっき出て行ったのが隊員のソウシだ」
「青空組の一番隊!?」
「それってあの有名な……暴れん坊隊!?」
「あれが噂の三人か……初めて見たぜ」
店の中に居た客がイサムの言葉に驚きの声を上げ、どうやら日の国ではかなり有名な人物らしく、イサムは自分達の事を囁かれる事に照れ臭そうに鼻を掻く。
「今日は非番だったんで遊楽にでもいくつもりだったんだが、このトシゾウがどうしても鰻を食いてえというからここに立ち寄ったんんだが……まさかこんな場所で異国の武芸者と出会えるとはな」
「武芸者?」
「何を惚けてやがる。素人に俺の刀が止められるはずがないだろ!!名前を名乗りやがれ!!」
トシゾウは自分の刀を指だけで止められたことが気に入らないらしく、イサムはルノを相当な腕前の武人と勘違いしていた。しかし、当のルノ本人は別に武芸を学んだ事はなく、一応は名前を告げた。
「えっと、名前は霧崎ルノです」
「ついでに私はリーリスで~す」
「霧崎……?この国の人間だったのか?」
「いえ、そういうわけじゃないんですけど……」
「あ、私の事は無視ですか。別にいいですけどね……」
日の国では帝国地方と違い、日本人のように誰もが苗字を持っている。最も日の国では特に珍しくもない苗字らしく、少なくともイサムの知識の中では霧崎の苗字で有名な武芸者は居ない。
「あんたは異国人なのに苗字持ちなのか?いや、別に苗字ぐらいは珍しくはないが、霧崎という苗字はうちの国の人間ぐらいしかいないと思うんだが……」
「そりゃそうですよ。ルノさんは異世界人ですから」
「異世界人だ?それってあの……?」
「おい、そんな事はどうでもいいだろ隊長!!お前、霧崎とか言ったな?てめえはどこの流派だ?誰に武術を学んだ?」
「流派って……」
トシゾウは完全にルノを武芸者と思い込んでいるらしく、詳しく彼の扱う武術を問い質す。しかし、幾ら質問されようとルノが武芸を学んでいない事実は覆らない。
「まあ、そういう事ですね。この国の事はよく知りませんけど、いくら何でも店の中で殺人なんて不味いでしょう?」
「トシゾウ、そこの人の言うとおりだ」
「しかし隊長……」
「話を最後まで聞け。お二人さん、こいつが罪を犯したのは事実だ。この国で許可もなく帯刀する事は許されない事だ……だが、確かに店中で殺そうとしたのはやりすぎたな。こいつは俺達が連れて行く、それで文句はないな?」
「ええ、別にそれでいいですよ。別にその人の事を庇うわけじゃないですから」
イサムの言葉にリーリスは頷き、ルノとしてもガリュウを庇うつもりはない。事情はどうであれ彼が他の人間に迷惑を掛け、帯刀という罪を犯した事は間違いなく、後は彼等に任せる事にした。
「ソウシ、こいつを屯所まで連れていけ」
「え~?なんで僕が……」
「てめえだけずっと座って何もしてなかったからだよ。ほら、文句を言わずに年上のいう事は聞け」
「ちぇっ……ほら、行きますよ」
「ま、まっへくれ……鼻血が……」
「うるさいな……そらっ!!」
「ぎゃああっっ!?」
鼻血を垂らしているガリュウを蹴り飛ばし、ソウシと呼ばれた少年は彼を連れて出ていく。その光景を確認した客は安心した表情を浮かべるが、トシゾウとイサムは険しい表情を保ったままルノに視線を向ける。
「なあ、兄さん……あんた等は何者だ?このトシゾウという男は俺の中でも2番か3番目を誇る剣の達人だぞ」
「ちょっと待ってください。隊長、それなら1番目はあんただって言うのか?」
「あん?この間のの試合は俺の勝ちで終わっただろ?」
「あんときは腹の調子が悪かったんだ!!今やったら俺が勝つに決まってんだろ!!」
「ああん?」
「ああっ!?」
「何か勝手に喧嘩を始めたけど……」
「今のうちに行きましょうか」
何故か会話の最中にイサムとトシゾウはお互いの袖を掴み、睨み合う。その間にルノとリーリスは席を立とうとしたが、慌ててトシゾウがルノの肩を掴む。
「おい、待てよ!!まだ話は終わって……おわぁっ!?」
「あ、ごめんなさい」
トシゾウは力尽くでも引き留めようとしたが、予想外にもルノの方が力が強く、肩を掴んだはずのトシゾウの方が転んでしまう。慌ててルノが彼に手を伸ばすと、頬を赤くしたトシゾウが手を振り払う。
「大丈夫ですか?」
「う、うるせえっ!!お前、一体何者だ!?」
「おいおい、トシゾウ。一般人相手に何で喧嘩腰で話してんだ。悪いね兄さん、こいつは俺よりも血の気が多くてな……ほら、さっさと起き上がれ」
「いててっ!?自分で立てるわっ!!」
イサムがトシゾウの首を掴み、自分よりも長身の相手を片腕のみで持ち上げる。別にこの程度の芸当は高レベルの人間ならばそれほど驚くような事ではないが、長袖から露わになったイサムの腕の筋肉は見事な物だった。
「そういえばまだ名前を名乗っていなかったな。俺の名前はイサム、こう見えても青空組の一番隊の隊長を務めている。こいつは俺の隊の副隊長のトシゾウ、そんでさっき出て行ったのが隊員のソウシだ」
「青空組の一番隊!?」
「それってあの有名な……暴れん坊隊!?」
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「武芸者?」
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「えっと、名前は霧崎ルノです」
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「いえ、そういうわけじゃないんですけど……」
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「そりゃそうですよ。ルノさんは異世界人ですから」
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「おい、そんな事はどうでもいいだろ隊長!!お前、霧崎とか言ったな?てめえはどこの流派だ?誰に武術を学んだ?」
「流派って……」
トシゾウは完全にルノを武芸者と思い込んでいるらしく、詳しく彼の扱う武術を問い質す。しかし、幾ら質問されようとルノが武芸を学んでいない事実は覆らない。
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