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冒険者編
ガイア襲撃
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――日影の里を取り囲む森では既にガイアと無数の忍者が交戦していた。力任せに樹木をなぎ倒しながら暴れるガイアに対し、常日頃から森の地理を把握し、訓練を行っている忍者達は木々を飛び回り、ガイアに攻撃を繰り返す。
「投擲!!」
『はっ!!』
「ちぃっ!!またそれか!?」
年配の忍者が号令を下した瞬間、枝の上から複数人が球体状の道具を取り出し、ガイアに向けて投げ放つ。彼は煩わしそうに手で振り払おうとするが、衝撃を受けた瞬間に球体から黒煙が噴き出してガイアの身体を覆い尽くす。所謂「煙玉」であり、視覚を封じられたガイアは両腕で顔面を覆って駆け抜ける。
「ぬおおおっ!!」
煙玉の範囲外まで駆け抜けるため、障害物を全て薙ぎ払いながらガイアは煙の外に移動する。しかし、既に彼の抜けた先には別部隊の忍者が待ち構えており、飛び出してきたガイアに無数の苦無を放つ。
『喰らえっ!!』
「小癪なっ……ぐおっ!?」
ミスリル級の硬度を誇る武器であろうと傷一つ与えられない頑丈な鱗を持つガイアだが、投げ放たれた苦無には火属性の魔石が装着されており、更に魔石には爆弾の導火線まで取り付けられていたため、火種が魔石に衝突した瞬間に小規模の爆発を引き起こす。
「ぐううっ……に、人間があっ!!」
「弱っているぞ!!畳みかけろ!!」
「舐めるなぁあああっ!!」
爆発で怯んだガイアに対し、追撃を加えようとした忍者達だが、今度はガイアが口を開き、凄まじい咆哮を放つ。まるで竜種の怒号を想像させる叫び声が響き渡り、並の人間ならば気絶は免れない大音声に忍者達は悲鳴を上げる。
『きゃああああっ!?』
人よりも聴覚が優れている忍者の職業の日影部隊はガイアの咆哮を間近で受けた事で意識が混濁し、木々の上から落ちてしまう。その光景に予想外の効果にガイアは戸惑うが、倒れこんだ忍者達に視線を向け、鼻息を鳴らす。
「ふんっ!!人間如きが舐めおって……ち、こいつらの肉は食えたものじゃないからな」
ガイアは人肉は好まず、以前に襲ってきた盗賊を食べて腹を壊したことを思い出し、仕方なく生き血だけでも味わおうと倒れこんだ忍者達に近づく。しかし、彼が3歩も移動しない内に気絶したはずの忍者達が起き上がり、身に着けていた苦無を放つ。
「かかった!!今だ!!」
「喰らえっ!!」
「何ぃっ!?」
気絶していた振りをした忍者達はガイアに向けて苦無を放ち、慌ててガイアは両腕を交差して攻撃に備えるが、どういう事なのか全ての苦無は彼の身体を掠めもせずに通過し、周囲の木々に衝突する。最初は狙いを外したのかと考えたが、すぐにガイアはその考えが間違いである事に気付く。
「何処を狙って……ぬあっ!?」
『秘儀!!蜘蛛糸縛り!!』
投擲された苦無にはワイヤーのように細く黒い糸が取り付けられており、ガイアの肉体に巻き付いていた。何時の間にか苦無同士の糸が絡まっており、まるで蜘蛛の巣にかかった虫のように縛り付けられたガイアは力尽くで引きはがそうとするが、苦無は樹皮に深く突き刺さっており、粘り気が強い糸も引き千切れそうにはなかった。
「ぐううっ……珍妙な道具ばかり使いおって!!」
「黙れ!!さあ、貴様の正体を吐いてもらうぞ!!」
「ふんっ……この程度の拘束で本当に俺が捕まったかと思ったか!?アガァッ……!!」
「何っ!?」
ガイアは大きく口を開き、顎が外れかねない程に口内を晒すと、火竜のように火炎の吐息を解き放とうとする。しかし、そんな彼の元に近づく影があり、ガイアの腹部に強烈な衝撃が走る。
「発徑」
「ぐほぉっ!?」
「ヒカゲ様!?」
『頭領!?』
唐突に現れたヒカゲが隙だらけのガイアの腹部に掌底が叩き込み、身体の内部に衝撃を与え、強制的に口を閉じさせる。格闘家の戦技である発徑は打撃の衝撃を内部に伝える戦技であり、幾ら硬い鱗に覆われていようと身体の内部に直接衝撃を与えられればガイアも無事では住まず、吐息を中断してしまう。
「き、貴様……ぐふぅっ!?」
「連撃」
ヒカゲを睨みつけようとしたガイアの顎に続けて掌底が叩き込まれ、舌を噛んでしまう。ヒカゲはその様子を確認しながらガイアの身体から離れると、背後からリーリスの声が響き渡る。
「退いて下さい!!暴走ミノタウロスが通りますよ!!」
「ブモォオオオッ!!」
「なっ……ふげぇっ!?」
樹木の隙間を器用に移動しながら興奮した様子のミノタウロスが現れ、背中にリーリスを抱えた状態で右足を繰り出し、まるで戦隊ヒーローのような跳び蹴りをガイアの腹部に放ち、拘束していた糸が危うく引き千切れる所だった。
「ぐええっ……き、貴様らぁっ……!?」
「お、まだ生きてますか。しぶといですね……先生、お願いします!!」
『うん、分かった』
ガイアがまだ気を失っていない事に気付いたリーリスが上空に声を掛けると、上空から氷鎧を身に着けたルノが落下し、強烈な一撃を叩きこむ。
『てりゃっ!!』
「うがぁああああああああっ!?」
