72 / 657
冒険者編
日影の隠れ里
しおりを挟む
「この人たちは私の客……失礼な真似は許さない」
『はっ!!』
「……ヒカゲさんは偉い人なの?」
「さあ……この人に事に関しては私もあんまり知らないんですよね。まあ、女性同士ですから他の四天王の中でもよく話す方ですが」
「そんなに大したものじゃない」
ヒカゲの指示に忍者達が森の中に姿を消し、彼女の案内でルノ達は森の中を移動する。日の国の忍者は「日影」と呼ばれるらしく、彼等は日の国の近くに存在する森の中に里を作りだし、暮らしているという。
「ここからは徒歩で移動する。馬車はこの娘達に任せて先に行く」
『はっ!!』
馬車からルノ達が降りると、尾行していたのか周囲の木陰から女性の忍者が再び現れ、馬車を彼女達に預ける。ルウの事も彼女に任せ、ルノ達はイチ、ニイ、サンとミノを連れて日影の先導で森の中を突き進む。
「あの、この人たちは何なんですか?くの一?」
「くの一の事を知っている?珍しい……でも、この娘たちは只の見習い、森の中の警備を任されている新米」
「新米……」
「全然気配とか感じませんでしたけど、あれで新米なんですか?」
「全員が新米でもない。付き添いの指導者もいる」
森の巡回は主に新米の忍者が行わされるらしく、彼女達の殆どは未だに訓練を受けている半人前の忍者らしい。それでも普通の人間よりも高レベルで感知系の能力を持つリーリスやルノさえも気づかず、嗅覚が鋭いルウが気付かなければあのまま森の中を進んでいただろう。
「ヒカゲさんはこの日の国の出身だったんですね。もしかしてさっきの人たちの態度を見ると、実はお偉いさんだったりするんですか?」
「そうでもない。私の家は普通……だけど、忍者の世界は実力が重視される。私は日の国の殿様の側近として仕えていたから、それなりに有名。今日は指導者として仕事を引き受けていた」
「殿様?」
「日の国の85代目のダイチ様の事ですね。私も名前ぐらいしか聞いた事がないですけど」
「ダイチ……」
「客人、いくら異国の方とは言え、我等が殿を呼び捨てにするのはお辞め頂きたい」
ルノの呟きに即座に周囲の女性忍者が敵意を剥き出しにするが、そんな彼女達にヒカゲは叱りつける。
「貴方達も態度を改めた方が良い……この人は帝国の英雄、初級魔術師のルノ」
「ルノ……!?あの噂の……」
「たった一人で王城に乗り込んで四天王を打ち倒したという……!?」
「こ、これは失礼しました!!」
「あ、いえ……こちらもすいません」
ヒカゲの言葉に慌てて彼女達は平伏し、この地方でもルノの名前は知れ渡っているらしく、帝国の重要人物である彼の気分を損ねる訳にはいかない。そして話している間にも目的地である隠れ里に到着した。
「ここが日影の隠れ里……ゆっくりしていくといい」
「おお~」
「日本のど田舎ですね」
リーリスの言葉通り、ルノの視界には地球の日本の田舎を想像させる光景が広がる。最初に視界に入ったのは田んぼであり、藁の屋根の建物が存在した。住んでいる人間も普通の衣服ではなく着物を纏っており、中には人間以外の種族もちらほらと見える。
田舎というよりは過去の日本にタイムスリップしたような光景が広がり、ルノとリーリスは時代が違うとはいえ、元の世界に戻ってきたかのような感覚を味わいながら里の中に入る。住民はルウやミノを見ても特に驚く様子はなく、子供の何人かが興味を抱いたように近づいてきた。
「ヒカゲ様、お帰り~!!」
「あれ~?その人達は誰?」
「ただいま……この人達は私のお客さん」
「わあ~!!おっきい犬さんだぁっ!!」
「ウォンッ」
「クゥ~ンッ……」
子供達がルウやイチ達の前に集まり、嬉しそうに彼等の身体に抱き着く。帝国の民は大人でもルウ達を見ると恐怖するのだが、この里の子供達は臆せずに魔獣であるルウ達に懐く。その光景にルノはヒカゲに振り返ると、彼女は何事もないように告げる。
「この里にも色々な魔獣を飼育している。この里の人間は子供の頃から魔獣と触れ合って生きている」
