上 下
214 / 215
ゴノ闘技場編

盗賊王

しおりを挟む
「あたしが仕入れた情報によると、この盗賊王とやらはどうやら黒狼と蝙蝠と繋がっていたらしいんだよ」
「何だと!?それは本当か?」
「ああ、嘘じゃない。ジャドクの奴も捕まったお陰で蛇達も居なくなったからね。この街に入ってきた情報は真っ先に私の耳に届くんだよ」
「……あいつが下水道で飼っていた大蛇のせいで死んだ人間も結構多かったみたい」
「そうだったんだ……」


ジャドクがカジノに繋がる下水道にて内密に飼育していた大蛇は下水道の点検に訪れた人間も食べていたらしく、それが判明して彼は警備兵から追われる立場となった。

蝙蝠に所属していた傭兵達は素直に投降した者は事情聴取を受け、ある程度の罪は免除された。但し、逃亡した者は速やかに追われる立場となり、特にジャドクの場合は人を殺し過ぎていたので高額の賞金首として指名手配された。ジャドクは早々に街から立ち去り、未だに掴まってはいない。


「……アリスラはどうなった?」
「あいつは素直に警備兵に投稿したよ。まあ、2、3年ぐらいは刑務所に入るだろうけど、それでも罪は軽い方さ。キルの方は行方知れずだけど、あいつも相当に殺してるからね……捕まったら死刑か終身刑だろうね」
「そう」


元相棒の事は気になるのかアリスラは捕まっても死刑は免れた事を知ってネココは安堵するが、一方でレノが気になるのは盗賊王と黒狼と蝙蝠が繋がっているという話だった。


「さっきの話、盗賊王が黒狼と蝙蝠に繋がっているのは本当なんですか?」
「ああ……実は警備兵の奴等が証拠を回収する前に私のネズミが調べたところ、どうやらカトレアは蝙蝠を作り出しながらも黒狼に加入してたんだ。あの女は自分が傭兵団の頭である事にも関わらず、黒狼も内部から支配していたのさ。しかもあの女は盗賊王にも取り入っていた……つまり、3つの組織を掛け持ちしていたという事になるね」
「馬鹿な……そんな事が出来るのか?」
「カトレアの奴からすれば蝙蝠や黒狼なんてただの遊び道具さ。盗賊王にしても似たようなもんだろうね、あの女は3つの組織に所属している人間達から貢がせていたのさ。あんたら見つけた地下牢に関してもそうさ」
「えっ!?あの地下牢はゴノ伯爵が作り出したんじゃ……」
「それは半分正解で半分は外れだね。あの地下牢を最初に作り出すように指示を出したのはカトレアさ、あの女はちょくちょくゴノ伯爵の屋敷に訪れては金を要求してきた。その時に姿を見られた相手をあの地下牢に閉じ込めて死ぬまで精気を絞り上げるのさ。しかもひと思いに一気に精気を吸い上げもせず、長期間に渡って定期的に精気を吸い上げる事で苦しみを長引かせていたようだね」
「じゃあ、あの死体の人も……」


レノ達は地下牢に囚われていた女性の事を思い出し、あの女性もカトレアに苦しめられて殺されていたのかと思うと同情せざるを得ない。だが、ネズミ婆さんによると今現在はレノ達の身が危ないかもしれないという。


「蝙蝠の団長であるカトレアが死んだ事は既に噂が広まっている。表向きは王国騎士のセツナが討伐した事になっているけど、きっと盗賊王も動き出すだろうね。盗賊王はどうやらカトレアに惚れ込んでいてわざわざ王都から金品を送り込むぐらいだったからね」
「あの盗賊王が吸血鬼に……」
「でも、それだと私達が狙われる理由はない」
「何を言ってんだい、結果的にはあんた達が行動を起こしたから黒狼も蝙蝠も壊滅したんだよ?盗賊王の情報網がどの程度か知らないけど、あんたらも狙われる立場でもおかしくはないよ」
「なるほど……」


表向きは黒狼も蝙蝠も王国騎士のセツナが壊滅させた事になっているが、実際の所はレノ達が関与している。盗賊王がこの事実を知ればレノ達を見逃すはずがなく、命を狙う可能性もあった。

