最弱職の初級魔術師 初級魔法を極めたらいつの間にか「千の魔術師」と呼ばれていました。

カタナヅキ

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冒険者編

最強なのに成長止まらず

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――粉々に砕け散った土竜の残骸にルノ達は集まり、原型すら残さずに破片と化した亡骸にリーリスは呆れた表情を浮かべ、彼女は落ちていた水属性の魔水晶を拾い上げてルノに振り替える。


「いや、何だったんですか今の魔法?あんなのチートじゃないですか」
「7つの属性を組み合わせて作り出した新しい攻撃方法なんだけど……威力が大きすぎるから使い道が難しいんだよね」
「たまげたな……あの巨体をぶっ飛ばしたのか」


ガジは地面に落ちている魔水晶の欠片を拾い上げ、砕けてしまったがそれでも素材としては十分らしく、彼は袋詰めしてルノ達に礼を告げる。これで何はともあれ当初の目的を果たしたことになり、依頼は達成された事は間違いない。


「いや、助かったぜ!!俺一人じゃどうしようも出来なかったからな。それにしても何で帝国領土で土竜なんて化物が住んでいるんだ?」
「そこは私も気になりますね。しかも普通の個体には存在しない能力も扱ってましたし、この土地に何か秘密があるのか、あるいは別の要因があるのかも知れません」
「別の?」
「……例えば何者かが人為的に土竜を連れ出して実験を行っていたとか」


リーリスによると通常の魔物は経験石以外の魔石や魔水晶を体内に取り込む事は出来ず、しかも取り込んだ魔水晶の力を吸収したかのように土竜は通常種ならば有り得ない「氷の吐息」を放った事が気にかかるという。あくまでも彼女の予測に過ぎないが、もしかしたらルノが倒した土竜は人為的に作り出された生物の可能性も存在した。


「人為的にあんな化物を生み出せるの?」
「可能性はなくはないですよ。普通の人間には無理かもしれませんけど、もしかしたら私達のように特別な力を授かった人間の仕業の可能性もあります」
「……転生者か転移した人間の仕業?」


予想外の言葉にルノは驚くが、リーリスによればルノや自分のように元は地球人である人間がこの世界に訪れると特別な力を授かるらしい。リーリスの場合は「天使アイリス」から「二重職」を授かり、ルノの場合は「成長」という異能を所持している。それならば魔物に力を与えたり、あるいは特殊な進化を施す能力を持つ転生者や転移した人間がいたとしておかしくはない。


「ルノさんは神器の存在を知っていますよね?魔物を人間に変化させる薬の事を覚えてます?」
「デキン大臣が使ってた奴か……」
「あの薬も元々は過去に召喚された人間が作り出した道具です。それらは「神器」と呼ばれています。神器の正確な数や種類は把握されていませんので、その中に魔物に大きな影響与える道具があってもおかしくはないです」
「じゃあ、今回の件もその神器が使われている可能性もあるの?」
「少なくとも自然でこんな生物が誕生したとは思えません。間違いなく、異世界人が何らかの形で関わっているでしょうね」
「さっきから何の話してるんだ?ほら、報酬金だ。受け取ってくれ」


二人の会話に疑問を抱きながらもガジが近寄り、ルノに大量の金貨が詰まった小袋を差し出す。金額は依頼書に記されていた数だけ存在し、更にガジは回収した魔水晶を渡す。


「ついでにこれも受け取ってくれ。俺は必要な分だけ回収できればいいからな」
「お、ありがとうございます」
「何でリーリスが受け取ってるの」
「別にいいじゃないですか。きっとルノさんにも役立つ道具を作ってあげますから」
「クゥンッ」
「ブモォッ……」


何故か依頼を引き受けていないはずのリーリスが魔水晶を受け取り、彼女は嬉しそうに袋に詰まった魔水晶の破片に視線を向け、不意に彼女は破片の中から奇妙な形状の魔水晶を発見する。


「……これは何ですか?魔水晶、とは違いますよね」
「ああ、そいつは最初からそんな形をしていたんだ。直接触ると冷えるから気を付けろよ」


リーリスが取り出したのは球体型の青色の水晶であり、通常の魔水晶よりも濁っているというか色が濃く、触れているだけで威圧感を感じる。リーリスは不思議そうに「鑑定」の能力を発動させて調べてみると、非常に驚いた表情を浮かべる。


「こ、これは!?」
「どうしたの?」
「……どうやらこれは只の魔水晶ではないようです。でも、説明は後でしますから急いでここから離れましょう」
「え、うん……」


いつもの彼女らしからぬ真剣な表情を浮かべ、ルノは不思議に思いながらも馬車に乗り込み、ガジと別れを告げる。彼は去り際にルノと握手を交わし、自分がしばらくの間はこの近くの街で滞在する予定だと告げた。


「ありがとよ坊主!!もしもいい武器や防具が欲しくなったら俺に声を掛けな、金額次第だが最高の装備品を整えてやるぜ!!」
「あ、はい」


基本的に現在のルノは装備品の類はドルトンの店で購入した「退魔のローブ」ぐらいしか身に着けておらず、武器や防具が欲しければ氷塊の魔法で作り出すことが多い。なのでガジに頼る事はない可能性が大きいが、それでもS級冒険者で腕利きの鍛冶職人と知り合えた事は幸運であり、彼と別れを告げて次の街に向かう。
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