氷鎧を纏ったルノがガイアの頭部に両足を叩きこみ、そのまま地面に叩きつける。その際にガイアを拘束していた糸が引き千切れ、ガイアの肉体が地中深くに埋まった――
「投擲!!」
『はっ!!』
「ちぃっ!!またそれか!?」
年配の忍者が号令を下した瞬間、枝の上から複数人が球体状の道具を取り出し、ガイアに向けて投げ放つ。彼は煩わしそうに手で振り払おうとするが、衝撃を受けた瞬間に球体から黒煙が噴き出してガイアの身体を覆い尽くす。所謂「煙玉」であり、視覚を封じられたガイアは両腕で顔面を覆って駆け抜ける。
「ぬおおおっ!!」
煙玉の範囲外まで駆け抜けるため、障害物を全て薙ぎ払いながらガイアは煙の外に移動する。しかし、既に彼の抜けた先には別部隊の忍者が待ち構えており、飛び出してきたガイアに無数の苦無を放つ。
『喰らえっ!!』
「小癪なっ……ぐおっ!?」
ミスリル級の硬度を誇る武器であろうと傷一つ与えられない頑丈な鱗を持つガイアだが、投げ放たれた苦無には火属性の魔石が装着されており、更に魔石には爆弾の導火線まで取り付けられていたため、火種が魔石に衝突した瞬間に小規模の爆発を引き起こす。
「ぐううっ……に、人間があっ!!」
「弱っているぞ!!畳みかけろ!!」
「舐めるなぁあああっ!!」
爆発で怯んだガイアに対し、追撃を加えようとした忍者達だが、今度はガイアが口を開き、凄まじい咆哮を放つ。まるで竜種の怒号を想像させる叫び声が響き渡り、並の人間ならば気絶は免れない大音声に忍者達は悲鳴を上げる。
『きゃああああっ!?』
人よりも聴覚が優れている忍者の職業の日影部隊はガイアの咆哮を間近で受けた事で意識が混濁し、木々の上から落ちてしまう。その光景に予想外の効果にガイアは戸惑うが、倒れこんだ忍者達に視線を向け、鼻息を鳴らす。
「ふんっ!!人間如きが舐めおって……ち、こいつらの肉は食えたものじゃないからな」
ガイアは人肉は好まず、以前に襲ってきた盗賊を食べて腹を壊したことを思い出し、仕方なく生き血だけでも味わおうと倒れこんだ忍者達に近づく。しかし、彼が3歩も移動しない内に気絶したはずの忍者達が起き上がり、身に着けていた苦無を放つ。
「かかった!!今だ!!」
「喰らえっ!!」
「何ぃっ!?」
気絶していた振りをした忍者達はガイアに向けて苦無を放ち、慌ててガイアは両腕を交差して攻撃に備えるが、どういう事なのか全ての苦無は彼の身体を掠めもせずに通過し、周囲の木々に衝突する。最初は狙いを外したのかと考えたが、すぐにガイアはその考えが間違いである事に気付く。
「何処を狙って……ぬあっ!?」
『秘儀!!蜘蛛糸縛り!!』
投擲された苦無にはワイヤーのように細く黒い糸が取り付けられており、ガイアの肉体に巻き付いていた。何時の間にか苦無同士の糸が絡まっており、まるで蜘蛛の巣にかかった虫のように縛り付けられたガイアは力尽くで引きはがそうとするが、苦無は樹皮に深く突き刺さっており、粘り気が強い糸も引き千切れそうにはなかった。
「ぐううっ……珍妙な道具ばかり使いおって!!」
「黙れ!!さあ、貴様の正体を吐いてもらうぞ!!」
「ふんっ……この程度の拘束で本当に俺が捕まったかと思ったか!?アガァッ……!!」
「何っ!?」
ガイアは大きく口を開き、顎が外れかねない程に口内を晒すと、火竜のように火炎の吐息を解き放とうとする。しかし、そんな彼の元に近づく影があり、ガイアの腹部に強烈な衝撃が走る。
「発徑」
「ぐほぉっ!?」
「ヒカゲ様!?」
『頭領!?』
唐突に現れたヒカゲが隙だらけのガイアの腹部に掌底が叩き込み、身体の内部に衝撃を与え、強制的に口を閉じさせる。格闘家の戦技である発徑は打撃の衝撃を内部に伝える戦技であり、幾ら硬い鱗に覆われていようと身体の内部に直接衝撃を与えられればガイアも無事では住まず、吐息を中断してしまう。
「き、貴様……ぐふぅっ!?」
「連撃」
ヒカゲを睨みつけようとしたガイアの顎に続けて掌底が叩き込まれ、舌を噛んでしまう。ヒカゲはその様子を確認しながらガイアの身体から離れると、背後からリーリスの声が響き渡る。
「退いて下さい!!暴走ミノタウロスが通りますよ!!」
「ブモォオオオッ!!」
「なっ……ふげぇっ!?」
樹木の隙間を器用に移動しながら興奮した様子のミノタウロスが現れ、背中にリーリスを抱えた状態で右足を繰り出し、まるで戦隊ヒーローのような跳び蹴りをガイアの腹部に放ち、拘束していた糸が危うく引き千切れる所だった。
「ぐええっ……き、貴様らぁっ……!?」
「お、まだ生きてますか。しぶといですね……先生、お願いします!!」
『うん、分かった』
ガイアがまだ気を失っていない事に気付いたリーリスが上空に声を掛けると、上空から氷鎧を身に着けたルノが落下し、強烈な一撃を叩きこむ。
『てりゃっ!!』
「うがぁああああああああっ!?」
氷鎧を纏ったルノがガイアの頭部に両足を叩きこみ、そのまま地面に叩きつける。その際にガイアを拘束していた糸が引き千切れ、ガイアの肉体が地中深くに埋まった――
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