「なるほど、だから怖がらないんですね」
「ペロペロ……」
「あはは、くすぐった~い」
ルウ達もルノの教育のお陰で人間を無暗に襲わないように調教されており、群がる子供達を嘗め回す。ミノに対しても興味を抱いた男の子が彼を見上げ、魔人族でありながらその筋骨隆々とした肉体に感動したように尊敬の眼差しを向けていた。
「おおっ!!筋肉ムキムキだ……格好いい!!」
「ブモォッ!!」
意外とコミュニケーション能力が高いのか、男の子に対してミノは両腕の力瘤を見せつけ、ボディービルダーのようにポーズを取る。その光景を後目にルノは自分にも視線を向けている少女が居る事に気付き、顔を向けると彼女は小さな袋を差し出す。
「あげる」
「え、あ、ありがとう……」
「外の人には優しくしろとお母さんに言われた……私もその子達と遊んでいい?」
「いいよ」
少女から渡された小袋をルノは受け取り、中身はドングリを想像させる木の実が入っていた。
『はっ!!』
「……ヒカゲさんは偉い人なの?」
「さあ……この人に事に関しては私もあんまり知らないんですよね。まあ、女性同士ですから他の四天王の中でもよく話す方ですが」
「そんなに大したものじゃない」
ヒカゲの指示に忍者達が森の中に姿を消し、彼女の案内でルノ達は森の中を移動する。日の国の忍者は「日影」と呼ばれるらしく、彼等は日の国の近くに存在する森の中に里を作りだし、暮らしているという。
「ここからは徒歩で移動する。馬車はこの娘達に任せて先に行く」
『はっ!!』
馬車からルノ達が降りると、尾行していたのか周囲の木陰から女性の忍者が再び現れ、馬車を彼女達に預ける。ルウの事も彼女に任せ、ルノ達はイチ、ニイ、サンとミノを連れて日影の先導で森の中を突き進む。
「あの、この人たちは何なんですか?くの一?」
「くの一の事を知っている?珍しい……でも、この娘たちは只の見習い、森の中の警備を任されている新米」
「新米……」
「全然気配とか感じませんでしたけど、あれで新米なんですか?」
「全員が新米でもない。付き添いの指導者もいる」
森の巡回は主に新米の忍者が行わされるらしく、彼女達の殆どは未だに訓練を受けている半人前の忍者らしい。それでも普通の人間よりも高レベルで感知系の能力を持つリーリスやルノさえも気づかず、嗅覚が鋭いルウが気付かなければあのまま森の中を進んでいただろう。
「ヒカゲさんはこの日の国の出身だったんですね。もしかしてさっきの人たちの態度を見ると、実はお偉いさんだったりするんですか?」
「そうでもない。私の家は普通……だけど、忍者の世界は実力が重視される。私は日の国の殿様の側近として仕えていたから、それなりに有名。今日は指導者として仕事を引き受けていた」
「殿様?」
「日の国の85代目のダイチ様の事ですね。私も名前ぐらいしか聞いた事がないですけど」
「ダイチ……」
「客人、いくら異国の方とは言え、我等が殿を呼び捨てにするのはお辞め頂きたい」
ルノの呟きに即座に周囲の女性忍者が敵意を剥き出しにするが、そんな彼女達にヒカゲは叱りつける。
「貴方達も態度を改めた方が良い……この人は帝国の英雄、初級魔術師のルノ」
「ルノ……!?あの噂の……」
「たった一人で王城に乗り込んで四天王を打ち倒したという……!?」
「こ、これは失礼しました!!」
「あ、いえ……こちらもすいません」
ヒカゲの言葉に慌てて彼女達は平伏し、この地方でもルノの名前は知れ渡っているらしく、帝国の重要人物である彼の気分を損ねる訳にはいかない。そして話している間にも目的地である隠れ里に到着した。
「ここが日影の隠れ里……ゆっくりしていくといい」
「おお~」
「日本のど田舎ですね」
リーリスの言葉通り、ルノの視界には地球の日本の田舎を想像させる光景が広がる。最初に視界に入ったのは田んぼであり、藁の屋根の建物が存在した。住んでいる人間も普通の衣服ではなく着物を纏っており、中には人間以外の種族もちらほらと見える。
