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冒険者編
姿の見えぬ敵
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身体に押しかかる風圧によってルノは地面に押し付けられ、助けに入ろうとする仲間達も迂闊には近づけない。それでもルノ自身の肉体には傷一つなく、魔法耐性が高すぎるので普通ならば肉体が潰されてもおかしくはないが、彼の肉体はびくともしない。それでも肉体は地面に埋まりつつあり、このままでは生き埋めにされてしまう。
「このぉっ!!」
だが、ルノは寝転がって両手を上空に構え、押し寄せる風圧を相殺するために魔力を集中させる。暴風の強化スキルを発動させ、彼は風圧の魔法を放つ。
「風圧!!」
「うわっ!?」
「ぬおおっ!?」
上空から襲い掛かる突風に対し、ルノは更に強力な竜巻を生み出す。予想以上に魔力を込めてしまい、強烈な竜巻が誕生し、上空から発生する突風を逆に吸収するように振り払う。しかし、土壁で囲まれた空間で竜巻を生み出したことで周囲の人間も巻き込まれてしまい、悲鳴が上がる。
「不味い……消えろっ!!」
このままでは竜巻が他の仲間を傷つけると判断し、ルノは魔法を焼失させようとする。しかし、どういう事なのか竜巻の規模が弱まるだけで完全には消し去ることが出来ず、風の中に緑色の光の球体が出現した。
「何だ!?」
「これは……風の精霊!?」
「精霊?」
リーリスの驚きの声が上がり、ルノは自分の周りに集まってきた緑色の光球に戸惑い、彼の身体に纏わりつく。何が起きているのかは不明だが、ルノは掌を差し出して光球に触れようとすると、擦り抜けてしまう事に気付く。
「そういう事ですか……ルノさん!!それは風の精霊です!!相手は精霊魔法の使い手、つまりは森人族です!!きっと近くに使い手がいるはずですよ!!」
『それはどうかな?』
「声……!?」
ルノ達の耳元に女性の声が響き渡り、間近で語り掛けられたように聞こえるが、実際には姿は見えない。リーリスは魔法の威力から考えても使い手が近くで待機していると考えたが、相手はそれを否定するように話しかける。
『無駄無駄、私を探しても見つからないわよ。リディアとガイアと違って私は自分で出向いて戦うような無駄な真似はしないんだから』
「貴様!!」
『うるさい蜥蜴ね。囮役も満足に出来ない役立たずはもう要らないわ』
「うぐぉっ!?」
声を聴いたガイアが激高するが、即座に上空から風圧が襲い掛かり、ガイアの身体を先ほどのルノのように地面に叩きつける。その光景を確認したルノは頭上からの攻撃を防ぐために氷塊の魔法を発動させようとするが、そんな彼の行動を先読みしたように笑い声が上がる。
『無駄よ。人族の魔法なんかで私の精霊魔法は防げないわ。まあ、精霊の一部が奪われたのは予想外だったけど、こんな場所ならいくらでも代わりはあるのよ』
「この声……そういう事ですか。声を風に乗せて私達に伝えているんですね!!」
『あら?風聞術に気付くなんて……中々の考察力ね。貴方の方がそっちの子よりも面倒そうね』
自分の魔法の正体に気付いたリーリスに声の主は感心するが、その間にもルノは自分の身体に纏わる精霊に視線を向け、心無しではあるが魔力が回復しているような感覚が広がる。無意識にルノは掌をガイアに構え、彼の肉体に襲い掛かる風圧に魔法を放つ。
「風圧!!」
「うおおっ!?」
ルノが魔法を発動した瞬間、精霊の数体が魔法の飲み込まれるように消え去り、直後にルノの掌から通常よりも強烈な風の塊が放たれ、ガイアの肉体を襲い掛かっていた風圧を消散させる。その威力にルノは驚き、彼は精霊の力を借りれば今まで以上に強力な魔法が扱える事に気付く。
『なっ……人間が精霊を従えたというの!?有り得ない!!』
「よく分からないけど……これなら!!」
自分の魔法が呆気なく掻き消された事に驚いた女性の声が響き、ルノは飛翔術を利用して上空に浮上する。そしてガイアの肉体に襲い掛かっていた風圧の内部に存在した精霊を確認し、両手を広げて精霊を受け入れるように引き寄せた。
「力を貸して!!」
『そんな馬鹿なっ!?』
周囲に漂っていた精霊はルノの言葉に従うように集まり、彼の身体に数十の光球が集まる。その光景に誰もが驚愕し、森人族ではないにも関わらずにルノは精霊を従え、魔法を発動させる。
「出来る限り森を傷つけないように……風圧!!」
『きゃああああああっ!?』
