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冒険者編

反発衝撃

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「うおおおおっ!!」
『オアアアッ!?』
「ちょ、危ないですから!?」
「す、すげぇっ……!?」
「ブモォッ!?」
「ウォンッ!?」


土竜の身体を掴みながらルノは巨体を軽々と振り回し、ハンマー投げの要領で空中に投げ飛ばす。土竜は悲鳴を上げながら地面に落下するが、墜落する前にルノは両手に装着した氷の腕鉄甲を組み合わせ、形状を変化させて巨大な竜を生み出す。


「喰らえっ!!」


竜の頭を想像させる氷像を作り出し、土竜に向けて撃ち込む。即興で作り出した技だが、名付けるとしたら「氷顎」と呼ぶ事を決めながらルノは氷塊の牙を土竜の首筋に食い込ませる。


『オアアッ……!?』
「このまま噛み砕いて……!?」
「あれ、なんか光ってません!?」


竜の頭部に変形した氷塊が土竜の肉体に食い込むが、その途中で土竜の背中の水属性の魔水晶が光り輝き、まるで氷塊の魔力を吸い上げるように巨大かする。やがて土竜は地面に着地すると、咆哮を上げて首筋に噛みついた氷顎を粉砕し、ルノの元に目掛けて突っ込む。


『ウオオオオッ!!』
「土塊!!」


小柄な分だけ動作も素早いのか、土竜の移動速度は先日に遭遇した土竜の比ではなく、ルノは咄嗟に地面に掌を押し当てて土壁を作り上げる。彼の魔力で土砂が練り固められ、まるでコンクリートを想像させる巨大な壁が出現するが、土竜は驚くべきことに身体をアルマジロのように回転させて突進してきた。


『オオオオオオッ……!!』
「何だっ!?」
「はわわっ!?」
「うおおっ!?」


ルノが作り出した土壁を破壊し、土竜は背中の魔水晶を棘代わりに地面に突き刺しながら移動し、地面に次々と風穴を築きながら回避したルノ達を通り過ぎる。しばらくの間は転がっていたが、やがて方向転換のために立ち止まり、狙いを定めて跳躍する。


『オアアアアッ!!』
「黒炎槍!!」


空中から接近してきた土竜に対し、ルノは黒炎の火炎槍を放ち、激しい爆発が生じる。彼の扱う魔法の中でも最高火力の魔法であり、流石の土竜も身体の一部を崩しながら地面に倒れこむ。その際に激しい振動が走り、ルノは体勢を整えるためにリーリスとガジの元に向かう。


「二人とも掴まって!!」
「ちょ、何する気ですか!?」
「うおっ!?」


二人の身体の腰を掴み、ルノは勢いよく跳躍すると風圧の魔法を利用して足の裏から強風を生み出して飛翔する。氷塊の魔法で足場を作り出して移動するよりも早く、皆に内緒に作り出していた「飛翔術」という新しい風圧の応用魔法である。そのままルノは離れた位置に待機していた馬車に目掛けて二人を放り込む。


「二人を頼んだよ!!」
「え、ちょっ……きゃああっ!?」
「おわぁっ!?」
「ブモォオオッ!!」
「ウォンッ!!」


放り出された二人をミノタウロスとルウが地上で受け止め、それを確認したルノは飛翔術を利用しながら地上に向けて滑空し、土竜に向けて突っ込む。


『ウオオオオッ!!』
「来い!!」


既に土竜は身体を丸めて背中の突起を利用しながら転がり込み、巨体を生かしてルノを押しつぶそうとする。しかし、迫りくる土竜の肉体に対してルノは掌を構え、意識を集中させる。



――王国との会談を終えてから数日後、ルノは土竜を倒したことでレベルが上昇し、その力を試すために白原で要塞の建設の材料の確保に訪れた鉱山に赴く。こちらは既に氷竜が暴れまわった事で荒れ果てていたが、生物が生息していないという点では都合が良く、ルノは成長した自分の力を把握するために色々な魔法を試す。



その際にルノは複数の属性の魔法を同時に発動させ、組み合わせた場合はどうなるのかと考えた彼は7つの初級魔法を全て使用して実行してしまう。その結果、鉱山には巨大なクレーターが生じるほどの威力の合成魔術が誕生してしまい、危うくルノ本人も大怪我を負うところだった。

ルノは偶然にも自分が作り出した魔法の属性の反発作用を利用して生み出す「光の衝撃波」を「反発衝撃インパクト」と名付け、あまりの威力の大きさから使用を禁じていたが、土竜を確実に倒すためにほぼ同時に7つの魔法を生み出す。


「装填……!!」


最初に「土塊」の魔法で地面から拳程の大きさの岩石を作り出し、次に岩石を握りしめた状態で右手に「電撃」を帯びさせて「火球」「氷塊」「光球」を手元に発生させ、更に左手に「闇夜」の黒霧を纏わせた「風圧」を発動させ、前方に腕を突き出す。


「発射!!」
『オアアアッ――!?』


右手に握りしめられていた電流を帯びた岩石が大砲のように闇属性の力を滲ませた風圧に吹き飛ばされ、その背後から火球、光球、氷塊の魔法が土竜の眼前にて衝突した瞬間、凄まじい光の奔流が周囲に放たれる。まるで「ビックバン」を想像させる強烈な光の衝撃波が土竜の肉体を覆いこみ、竜種の中でも「最硬」を誇るはずの土竜の肉体が粉々に砕け散った――
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