田舎というよりは過去の日本にタイムスリップしたような光景が広がり、ルノとリーリスは時代が違うとはいえ、元の世界に戻ってきたかのような感覚を味わいながら里の中に入る。住民はルウやミノを見ても特に驚く様子はなく、子供の何人かが興味を抱いたように近づいてきた。
「ヒカゲ様、お帰り~!!」
「あれ~?その人達は誰?」
「ただいま……この人達は私のお客さん」
「わあ~!!おっきい犬さんだぁっ!!」
「ウォンッ」
「クゥ~ンッ……」
子供達がルウやイチ達の前に集まり、嬉しそうに彼等の身体に抱き着く。帝国の民は大人でもルウ達を見ると恐怖するのだが、この里の子供達は臆せずに魔獣であるルウ達に懐く。その光景にルノはヒカゲに振り返ると、彼女は何事もないように告げる。
「この里にも色々な魔獣を飼育している。この里の人間は子供の頃から魔獣と触れ合って生きている」
「なるほど、だから怖がらないんですね」
「ペロペロ……」
「あはは、くすぐった~い」
ルウ達もルノの教育のお陰で人間を無暗に襲わないように調教されており、群がる子供達を嘗め回す。ミノに対しても興味を抱いた男の子が彼を見上げ、魔人族でありながらその筋骨隆々とした肉体に感動したように尊敬の眼差しを向けていた。
「おおっ!!筋肉ムキムキだ……格好いい!!」
「ブモォッ!!」
意外とコミュニケーション能力が高いのか、男の子に対してミノは両腕の力瘤を見せつけ、ボディービルダーのようにポーズを取る。その光景を後目にルノは自分にも視線を向けている少女が居る事に気付き、顔を向けると彼女は小さな袋を差し出す。
「あげる」
「え、あ、ありがとう……」
「外の人には優しくしろとお母さんに言われた……私もその子達と遊んでいい?」
「いいよ」
少女から渡された小袋をルノは受け取り、中身はドングリを想像させる木の実が入っていた。
0
お気に入りに追加
11,318
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
食うために軍人になりました。
KBT
ファンタジー
ヴァランタイン帝国の片田舎ダウスター領に最下階位の平民の次男として生まれたリクト。
しかし、両親は悩んだ。次男であるリクトには成人しても継ぐ土地がない。
このままではこの子の未来は暗いものになってしまうだろう。
そう思った両親は幼少の頃よりリクトにを鍛え上げる事にした。
父は家の蔵にあったボロボロの指南書を元に剣術を、母は露店に売っていた怪しげな魔導書を元に魔法を教えた。
それから10年の時が経ち、リクトは成人となる15歳を迎えた。
両親の危惧した通り、継ぐ土地のないリクトは食い扶持を稼ぐために、地元の領軍に入隊試験を受けると、両親譲りの剣術と魔法のおかげで最下階級の二等兵として無事に入隊する事ができた。
軍と言っても、のどかな田舎の軍。
リクトは退役するまで地元でのんびり過ごそうと考えていたが、入隊2日目の朝に隣領との戦争が勃発してしまう。
おまけに上官から剣の腕を妬まれて、単独任務を任されてしまった。
その任務の最中、リクトは平民に対する貴族の専横を目の当たりにする。
生まれながらの体制に甘える貴族社会に嫌気が差したリクトは軍人として出世して貴族の専横に対抗する力を得ようと立身出世の道を歩むのだった。
剣と魔法のファンタジー世界で軍人という異色作品をお楽しみください。
夫の色のドレスを着るのをやめた結果、夫が我慢をやめてしまいました
氷雨そら
恋愛
夫の色のドレスは私には似合わない。
ある夜会、夫と一緒にいたのは夫の愛人だという噂が流れている令嬢だった。彼女は夫の瞳の色のドレスを私とは違い完璧に着こなしていた。噂が事実なのだと確信した私は、もう夫の色のドレスは着ないことに決めた。
小説家になろう様にも掲載中です
勇者召喚に巻き込まれ、異世界転移・貰えたスキルも鑑定だけ・・・・だけど、何かあるはず!
