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ゴノ闘技場編
水刃
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――時は遡り、まだレノ達が牙狼団が拠点にしている酒場にアルトが立ち寄った。彼は闘技場の侵入には参加できないが、その代わりにレノの役に立ちそうな物を持ってきてくれた。
「レノ君、これを受け取ってくれ。僕からの餞別さ」
「これは……もしかして水属性の魔石?」
レノはアルトから水色に光り輝く魔石を渡され、意外そうな表情を浮かべる。普段からレノが使用しているのは風属性と火属性の魔石なのだが、アルトが用意したのは今までに使用した事がない魔石だった。
高価な魔石を持ってきてくれた事にはレノも感謝するが、どうして今までに使った事がない水属性の魔石を持って来たのかとレノは不思議に思ったが、ここでアルトは前にレノが「吸水石」と呼ばれる魔石を利用した事を話す。
「僕達が黒狼に掴まった時、君が吸水石を破壊して水を纏った刃を放っただろう?それなら水属性の魔石を使う事が出来たらあの時のように水の刃を作り出せるんじゃないかと思ってね」
「あっ……」
「まあ、実際に水属性の魔石を使えるかどうかは分からないけど、もしも必要なかった時は僕に返してくれ。それを売って別の物を用意するから」
「分かった、ありがとう」
アルトに感謝しながらもレノは受け取った水属性の魔石をどうするか悩み、とりあえずはドリスを見習って今までは魔法腕輪に装着していた風属性の魔石を鞘の方に移動させる。そして新しく手に入れた水属性の魔石は魔法腕輪に嵌め込む事にした。
「じゃあ、早速だけど試してみるね」
「ああ、今回は魔法を使わないのかい?」
「多分、大丈夫……のはず」
いつも通りにレノは普段から身に付けている魔石から魔力を引き出す感覚で、水属性の魔石からも魔力を引き出そうとする。その結果、水属性の魔石が光り輝き、直後に荒正の刃に変化が訪れた――
(――あの時の感覚を思い出せ!!)
記憶の世界から現実へ戻ってきたレノは荒正を握りしめると、魔法腕輪から水属性の魔力を引き出し、鞘からは風属性の魔力を引き出す。風と水の魔石から魔力を得たレノは荒正に意識を集中させると、刀身全体に変化が訪れた。
刃からまるで水が滲み出したかのように刀身の部分に水が湧き出し、それを風の魔力が内側に抑え込む。風圧で刀身に水を纏わせる事に成功したレノはよそ見をしているセツナに視線を向け、最後の攻撃を繰り出す。
(頼む、ロイ爺ちゃん!!力を貸して!!)
これが最後の攻撃なると判断したレノは勢いよく踏み込むと、床に向けて刃を振りかざし、刀の先端を突き刺す。この際に力を蓄積させ、一気に振りかざす。ロイから教わった巨人殺しの剣聖の剣技「地裂」を利用し、勢いよくレノは振り抜く。
「だぁあああっ!!」
「なにっ!?」
「セツナ様!?」
兵士に気を取られていたセツナはレノの掛け声を聞いて振り返ると、そこには奇妙な構えで下から剣を振り抜こうとするレノを見て彼女は咄嗟に剣を構えると、先ほどの「氷華」と呼ばれる氷の華の盾を作り出す。
「くっ!?」
「うおおおっ!!」
華の形をした氷の盾を作り出したセツナはレノの攻撃を受けようとしたが、その姿を見てレノは敢えて斬り付けるのではなく、離れた箇所から刃に纏わせた魔力を解放させた。
刃に纏っていた水は風圧の力によって今度は氷の盾の方へ放たれ、この時に三日月状の刃と化す。レノが得意とする「嵐刃」に水の魔力を組み合わせた形の攻撃だが、今回の場合は「地裂」の勢いも追加していた。
「こんな物っ……なっ!?」
「危ないっ!!」
迫りくる「水刃」に対してセツナは攻撃を正面から受けようとしたが、危機感を感じたリンが彼女の身体に抱き着いて離れる。その判断は間違ってはおらず、水刃は氷の盾に触れた途端、想像以上の威力を発揮して氷華を真っ二つに切断した。
「なっ……馬鹿なっ!?」
「セツナ様の氷を割るなんて……!?」
「今だ!!」
「ドリ……金髪仮面、起きてっ!!」
「はぐっ!?」
セツナが自分の氷が切断されたという事実に驚愕する中、レノはネココに声をかけると、彼女は倒れているドリスの頬をひっぱたく。意識が覚醒したのか、ドリスは何が起きているのか理解できずに起き上がる。
「い、いったい何が……」
「話は後、早く逃げる」
「くっ……逃がすと思っているのか!?」
ネココはドリスを無理やりに立ち上がらせると、二人の元にレノも向かう。この時にセツナは慌てて起き上がろうとしたが、そんな彼女にレノは剣を振りかざし、再び剣を構えた。
「喰らえっ!!」
「くっ!?氷華!!」
「……嵐刃!!」
