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冒険者編
日の国
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――解毒薬の製作に成功したリーリスは女将(本名もオカミ)の旦那であり、今回の依頼人であるS級冒険者の「ガイン」の治療を行う。薬を飲用したことで身体から毒は抜けたが、意識を取り戻したのは翌日の朝だった。
「命を助けて頂き、誠にありがとうございます」
「夫を助けて頂き、ありがとうございます!!」
『ありがとうございます!!』
「あ、いえ……」
「朝からやかましいですね。こっちは低血圧なんですから静かにしてくださいよもう……」
大広間に案内されたルノとリーリスの前に女将と従業員、そして今回の依頼人である中年男性が頭を下げる。二人は上座に案内され、まずは依頼人であるガインと向き合う。
「貴方がガインさんですか?」
「某がガインと申します。わざわざ呼び出しておきながら迷惑を掛けてしまい、誠に申し訳ない」
「その髪型、もしかして日の国の方ですか?」
「はい。某は日の国の出身です」
「日の国?」
ガインの服装は袴姿にちょんまげという「侍」を想像させる姿をしており、リーリスが質問すると彼は頷き、不思議に思ったルノが質問するとリーリスが説明する。
「日の国は帝国と獣人国の堺に存在する小国ですよ。名前で察する通り、数百年前に召喚された異世界人の方が作り上げた国です」
「そんなに前から!?」
「ルノさんのように日の国出身の方は黒髪が多いですし、侍や忍者という特別な職業も存在します。帝国とは昔から同盟を結んでいますね」
「補足するならば日の国は獣人国とも交流があります」
リーリスの説明にガインが口を挟み、日の国は帝国と獣人国と交流している小国らしい。もっとも武力という点では彼等は両国にも劣らず、実際に「侍」や「忍者」の職業は普通の剣士や暗殺者よりも希少な能力を身に着けられるらしい。
「それでは本題に入りましょうか。今回の依頼の件、内容は顔合わせしたいと書かれていますが、ルノさんに何か用事があるんですか?」
「なんでリーリスが話を進めてるの……マネージャー的ポジションなの?」
「それは……」
依頼の話を持ち込むとガインは言いにくそうな表情を浮かべ、本来彼がルノを呼び出したのは新しく昇格されたS級冒険者の彼の実力を確かめるために呼び寄せたのだが、命を救われた手前、彼の実力を確かめて欲しいなどという勝手な申し出は言いにくい。
依頼内容もあくまでも顔合わせしたいと書いてしまった事が仇となり、既にルノが訪れて彼と顔を合わせて話している時点で達成された事になる。しかし、ガインとしては冒険者に加入してから半年も経過せずにS級の称号を入手したルノの実力を見極めたく、どうにか彼の腕前を確認したいところだが、そんな彼の考えを見透かしたようにリーリスが釘を刺す。
「それにしても身体が治って本当に良かったですね。このルノさんが青樹の実を用意してくれなかったら今頃は大変な目に遭ってましたよ」
「うっ……」
「日の国は礼儀を重んじる国家と聞いていますからね。まさかとは思いますけど、恩人に対して勝負をしてくれなんて非常識な願い事をするはずありませんよね」
「こら、リーリス!!失礼なことを言わないでよ。ガインさんがそんな事を言いだすはずがないでしょ?」
「そ、その通りですな」
追い打ちのようなルノの発言を聞いてガインは冷や汗を流し、隣で夫の様子を伺っていた女将も呆れた表情を浮かべ、病み上がりの状態でルノに勝負を挑むと言い出そうとした自分の旦那を注意する。
「あなた、まさかとは思いますがお客様に失礼な真似をするつもりじゃないですよね?この方達のお陰で命が助かったんですよ」
「わ、分かっている!!いや、御二方には色々と迷惑を掛けて申し訳ない。今宵は歓迎の宴を行うのでどうか楽しんでくだされ!!」
「いえ、私達はもう出発しますよ」
『えっ?』
リーリスの予想外の発言にガイン阿知は呆気にとられるが、ルノは既に荷物を整えており、二人の荷物持ちとして付いてきたミノも準備は整えていた。
「歓迎の宴を開いてくれると言ってくださって有難いんですけど、私達も他に仕事があるので急いで向かわないといけないんですよ。まだ4人ほど依頼を引き受けていますので……」
「し、しかし1日ぐらいは……」
「いえいえ、依頼人を待たせるわけにはいきませんからね。じゃあ、行きましょうかルノさん」
「そうだね。あ、依頼の報酬はすいませんけどギルドの方に支払ってくれませんか?」
「う、うむ……分かりました」
足早に立ち去ろうとするルノ達に対してガインは引き留める事が出来ず、結局2人は面倒事に巻き込まれる前にセカンの街を抜け出す。どうにか1人目の依頼を果たした一行は次の依頼人が待ち構えている別の街へ向けて出発した――
