最弱職の初級魔術師 初級魔法を極めたらいつの間にか「千の魔術師」と呼ばれていました。

カタナヅキ

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冒険者編

ガイア捕縛

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「ぐおおっ……き、貴様はっ!?」
「あ、まだ息がありますよ!!死ねえええッ!!」
「ちょ、待てっ!?」
「ブモォッ!!」


ガイアの背中に氷鎧を装着したルノが乗り込んで地面に押し倒し、その隙に動けないガイアにリーリスを背負ったミノが頭を踏みつけ、完全に拘束する。必死にガイアはもがこうとするが、魔人族の中でも力に秀でたミノタウロスと氷鎧を身に着けたルノを同時に押し返す事など出来るはずがなく、即座に他の忍者達も駆けつける。


「ヒカゲ様!!」
「足止め、ご苦労様……後は任せる」
「はっ!!」


ヒカゲの指示に忍者達は跪き、彼女は手品の様に副の裾からロープを取り出し、抑えつけられているガイアの拘束を行う。最初は抵抗しようとしたガイアだが、ルノとミノに抑えつけられ、時間は掛かったが手足と両足を括りつけられた状態で横たわる。


「これで大丈夫」
「ち、この程度の縄……ぬおおおっ!!」
「無駄、その縄を無理に引き裂こうとしてもゴムのように伸びるだけ。すぐに縮む」
「うおっ!?」


ガイアが力を込めて縄を引きはがそうとするが、ヒカゲの言葉通りにロープはゴムのように伸びてしまい、一定の距離まで伸びると即座に縮まって元の状態に戻る。何度かガイアは脱出を試みるが、力を籠めれば込めるほどにロープの反動も強まり、ならば噛みついて引き千切ろうとしたが、本物のゴムのように弾力性があって噛み切れない。


「ぐぐぐっ……!!な、縄如きにこの俺がっ!?」
「諦める。どんなに暴れても元に戻る」
「うおおっ!?」


必死に暴れても引き剥がすことも千切る事も出来ず、やがて体力の方が限界を迎えたのかガイアは荒い息を吐きながら黙って横になり、ルノ達を睨みつける。


「き、貴様らっ……この俺にこんな事を仕出かしてどうなるか分かっているのか!?」
「そんな恰好で威張られても怖くもなんともないですよね。ねえっ?」
『ね~』
「全然怖くない」
「ブモッ」
「くそぉおおおおっ……!!」


ルノ達の言葉にガイアは悔しそうに額を地面に叩きつけるが、両手と両足が拘束された状態では真面に動く事も出来ない。仮に動けたとしてもルノ達を相手に勝てる保証はなく、彼は観念したように身体を起き上げて座り込む。


「……殺せ、これ以上の恥をかかせるな」
「捕虜が何を偉そうに言ってるんですか」
「ブモォッ!!」
「あがっ!?」


ガイアの発言に呆れたリーリスがミノを利用して彼の頭部を叩き、わざわざ捕まえた魔王軍の捕虜を簡単に殺すわけにはいかない。未だに謎が多い魔王軍の情報を得る貴重な存在であり、彼女はルノに声を掛ける。


「ルノさん、この蜥蜴男を里まで運びましょう。魔王軍の情報を聞けるかもしれません」
『え?大丈夫なんですか?』
「問題ない」
「ぐっ……俺は何も知らんぞ!!」
「とりあえず、炎の吐息を吐き出さないように口元は封じましょうか」
『分かった。こんな感じかな……氷鎖』
「むぐぅっ!?」


日影の里にガイアを連れ出す事にルノは心配するが、ヒカゲは特に問題ないと判断し、吠えるガイアを氷鎧を身に着けたルノが肩に持ち上げる。移動の最中に逃げられないように念のためにヒカゲが用意したロープ以外にもルノが作り出した氷塊の魔法の鎖で口を塞ぐ。


「ぐううっ……!!」
「睨みつけても拘束は解きませんよ。貴方たちのせいでどれだけ世界中の国が被害を受けたと思っているんですか?洗いざらい話してもらいますからね」
「この森に訪れた理由も聞く」
『大人しくすればお肉あげるから暴れないでよ』
「ぐぐぐっ!!」


肉という言葉にガイアの抵抗が緩み、直後に腹の音が鳴り響く。この場所に訪れるまでにガイアは飲まず食わずで過ごしており、敵から施しを受けるのは恥ではあるが今は耐えるしかなかった。


(くそっ……!!全てあの女のせいだ!!)


ガイアが日影の里に続く森の中に入り込んだのは実は偶然であり、彼はある人物から逃げ続けていたら何時の間にかこの場所にまで移動し、森の巡回を行っていた忍者に見つかって交戦してしまう。彼としては森の中に生息する動物を食べるために訪れただけに過ぎないが、まさかここでルノ達と遭遇するとは予想外であり、一刻も早く逃げ出さなれば不味い。


(奴らの事などどうでもいいが、このままでは殺されてしまう……一刻も早く元の姿に戻らなければ!!)


自分の身体を持ち上げているルノにガイアは視線を向け、彼の血液を大量に得られれば自分は完全な「力」を取り戻せると確信し、ガイアはどのような手段で拘束を解いてルノを殺す方法を考える。しかし、現状では逆らおうにも空腹のせいで力が湧かず、何か口にしなければ餓死してしまいそうだった。


(この忌まわしい首輪さえなければ……それにしてもあの女、本当に諦めたのか?)


執拗に自分を追跡してきた魔王軍の幹部の存在を思い出し、ガイアは不安を抱く。どれだけ逃げようと聞こえてきた女の声が今はない事にガイアは疑問を抱く。




※リメイク作品「文字変換の勇者」も投稿しました。
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