ルノが地上に向けて風圧の魔法を発動させた瞬間、凄まじい突風が地上に襲い掛かり、周囲に拡散する。まるでルノの意思に答えるように生み出された風は木々を潜り抜け、周囲一帯に拡散し、やがて安全な場所に隠れていた相手にも到達したのか女性の悲鳴が響き渡る。やがてルノの周囲に存在した精霊が消え去り、森の中に静寂が訪れた――
「このぉっ!!」
だが、ルノは寝転がって両手を上空に構え、押し寄せる風圧を相殺するために魔力を集中させる。暴風の強化スキルを発動させ、彼は風圧の魔法を放つ。
「風圧!!」
「うわっ!?」
「ぬおおっ!?」
上空から襲い掛かる突風に対し、ルノは更に強力な竜巻を生み出す。予想以上に魔力を込めてしまい、強烈な竜巻が誕生し、上空から発生する突風を逆に吸収するように振り払う。しかし、土壁で囲まれた空間で竜巻を生み出したことで周囲の人間も巻き込まれてしまい、悲鳴が上がる。
「不味い……消えろっ!!」
このままでは竜巻が他の仲間を傷つけると判断し、ルノは魔法を焼失させようとする。しかし、どういう事なのか竜巻の規模が弱まるだけで完全には消し去ることが出来ず、風の中に緑色の光の球体が出現した。
「何だ!?」
「これは……風の精霊!?」
「精霊?」
リーリスの驚きの声が上がり、ルノは自分の周りに集まってきた緑色の光球に戸惑い、彼の身体に纏わりつく。何が起きているのかは不明だが、ルノは掌を差し出して光球に触れようとすると、擦り抜けてしまう事に気付く。
「そういう事ですか……ルノさん!!それは風の精霊です!!相手は精霊魔法の使い手、つまりは森人族です!!きっと近くに使い手がいるはずですよ!!」
『それはどうかな?』
「声……!?」
ルノ達の耳元に女性の声が響き渡り、間近で語り掛けられたように聞こえるが、実際には姿は見えない。リーリスは魔法の威力から考えても使い手が近くで待機していると考えたが、相手はそれを否定するように話しかける。
『無駄無駄、私を探しても見つからないわよ。リディアとガイアと違って私は自分で出向いて戦うような無駄な真似はしないんだから』
「貴様!!」
『うるさい蜥蜴ね。囮役も満足に出来ない役立たずはもう要らないわ』
「うぐぉっ!?」
声を聴いたガイアが激高するが、即座に上空から風圧が襲い掛かり、ガイアの身体を先ほどのルノのように地面に叩きつける。その光景を確認したルノは頭上からの攻撃を防ぐために氷塊の魔法を発動させようとするが、そんな彼の行動を先読みしたように笑い声が上がる。
『無駄よ。人族の魔法なんかで私の精霊魔法は防げないわ。まあ、精霊の一部が奪われたのは予想外だったけど、こんな場所ならいくらでも代わりはあるのよ』
「この声……そういう事ですか。声を風に乗せて私達に伝えているんですね!!」
『あら?風聞術に気付くなんて……中々の考察力ね。貴方の方がそっちの子よりも面倒そうね』
自分の魔法の正体に気付いたリーリスに声の主は感心するが、その間にもルノは自分の身体に纏わる精霊に視線を向け、心無しではあるが魔力が回復しているような感覚が広がる。無意識にルノは掌をガイアに構え、彼の肉体に襲い掛かる風圧に魔法を放つ。
「風圧!!」
「うおおっ!?」
ルノが魔法を発動した瞬間、精霊の数体が魔法の飲み込まれるように消え去り、直後にルノの掌から通常よりも強烈な風の塊が放たれ、ガイアの肉体を襲い掛かっていた風圧を消散させる。その威力にルノは驚き、彼は精霊の力を借りれば今まで以上に強力な魔法が扱える事に気付く。
『なっ……人間が精霊を従えたというの!?有り得ない!!』
「よく分からないけど……これなら!!」
自分の魔法が呆気なく掻き消された事に驚いた女性の声が響き、ルノは飛翔術を利用して上空に浮上する。そしてガイアの肉体に襲い掛かっていた風圧の内部に存在した精霊を確認し、両手を広げて精霊を受け入れるように引き寄せた。
「力を貸して!!」
『そんな馬鹿なっ!?』
周囲に漂っていた精霊はルノの言葉に従うように集まり、彼の身体に数十の光球が集まる。その光景に誰もが驚愕し、森人族ではないにも関わらずにルノは精霊を従え、魔法を発動させる。
「出来る限り森を傷つけないように……風圧!!」
『きゃああああああっ!?』
ルノが地上に向けて風圧の魔法を発動させた瞬間、凄まじい突風が地上に襲い掛かり、周囲に拡散する。まるでルノの意思に答えるように生み出された風は木々を潜り抜け、周囲一帯に拡散し、やがて安全な場所に隠れていた相手にも到達したのか女性の悲鳴が響き渡る。やがてルノの周囲に存在した精霊が消え去り、森の中に静寂が訪れた――
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