※不遇職の「和国」はこの「日の国」が名前を改名した国です。
「命を助けて頂き、誠にありがとうございます」
「夫を助けて頂き、ありがとうございます!!」
『ありがとうございます!!』
「あ、いえ……」
「朝からやかましいですね。こっちは低血圧なんですから静かにしてくださいよもう……」
大広間に案内されたルノとリーリスの前に女将と従業員、そして今回の依頼人である中年男性が頭を下げる。二人は上座に案内され、まずは依頼人であるガインと向き合う。
「貴方がガインさんですか?」
「某がガインと申します。わざわざ呼び出しておきながら迷惑を掛けてしまい、誠に申し訳ない」
「その髪型、もしかして日の国の方ですか?」
「はい。某は日の国の出身です」
「日の国?」
ガインの服装は袴姿にちょんまげという「侍」を想像させる姿をしており、リーリスが質問すると彼は頷き、不思議に思ったルノが質問するとリーリスが説明する。
「日の国は帝国と獣人国の堺に存在する小国ですよ。名前で察する通り、数百年前に召喚された異世界人の方が作り上げた国です」
「そんなに前から!?」
「ルノさんのように日の国出身の方は黒髪が多いですし、侍や忍者という特別な職業も存在します。帝国とは昔から同盟を結んでいますね」
「補足するならば日の国は獣人国とも交流があります」
リーリスの説明にガインが口を挟み、日の国は帝国と獣人国と交流している小国らしい。もっとも武力という点では彼等は両国にも劣らず、実際に「侍」や「忍者」の職業は普通の剣士や暗殺者よりも希少な能力を身に着けられるらしい。
「それでは本題に入りましょうか。今回の依頼の件、内容は顔合わせしたいと書かれていますが、ルノさんに何か用事があるんですか?」
「なんでリーリスが話を進めてるの……マネージャー的ポジションなの?」
「それは……」
依頼の話を持ち込むとガインは言いにくそうな表情を浮かべ、本来彼がルノを呼び出したのは新しく昇格されたS級冒険者の彼の実力を確かめるために呼び寄せたのだが、命を救われた手前、彼の実力を確かめて欲しいなどという勝手な申し出は言いにくい。
依頼内容もあくまでも顔合わせしたいと書いてしまった事が仇となり、既にルノが訪れて彼と顔を合わせて話している時点で達成された事になる。しかし、ガインとしては冒険者に加入してから半年も経過せずにS級の称号を入手したルノの実力を見極めたく、どうにか彼の腕前を確認したいところだが、そんな彼の考えを見透かしたようにリーリスが釘を刺す。
「それにしても身体が治って本当に良かったですね。このルノさんが青樹の実を用意してくれなかったら今頃は大変な目に遭ってましたよ」
「うっ……」
「日の国は礼儀を重んじる国家と聞いていますからね。まさかとは思いますけど、恩人に対して勝負をしてくれなんて非常識な願い事をするはずありませんよね」
「こら、リーリス!!失礼なことを言わないでよ。ガインさんがそんな事を言いだすはずがないでしょ?」
「そ、その通りですな」
追い打ちのようなルノの発言を聞いてガインは冷や汗を流し、隣で夫の様子を伺っていた女将も呆れた表情を浮かべ、病み上がりの状態でルノに勝負を挑むと言い出そうとした自分の旦那を注意する。
「あなた、まさかとは思いますがお客様に失礼な真似をするつもりじゃないですよね?この方達のお陰で命が助かったんですよ」
「わ、分かっている!!いや、御二方には色々と迷惑を掛けて申し訳ない。今宵は歓迎の宴を行うのでどうか楽しんでくだされ!!」
「いえ、私達はもう出発しますよ」
『えっ?』
リーリスの予想外の発言にガイン阿知は呆気にとられるが、ルノは既に荷物を整えており、二人の荷物持ちとして付いてきたミノも準備は整えていた。
「歓迎の宴を開いてくれると言ってくださって有難いんですけど、私達も他に仕事があるので急いで向かわないといけないんですよ。まだ4人ほど依頼を引き受けていますので……」
「し、しかし1日ぐらいは……」
「いえいえ、依頼人を待たせるわけにはいきませんからね。じゃあ、行きましょうかルノさん」
「そうだね。あ、依頼の報酬はすいませんけどギルドの方に支払ってくれませんか?」
「う、うむ……分かりました」
足早に立ち去ろうとするルノ達に対してガインは引き留める事が出来ず、結局2人は面倒事に巻き込まれる前にセカンの街を抜け出す。どうにか1人目の依頼を果たした一行は次の依頼人が待ち構えている別の街へ向けて出発した――
※不遇職の「和国」はこの「日の国」が名前を改名した国です。
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