セツナは先ほどの攻撃が繰り出されるのかと思ったが、そんな彼女に対してレノは意表を突いて風の刃を繰り出す。その結果、水の刃が繰り出されると思って警戒していたセツナは氷の盾を作り出すが、実際に放たれたのは風の刃で氷の盾に触れた瞬間に拡散し、部屋中に風の魔力が流れ込む。
「レノ君、これを受け取ってくれ。僕からの餞別さ」
「これは……もしかして水属性の魔石?」
レノはアルトから水色に光り輝く魔石を渡され、意外そうな表情を浮かべる。普段からレノが使用しているのは風属性と火属性の魔石なのだが、アルトが用意したのは今までに使用した事がない魔石だった。
高価な魔石を持ってきてくれた事にはレノも感謝するが、どうして今までに使った事がない水属性の魔石を持って来たのかとレノは不思議に思ったが、ここでアルトは前にレノが「吸水石」と呼ばれる魔石を利用した事を話す。
「僕達が黒狼に掴まった時、君が吸水石を破壊して水を纏った刃を放っただろう?それなら水属性の魔石を使う事が出来たらあの時のように水の刃を作り出せるんじゃないかと思ってね」
「あっ……」
「まあ、実際に水属性の魔石を使えるかどうかは分からないけど、もしも必要なかった時は僕に返してくれ。それを売って別の物を用意するから」
「分かった、ありがとう」
アルトに感謝しながらもレノは受け取った水属性の魔石をどうするか悩み、とりあえずはドリスを見習って今までは魔法腕輪に装着していた風属性の魔石を鞘の方に移動させる。そして新しく手に入れた水属性の魔石は魔法腕輪に嵌め込む事にした。
「じゃあ、早速だけど試してみるね」
「ああ、今回は魔法を使わないのかい?」
「多分、大丈夫……のはず」
いつも通りにレノは普段から身に付けている魔石から魔力を引き出す感覚で、水属性の魔石からも魔力を引き出そうとする。その結果、水属性の魔石が光り輝き、直後に荒正の刃に変化が訪れた――
(――あの時の感覚を思い出せ!!)
記憶の世界から現実へ戻ってきたレノは荒正を握りしめると、魔法腕輪から水属性の魔力を引き出し、鞘からは風属性の魔力を引き出す。風と水の魔石から魔力を得たレノは荒正に意識を集中させると、刀身全体に変化が訪れた。
刃からまるで水が滲み出したかのように刀身の部分に水が湧き出し、それを風の魔力が内側に抑え込む。風圧で刀身に水を纏わせる事に成功したレノはよそ見をしているセツナに視線を向け、最後の攻撃を繰り出す。
(頼む、ロイ爺ちゃん!!力を貸して!!)
これが最後の攻撃なると判断したレノは勢いよく踏み込むと、床に向けて刃を振りかざし、刀の先端を突き刺す。この際に力を蓄積させ、一気に振りかざす。ロイから教わった巨人殺しの剣聖の剣技「地裂」を利用し、勢いよくレノは振り抜く。
「だぁあああっ!!」
「なにっ!?」
「セツナ様!?」
兵士に気を取られていたセツナはレノの掛け声を聞いて振り返ると、そこには奇妙な構えで下から剣を振り抜こうとするレノを見て彼女は咄嗟に剣を構えると、先ほどの「氷華」と呼ばれる氷の華の盾を作り出す。
「くっ!?」
「うおおおっ!!」
華の形をした氷の盾を作り出したセツナはレノの攻撃を受けようとしたが、その姿を見てレノは敢えて斬り付けるのではなく、離れた箇所から刃に纏わせた魔力を解放させた。
刃に纏っていた水は風圧の力によって今度は氷の盾の方へ放たれ、この時に三日月状の刃と化す。レノが得意とする「嵐刃」に水の魔力を組み合わせた形の攻撃だが、今回の場合は「地裂」の勢いも追加していた。
「こんな物っ……なっ!?」
「危ないっ!!」
迫りくる「水刃」に対してセツナは攻撃を正面から受けようとしたが、危機感を感じたリンが彼女の身体に抱き着いて離れる。その判断は間違ってはおらず、水刃は氷の盾に触れた途端、想像以上の威力を発揮して氷華を真っ二つに切断した。
「なっ……馬鹿なっ!?」
「セツナ様の氷を割るなんて……!?」
「今だ!!」
「ドリ……金髪仮面、起きてっ!!」
「はぐっ!?」
セツナが自分の氷が切断されたという事実に驚愕する中、レノはネココに声をかけると、彼女は倒れているドリスの頬をひっぱたく。意識が覚醒したのか、ドリスは何が起きているのか理解できずに起き上がる。
「い、いったい何が……」
「話は後、早く逃げる」
「くっ……逃がすと思っているのか!?」
ネココはドリスを無理やりに立ち上がらせると、二人の元にレノも向かう。この時にセツナは慌てて起き上がろうとしたが、そんな彼女にレノは剣を振りかざし、再び剣を構えた。
「喰らえっ!!」
「くっ!?氷華!!」
「……嵐刃!!」
セツナは先ほどの攻撃が繰り出されるのかと思ったが、そんな彼女に対してレノは意表を突いて風の刃を繰り出す。その結果、水の刃が繰り出されると思って警戒していたセツナは氷の盾を作り出すが、実際に放たれたのは風の刃で氷の盾に触れた瞬間に拡散し、部屋中に風の魔力が流れ込む。
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