最弱職の初級魔術師 初級魔法を極めたらいつの間にか「千の魔術師」と呼ばれていました。

カタナヅキ

文字の大きさ
上 下
61 / 657
冒険者編

洞窟の異変

しおりを挟む
「こいつをよく見てろよ。行くぞ……ふんっ!!」
「ちょっと!?」


ガジは大きな鉄槌を振り翳し、岩壁から突出している魔水晶に向けて叩き込む。その光景にリーリスが驚いた声を上げるが、鉄槌が衝突した瞬間に轟音が響き渡り、ルノは咄嗟に耳を抑える。ガジも腕が痺れたのか眉を顰め、そして罅割れ処か壁から引き剥がす事も出来なかった魔水晶を指さす。


「見ての通り、こいつは良質な魔水晶なんだが俺の力でも破壊できねえ。持ち帰って魔剣の素材にでもしようかと思っているだが、俺だけだとお手上げなんだよ」
「いや、それなら最初から説明してくださいよ。耳がキーンってなりましたよ!!キーン!!」
「ア〇レちゃん?」


リーリスがガジに怒鳴りつけている間、ルノは岩壁に視線を向け、出現している魔水晶を掴む。すると魔水晶が光り輝き、慌てて彼は手を離すと輝きが収まる。


「ねえ、魔水晶って人が触れると光る物なの?」
「え?いや、別にそんな事はありませんけど……あれ、本当に光りますね」
「なに?俺が触っても光らねえぞっ!?」


ルノの質問にリーリスも魔水晶に触れると僅かに光り輝き、それを見たガジが驚いた声を上げて自分も触れるが、彼の場合は特に反応はない。その反応からリーリスはある仮説を立てる。


「これは……もしかして私達の魔力に反応しているかもしれません。直接触れる事で私達の魔力に刺激されて輝いているとか……」
「じゃあ、俺が触っても反応しないのはどういうわけだ?」
「単純に魔力が低すぎるからじゃないですかね。私とルノさんは魔術師の職業である事も関わっているかもしれません」
「へえ~……不思議だね」


普通の魔水晶からはあり得ない反応を示す洞窟の魔水晶に3人は疑問を抱くが、その前にルノは今回の依頼人であるガジから依頼内容の詳細を問い質す。


「あの……ところで今回の依頼は何でしょうか?」
「え、ああっ……俺の依頼はこの魔水晶の回収をあんたに手伝ってほしいんだよ。噂は色々と耳にしているぜ?竜種を相手に戦ったり、エルフ王国の軍隊を追い払ったとか」
「後半は覚えはないです」
「まあ、似たような事は仕出かしましたしね」

ガジの依頼は洞窟に存在する魔水晶の回収を手伝ってほしいらしく、ルノに依頼したという。彼も最初は一人で魔水晶を確保しようと岩壁を掘ったり、魔水晶を砕いて採取しようとしたらしいが、どういう事なのかS級冒険者の彼の力でさえも現在に至るまでこの洞窟に存在する魔水晶をひと欠片も入手出来ていないという。


「この洞窟は元々はここまで深くはなかったが、俺がここまで掘り尽くしたんだよ。元々は土属性の魔石を入手しようかと考えていたんだが、偶然にもこの場所にまで到達してこの魔水晶を発見したんだ。だが、どういう事なのかここら辺から急に岩盤が硬くなって俺の力でも掘り起こせねえんだよ」
「それでもここまで一人で洞窟を掘り進んだんですか!?凄いですね……」
「がはははっ!!俺は生まれた時から腕力には誰にも負けたことはねえからな」


豪快な笑い声を上げながらガジは照れ臭そうに髭を撫でるが、そんな彼でもこの魔水晶の回収に苦労しており、そこで最近噂になっているルノを呼び出したらしい。どうして彼を読んだかというと、噂の中にルノが鉱山を破壊しつくして鉱石を回収したという話を聞いたからである。


「あんたが白原で変な建物を建てたという話は聞いているからな。その時に使われていない鉱山に立ち寄って素材を回収する際に暴れまくったという噂を聞いたんだよ。だからあんたならこの硬い岩壁をどうにかできるのかと思ってよ」
「なるほど」
「報酬はこいつを山分けという事でどうだ?もちろん、あんたが6で俺が4でも構わねえぜ。俺は必要な分だけの魔水晶を回収できればそれでいい」
「それはいいですね。ルノさん、私も研究用として持ち帰りたいのでお願いしますよ」
「まあ、そういう事なら……」


ルノは別に魔水晶に興味はないが、依頼として引き受けた以上は依頼人の指示に従い、両手を岩壁に押し付けて「土塊」の魔法で岩壁に埋まっている魔水晶を取り出そうとする。


「土塊……?」
「どうしました?」
「いや、なんか上手く行かない……おかしいな?」
「おいおい、大丈夫か?」


しかし、どういう事なのかルノが土塊の魔法を発動させても岩壁は全く反応せず、魔水晶を掘り起こせなかった。不思議に思った彼は岩壁を叩き、仕方ないので力尽くで回収するため、両手に氷塊の削岩機を作り出す。


「螺旋氷弾!!」
「うおっ!?な、何だそれは!?」


唐突に出現した巨大な「氷のドリル」にガジは動揺した声を上げるが、ルノは気にせずに螺旋氷弾を高速回転させ、岩壁に向けて押し込もうとした時、不意に岩壁に埋もれている魔水晶が光り輝く。まるでルノが作り出した螺旋氷弾から発せられる魔力に反応したように光り輝き、突如として洞窟内に振動が走った。