だが、ネズミ婆さんからすれば盗賊王に関しては黒狼や蝙蝠と比べれば小規模の組織であり、大きな手柄を上げたいと考えているドリスからすれば絶好の相手じゃないかと促す。


「王都でも有名な盗賊王を捕まえればあんたの名前も上がるんじゃないのかい?王国騎士ドリスが盗賊王を捕えた、となれば世間の評判も上がるだろう」
「それは……そうかもしれませんが、肝心の盗賊王の居所が分からない限りはどうしようもありませんわ」
「流石に私もそこまでは分からないね。だけど、奴等は長年この国の軍隊から逃げ続けた相手だよ。国側としても手を焼いている存在なんだから、もしも捕まえる事が出来たら大手柄だろう」
「ええ、それは間違いありませんわ。ですけど、居場所が分からなければ……」
「……心当たりがあるな」
「えっ!?」


話を聞いていたロウガが口を挟み、彼は盗賊王に関する情報を知っているという話に誰もが驚く。ネズミ婆さんでも知らない情報をどうしてロウガが知っているのかというと、彼は答えた。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

「クズスキルの偽者は必要無い!」と公爵家を追放されたので、かけがえのない仲間と共に最高の国を作ります

古河夜空
ファンタジー
「お前をルートベルク公爵家から追放する――」それはあまりにも突然の出来事だった。 一五歳の誕生日を明日に控えたレオンは、公爵家を追放されてしまう。魔を制する者“神託の御子”と期待されていた、ルートベルク公爵の息子レオンだったが、『継承』という役立たずのスキルしか得ることができず、神託の御子としての片鱗を示すことが出来なかったため追放されてしまう。 一人、逃げる様に王都を出て行くレオンだが、公爵家の汚点たる彼を亡き者にしようとする、ルートベルク公爵の魔の手が迫っていた。「絶対に生き延びてやる……ッ!」レオンは己の力を全て使い、知恵を絞り、公爵の魔の手から逃れんがために走る。生き延びるため、公爵達を見返すため、自分を信じてくれる者のため。 どれだけ窮地に立たされようとも、秘めた想いを曲げない少年の周りには、人、エルフ、ドワーフ、そして魔族、種族の垣根を越えたかけがえの無い仲間達が集い―― これは、追放された少年が最高の国を作りあげる物語。 ※他サイト様でも掲載しております。

貴族に生まれたのに誘拐され1歳で死にかけた

佐藤醤油
ファンタジー
 貴族に生まれ、のんびりと赤ちゃん生活を満喫していたのに、気がついたら世界が変わっていた。  僕は、盗賊に誘拐され魔力を吸われながら生きる日々を過ごす。  魔力枯渇に陥ると死ぬ確率が高いにも関わらず年に1回は魔力枯渇になり死にかけている。  言葉が通じる様になって気がついたが、僕は他の人が持っていないステータスを見る力を持ち、さらに異世界と思われる世界の知識を覗ける力を持っている。  この力を使って、いつか脱出し母親の元へと戻ることを夢見て過ごす。  小さい体でチートな力は使えない中、どうにか生きる知恵を出し生活する。 ------------------------------------------------------------------  お知らせ   「転生者はめぐりあう」 始めました。 ------------------------------------------------------------------ 注意  作者の暇つぶし、気分転換中の自己満足で公開する作品です。  感想は受け付けていません。  誤字脱字、文面等気になる方はお気に入りを削除で対応してください。

【完結】【勇者】の称号が無かった美少年は王宮を追放されたのでのんびり異世界を謳歌する

雪雪ノ雪
ファンタジー
ある日、突然学校にいた人全員が【勇者】として召喚された。 その召喚に巻き込まれた少年柊茜は、1人だけ【勇者】の称号がなかった。 代わりにあったのは【ラグナロク】という【固有exスキル】。 それを見た柊茜は 「あー....このスキルのせいで【勇者】の称号がなかったのかー。まぁ、ス・ラ・イ・厶・に【勇者】って称号とか合わないからなぁ…」 【勇者】の称号が無かった柊茜は、王宮を追放されてしまう。 追放されてしまった柊茜は、特に慌てる事もなくのんびり異世界を謳歌する..........たぶん….... 主人公は男の娘です 基本主人公が自分を表す時は「私」と表現します

【完結】悪役令嬢に転生したけど、王太子妃にならない方が幸せじゃない?

