最弱職の初級魔術師 初級魔法を極めたらいつの間にか「千の魔術師」と呼ばれていました。

カタナヅキ

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冒険者編

青空組

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「おっそいですねヒカゲさん……もう30分ぐらいは経ってますよ。ごはんなんてもう食べ終わりましたよ」
「そうだね。何かあったのかな……」


ルノとリーリスは鰻屋にて未だに戻ってこないヒカゲを心配し、彼女が戻ってくるまで離れる事も出来なかった。食べ終わったのだから早々に立ち去ってほしいのか、店員が何度か二人の顔を見るが、流石に注意する事はない。しかし、予想外にも盛況なので客足が止まらず、店の中は満員状態だった。ちなみにルノ達の傍に存在する3人分の席も新しく入ってきた客が先程まで座っていたが、、三人とも現在は厠に向かったので席は空いている。


「仕方ありませんね。私達だけで観光しましょうか、ヒカゲさんには後で謝りましょう」
「え?でも、せっかく案内役を頼んだのに……」
「戻ってこないならしょうがないですよ。勘定はしてくれているそうですし、行きましょうか……」
「おい!!どういう事じゃ我ぇっ!!」


二人が立ち上がろうとしたとした時、店の出入口から男性の大声が響き渡り、何事かと視線を向けるとそこには力士のように肥え太った男が居た。どうやら新しく入ってきた客のようだが店員が必死に彼等に頭を下げ、どの席も埋まっている事を伝える。


「も、申し訳ありません!!只今、満員でして……順番待ちでお願いします」
「舐めたことを抜かすな!!この俺を誰だと思っている!?青空組のガリュウ様だぞ!!」
「そ、そう言われましても……」
「おいあんた!!ガリュウだが、カリュウだが知らねえけどよ!!こっちが先に並んでいたんだぞ!!」
「横入りすんじゃねえよっ!!」
「じゃかあしいっ!!」


ガリュウと名乗る男性はどうやら外で並んでいた客を押し通して入り込んで来たらしく、彼の言葉に順番に待っていた客が文句を告げるが、ガリュウが怒鳴りつけると黙り込む。


「お前ら、俺の事を知らないようだな……この刀が見えねえのか!!俺は帯刀を許された人間なんだぞ!!」
「うっ……」
「か、刀持ちかよ……」


文句を告げる人間達に対してガリュウは自分の腰元に差している「日本刀」を見せつけると、周囲の人間達が顔色を悪くする。日の国では武器を装備する事は許可が必要なのか、ガリュウは偉そうに怒鳴りつける。


「俺はあの青空組だぞ!!この国を守る侍だ!!その俺に逆らうという事は国に逆らうのと同じなんだよ!!」
「そ、そんな……」
「無茶苦茶だ!!」
「うるせえっ!!なら決闘でもするか?俺は誰が相手でも受けるぞ!!」


刀を見せびらかしながらガリュウは客に怒鳴りつけると、全員が黙り込み、その様子を見たガリュウは上機嫌で店の中を覗くと、ルノ達が座っている机の座席が空いている事に気付く。


「おい、何が満員だ!!あそこの席が空いてるじゃねえかっ!?」
「い、いや……あの席は先に座っている人が」
「知ったことか……おい、鰻を十人前用意しろ。ついでに酒も用意しとけっ!!」
「あ、ちょっと!?」


ガリュウは店員の言葉を無視してルノ達の席に向かい、厠に入っている客の席に座りこむ。流石に見ていられないのでルノが注意しようとした時、後方から3人の声が聞こえてきた。


「おいおい兄さん……厠まであんたの声が届いてきたぜ?」
「そこは俺達の席だ。退けやっ」
「はあっ……面倒ですね」
「ああん?なんじゃ我等……?」


席に座り込んだガリュウに対して3人の男が現れ、その全員が「帯刀」していた。ガリュウに話しかけた30代前半ぐらいの男性であり、、次に身長が一番高い男が注意し、最後に小柄で女性のように可愛らしい顔立ちの少年が溜息を吐く。この三人がルノ達と相席した客であり、ガリュウは相手も日本刀を装備している事に気付き、動揺した風に席から立ちあがる。


「な、何だお前ら……」
「なあ、兄さん……さっき、興味深い事を言っていたな?」
「青空組のガリュウとか言っていたな?だが、俺の記憶が正しければうちの組にそんな奴はいないぞ?」
「おっさん、調子に乗り過ぎたね」
「えっ!?」


3人の言葉にガリュウは慌てて後退り、態度を一変させて3人の容姿を伺う。そして何かに気付いたのか顔面蒼白となり、声を震わせながら3人を指さす。


「お、お前ら……い、いや、あんた達はまさか!?」
「俺らの事を知ってるのか?まあ、青空組を名乗るならそれぐらい知っていて当然だな」
「今日は非番なんでな。あんな目立つ制服を普段から着ていると思ったのか?」
「面倒だな……お二人に任せます」


ガリュウは目の前に立つ3人が本物の「青空組」の人間であると判断し、全身から冷や汗を流しながら体を震わせ、その尋常ではない怯えぶりにルノは疑問を抱くと、即座にガリュウはその場で土下座した。


「ゆ、許してください!!出来心だったんです!!」
「あん?なんだ、降参するのかよ……つまらねえな」
「まあ、落ち着けトシゾウ。ここは俺に任せな」


背の高い男が地面に伏せたガリュウを睨みつけるが、そんな彼を年長者の男性が引き留めた。
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