※お気に入り登録数が1万人突破しましたヾ(@⌒ー⌒@)ノ

まあ、この話を投稿している頃には減っている可能性がありますが……(´ω`)
しおりを挟む
感想 1,841

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

【完結】兄の事を皆が期待していたので僕は離れます

まりぃべる
ファンタジー
一つ年上の兄は、国の為にと言われて意気揚々と村を離れた。お伽話にある、奇跡の聖人だと幼き頃より誰からも言われていた為、それは必然だと。 貧しい村で育った弟は、小さな頃より家の事を兄の分までせねばならず、兄は素晴らしい人物で対して自分は凡人であると思い込まされ、自分は必要ないのだからと弟は村を離れる事にした。 そんな弟が、自分を必要としてくれる人に会い、幸せを掴むお話。 ☆まりぃべるの世界観です。緩い設定で、現実世界とは違う部分も多々ありますがそこをあえて楽しんでいただけると幸いです。 ☆現実世界にも同じような名前、地名、言葉などがありますが、関係ありません。

【完結】『飯炊き女』と呼ばれている騎士団の寮母ですが、実は最高位の聖女です

葉桜鹿乃
恋愛
ルーシーが『飯炊き女』と、呼ばれてそろそろ3年が経とうとしている。 王宮内に兵舎がある王立騎士団【鷹の爪】の寮母を担っているルーシー。 孤児院の出で、働き口を探してここに配置された事になっているが、実はこの国の最も高貴な存在とされる『金剛の聖女』である。 王宮という国で一番安全な場所で、更には周囲に常に複数人の騎士が控えている場所に、本人と王族、宰相が話し合って所属することになったものの、存在を秘する為に扱いは『飯炊き女』である。 働くのは苦では無いし、顔を隠すための不細工な丸眼鏡にソバカスと眉を太くする化粧、粗末な服。これを襲いに来るような輩は男所帯の騎士団にも居ないし、聖女の力で存在感を常に薄めるようにしている。 何故このような擬態をしているかというと、隣国から聖女を狙って何者かが間者として侵入していると言われているためだ。 隣国は既に瘴気で汚れた土地が多くなり、作物もまともに育たないと聞いて、ルーシーはしばらく隣国に行ってもいいと思っているのだが、長く冷戦状態にある隣国に行かせるのは命が危ないのでは、と躊躇いを見せる国王たちをルーシーは説得する教養もなく……。 そんな折、ある日の月夜に、明日の雨を予見して変装をせずに水汲みをしている時に「見つけた」と言われて振り向いたそこにいたのは、騎士団の中でもルーシーに優しい一人の騎士だった。 ※感想の取り扱いは近況ボードを参照してください。 ※小説家になろう様でも掲載予定です。

冤罪をかけられた上に婚約破棄されたので、こんな国出て行ってやります

真理亜
恋愛
「そうですか。では出て行きます」 婚約者である王太子のイーサンから謝罪を要求され、従わないなら国外追放だと脅された公爵令嬢のアイリスは、平然とこう言い放った。  そもそもが冤罪を着せられた上、婚約破棄までされた相手に敬意を表す必要など無いし、そんな王太子が治める国に未練などなかったからだ。  脅しが空振りに終わったイーサンは狼狽えるが、最早後の祭りだった。なんと娘可愛さに公爵自身もまた爵位を返上して国を出ると言い出したのだ。  王国のTOPに位置する公爵家が無くなるなどあってはならないことだ。イーサンは慌てて引き止めるがもう遅かった。

「魔道具の燃料でしかない」と言われた聖女が追い出されたので、結界は消えます

七辻ゆゆ
ファンタジー
聖女ミュゼの仕事は魔道具に力を注ぐだけだ。そうして国を覆う大結界が発動している。 「ルーチェは魔道具に力を注げる上、癒やしの力まで持っている、まさに聖女だ。燃料でしかない平民のおまえとは比べようもない」 そう言われて、ミュゼは城を追い出された。 しかし城から出たことのなかったミュゼが外の世界に恐怖した結果、自力で結界を張れるようになっていた。 そしてミュゼが力を注がなくなった大結界は力を失い……

友人(勇者)に恋人も幼馴染も取られたけど悔しくない。 だって俺は転生者だから。

石のやっさん
ファンタジー
パーティでお荷物扱いされていた魔法戦士のセレスは、とうとう勇者でありパーティーリーダーのリヒトにクビを宣告されてしまう。幼馴染も恋人も全部リヒトの物で、居場所がどこにもない状態だった。 だが、此の状態は彼にとっては『本当の幸せ』を掴む事に必要だった 何故なら、彼は『転生者』だから… 今度は違う切り口からのアプローチ。 追放の話しの一話は、前作とかなり似ていますが2話からは、かなり変わります。 こうご期待。

私に姉など居ませんが?

山葵
恋愛
「ごめんよ、クリス。僕は君よりお姉さんの方が好きになってしまったんだ。だから婚約を解消して欲しい」 「婚約破棄という事で宜しいですか?では、構いませんよ」 「ありがとう」 私は婚約者スティーブと結婚破棄した。 書類にサインをし、慰謝料も請求した。 「ところでスティーブ様、私には姉はおりませんが、一体誰と婚約をするのですか?」

処理中です...
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。

このユーザをミュートしますか?

※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。