みちこ
ファンタジー
12歳の時に前世の記憶を思い出し、自分が悪役令嬢なのに気が付いた主人公。 ずっと王太子に片思いしていて、将来は王太子妃になることしか頭になかった主人公だけど、前世の記憶を思い出したことで、王太子の何が良かったのか疑問に思うようになる 色々としがらみがある王太子妃になるより、このまま公爵家の娘として暮らす方が幸せだと気が付く

【完結】私だけが知らない

綾雅(りょうが)祝!コミカライズ
ファンタジー
目が覚めたら何も覚えていなかった。父と兄を名乗る二人は泣きながら謝る。痩せ細った体、痣が残る肌、誰もが過保護に私を気遣う。けれど、誰もが何が起きたのかを語らなかった。 優しい家族、ぬるま湯のような生活、穏やかに過ぎていく日常……その陰で、人々は己の犯した罪を隠しつつ微笑む。私を守るため、そう言いながら真実から遠ざけた。 やがて、すべてを知った私は――ひとつの決断をする。 記憶喪失から始まる物語。冤罪で殺されかけた私は蘇り、陥れようとした者は断罪される。優しい嘘に隠された真実が徐々に明らかになっていく。 【同時掲載】 小説家になろう、アルファポリス、カクヨム、エブリスタ 2023/12/20……小説家になろう 日間、ファンタジー 27位 2023/12/19……番外編完結 2023/12/11……本編完結(番外編、12/12) 2023/08/27……エブリスタ ファンタジートレンド 1位 2023/08/26……カテゴリー変更「恋愛」⇒「ファンタジー」 2023/08/25……アルファポリス HOT女性向け 13位 2023/08/22……小説家になろう 異世界恋愛、日間 22位 2023/08/21……カクヨム 恋愛週間 17位 2023/08/16……カクヨム 恋愛日間 12位 2023/08/14……連載開始

【完結】婚約破棄されて修道院へ送られたので、今後は自分のために頑張ります!

猫石
ファンタジー
「ミズリーシャ・ザナスリー。 公爵の家門を盾に他者を蹂躙し、悪逆非道を尽くしたお前の所業! 決して許してはおけない! よって我がの名の元にお前にはここで婚約破棄を言い渡す! 今後は修道女としてその身を神を捧げ、生涯後悔しながら生きていくがいい!」 無実の罪を着せられた私は、その瞬間に前世の記憶を取り戻した。 色々と足りない王太子殿下と婚約破棄でき、その後の自由も確約されると踏んだ私は、意気揚々と王都のはずれにある小さな修道院へ向かったのだった。 注意⚠️このお話には、妊娠出産、新生児育児のお話がバリバリ出てきます。(訳ありもあります)お嫌いな方は自衛をお願いします! 2023/10/12 作者の気持ち的に、断罪部分を最後の番外にしました。 2023/10/31第16回ファンタジー小説大賞奨励賞頂きました。応援・投票ありがとうございました! ☆このお話は完全フィクションです、創作です、妄想の作り話です。現実世界と混同せず、あぁ、ファンタジーだもんな、と、念頭に置いてお読みください。 ☆作者の趣味嗜好作品です。イラッとしたり、ムカッとしたりした時には、そっと別の素敵な作家さんの作品を検索してお読みください。(自己防衛大事!) ☆誤字脱字、誤変換が多いのは、作者のせいです。頑張って音読してチェックして!頑張ってますが、ごめんなさい、許してください。 ★小説家になろう様でも公開しています。

私を裏切った相手とは関わるつもりはありません

みちこ
ファンタジー
幼なじみに嵌められて処刑された主人公、気が付いたら8年前に戻っていた。 未来を変えるために行動をする 1度裏切った相手とは関わらないように過ごす

【完結】もう…我慢しなくても良いですよね?

アノマロカリス
ファンタジー
マーテルリア・フローレンス公爵令嬢は、幼い頃から自国の第一王子との婚約が決まっていて幼少の頃から厳しい教育を施されていた。 泣き言は許されず、笑みを浮かべる事も許されず、お茶会にすら参加させて貰えずに常に完璧な淑女を求められて教育をされて来た。 16歳の成人の義を過ぎてから王子との婚約発表の場で、事あろうことか王子は聖女に選ばれたという男爵令嬢を連れて来て私との婚約を破棄して、男爵令嬢と婚約する事を選んだ。 マーテルリアの幼少からの血の滲むような努力は、一瞬で崩壊してしまった。 あぁ、今迄の苦労は一体なんの為に… もう…我慢しなくても良いですよね? この物語は、「虐げられる生活を曽祖母の秘術でざまぁして差し上げますわ!」の続編です。 前作の登場人物達も多数登場する予定です。 マーテルリアのイラストを変更致しました。

処理中です...