よっしぃ
ファンタジー
9月11日、12日、ファンタジー部門2位達成中です!
僕はもうすぐ25歳になる常山 順平 24歳。
つねやま じゅんぺいと読む。
何処にでもいる普通のサラリーマン。
仕事帰りの電車で、吊革に捕まりうつらうつらしていると・・・・
突然気分が悪くなり、倒れそうになる。
周りを見ると、周りの人々もどんどん倒れている。明らかな異常事態。
何が起こったか分からないまま、気を失う。
気が付けば電車ではなく、どこかの建物。
周りにも人が倒れている。
僕と同じようなリーマンから、数人の女子高生や男子学生、仕事帰りの若い女性や、定年近いおっさんとか。
気が付けば誰かがしゃべってる。
どうやらよくある勇者召喚とやらが行われ、たまたま僕は異世界転移に巻き込まれたようだ。
そして・・・・帰るには、魔王を倒してもらう必要がある・・・・と。
想定外の人数がやって来たらしく、渡すギフト・・・・スキルらしいけど、それも数が限られていて、勇者として召喚した人以外、つまり巻き込まれて転移したその他大勢は、1人1つのギフト?スキルを。あとは支度金と装備一式を渡されるらしい。
どうしても無理な人は、戻ってきたら面倒を見ると。
一方的だが、日本に戻るには、勇者が魔王を倒すしかなく、それを待つのもよし、自ら勇者に協力するもよし・・・・
ですが、ここで問題が。
スキルやギフトにはそれぞれランク、格、強さがバラバラで・・・・
より良いスキルは早い者勝ち。
我も我もと群がる人々。
そんな中突き飛ばされて倒れる1人の女性が。
僕はその女性を助け・・・同じように突き飛ばされ、またもや気を失う。
気が付けば2人だけになっていて・・・・
スキルも2つしか残っていない。
一つは鑑定。
もう一つは家事全般。
両方とも微妙だ・・・・
彼女の名は才村 友郁
さいむら ゆか。 23歳。
今年社会人になりたて。
取り残された2人が、すったもんだで生き残り、最終的には成り上がるお話。
母親に家を追い出されたので、勝手に生きる!!(泣きついて来ても、助けてやらない)
いくみ
ファンタジー
実母に家を追い出された。
全く親父の奴!勝手に消えやがって!
親父が帰ってこなくなったから、実母が再婚したが……。その再婚相手は働きもせずに好き勝手する男だった。
俺は消えた親父から母と頼むと、言われて。
母を守ったつもりだったが……出て行けと言われた……。
なんだこれ!俺よりもその男とできた子供の味方なんだな?
なら、出ていくよ!
俺が居なくても食って行けるなら勝手にしろよ!
これは、のんびり気ままに冒険をする男の話です。
カクヨム様にて先行掲載中です。
不定期更新です。
うっかり『野良犬』を手懐けてしまった底辺男の逆転人生
野良 乃人
ファンタジー
辺境の田舎街に住むエリオは落ちこぼれの底辺冒険者。
普段から無能だの底辺だのと馬鹿にされ、薬草拾いと揶揄されている。
そんなエリオだが、ふとした事がきっかけで『野良犬』を手懐けてしまう。
そこから始まる底辺落ちこぼれエリオの成り上がりストーリー。
そしてこの世界に存在する宝玉がエリオに力を与えてくれる。
うっかり野良犬を手懐けた底辺男。冒険者という枠を超え乱世での逆転人生が始まります。
いずれは王となるのも夢ではないかも!?
◇世界観的に命の価値は軽いです◇
カクヨムでも同タイトルで掲載しています。
ママと中学生の僕
キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。
断腸の思いで王家に差し出した孫娘が婚約破棄されて帰ってきた
兎屋亀吉
恋愛
ある日王家主催のパーティに行くといって出かけた孫娘のエリカが泣きながら帰ってきた。買ったばかりのドレスは真っ赤なワインで汚され、左頬は腫れていた。話を聞くと王子に婚約を破棄され、取り巻きたちに酷いことをされたという。許せん。戦じゃ。この命燃え尽きようとも、必ずや王家を滅ぼしてみせようぞ。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。
このユーザをミュートしますか?
※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。